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2014年5月

2014-05-23

「寅さんのことば 風の吹くまま 気の向くまま」 佐藤利明 著 + CD 「男はつらいよ 寅次郎音楽旅〜寅さんのことば」

寅さんのことば 風の吹くまま 気の向くまま
寅さんのことば 風の吹くまま 気の向くまま

佐藤利明さんの著書「寅さんのことば 風の吹くまま 気の向くまま」は、「男はつらいよ」ファンはページをめくるのがとても楽しい粋な本である。そして、同コンセプトで発売されたCD「男はつらいよ 寅次郎音楽旅〜寅さんのことば」は、その本に書かれたセリフをそのまま聞けて、かつサントラが聴けるという、これも粋なCDである。

このCDをかけて、この本を読む。どっぷりと寅さんワールドにひたる。そうすると、海外暮らしの身には「銭さえあれば、私は今すぐにでも土産を買い込んで故郷へ帰りたいのでございます」という心境になるのだ。

男はつらいよ 寅次郎音楽旅~寅さんのことば~
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2011年4月に始まった文化放送ラジオの「みんなの寅さん」。当初は朝の吉田照美さんの番組内の1コーナーだったが、その後独立した番組となり、2014年4月からは「新・みんなの寅さん 」として毎週日曜日夕方17:00〜17:27 に放送中である。そのパーソナリティを務める"寅さん博士"こと娯楽映画研究家・佐藤利明氏が、東京新聞、中日新聞、北陸中日新聞の夕刊へ連載していたものを一冊にまとめたものが「寅さんのことば 風の吹くまま 気のむくまま」。そして、その本で紹介された「寅さんのことば」をオリジナル音源で収録し、かつ山本直純氏のサントラが聴けるのがこのCD「男はつらいよ 寅次郎音楽旅〜寅さんのことば」なのである。

おなじみのセリフを読んで、それを聴けるのは楽しいもんである。
「よお、備後屋、あいかわらずバカか?」
「それを言っちゃおしまいよ」
「俺か?恋をしていたのよ」
「おまえと俺とは別の人間なんだぞ。早え話がだ、俺が芋食って、おまえの尻からプッと屁が出るか!」
「おい、まくら、さくらとってくれ」(おいちゃんのセリフ)等々。

このCD「男はつらいよ 寅次郎音楽旅」は映画同様シリーズとなっており、これも佐藤利明氏(プロデュース&コンセプト)の労作である。

男はつらいよ 寅次郎音楽旅~寅さんの“夢”“旅”“恋”“粋”~
男はつらいよ 寅次郎音楽旅~寅さんの“夢”“旅”“恋”“粋”~

「男はつらいよ 寅次郎音楽旅〜寅さんの"夢””旅""恋””粋”」は「男はつらいよ」全48作品の中で使用された〈天才〉山本直純作曲のもの、及びクラシック作品の音源をそのまま収録した2枚組。

男はつらいよ 続・寅次郎音楽旅~みんなの寅さん~
男はつらいよ 続・寅次郎音楽旅~みんなの寅さん~

「男はつらいよ 続・寅次郎音楽旅〜みんなの寅さん」は、文化放送のラジオも始まり、上述のCDに未終録の音源と、ラジオでBGMとして流したものを収録した"続篇”。2枚組。

男はつらいよX徳永英明 新・寅次郎音楽旅
男はつらいよX徳永英明 新・寅次郎音楽旅

「男はつらいよ×徳永英明 新・寅次郎音楽旅」は、第42作目以降、満男(吉岡秀隆)と泉(後藤久美子)の「恋のテーマ」となった徳永英明さんの名曲がフィーチャーされたコラボアルバム。

もうこの4作品の「寅次郎音楽旅」CDを持っていれば、寅さんの音源はほぼ自分のものに出来たことになる(と思う)。我が家で「寅さんワールド」に浸るには最適なシリーズである。これを聴いていると、「じゃあまた夢の続きを見るとするか」という気になる。

このオレンジ色のカバーの「寅さんのことば 風の吹くまま 気の向くまま」が出版された時、友人でもある著者の佐藤利明さんから、上野の焼肉屋でご本を受け取った時、「ほら見て、左上の寅さんの絵がパラパラ漫画になってるんだよ」と嬉しそうに教えてくれたのを思いだす。ぜひ皆さんも手に取って見てみてください。

