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2018年4月

2018-04-27

『レディ・プレイヤー・ワン』”READY PLAYER ONE” スティーヴン・スピルバーグが開けた新たな時代の門

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先週末、スティーヴン・スピルバーグ監督の新作映画『レディ・プレイヤー・ワン』”Ready Player One” を楽しんできた。 何の予備知識もナシで観に行ったので、ものすごく面白く観れた。予備知識を持たないで映画を観るのは、現代においては困難かもしれないが、たまにはこういう見方をしてみるといいと思う。 だけど、ここではちとネタバレもあります(意地悪だな、オレ・笑)

2045年、オハイオ州コロンバス、人々は環境汚染や気候変動、及び政府の機能不全によりすさんだ生活を余儀なくされていた。彼らが日常の憂さを晴らすべく、逃げ込んでいたのは、VRの世界〈オアシス〉だった。オアシスの世界では、創始者であるジェームズ・ハリデー(マーク・ライランス)が、死後遺言により、オアシス内にある3個の鍵を見つけ、イースターエッグを手に入れたものに、オアシスの所有権と5000億ドルの賞金を与えるというゲームが繰り広げられていた。だが、ハリデーの死後5年経っても、未だに鍵は見つかっていなかった。 スラムに住む若者ウェイド(タイ・シェリダン)も、日々鍵を探しているが、この鍵を探しに世界的な大企業IOI社もやっきになっていた。やがてウェイドは世界で初めて第一関門を突破するが、ウェイドもアバター仲間たちにも、IOI社からの危険がせまってくるのだった。

まあともかく〈オアシス〉のVRの世界が凄いこと。ぼくは中環のIFC Cinemaの2D版を観たのだが、ここはVibration Seatsといって、音響に応じて椅子が振動する。それだけで、冒頭のレースシーンも大迫力だった。ここでは、主人公のアバター、パーシバルは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンに乗ってるし、ヒロインのアルテミス(オリヴィア・クック)は、『アキラ』の金田のバイクに乗って疾走する。バットマン・カーは、往年のモデルなのも嬉しい。

劇中ぼくが一番笑ったのは、『シャイニング』のくだり。この映画を観てないエイチ(リナ・ウェイス)は、開けてはいけないドアを開けたりして酷い目にあう。もうオアシス内の映画館へ入って行くと、あのホテルになってるとこなんてぞくぞくしたし、鍵の絵になってるタイプライターの言葉は、”All Work and No Play Makes Jack a Dull Boy”だし、双子の女の子、エレベータからの大量の血、斧でドアをぶち破られたり、と大笑いだった。それにあのホテルのボール・ルームでの昔の白黒写真が、鍵探しのヒントになってるのも面白いね。

『シャイニング』DVD レビュー:踊る大香港

音楽も70年代後半から80年代のもので、これもおっさん世代にはたまらない。途中『サタデー・ナイト・フィーヴァー』の”ステイン・アライヴ”がかかる。この映画も主人公がしがないペンキ屋の店員で、土曜の夜だけディスコでヒーローになるという話だった。なんか繋がりを感じるね。

まぁ日本人なら、後半「メカ・ゴジラ」の戦いのシーンは、大興奮だろう。アバターのダイトウ(森崎ウィン)が、三船敏郎にそっくりだな、と思っていたら、本名がトシローというのだから笑わせる。彼が日本語で叫ぶ「おれはガンダムで行く!」のセリフは、思わず拍手をしてしまったよ(笑)

土曜日の夕方、満員の劇場で、いたるところで笑い声が起こる。それも、ゲームおたくは、昔のゲームの「ああ、あそこ!」って感じで、映画おたく、アニメおたく、ヒーローおたく、怪獣おたくもそれぞれのツボで笑い声が出る。 昔、息子が大学行ってる時、生意気にも「お父さん、おたくおたくって言うけど、おたくがマジョリティを持てば、それがメジャーになるんだよ」と言った。この映画を観て、もうそんな時代になったんだな、と痛感した。もうおたくはメジャーで、おたくじゃない人間がマイナーの時代なのだ。スティーヴン・スピルバーグは、その時代の門を開けたのである。

