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書籍・雑誌

2014-07-10

『燃えろ! 新日本プロレス エクストラ 猪木VSアリ 伝説の異種格闘技戦』 試合から38年を経て初のDVD化! 懐かしい世紀の一戦

燃えろ! 新日本プロレス エクストラ 猪木VSアリ 伝説の異種格闘技戦 【初回入荷限定特典付】 [分冊百科]

あれから38年、やっとあの伝説の一戦「猪木VSアリ」ノーカット版DVDが発売された。「燃えろ! 新日本プロレス エクストラ 猪木VSアリ 伝説の異種格闘技戦」という集英社のムックで。しかも¥1,728円という値段で。

うーん懐かしい。あの頃を思い出しながら、香港で一人夜中に芋焼酎の湯割りを片手にリモコンボタンを押した。

1976年6月26日(土)。その日、午前中で授業が終わった高校2年生のオレは、この世紀の一戦のTV中継を観れないジレンマを感じていた。学校の生徒会の用事があったため、どうしても昼からの放送に間にあわない。夕方家に帰り、(確か)PM8:00からの再放送を待ったオレ。

この「世紀の一戦」まで、当時のオレらプロレス・ファンはどんなに期待して待ったことか。オレの通った男子高でもこの話題で持ち切り。我らがアントニオ猪木が、現役のプロボクシング世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリと試合をする!猪木が提唱していた「プロレスこそ最強。King of Sportsだ」を証明する時が遂に来た。つかまえちまえばこっちのもの。あの世界一有名なチャンプを猪木がバックドロップでマットに叩きつけて勝つんじゃないか?当時、純粋にプロレスは「八百長ではない」と信じていた(童貞の)オレは、猪木の勝利を確信していた。

普段は大試合の後しか買わない「大阪スポーツ」を、なけなしの小遣いで、試合前の一週間ほど毎日買っていたオレ。それを読んでいたら、だんだん不安になってきた。それというのも、「アリ側がルール変更を要請」なんていう見出しが日々多くなってきたから。そして試合前にわかったことは、猪木は(はっきりと覚えてないが、確か)ドロップ・キック等の立ったままの上半身へのキック(ひざも含む)の禁止、タックル、ひじ打ち、頭突き、チョップの禁止、それに寝技も何十秒以内等々、およそプロレスの技を封印しなければならないルールで戦わねばならなかったということ。

「これでどうやって戦うんじゃ?」新聞を見ながらオレは思った。相手は、圧倒的に不利と云われたが、ヘビー級史上最強のパンチャーだったジョージ・フォアマンをKOし「キンシャサの奇跡」を成し遂げたモハメド・アリだ。一発パンチをもらったら、猪木の「ペリカンのあご」は砕けちまうだろう。さあ、猪木、どうやって戦う?

不安と興奮が入り交じった気持ちの中、「世紀の一戦」第1ラウンドのゴングが鳴った。猪木は脱兎のごとく走っていく、そしてアリの左足めがけて中腰で蹴りをいれる。そして、寝転んだまま、「来い、来い」と手招きする。
オレは「よしっ!」と膝を打った。驚いた。あのルールの中、これ以外ない戦法ではないか!さすが猪木!興奮した。これなら、アリのパンチは当たらないし、倒してしまえばなんとかなるじゃないか!

ラウンドが進んでいく。猪木は同じ戦法で、アリの左ひざを狙っていく。アリは、「INOKI, GIRL!(猪木、おめえは女の子か!)」「INOKI, COWARD(この臆病者!)」と罵声を浴びせ、立って戦うように要求する。
後半アリも疲労の上、みみず腫れになった足の痛みからか、言葉も少なくなり、これといった盛り上がりもないまま、15ラウンド終了のゴングが鳴った。

結果は両者引き分け。次の日のTV、新聞・週刊誌は殆ど全て「世紀の茶番」といった論調だった。だが大阪スポーツ(東京スポーツ)だけは「史上に残る名勝負」と書いてあったように思う(それは主催者という事情もあったろう)。オレは日記に「面白い試合ではなかった。真剣勝負過ぎた‥」と書いた。(試合当日ルールを正式に発表しなかったのもこの試合の評価を下げた大きな要因と思う。一説にはアリ側がルールを公表させなかったとも聞くが。)

試合から数十年が経ち、”異種格闘技戦”という名称が”総合格闘技”にかわってから、この「猪木VSアリ」の評価が変わった。世の中がやっとこの一戦の、リアルファイトの〈凄さ〉に気がついたのだろう。

今回38年振りにこの試合を見て思ったことは、「やっぱりフラストレーションの溜まる試合だった」ということ(笑)。第6ラウンドで、猪木はアリを倒すことに成功し、ひじを一発お見舞いした。本気で抗議するアリのセコンド、アンジェロ・ダンディ。レフェリーはブレイクを命じ、猪木に注意する。ここは唯一のチャンスだった。アリも、数回ジャブが猪木をとらえるが、ストレートもフックも打てなかった。
踏み込めない二人。それは恐怖心だったのか。たぶん、ボクシングとプロレスの神様が日本武道館のリングに降りてきて、二人に試合をさせなかったんじゃないか?それはお互いの〈世界〉を守るために必要だったんじゃないか?今回見てそんな気がした。