てなことで。

23-May-14 Text by nobuyasu

4808309823 寅さんのことば  風の吹くまま 気の向くまま
佐藤利明
東京新聞出版局  2014-01-20

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2014-05-16

『GODZILLA』ゴジラ (2014) ギャレス・エドワーズ × 渡辺謙

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香港でも2014年5月15日から始まったハリウッド版『GODZILLA』"ゴジラ"(2014)。初日の初回にIMAX 3Dで楽しんで来た。

いやー、この年になって、こんなに興奮するとは思わなかった。IMAX 3Dの大画面の中、暴れまくるゴジラ!大迫力!大興奮!見終わってもエンドクレジットの最後まで席を立てなかった。(ほぼ無名と言っていい)監督ギャレス・エドワーズ、やるなぁ。なにか『ダークナイト』を観た時と同じような余韻を味わっている。この『GODZILLA』は、ゴジラ映画史上最高傑作かも知れない。

【以下ちとネタバレ注意】

ワーナー・ブラザーズのロゴの後、記録映画の断片、新聞記事のスクラップが映る。それらは1954年のビキニ環礁での水爆実験のものとわかる。そしてタイトル”GODZILLA"。
1999年、芹沢博士(渡辺謙)は助手のヴィヴィアン(サリー・ホーキンス)とフィリピンへ飛ぶ。工事現場が陥没し、大きな穴の中に奇妙な物体があるというので。
同じ頃、日本の富士山に近い場所(架空の町・JANJIRA)にある原子力発電所で地震が起きる。そこで働く原子物理専門のエンジニア、ジョー・ブロディ(ブライアン・クランストン←見事な演技)は、同じ原発で働く妻サンドラ(ジュリエット・ビノシュ)をその事故で亡くしてしまう。最愛の一人息子を残して。

15年後、成人した息子フォード(アーロン・テイラー=ジョンソン←男らしくなった『キック・アス』)はアメリカ海軍で働く兵士となり、妻エル(エリザベス・オルセン)と幼い息子と幸せに暮らしていた。父が日本で警察に捕まったと連絡を受け、引き取りに行くフォード。父はメルトダウンした原発事故の後、一人その原因を究明することに執念を燃やしていた。かつて暮らし、今は放射能汚染の為立ち入り禁止となっている我が家へ行き、捕まってしまった二人は、元原子力発電所で、異様な光景を目にすることになる…。

ゴジラの登場まで、1時間くらいかかったかな? だが、後半の大バトルまで、ぼくは飽きずに観ることができた。この映画で凄いのは、そのVFXとカメラワークである。視点が、兵士の目線だったり、窓から見えるゴジラだったりするものだから、余計にリアリティを感じるのだ。兵士のフォードの目線で、煙の中に消えて行くゴジラのショットは芸術的とも言える名場面だ。ゴジラのフォルムもわれらが"東宝ゴジラ"と呼べるものだから嬉しい(これでやっと1998年のエメリッヒ版『GODZILLA』を「無かったもの」に出来る・笑)。

小学生の頃、東宝チャンピオン祭りでゴジラを友達と連れ立って観に行き、成人し子供が生まれてからは、平成ゴジラへ連れて行った。自分の生涯の大半を付き合ってきたゴジラである。この年になって、こんな迫力ある”ゴジラ"に出会えるとは思ってもみなかった。ゴジラが吼えた時は鳥肌が立ったよ。

実はこの作品が《怪獣映画》として成り立ってるのは、MUTO(ムゥトーと発音してた)という怪獣が出現し、ゴジラが戦うからである。このMUTOは放射能をエサにしてるというふとどきもの。しかもこいつらが強い!だから後半の大バトルが胸をすくのだ。(詳しくは書かないが、印象をいうと「ゴジラ対ギャオス」だ・笑)

本作は昭和29年のオリジナル『ゴジラ 』へのリスペクトも見てとれる。渡辺謙の役名が科学者で芹沢一郎というのもそのひとつ。エンド・クレジットで宝田明の名前もあったが、ぼくは全然思い出せなかった(それもそのはず、劇場版ではカットされ、DVDで復活するんだと)。ハワイでのアクション・シーンがあるのも、南国の島がゴジラ映画でよく舞台になっていたからか。TVニュース中継の場面で、"King of the Monsters "と字幕が出るのもご愛嬌。
渡辺謙は、日本人らしく「ゴジラ」と発音してくれたのも嬉しい。英語だと「ゴッジィーラ」となり、なんか違う生き物のようだから(笑)

