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2018-04-01

『ゲット・アウト』”Get Out” 2度観することをおすすめする、アカデミー脚本賞受賞ジョーダン・ピール驚きの作品

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本年度(2018年)アカデミー脚本賞受賞のジョーダン・ピール脚本・監督の『ゲット・アウト』”Get Out”である。ぼくは、この映画、昨年キャセイの機内映画で観ていたのだが、映画途中で着陸準備となり、ラストまで観れず、その後キャセイに乗ったらもう上映期間が終わっていたという、まさに”ゲットアウト”してしまった映画だったのだ。
なので香港のイースターホリデー休暇中にNowTVで遅ればせながら楽しんだのである。

コメディ・ホラーと聞いていたので、最初は『招かれざる客』“Guess, Who’s Coming to Dinner”(1967) みたいなものを想像していた。この映画は社会派のスタンリー・クレイマーが撮った名作コメディで、新聞のコラムに黒人差別はいけないとコラムを書いている父親(スタンリー・クレイマー)のもとに、結婚相手を紹介すると娘(キャロル・ベイカー)が連れてきたのが黒人男性(シドニー・ポワティエ)だったというもの。白人の父親は自分の育て方が間違っていたのか?と妻(キャサリン・ヘップバーン)と話し、あれこれ悩んだりする。そんな辛辣だが、ライト・コメディ要素の強い映画かと思ったのだが、実際は大分趣きが違っていた。

映画は、夜の住宅街で道に迷った黒人青年が、何者かに首を絞められ車のボンネットに入れられるところから始まる。
恋人のローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家に、週末挨拶に行くことになったカメラマンの黒人男性クリス(ダニエル・カルーヤ)は、朝迎えに来たローズに「俺が黒人だと言わなくていいの?」と聞くと、彼女はうちの家族は差別主義者じゃないから大丈夫だよ、と言われる。
車を走らせてる途中、鹿をはねてしまうというアクシデントがあったが、ローズの実家アーミテージ家に着くと父親のディーン(ブラッドリー・ウィットフォード)と母親のミシー(キャサリン・キーナー)は、暖かく迎えてくれた。父親は脳外科医、母親は催眠術を使った心理療法を行なっており、クリスに禁煙の治療を勧めてくれる。
家には黒人のメイド(ベティ・ガブリエル)、黒人の庭の管理人(マーカス・ヘンダーソン)がいたが、彼らは同じ黒人のクリスに対して素っ気ない。ディナーの席ではローズの弟のジェレミー(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)が柔術の話しで突っかかってくる。
次の日、アーミテージ家で開かれたパーティは、白人だらけの中、クリスは居心地の悪さと不穏な空気を感じてしまうのだった。

昨年(2017年)映画好きに大評判になっていた理由がよくわかった。ぼくが今回途中まで観てて、続きを観てなかったらこの面白さはわからなかっただろう。機内上映で観ていたのは、全てが〈伏線〉だったのだ。それがこの映画の面白さのキモだったのだ。
この映画は2度観することをおすすめする(ぼくは2回と半分見たが・笑)。2度目の方が、その巧みな伏線の張り方がわかり面白く見れた。

(ここからネタバレあり。映画見てない人は ゲットアウト!)

その伏線を思い出すままに羅列してみよう。

・冒頭首を絞められるのはアンドレ。首を締めるジェレミーのヘルメットはKKK。
・鹿をひくアクシデントは、クリスに母親のひき逃げ事故を思い出させるため。鹿を見つめるクリスの後ろに聞こえる虫の音色が、スプーンのそれに似ている。
・ローズが警官に食ってかかるのは、黒人差別ではなく、クリスの身元を知られたくないから。
・ディーンの父親は、1936年ベルリンオリンピックの陸上選手で、黒人に負けたという→庭の管理人が夜中に全力疾走している。
・メイドの髪型やファッションは50〜60年代のそれ→年寄り好み。
・メイドがガーデンでお茶をこぼすのは、ミシーがあやまってスプーンの音を出してしまうから。
・登場する黒人は、カツラを気にしたり、帽子を絶対脱がない。表情が少ない。
・クリスが、初めて「沈む」時、椅子を爪でガリガリやっている。
・メイドがクリスの携帯の充電を外すのは、外部と接触されたくないから。彼女が「No, No, No」と言って涙を流すのは、洗脳がとれかかったから。
・ローガン(アンドレ)がフラッシュで洗脳がとけた時の「ゲットアウト」はクリスに逃げろという意味。
・メイドの話し方は、黒人のそれではない。白人のイントネーション。ローガンも冒頭の話し方と全く違う。
・パーティの客は全て白人(と1人の日本人)の老人。ビンゴ・オークション=奴隷売買。だから、クリスは皮のベルトで繋がれる。椅子から綿が出てくるのも、黒人奴隷が綿摘みをしていたからか。
・ローズは本性がばれた時点で髪をアップにする。次の黒人のターゲットを探している時、白いワイシャツで、白いミルクを飲む。私は白(ホワイト)よという意味。色のついたシリアルを別に食べるのは、決して「混じらないわよ」という意思表示。
・庭の管理人が、クリスのフラッシュで洗脳がとけ、自分を銃で撃つ時に涙を流している。

以上、間違いもあるかもわからないが、自分が気づいただけでも、これだけの伏線がある。セリフの中にも伏線があり、黒人差別問題も内包されており、何度観ても新たな発見があると思う。

一番驚いたのは、あの下品でカッコ悪いクリスの親友ロッド(リル・レル・ハウリー)がヒーローになること(笑)。女性警官に、「白人のセックスの奴隷にされちゃったー!」と訴えて、「Shit」という言葉だけ謝るところなんか、おかしかったな。

初めての監督・脚本で、これだけ面白い作品に仕上げ、アカデミー脚本賞取ったのだから、ジョーダン・ピールの才能恐るべし、である。映画好きは、観て損はない作品だと思う。何度も楽しんでくだされ(笑)

Get Out (2017)
Written and Directed by Jordan Peele

01-Apr-18 by nobu

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コメント

確かに、伏線張りまくりだったんですね!

DVDで見直してみたいうと思います

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