このムックはDVD2枚組。試合前のアリ、猪木の計量や記者会見等が入ったDisc1は、試合直前の「水曜スペシャル」もある。今見ると格闘技をよくわかってない通訳でイライラする。Disc 2はノーカットで伝説の一戦を収録(87分)。だが、確か石坂浩二がゲストに来てたんだが、その声が入ってない。
カール・ゴッチがセコンドにいたことを忘れていた。心強いが、インターバルでも何も猪木に指示しない。猪木はたった一人で戦っていたのだ。

現在の総合格闘技を見慣れた若い人にはこの試合に至るまでの興奮もなく、ただ「伝説の一戦」として冷静に見れると思う。はっきり言って面白い試合ではない。だが緊張感は半端ない。明確なルールが現在に至るまでどこにも明示されていないが、手足を縛られたような状態で戦わなければならなかった猪木(足しか攻められなかった)と、試合後ホテルのエレベーターで倒れてしまったほどのダメージを受けながら、最後までリングに立っていたアリの「男」としてのプライドを感じ取ってほしい。

このDVDムックは、紛れもなく日本の格闘技史上に残る歴史的な一戦の記録である。

「燃えろ! 新日本プロレス エクストラ 猪木VSアリ 伝説の異種格闘技戦」(2014年6月26日発売)

10-Jul-14-Thu by nobuyasu

B00KG4S6BA 燃えろ! 新日本プロレス エクストラ 猪木VSアリ 伝説の異種格闘技戦 【初回入荷限定特典付】 [分冊百科]
集英社  2014-06-26

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4167753650 完本 1976年のアントニオ猪木 (文春文庫)
柳澤 健
文藝春秋  2009-03-10

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2014-05-23

「寅さんのことば 風の吹くまま 気の向くまま」 佐藤利明 著 + CD 「男はつらいよ 寅次郎音楽旅〜寅さんのことば」

寅さんのことば 風の吹くまま 気の向くまま
寅さんのことば 風の吹くまま 気の向くまま

佐藤利明さんの著書「寅さんのことば 風の吹くまま 気の向くまま」は、「男はつらいよ」ファンはページをめくるのがとても楽しい粋な本である。そして、同コンセプトで発売されたCD「男はつらいよ 寅次郎音楽旅〜寅さんのことば」は、その本に書かれたセリフをそのまま聞けて、かつサントラが聴けるという、これも粋なCDである。

このCDをかけて、この本を読む。どっぷりと寅さんワールドにひたる。そうすると、海外暮らしの身には「銭さえあれば、私は今すぐにでも土産を買い込んで故郷へ帰りたいのでございます」という心境になるのだ。

男はつらいよ 寅次郎音楽旅~寅さんのことば~
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2011年4月に始まった文化放送ラジオの「みんなの寅さん」。当初は朝の吉田照美さんの番組内の1コーナーだったが、その後独立した番組となり、2014年4月からは「新・みんなの寅さん 」として毎週日曜日夕方17:00〜17:27 に放送中である。そのパーソナリティを務める"寅さん博士"こと娯楽映画研究家・佐藤利明氏が、東京新聞、中日新聞、北陸中日新聞の夕刊へ連載していたものを一冊にまとめたものが「寅さんのことば 風の吹くまま 気のむくまま」。そして、その本で紹介された「寅さんのことば」をオリジナル音源で収録し、かつ山本直純氏のサントラが聴けるのがこのCD「男はつらいよ 寅次郎音楽旅〜寅さんのことば」なのである。

おなじみのセリフを読んで、それを聴けるのは楽しいもんである。
「よお、備後屋、あいかわらずバカか?」
「それを言っちゃおしまいよ」
「俺か?恋をしていたのよ」
「おまえと俺とは別の人間なんだぞ。早え話がだ、俺が芋食って、おまえの尻からプッと屁が出るか!」
「おい、まくら、さくらとってくれ」(おいちゃんのセリフ)等々。

このCD「男はつらいよ 寅次郎音楽旅」は映画同様シリーズとなっており、これも佐藤利明氏(プロデュース&コンセプト)の労作である。

男はつらいよ 寅次郎音楽旅~寅さんの“夢”“旅”“恋”“粋”~
男はつらいよ 寅次郎音楽旅~寅さんの“夢”“旅”“恋”“粋”~

「男はつらいよ 寅次郎音楽旅〜寅さんの"夢””旅""恋””粋”」は「男はつらいよ」全48作品の中で使用された〈天才〉山本直純作曲のもの、及びクラシック作品の音源をそのまま収録した2枚組。

男はつらいよ 続・寅次郎音楽旅~みんなの寅さん~
男はつらいよ 続・寅次郎音楽旅~みんなの寅さん~

「男はつらいよ 続・寅次郎音楽旅〜みんなの寅さん」は、文化放送のラジオも始まり、上述のCDに未終録の音源と、ラジオでBGMとして流したものを収録した"続篇”。2枚組。

男はつらいよX徳永英明 新・寅次郎音楽旅
男はつらいよX徳永英明 新・寅次郎音楽旅

「男はつらいよ×徳永英明 新・寅次郎音楽旅」は、第42作目以降、満男(吉岡秀隆)と泉(後藤久美子)の「恋のテーマ」となった徳永英明さんの名曲がフィーチャーされたコラボアルバム。