ぼくは1954年のビキニ環礁での水爆実験の時はまだこの世に生を受けてなかった。その直後に製作された怪獣映画『ゴジラ』('54)は、なので後年観ることになる。
想像してみると、ゴジラは〈原水爆の恐怖〉というものが生んだ「怪獣」だったわけで、その時代に映画館でゴジラを観るというのは、観客はとても現実的な怖さを感じたのではないだろうか。そういった意味で、今回の『GODZILLA』(2014)は震災での原発事故後の日本がおかれている状況下で、恐怖を身にしみて感じてしまうものになっているといえる。
そういう意味でも、本作はオリジナル『ゴジラ』の持つフィロソフィーに近いのではないだろうか。

人それぞれ好きなゴジラ映画があると思う。ぼくも『キングコング対ゴジラ』が一番好きだ。だが、映画としてカタルシスを得られたかというと疑問な部分もある。それは子供向け映画として後年は製作されてきたから。今回の『GODZILLA』は、やっと大人の鑑賞に耐えうるゴジラが(しかも超大作として)出現したという意味で、ぼくは「史上最高のゴジラ」と呼びたいのである。

日本では、2014年7月25日公開。見逃すべからず。

Dr. Serizawa: "Let them fight."

GODZILLA (2014)
Directed by Gareth Edwards
Cast: Aaron Taylor-Johnson, Ken Watanabe, Bryan Cranston , Juliette Binoche, Elizabeth Olsen, Sally Hawkins, David Strathairn
Duration 123 mins

16-May-14 Text by nobuyasu (おそらくこの文章が、『GODZILLA』公開後日本語で書かれた最速のレヴューだと自負してます(^_^))

2014-05-14

『ゴジラ』 "Godzilla" ('54) Blu-ray クライテリオン・コレクション + "Godzilla, King of the Monsters!"('56)

ゴジラ (1954年) ~GOZILLA~ (Blu-ray) (PS3再生・日本語音声可) (北米版)

ハリウッド版ゴジラが、当地香港では、いよいよ明日(15-May-14)から公開となる。なので今夜はクライテリオン盤『ゴジラ』"Godzilla"で予習(復習?)である。

オリジナル版『ゴジラ』('54)は語り尽くされているが、やはりこの作品は歴史的にも貴重なものだ。1954年ビキニ環礁での水爆実験で船員が被爆した第五福竜丸事件を基に、水爆実験により出現してしまった〈怪獣〉ゴジラ。この世界的に有名になったモンスターは、原水爆実験に対するアンチテーゼの象徴だった。広島・長崎の原爆を受けた日本人だからこそ、その〈恐怖〉を巨大な異形のクリエイチャーとして表現できたのだろう。

いつもクライテリオン盤のレストアは目を見張るものがあるが、この『ゴジラ』に関しては、現存するポジからの修復で、傷も多すぎるため、相当キレイにはなっているのだが、残念ながらそんなに驚くようなものにはなっていない。ぼくは東宝版を持っていないので、比較は出来ないが、白黒のコントラストのシャープさも、同じクライテリオンの『駅馬車 』などと比べるとたいしたことなく感じてしまう(←黒澤明の『用心棒 』のレベルが凄かったから、期待が高すぎたのかもね)。

このディスクには、特典映像として当時大ヒットしたアメリカ公開版ゴジラも収録されている。今回は、ちょっとこの話をしてみよう。
題名は"Godzilla, King of the Monsters!" ('56)。日本では『怪獣王ゴジラ』(海外版)として公開された。監督・編集は、テリー・モース(Terry Morse)。オリジナルの映像に、新撮りの場面を繋いで作った作品で、アメリカでは長らくこれしか公開されなかったため、これがゴジラだと思ってる人も多いらしい。(ぼくが知ってる限り、2005年に公開、2006年に"Gojira"と明記されたDVDが出たのがアメリカでは最初と思う)

B000FA4TLQ Gojira / Godzilla, King of the Monsters
Classic Media  2006-09-05

by G-Tools

焼け野原の東京。ガレキの中、傷だらけで倒れているアメリカ人がいた。ユナイテッド・ワールド・ニュースの特派員スティーブ・マーティン(レイモンド・バー)だ。カイロへ行く途中、立ち寄った東京で地獄を体験してしまった。それはゴジラの出現である。かつぎこまれた病院で、数日前を回想するスティーブ。
東京で大学時代の友人、芹沢博士(平田昭彦)に会うことを楽しみにしていたが、空港で警備官(フランク岩永)から原因不明の船の失踪を知らされる。大戸島で山根教授(志村喬)や娘の町子(河内桃子)との取材途中、ゴジラの出現に立ち会ってしまったスティーブ。ゴジラが東京へ上陸して暴れるが、人間はゴジラをおさえる術をもっていない。唯一この国を救えるのは、芹沢の作った秘密兵器”オキシジョン・デストロイヤー”しかなかった。だが、芹沢はこの兵器を使うことはためらうのだった。