Ready Player One (2017) Directed by Steven Spielberg

26-Apr-18 by nobu

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2018-04-19

『ファントム・スレッド』“Phantom Thread” 美しい映像と音楽で魅せる、初老の男と若い女の心理ゲーム

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東京から香港へ戻るキャセイ機内で、『ファントム・スレッド』”Phantom Thread”を楽しんだ。
監督のポール・トーマス・アンダーソンと、主役のダニエル・デイ=ルイスが、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』以来のコンビを組み、しかもこれがデイ=ルイスの引退作というので、観る気マンマンだった。なので、機内で観れてありがたかった。

1950年代、ロンドン。ファッション・デザイナーとしての名声と、社交界から絶大な信頼を得ている天才仕立て屋レイノルズ・ウッドコック(ダニエル・デイ=ルイス)は、旅先のレストランで見かけたウェイトレス、アルマ(ヴィッキー・クリープス)に「食事に行かないか」と声をかける。彼女は応じ、デートをするが、その日の夜から彼は彼女の”完璧な身体”に着せるドレスを作り続ける。彼女は、そんな彼に不満を覚え、「これは何のゲームなの?」と問いただすのだが‥

ふつうの男なら、デートした彼女を「どうやって服を脱がそうか?」と考えるものだが、レイノルズは「どうやって服を着せようか?」と考える。そのへんが天才と凡才の違いかも知れないが(←ちゃうわー!)、ともかく彼は、四六時中ドレス作りの事で頭がいっぱい。だから、朝食の時に、トーストを切ったり、バターを塗ったり、ティーを入れる音が、創作の邪魔になると考えるのだ。
得てして独りよがりの男はこんな風に神経質なもの。気にくわないことがあると、その女は用済みとして、マネージャーも兼ねてる妹(レズリー・マンヴェル)に、家から追い出させる。今まではそれでよかった。だが、今回のオンナは違っていた。

独占欲の強い女は、その男を誰にも触らせたくない。話もさせたくない。いつも自分に頼ってもらい、いつも自分と一緒にいて欲しい。だから、どんな手段を使っても、その男を獲りに行く。
その男がどんな目にあおうが、他人がどんなに迷惑しようが、たとえ、その男が富も名声も失ったとしても、彼を自分のものにしたい。
そして彼女は思う。それが愛なのだ、と。

この映画の心理戦の面白さは、恋愛遍歴の多い人や、大変な結婚生活をしたことのある人にはわかると思う。
主人公の初老の男は、自分のものだと勘違いし、自分より下の立場にあると思ってる女に振り回される(←え?あっしの事でゴンザレスか?)。だからオンナをみくびってはいけない。母性で暖かく抱擁された後の男は弱い。ただの男の子になっちまうのだ(はぁ)。

まるで西洋の絵画のような映像(撮影もポール・トーマス・アンダーソン)。格調ある音楽(レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドが担当)。ファッション・デザイナーの話だけあって、その衣裳は一点一点素晴らしく美しい(アカデミー賞衣装デザイン賞受賞)。
アルマ役のヴィッキー・クリープスは、新人で、そんなに美人とは言わないが、まるで19世紀頃の西洋絵画のモデルになるような出で立ちである。
デイ=ルイスは、さすがの演技で初老の天才仕立屋になりきっている。この人、今回の映画のために高名な仕立屋に約1年修行に行き、実際に服を仕立てられるまでになったという。だから、引退しても食っていけるのか(笑)
その中で繰り広げられる、ある意味怖い物語。〈毒牙〉に引っかかる様は”身につまされる”映画だったとさ。

日本では、2018年5月26日公開。

Phantom Thread (2017)
Written, Directed and Produced by Paul Thomas Anderson

19-Apr-18 by nobu

追記:エンドクレジットで、先ごろ亡くなった『羊たちの沈黙』などの監督”ジョナサン・デミに捧げる“とあった。ポール・トーマス・アンダーソンとの友情からなのだろうか。

Ost: Phantom ThreadOst: Phantom Thread
Jonny Greenwood

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2018-04-11

『ゲティ家の身代金』“All The Money In The World” 巨額な身代金の誘拐事件と大富豪の晩年の孤独

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東京へ来るJAL機内で観たのが、リドリー・スコット監督の『ゲティ家の身代金』”All The Money In The World” 。1973年に実際に起こった、巨額な身代金を要求された誘拐事件を映画化した、重厚なサスペンス溢れる作品である。