もうこの4作品の「寅次郎音楽旅」CDを持っていれば、寅さんの音源はほぼ自分のものに出来たことになる(と思う)。我が家で「寅さんワールド」に浸るには最適なシリーズである。これを聴いていると、「じゃあまた夢の続きを見るとするか」という気になる。

このオレンジ色のカバーの「寅さんのことば 風の吹くまま 気の向くまま」が出版された時、友人でもある著者の佐藤利明さんから、上野の焼肉屋でご本を受け取った時、「ほら見て、左上の寅さんの絵がパラパラ漫画になってるんだよ」と嬉しそうに教えてくれたのを思いだす。ぜひ皆さんも手に取って見てみてください。

てなことで。

23-May-14 Text by nobuyasu

4808309823 寅さんのことば  風の吹くまま 気の向くまま
佐藤利明
東京新聞出版局  2014-01-20

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2012-05-25

「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」と映画「力道山」

410330071X 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか
増田 俊也
新潮社 2011-09-30

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増田俊也著「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」は、格闘技ファンはMust Readの面白いノンフィクションである。上下2段、700ページもある大著であるため、読み終わるのに5日かかったが、本を読むのも体力がいるというのを実感した。年をとると「さあ読むぞ」と気合いを入れるまでが大変なのだ(笑)

だが、面白かったなぁ。戦前の高専柔道に代表される、日本柔術がどれくらいレベルの高い格闘技だったかがよくわかる。戦後それらがなし崩し的に消滅させられ「講道館・柔道」だけが残った。その時代に翻弄された男たち。

「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」と讃えられた日本柔道史上〈最強〉の柔道家、木村政彦がなぜ、「昭和の巌流島」と呼ばれた力道山戦で、みじめに敗れたのか?これは格闘技好きの男にはたまらない本である。これを読まずして今後格闘技は語っちゃいけないぜ、とそんな気にさせる名著だった。

個人的には、木村政彦がエリオ・グレイシーとブラジルで戦ったくだりが面白かった。リオデジャネイロのマラカナン・スタジアムでの死闘。エリオは腕を折られてもギブアップしなかった。その後、ブラジルでは腕がらみのことを「キムラ」と呼ぶようになったという。

後年、エリオの息子、ヒクソン・グレイシーが来日し、日本のプロレスラーと戦った時、ぼくはヒクソンのたたずまいを見て「日本人が忘れてしまった武士道のスピリットを持つ尊敬すべき男じゃないか」と感じていたが、その理由がわかった。木村がブラジルでそれを置いてきたからだ。柔術=Jujutsuは、日本人が残さねばならなかった大事な大事な格闘の技法であった。それを消滅させてしまった戦後日本の柔道界。日本人の一人として、これはとても惜しいと思う。

そして、映画「力道山」。映画として日本でも韓国でもあまり評判がいいとはいえない作品(弟子の大木金太郎は、自伝で「我が師、力道山先生をあんなに悪く描きやがって」と憤慨していた)であるが、この「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」を読んだあとに観ると、これはこれでなかなか面白い作品であった。

この映画で力道山を演じるのは、韓国のソル・ギョング。劇中ほとんどのセリフは日本語でなされ、在日韓国人としての力道山にスポットをあてた作品である。なので、痛快な出世物語でもなく、暗い印象を与えるため、評判がもう一つなんだろうと思う。それから、事実に基づいてないことも多いようだが、ドラマ作りの上での脚色は仕方ないところだろう。

劇中、力道山対木村政彦戦も登場する。現在もYouTubeなどで見られるモノクロ映像の戦いを再現していて、それをカラーで見れるのが面白かった。

木村政彦に扮するのは、船木誠勝。2000年にヒクソン・グレイシーと戦い、チョークスリーパーで失神負けし(一度)引退した男だ。なにか因縁を感じてしまうキャスティングである。

この映画には、他にもプロレスラーが登場する。ハロルド坂田を武藤敬司、東富士を橋本真也(これが遺作となってしまった)、豊登をモハメド・ヨネ、遠藤幸吉を秋山準が演じる。みんなへったくそだが、なぜか愛嬌を感じるのだ(笑)。

妻の綾(中谷美紀)との夫婦愛も描くが、当時のプロレス興業の裏面も描いてあり、これはこれでいいと思う。木村を悪く描いてないのもいい。

「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」を読んで、映画「力道山」を観ると、その時代が立体的に見えてくる。そんな映画の楽しみ方もあるのである。お試しあれ。

25-May-12-Fri by nobu

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ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2006-11-22

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ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2006-08-04

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2011-12-07

「ジェローム・ロビンスが死んだ ー なぜ彼は密告者になったのか?」津野海太郎 著

ジェローム・ロビンスが死んだ (小学館文庫)
ジェローム・ロビンスが死んだ (小学館文庫)

津野海太郎著「ジェローム・ロビンスが死んだ ー なぜ彼は密告者になったのか?」文庫版を読了。

前回このブログで書いた記事が「談志が死んだ」で、今回「ジェローム・ロビンスが死んだ」の感想を書いている。なんか芸事を愛した立川談志師匠の洒落のようだな、と心の中で笑ってる自分がいる。

