舞台版 「ヒッチコック × トリュフォー」 "HITCH - When Hitchcock Faces Truffaut"
とても面白い舞台を観て来たので紹介しよう。題名は「ヒッチコック × トリュフォー」"HITCH - When Hitchcock Faces Truffaut"という。そう、あの映画ファンなら誰でも知ってる同名の本の製作過程を元ネタにした舞台なのだ。
毎年香港では、"LE FRENCH MAY/法國五月"という芸術祭をやっていて、数々のコンサート、舞台、映画等が上演されている。今年は20周年ということもあり、例年にも増して賑やかなものになっているようだ。
そんな折、金鐘(Admiralty)のMTRを歩いてて、あるポスターに目が止まった。それがこの「ヒッチコック×トリュフォー」(希治閣 × 杜魯福)だったのである。
フランス語の舞台であるが、英語字幕があるという。なので、2012年5月13日(日)会場の香港文化中心劇場へ出向いてみた。当日券も若干あったので、HK$320(約3,300円)を払って席に着く。場内はほぼ満員。香港人よりも西洋人の比率が高い。
舞台上は、テーブルと椅子が3脚。電話と棚があり、窓が見えるというシンプルなセット。
やがて劇が始まる。椅子に座ったヒッチコックのシルエットが映るが、こめかみから血を流している…。舞台奥から、トリュフォーに語りかける声。「ヒッチコックが殺された。昨日会った時の状況を話してくれ」。
場面は前日となる。トリュフォーが本を書くためにテープレコーダーを持ってインタビューに来る。先にヒッチコック夫人のアルマに会い、そして(憧れの)ヒッチコックと会う若き映画作家フランソワ・トリュフォー。緊張して挨拶するが、やがて徐々に打ち解けて行く。「鳥」を隣の部屋で編集中だと云うヒッチコック。プレゼントされたフレンチ・ワインを飲み、トリュフォーに「突然炎のごとく」を観たと告げる。ジャンヌ・モローの、モローの発音を妻に指摘されたり、「モローは二人の男(ジュールとジム)と寝たのか?」とか聞いてトリュフォーを脱力させたりする(笑)
そう、これはあの本に書かれているヒッチコックの創作の秘密(映画術)のインタビューを再現しているわけではなく、トリュフォーとヒッチコックの会話と、妻アルマの丁々発止のやりとりで楽しませる舞台なのだ。
「『レベッカ』は英国人監督の英国人脚本家による英国人キャストのハリウッド映画だ!」とか、ヒッチコックのクール・ビューティ好きの話など。それに、トリュフォーのヌーヴェルヴァーグに関する話も。セリフの中に随所に盛り込まれる映画ファンならわかる数々のエピソード。
ユニバーサル映画から電話があり、「鳥」のオープニング場面が長過ぎるのでカットしろと云われるヒッチコック。まだ編集中のラッシュを見せてもらったばかりのトリュフォーは、「あなたはアーティストなんだから絶対切ってはならない」と興奮して伝えるが、ヒッチコックはこう答える、「たかが映画じゃないか」。
約90分ほどの、一幕ものの舞台は、登場人物3人と、舞台奥から聞こえる声だけで見事に成立している。笑うところも随所にあり、所々流れてくる音楽はヒッチコック映画のものだ。
キャストが本当にいい。ヒッチコックもトリュフォーもそっくりなんである(笑)。皮肉屋のヒッチコックと神経質そうなトリュフォー。
現在、アンソニー・ホプキンスがヒッチコックを演じる映画「Hitchcock」が製作中だが、こっちもフランスで映画にならないかな?コメディ・タッチだし、面白くなると思うけど。
フランスでは評判をとった(らしい)この舞台。日本でも上演したら映画通にウケると思う。もしそうなったら、字幕はぜひ山田宏一氏に頼んでほしいね(笑)。
てなことで。
"HITCH"
A Play by Alain Riou and Stephane Boulan
Direction: Sebastien Grall
Cast
Alfred Hitchcock: Joe Sheridan
François Truffaut: Mathieu Bisson
Alma Hitchcock: Patty Hannock
May 13, 2013 5:00PM
Hong Kong Cultural Centre, Studio Theatre
(YouTubeに予告編?かな、動画があった)
17-May-12-Thu by nobu
定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー フランソワ トリュフォー アルフレッド ヒッチコック 山田 宏一 晶文社 1990-12-01 by G-Tools |