17歳のポール(チャーリー・プラマー)は、ローマの街で娼婦を買おうとしていたところ、いきなり男たちに拉致られ、連れ去られる。
ポールは、石油で当て一代で〈世界一の大富豪〉となったジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)の孫。誘拐犯は母親(ミシェル・ウィリアムズ)に身代金1700万ドルを要求する。しかし、母親は既に離婚しゲティ家の人間ではないため、そんな金額が払えるはずもない。
ゲティは、マスコミを通じて身代金をビタ一文払わないと宣言する。そんなことをしたら、14人いる孫が、もしまた誘拐されたら自分は破産するというのだ。しかし、ゲティはその裏で、元CIAのチェイス(マーク・ウォルバーグ)を使い、犯人と交渉をするように命ずる。遅々として進まない犯人側との交渉。やがて、ポールの切り取られた耳が新聞社へ届く。

ゲティはケチで、強欲な守銭奴として描かれる。毎朝テレックスの紙テープを眺めては、金がたまっていく様子に一気一様する。彼は言う「本を書けと言われた時に、タイトルは『金持ちになる方法』で、と言われたが、そんなものはバカでもなれる。大変なのは、金持ちであり続けることだ」と、高価な美術品を収集することについては「物は変わらない。文句も言わない。いつまでも美しいままだ」と話す。そして「大金を得てから、自分は深淵を見た。人を破滅させたり、離婚したり、一番の深淵は、子供をダメにしたことだ」と。

なるほど、金持ちのボンボンがみんなダメになるのはそういうことなんだろう。お金の「苦労」をさせないからな。この映画でも、息子は見事にダメ人間ぶりを発揮している。
だが、お金がいくらあっても、原題の通り〈世界中の金〉を手に入れても、ゲティの晩年は孤独なものだった。果たしてそれは幸せなことと言えようか?この孤独な老人を見て、強欲の果てにあるものを見せられた気がする。

そのゲティを演じたのは、現在80歳のクリストファー・プラマー。(当時14歳の男の子にセクハラをした)ケヴィン・スペイシーの降板により、公開1ヶ月前のオファーで、これだけの役を演じ切ったのは見事なことだ。スペイシーの場合は、老けメイクで老人となっていたが、プラマーはそのままで老人役を演じられたのも結果的にリアリティがあり良かったのではないか。オファーから2ヶ月後には、オスカーの助演男優賞候補になってたんだからすごいね(しかも最年長のノミネートだった)。
笑ったのは、ダメ息子役の役者(アンドリュー・バカン)がとてもケヴィン・スペイシーに似てること。ここまでは再キャスティングできなかったようだ。

ポールの母親は、この事件では、犯人側とゲティ側双方と交渉しなければならなかった。それは沈痛なものだったろう。チェイスとの連携で、ゆっくりとだが、徐々に進展していく過程は見応えがある。実際の事件なので、結末をググるのは容易なことだが、何も知らないで観る方がサスペンスが効いて面白く観れると思いマス。

All The Money In The World (2017)
Directed by Ridley Scott

11-Apr-18 by nobu


2018-04-01

『ゲット・アウト』”Get Out” 2度観することをおすすめする、アカデミー脚本賞受賞ジョーダン・ピール驚きの作品

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本年度(2018年)アカデミー脚本賞受賞のジョーダン・ピール脚本・監督の『ゲット・アウト』”Get Out”である。ぼくは、この映画、昨年キャセイの機内映画で観ていたのだが、映画途中で着陸準備となり、ラストまで観れず、その後キャセイに乗ったらもう上映期間が終わっていたという、まさに”ゲットアウト”してしまった映画だったのだ。
なので香港のイースターホリデー休暇中にNowTVで遅ればせながら楽しんだのである。

コメディ・ホラーと聞いていたので、最初は『招かれざる客』“Guess, Who’s Coming to Dinner”(1967) みたいなものを想像していた。この映画は社会派のスタンリー・クレイマーが撮った名作コメディで、新聞のコラムに黒人差別はいけないとコラムを書いている父親(スタンリー・クレイマー)のもとに、結婚相手を紹介すると娘(キャロル・ベイカー)が連れてきたのが黒人男性(シドニー・ポワティエ)だったというもの。白人の父親は自分の育て方が間違っていたのか?と妻(キャサリン・ヘップバーン)と話し、あれこれ悩んだりする。そんな辛辣だが、ライト・コメディ要素の強い映画かと思ったのだが、実際は大分趣きが違っていた。