ジェローム・ロビンスといってわかる人は少ないのだろう。事実、文庫本あとがきでも著者の津野海太郎氏は「ジェローム・ロビンスと聞いてピンとくる人の数は、今の日本では極めて少なかったというのは自分の誤算だった」と書いている。それを読んで、ぼくも少しばかりわかる気がした。けど、談志師匠は読んでいたかもね、ミュージカルが大好きだったから(笑)

我々の世代には、ジェローム・ロビンスと云えば、やっぱり映画「ウエスト・サイド物語」である。津野海氏は、舞台版「踊る大紐育 /On the Town」の振付師としてのロビンスから入っている。それはこの本が、ジェローム・ロビンスの死(1998年夏)を朝日新聞で知った著者が、ネットで調べるうち、彼が「赤狩りで仲間を売った男」だった事実を発見し、その検証を行なっていくからである(「ウエスト・サイド物語」が作られたのは、その事件の後のことだから)。

これは、ただの伝記だとか、評伝ではない。なぜロビンスが仲間を売ったのか?を、まるでミステリーのようにひも解いて行く。読み進めると、赤狩り、50年代のアメリカの歴史と空気感、ブロードウェイやハリウッド映画の歴史がわかっていく構成になっており、そのディープな内容は、さすがに平成20年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞作品だけのことはある。

登場人物は多彩である。レナード・バーンスタイン、ベティ・カムデン、アドルフ・グリーン、エリア・カザン、ラリー・パークス、ジーン・ケリー、モンゴメリー・クリフト、ダニー・ケイ、アーサー・ミラー等々。←これらの名前がわかる人は、読んで絶対に楽しめるはずだ。

結論は読んでのお楽しみだが、キーワードはいくつかあり、それは「ユダヤ」「共産党」「ゲイ」である。ぼくはロビンスがゲイであることは知らなかった。今でこそ舞台人の中でゲイは市民権を得てるかも知れないが(少なくとも50年前とは違う)、彼が隠さなければならなかった弱みはそういう部分(そうしないと社会的に抹殺される)にもあったのだ。

映画版「踊る大紐育」のあの明るく楽しいミュージカル・シーンを撮影している最中に、議会では「赤狩り」の非米活動委員会が開かれていた。naming namesと呼ばれた(踏み絵のような)氏名公表を余儀なくされた人々はその後、その裏切り行為の十字架を背負い生き、キャリアを抹殺された人々はその後名誉を回復できない者がほとんどだった。
ウディ・アレンの映画「ザ・フロント」や、ロバート・デ・ニーロの「真実の瞬間」でも描かれた、赤狩りの実態。この本でも解説の川本三郎氏が書いているが、「 ロビンスは裏切り者というより犠牲者である。批判すべきはあくまで権力の側であって密告を強いられた人間ではない」という主張は的を得ている。

ミュージカルのファンとして、この本に教わることも多々あった。例えば、映画「踊る大紐育」のソング"New York, New York"では、冒頭の歌詞がヘイズ・コードにより変更されていた。本来 "It's a helluva town" が、"It's a wonderful town" に。ぼくは、フランク・シナトラがライヴで "It's a helluva town" と歌ってるのを聴いてわざと歌詞を変えて歌ってるのだとばかり思っていたが、これが本来の歌詞だったんですな。知らなかった。ルイス・B・メイヤーがジーン・ケリーを嫌っていたこと、あと、モンゴメリー・クリフトもゲイだったなんてことも知らなかった(笑)。

ミュージカル・ファン、映画ファンにはおすすめの本です(なんせ装幀が和田誠氏ですから)。なぜロビンスが、公聴会以後のミュージカル(「ウエスト・サイド物語」「屋根の上のバイオリン弾き」)をマイノリティのドラマにしたのかがわかったような気がした。生涯密告について語らなかったロビンスは、自分の作品の中で決着をつけようとしたのかも知れないから。

「ジェローム・ロビンスが死んだ ー なぜ彼は密告者になったのか?」津野海太郎 著

07-Dec-11-Wed by nobu

ジェローム・ロビンスが死んだ (小学館文庫) ジェローム・ロビンスが死んだ (小学館文庫)
津野 海太郎

小学館  2011-11-08
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2011-11-03

「1985年のクラッシュ・ギャルズ」柳澤健 著

1985年のクラッシュ・ギャルズ
1985年のクラッシュ・ギャルズ

柳澤健 著「1985年のクラッシュ・ギャルズ」読了。プロレス・ファンであるぼくには面白かった。クラッシュの過去と現在まで25年間のノンフィクション。

柳澤健は名著「1976年のアントニオ猪木」があるので、信用していたが、今回はライオネス飛鳥の追っかけから、雑誌編集者になった伊藤雅奈子氏の観客側の視点も入れたことにより、より多角的なクラッシュ像を描けている。

青い水着のライオネス飛鳥、赤い水着の長与千種。二人は全日本女子プロレスの全盛期を引っ張った大スターだ。天賦の才能に恵まれ、エリート街道を歩いたライオネス飛鳥。プロレスは弱いが雑草の如く這い上がった長与千種。二人がタッグを組み、栄光の頂点にいた時、彼女たちは苦しみもがいていた。長与千種の徹底的に研究したプロレスの「見せ方」の前に、才能に恵まれた飛鳥は脇役となりその不満分子は爆発してしまう。その千種の天才的な才能と努力を理解するのは、飛鳥が後年ヒールに転身してからだった。

中性的な魅力を自分で感じ取っていた千種は、その小さな身体で空手を駆使し、巨漢のダンプ松本にいたぶられ、流血させられる。ついには大阪城ホールでダンプに髪をバリカンで切られる。会場を埋め尽くした少女たちの悲鳴。少女たちもまた違う意味で「痛み」を抱え、だから千種に熱狂していたのだ。

1985年当時は、まだプロレスは八百長か否かという論議が盛んに行われていた。現在では、プロットがあるということは常識となっているが、当時はそんなことは誰も知らない。だから純粋にファンは「ダマされて」いた。だから余計に興奮出来たのである。

当時作家の開口健氏は「プロレスは八百長かも知れぬ。だがその中に一瞬本物(の闘い)が見える。それが面白いのだ」みたいなことを雑誌に書いていて、ぼくはなるほどなと思った。後年、武蔵小山の飲み屋のカウンターで、LLPWのイーグル沢井、立野紀世さんと遭遇した時「あたしたちは、(腕を)折ろうと思えば折れるんだよ。けどそこをギリギリのところでやってんのさ」と話しててプロレスラーのスゴさを知った。

80年代には、まだそんなレスラーたちの強さを垣間見る試合が多々あったが、90年代にはアドリブの少ない脚本通りに行うプロレスが主流となり、カムバックした千種、飛鳥を悩ませることになる。そしてプロレスというジャンル自体も衰退していったのだ。

これはかつてのクラッシュ・ファンのみならず、プロレスを愛した人には興味深い本だと思う。こういうのを読むと、ぼくらはあまりに面白くて過激なプロレスを見過ぎていたのかなと思う。だから今のプロレスや格闘技に興奮出来なくなってしまっているのではないかと感じるのである。
けど、(ファンとして)いい時代を生きたよな、としみじみ思う。その時代を知ってるから余計にこの本が面白かったわけで、同時代を生きる醍醐味はこういうところにあるのだということを痛感するのである。

1985年のクラッシュ・ギャルズ 柳沢健 著

03-Nov-11-Thu by nobu

4163744908 1985年のクラッシュ・ギャルズ
柳澤 健
文藝春秋  2011-09-13

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完本 1976年のアントニオ猪木 (文春文庫) 完本 1976年のアントニオ猪木 (文春文庫)
柳澤 健

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木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか
増田 俊也

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2011-05-20

「自伝 大木金太郎 伝説のパッチギ王」 大木金太郎 太刀川正樹訳

自伝大木金太郎 伝説のパッチギ王 (講談社プラスアルファ文庫)
自伝大木金太郎 伝説のパッチギ王 (講談社プラスアルファ文庫)

前回日本へ行った時に買って来た本のうちの一冊がコレ。「自伝 大木金太郎 伝説のパッチギ王」である。
週間文春の書評で、文庫になっていたのを知り、買い求めたのだった。

大木金太郎というと、40〜50代以上のプロレス・ファンにはよく名の知れたレスラーである。得意技は「頭突き」(韓国語でパッチギ)。ぼくのように、少年心にその熱き戦いに興奮した人は多いと思う。

2006年にキム・イル〈大木金太郎〉は亡くなった。晩年の彼は、生涯で5万発以上も打ち続けた「頭突き」の後遺症に悩まされていたという。
これは生前、自身が韓国の新聞に連載した自叙伝の日本語訳である。

シルム(韓国相撲)のチャンピオンだったキム・イルは、漁船に隠れ玄界灘を越え、密航して日本へやってきた。目的は、同じ韓国人で日本でプロレスのスーパースターになった力道山に弟子入りするため。だが、あえなく警察に捕まり監獄へ入れられる。一計を案じたキムは、力道山先生へ手紙を書く。運良くその手紙を読んだ力道山が身元引受人となり、晴れてキムは日本プロレスの新弟子となる。

デビュー前にリングネームを大木金太郎とつけられる。力道山から頭を鍛えるように厳命され、訓練にはげむが、元々あまり堅くなかった頭を無理して鍛えたため、後に後遺症に苦しむことになる。だが、その甲斐あって、彼の「原爆頭突き」は、終生彼のトレードマークとなった。

1963年、アメリカで初のタイトルを奪取したにも関わらず、力道山先生がヤクザに刺されて死ぬという悲劇が襲う。
その後WWAチャンピオン、インターナショナル・ヘビー級、アジア・ヘビー、アジア・タッグのチャンピオンとして活躍。
日本プロレス崩壊後、アントニオ猪木やジャイアント馬場の団体へ出場しながら、韓国と日本を行き来して両国のプロレス人気に貢献した。

引退式は、1995年の東京ドーム。(「週プロ」のターザン山本が主催した)プロレス「夢の架け橋」でのこと。車椅子を押してくれたのは、かつての宿敵・鉄人ルー・テーズだった。晩年の彼は、韓国の病院で静かに余生を過ごしたとのこと。