映画は、夜の住宅街で道に迷った黒人青年が、何者かに首を絞められ車のボンネットに入れられるところから始まる。
恋人のローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家に、週末挨拶に行くことになったカメラマンの黒人男性クリス(ダニエル・カルーヤ)は、朝迎えに来たローズに「俺が黒人だと言わなくていいの?」と聞くと、彼女はうちの家族は差別主義者じゃないから大丈夫だよ、と言われる。
車を走らせてる途中、鹿をはねてしまうというアクシデントがあったが、ローズの実家アーミテージ家に着くと父親のディーン(ブラッドリー・ウィットフォード)と母親のミシー(キャサリン・キーナー)は、暖かく迎えてくれた。父親は脳外科医、母親は催眠術を使った心理療法を行なっており、クリスに禁煙の治療を勧めてくれる。
家には黒人のメイド(ベティ・ガブリエル)、黒人の庭の管理人(マーカス・ヘンダーソン)がいたが、彼らは同じ黒人のクリスに対して素っ気ない。ディナーの席ではローズの弟のジェレミー(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)が柔術の話しで突っかかってくる。
次の日、アーミテージ家で開かれたパーティは、白人だらけの中、クリスは居心地の悪さと不穏な空気を感じてしまうのだった。

昨年(2017年)映画好きに大評判になっていた理由がよくわかった。ぼくが今回途中まで観てて、続きを観てなかったらこの面白さはわからなかっただろう。機内上映で観ていたのは、全てが〈伏線〉だったのだ。それがこの映画の面白さのキモだったのだ。
この映画は2度観することをおすすめする(ぼくは2回と半分見たが・笑)。2度目の方が、その巧みな伏線の張り方がわかり面白く見れた。

(ここからネタバレあり。映画見てない人は ゲットアウト!)

その伏線を思い出すままに羅列してみよう。

・冒頭首を絞められるのはアンドレ。首を締めるジェレミーのヘルメットはKKK。
・鹿をひくアクシデントは、クリスに母親のひき逃げ事故を思い出させるため。鹿を見つめるクリスの後ろに聞こえる虫の音色が、スプーンのそれに似ている。
・ローズが警官に食ってかかるのは、黒人差別ではなく、クリスの身元を知られたくないから。
・ディーンの父親は、1936年ベルリンオリンピックの陸上選手で、黒人に負けたという→庭の管理人が夜中に全力疾走している。
・メイドの髪型やファッションは50〜60年代のそれ→年寄り好み。
・メイドがガーデンでお茶をこぼすのは、ミシーがあやまってスプーンの音を出してしまうから。
・登場する黒人は、カツラを気にしたり、帽子を絶対脱がない。表情が少ない。
・クリスが、初めて「沈む」時、椅子を爪でガリガリやっている。
・メイドがクリスの携帯の充電を外すのは、外部と接触されたくないから。彼女が「No, No, No」と言って涙を流すのは、洗脳がとれかかったから。
・ローガン(アンドレ)がフラッシュで洗脳がとけた時の「ゲットアウト」はクリスに逃げろという意味。
・メイドの話し方は、黒人のそれではない。白人のイントネーション。ローガンも冒頭の話し方と全く違う。
・パーティの客は全て白人(と1人の日本人)の老人。ビンゴ・オークション=奴隷売買。だから、クリスは皮のベルトで繋がれる。椅子から綿が出てくるのも、黒人奴隷が綿摘みをしていたからか。
・ローズは本性がばれた時点で髪をアップにする。次の黒人のターゲットを探している時、白いワイシャツで、白いミルクを飲む。私は白(ホワイト)よという意味。色のついたシリアルを別に食べるのは、決して「混じらないわよ」という意思表示。
・庭の管理人が、クリスのフラッシュで洗脳がとけ、自分を銃で撃つ時に涙を流している。

以上、間違いもあるかもわからないが、自分が気づいただけでも、これだけの伏線がある。セリフの中にも伏線があり、黒人差別問題も内包されており、何度観ても新たな発見があると思う。

一番驚いたのは、あの下品でカッコ悪いクリスの親友ロッド(リル・レル・ハウリー)がヒーローになること(笑)。女性警官に、「白人のセックスの奴隷にされちゃったー!」と訴えて、「Shit」という言葉だけ謝るところなんか、おかしかったな。

初めての監督・脚本で、これだけ面白い作品に仕上げ、アカデミー脚本賞取ったのだから、ジョーダン・ピールの才能恐るべし、である。映画好きは、観て損はない作品だと思う。何度も楽しんでくだされ(笑)

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Written and Directed by Jordan Peele

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