一読して、力道山死後の「日本プロレス」崩壊のゴタゴタなどはサラリと触れている程度で、その頃の活躍を一番見ていたぼくのようなファンには物足りなさが残る。

だが、生前の力道山の「裏」の姿などが書かれている点は興味深いものだった。力道山はヤクザとは関わりを持たないようにしていたというが、銀座を縄張りにしていた同じ韓国人の組織・東声会とは切れない仲となる。その東声会と兄弟盃を交わした山口組とも興業面で世話になる。こうしてヤクザとプロレス界は接点を持ったのだ。

その人気絶頂時、ヤクザとのささいなトラブルで、刺されてしまった力道山。場所は赤坂のニュー・ラテン・クォーター。そのシマは住吉連合のもの。そして刺したヤクザも住吉連合だったというのは、大木のみならず何か裏があったのかと勘ぐってしまう。

大木は、韓国で作られた映画「力道山」に怒り心頭であった。「英雄である先生を、同じ韓国人監督がひどい男として描いている」からだ。ぼくはまだ未見だが、そんなにヒドイなら見てみたくなるね(笑)

力道山がその出自を終生隠したように、大木もぼくが小学生の頃は、日本人だと思っていた。それが日本プロレス崩壊直前くらいから、リングアナが「キム・イル 大木金太郎!」とコールするようになり、韓国人なんだということを知った。

大木の試合で思い出すのは、ボボ・ブラジルとの頭突き合戦。吉村道明とのアジア・タッグ選手権(いつも吉村の回転エビ固めで決まる・笑)。ブルート・バーナードの耳そぎ事件……。
その中でも個人的に一番覚えているのは、福山市体育館で行われた荒鷲・坂口征二とのシングルマッチ。「頭突き6発で沈める」と大木は云い、怒った坂口は(初めて)「本気」になった!試合は荒れてノー・コンテストとなったが、会場にいた高校生のぼくと友人たちはえらく興奮したのを覚えている。

久しぶりに「アントニオ猪木大全集」というDVDを出して、1975年、猪木VS大木の蔵前国技館でのシングルマッチを見た。大木の原爆頭突きで猪木は本当に「効いて」いるのが見てとれる。レフリーは豊登。セコンドに吉の里も来ている。10ヶ月間リングを離れていたというデメリットもあり、試合巧者の猪木がバックドロップで大木からスリーカウントをとる。今見てもスリリングな名勝負。

試合後、二人は抱き合って泣いた。「自伝」を読んだばかりのぼくも「つい、涙が出ました」。
力道山の弟子の時代から兄弟のようなつきあいをし、アジア・タッグを何度も防衛した男同士が戦わねばならなかったという宿命。
レスラー本としても良い本だった。

「自伝 大木金太郎 伝説のパッチギ王」

4062814153 自伝大木金太郎 伝説のパッチギ王 (講談社プラスアルファ文庫)
大木 金太郎 太刀川 正樹
講談社  2011-02-22

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B0007N38EU アントニオ猪木全集3 大物日本人対決 [DVD]
東北新社  2005-03-25

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(猪木VS大木戦収録)

B0035HGTSC 壮絶!喧嘩マッチ烈伝 DVD-BOX
ビデオ・パック・ニッポン  2010-03-15

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(大木VS坂口戦収録)

2011-01-11

おみやげでもらった 大人のTシャツランド/ブルース・リー & AKB48 オフィシャル・カレンダーBOX 2011 「PRESENT〜神様からの贈り物〜」

大人のTシャツランド/ブルース・リー(ロマンアルバム) 大人のTシャツランド/ブルース・リー(ロマンアルバム)
COMICリュウ編集部編

徳間書店  2010-07-02
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年初、我が家に日本からお客さんがあって、おみやげでいただいたのがコレ。「大人のTシャツランド/ブルース・リー」である。

中身は、リーのTシャツとブックレット。Tシャツは、黒地にリーの似顔絵と”Don't think, Feeeel”ががプリントされていてなかなかカッコいい。

ブックレットを見ると、過去のリー主演映画の解説や、ブルース・リーが残した『ドラゴンへの道』の直筆メモなどが見れて楽しい作りになっている。

これはぼくにはとっても嬉しい<お年玉>だった(スマイル)。

AKB48 オフィシャルカレンダーBOX 2011 「PRESENT~神様からの贈り物~」 AKB48 オフィシャルカレンダーBOX 2011 「PRESENT~神様からの贈り物~」

小学館  2010-12-17
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そして、中一の娘にとおみやげで頂いたのがこの『AKB48 オフィシャルカレンダーBOX 2011 「PRESENT 〜 神様からの贈り物〜』である。

中を見て驚いたのは、付録がいっぱいあること。カレンダーに、メンバーの写真入りのクリアファイルが12枚。3Dカードとシールも入ってる。これは楽しい(笑)

年末(2010)に、娘に頼まれてNHKで放送された「MJ AKB48リクエスト・スペシャル」という番組を録画しながら見たので、やれ選抜メンバーだの、16人ヴァージョンやらの<専門用語>も覚えたばかりだったので、見せてもらってちと欲しくなった。

「あっちゃんのクリアファイルくれよ」と頼んだが、あっさり却下(笑)

これは香港にも出来た、AKB48 OFFICIAL SHOPへ行くしかないかな?(→ココ )と思ったお父さんであったとさ(笑)

11-Jan-11-Tue by nobu

2010-12-08

「黒澤明VSハリウッド 『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて」 田草川弘著

黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて

毎年、12月8日の真珠湾攻撃の日には映画『トラ・トラ・トラ!』 "Tora! Tora! Tora!"のことを書いてきたが、今年は本の紹介である。

この田草川弘氏著「黒澤明VSハリウッド 『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて」(文藝春秋)は、2006年に出版され、第28回講談社ノンフィクション賞、第33回大佛次郎賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞、第57回芸術選奨文部科学大臣賞、及び映画本大賞2006(キネマ旬報)で、ベストワンに選出された傑作ノンフィクションである。

映画の本も数々あれど、この「黒澤明VSハリウッド」ほど面白く興味深い映画関係のノンフィクションはないと思う。1968年12月に起きた映画界の大事件。20世紀フォックス社による『トラ・トラ・トラ!』黒澤明監督解任事件。この本は、その真相を探るべく、当時この映画の記者会見の通訳をした経験を持つ著者の渾身作。今年文庫本となり、また発売されたのでここに紹介しよう。

日本が誇る”巨匠”黒澤明監督がなぜ解任されなければならなかったのか?このことは、長年「謎」とされてきた。

黒澤明が、製作記者会見で「これはドキュメンタリーでもスペクタクルでもない。トラジェティ(悲劇)なんだ」と話した通り、皮肉にもこの映画製作過程が「悲劇」となってしまった。この「黒澤明VSハリウッド」で、著者がアメリカ取材も含め、新たに発見した数々の記録によりつまびらかにされる「真相」を読み進めるうちに、かつて真珠湾攻撃が歴史上「騙し討ち」と云われ、それが日米両国の誤解が生んだ惨劇だったように、この監督解任事件も「誤解」の生んだ産物("Lack of communication")だったということがよくわかる。

その齟齬を生んだ最大の原因を作ったのは、やはり黒澤プロダクションの通訳であった青柳哲郎ゼネラル・プロデューサーだったろう。ぼくの業界にも「英語が出来る」=「仕事が出来る」と勘違いしている人が大勢いるが、青柳プロデューサーは明らかに役不足、つまりミス・キャストであったと思う。

1967年当時、日本企業でアメリカの大企業と丁々発止しながら、大プロジェクトを成し遂げていける人材がどの程度いたのかはわからない。だが、失礼ながら、黒澤プロは当時まだ会社として出来立てのほやほやの、まだ中小企業とも云えない個人商店のようなものだったと想像する。

契約書一つをみても、アメリカの多国籍企業である20世紀フォックス社は、英米法に則り、法的にクールに物事を進めているのがわかる。
黒澤プロ側は、(弁護士資格ももたない、契約に関してもプロとは云えない)青柳プロデューサーに丸なげ状態では、勝負あった、と云わざるを得ない。

昔、白井佳男氏の「キネマ旬報」のルポが掲載された「黒澤明集成3」を読んだ時には、「青柳プロデューサーが全て悪い」と断じていたが、その気持ちもよくわかる。

20世紀フォックス社からの送金方法一つとっても、銀行送金ではなく、小切手を郵送するという手段をとり、その後莫大な金の使途が不明になったということだけでも、青柳プロデューサーが「不正」を行っていたのではないか?と疑義をもたせるのに充分だからだ。

本来なら、身体を張ってでも守らねばならない日本の「至宝」と云ってもいい黒澤明という偉大な「才能」を、金儲けの手段にした取り巻きの罪は重いと思う。
当時、黒澤明が映画作りに没頭出来る環境ではなかった、という不幸な事実がこの本を読んでいてよくわかった。

20世紀フォックス社長のダリル・F・ザナックという大物と黒澤明の交流。そして、黒澤を尊敬してくれていたエルモ・ウィリアムス。映画作りの職人同士(ダリルは、ジョン・フォードと共に『荒野の決闘』などを製作し、エルモは『真昼の決闘』でアカデミー編集賞を受賞している)では理解しあえていた関係。黒澤明がもし多少なりとも英語が出来たら、精神的に疲弊することもなく、監督も解任されず、映画史上に残る傑作を作っていたかも知れない。そう思うと残念である。

完成した映画『トラ・トラ・トラ!』は、黒澤明自身の強い要望により、名前が一切クレジットされていない。だが、その脚本も含め、その多くは黒澤の手によるものである。黒澤明が監督していれば、もっとスゴい映画になっただろうと想像はするが、現実はそうはならなかった。だが、この映画によって、中学生のぼくは、「真珠湾攻撃は<奇襲>ではなかった」ということを初めて知った。その事実を世に知らしめただけでもこの(偉大になりそこねた)映画『トラ・トラ・トラ!』の価値はあるのだろう。

「黒澤明VSハリウッド 『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて」

【関連記事】
『トラ・トラ・トラ!』製作40周年記念完全版 Blu-ray

(余談だが、今ちょうど日付が変わった12月8日の12時をはさんで、CABLE TVのSTAR MOVIESでは『パール・ハーバー』をやってる。なんともはや)

08-Dec-10-Wed by nobu

2010-10-30

「植木等ショー!クレージーTV大全」 佐藤利明・編著

植木等ショー!クレージーTV大全

先日、ぼくが日本へ一時帰国したのは仕事もあったのだが、2010年11月24日(日)に東京會館で行なわれた「小林桂樹さんお別れの会」へ出席する目的もあった。
午後4時から行なわれたその会には、小林桂樹さんゆかりの俳優・監督さんたちが大勢集まり、生前の親交の幅広さと共にお人柄が偲ばれる、とても素敵な会であった。

その会の世話人の一人でもあった 娯楽映画研究家・佐藤利明さんと会の後、寿司屋で一杯やった。その時に頂いたのが、10月23日に発売されたばかりの新刊本「植木等ショー! クレージーTV大全」(佐藤利明・編著)である。

香港へ戻り、やっと時間がとれ一読して思った。「佐藤さん、またやってくれたな」と。
佐藤利明氏の関わった書物は、雑誌の記事でも、パンフレットの原稿でも、やり過ぎじゃない?と思うほど、微にいり細にいり詳しく書かれている。つまり「濃い」のだ。

寅さんの本も、若大将の本も、そしてクレージー本の名著「クレージー映画大全―無責任グラフィティ」(フィルムアート社)もそうであったように、今回も貴重な写真満載、豊富なインタビュー、それに、これでもか!の凄いデータベース。これ一冊で植木等ならびにクレージー・キャッツのTV時代の歴史が全てわかる見事な研究本になっている。

髙田文夫氏の特別寄稿で始まるこの本は、幻と云われたTV番組「植木等ショー」からのスティル写真の数々、クレージー・ギャラリーに続き、以下のような構成になっている。

第一章 植木等ショー
「植木等ショー」全エピソード解説
●インタビュー=鴨下信一、砂田実、園まり
●プレイバックインタビュー=植木等、小松政夫

第二章 クレージーTV全史
「おとなの漫画」から「スーダラ90分」まで、クレージー・キャッツとTVバラエティの黄金時代
●インタビュー=いとうせいこう
●寄稿=加藤義彦、鈴木啓之、河﨑実

第三章 復活・植木等
「スーダラ伝説」と90年代の植木等復活の舞台裏
●インタビュー=砂田実、溝渕新一郎、斎藤薫、泉麻人
●座談会=草野浩二、芝池一郎、堀越勝広

●クレージーTV完全データベース(メンバーが単独で出演した番組も全て網羅している)

これを読むと、2010年11月3日に発売されるDVD「植木等 スーダラ BOX」を早く見たくなる。幻と云われた1967年の「植木等ショー」はじめ貴重な映像が収録されているからだ。この本を片手にDVDを見るのはコアなファンには至福の時となろう。

植木等及びクレージー・キャッツのTVバラエティ時代の貴重な(濃い)研究本。マニアは必須、そうでない人もぜひ!

30-Oct-10-Sat by nobu

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佐藤 利明
洋泉社  2010-10-23

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ポニーキャニオン  2010-11-03

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クレージー映画大全―無責任グラフィティ
佐藤 利明
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2010-07-16

「ポートレイト・イン・ジャズ」 Portrait in Jazz 和田誠・村上春樹 著 (爵士群像) 

香港のJUSCOの中にあるヴィレッジ・バンガードへ行った。そこで何気に本を眺めていたら、見覚えのあるイラストが表紙の本に出会った。大好きな和田誠さんの絵だからすぐにわかった。
そうこれは「ポートレイト・イン・ジャズ2」の中国語版である。

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タイトルからわかる通り、ジャズの本である。だがそんじょそこらの本とは違う。
ぼくが大好きで、尊敬してやまない和田誠さんのイラスト。文章は、あの!村上春樹さんである。

もともと和田誠さんのジャズ・ミュージシャンのイラストがあり、それを個展で見た村上春樹さんがエッセイを書くことになったというこの本。
読んで楽しい、眺めて楽しいとはこういう本のことをいう。

ぼくがジャズを好きになったのも、和田誠さんの書かれた映画とジャズの文章をいっぱい読んだからに他ならない。その尊敬する和田誠さんが、村上春樹さんを評して「ジャズへの想いは、ぼくより熱く深い」というのだから、どれほどスゴい方なんであろうか。

村上春樹さんのこのエッセイを読むと、本当に本当に本当にジャズが好きなんだなぁというのがよくわかる。人間、誰しも好きなことを書くと楽しい気分になる。その楽しさや喜びが文章から伝わって来る。で、それを読むとこっちも楽しくなる。

この中国語版出版によって、ジャズの楽しさを、ジャズがもっと好きになる中国人が増えたらいいのにな、と思う。ぼくがジャズを好きになったようにね。

この「ポートレイト・イン・ジャズ」は、1、2 がある。

4103534079 ポートレイト・イン・ジャズ
和田 誠 村上 春樹
新潮社  1997-12

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「ポートレイト・イン・ジャズ2」は日本のオリジナル版は、表紙が違う。
中国語版はクリフォード・ブラウンだが、日本版はホレス・シルヴァーである。

4103534125 ポートレイト・イン・ジャズ〈2〉
和田 誠 村上 春樹
新潮社  2001-04

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こんな「粋な本」めったにありません。Highly Recommended!

(中国語版は台湾の時報文化出版企業有限公司から発売)

16-Jul-10-Fri by nobu

(CD もある↓)

B00005681R ポートレイト・イン・ジャズ 和田誠・村上春樹セレクション
マイルス・デイビス オムニバス ビリー・ホリデイ
ソニーレコード  1998-06-20

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