ゴジラの特撮シーンは全部残して、ドラマ部分を英語に吹替えるだけでなく、レイモンド・バーの取材を通して見せるという作り方は、字幕に頼らず映画を楽しませるということからもいいアイデアと思う。だが、それがためにオリジナルが持っている〈深み〉と反核思想などは置き去りにされている。(本田猪四郎監督のオリジナルがいかに良いかもよくわかる・笑)

素晴らしいゴジラの特撮は円谷英二の手によるもの。その技術は当時世界的に高い評価を得た。「『キング・コング』('33)みたいな映画を作る」という円谷の夢が、キング・コングの国の人間を驚愕させた瞬間である。

ぼくの世代からすると、レイモンド・バーは、TV「鬼警部アイアンサイド」だ。車椅子の名警部がスタスタ歩くと違和感を感じてしまうなぁ(笑)。役名のスティーブ・マーティンも今ならつけない名前だな。「サタデー・ナイト・ライヴ」になっちゃうし(笑)。なんで羽田空港の警備の人間が、アメリカ人通訳として一緒に取材に行くのか?とか、まぁ、ツッコミどころは多々あるが、これはこれで楽しめるものになっている。

特典映像は、他に(新撮りの)主役の宝田明、ゴジラの中にいた中島春雄、特撮スタッフの入江義夫、開米栄三、映画評論家・佐藤忠雄のインタビューもある。
これが映画初主演となった宝田明は「ゴジラはぼくのクラスメイトです」と語る。「ゴジラはその後世界的にビッグ・スターとなり、ぼくはスターダストですが」と洒落たことも話されていた。

佐藤忠雄は、原爆の恐怖は、原子爆弾だけでなく、原子力発電所の恐怖でもあった。それが想像以上に大きなものだったということを表現したこともゴジラの意味だった、みたいなことを話している。これが2011年の震災後に行われたインタビューだというのも〈意味がある〉のである。

さあ、明日が楽しみだ。てなことで。

GODZILLA (1954)
96 Minutes
Black & White
In Japanese with English Subtitles
Monaural
1.37: 1 Aspect Ratio

14-May-14 by nobuyasu

B005VU9LKE ゴジラ (1954年) ~GOZILLA~ (Blu-ray) (PS3再生・日本語音声可) (北米版)
CRITERION COLLECTION  2012-01-24

by G-Tools
B00ISOKPYG ゴジラ(昭和29年度作品)【60周年記念版】 [Blu-ray]
東宝  2014-06-18

by G-Tools

2014-05-08

香港フィルハーモニー管弦楽団演奏によるチャップリンの『街の灯』上映会 "Charlie Chaplin's CITY LIGHTS" performed by Hong Kong Philharmonic Orchestra (with film screening)

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なんとも豪華な映画イベントへ行って来た。香港フィルハーモニー管弦楽団演奏によるチャップリンの名作『街の灯』"Charlie Chaplin's CITY LIGHTS"上映会 (Friday 02-May-14)。
会場は、香港最高の音響と云っていい香港文化中心(Hong Kong Cultual Centre)のコンサートホール。指揮は映画音楽に造詣が深いフランク・ストローベル(Frank Strobel)。チャップリン生誕125年、放浪紳士(The Tramp)誕生100周年を記念して行われたコンサート。入場料が一番高い席でHKD280(約3,700円)というのもありがたかった。
(公演は3度行われ、3度目は日曜日の午後、"Chaplin for Kids"という子供向けの上映会だった)

なんという至福の時間だったろう。香港フィルの奏でるチャップリン・メロディを生演奏で聴きながら『街の灯』を観れるとは! これはどんなに素晴らしい映画館や豪華なホームシアターでもなしえない贅沢。7.1chサラウンドシステムやDTSなど、このオーケストラの前ではモノラルのようなもの。

スポンサーがSwire Denimなので、ジーンズにTシャツという軽装で演奏したためか、アジアでも屈指といわれる実力を持つ香港フィルにしてみれば、この86分ノンストップの(あたかも交響曲のような)映画に合わせた演奏はお茶の子さいさいなのか。淀みなく続く音楽が映像とピッタリ合って、ラストの感動もひとしおだった。(しかし、拳銃の音などはどうやったのだろうか)

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当日は2本立て。1本目はキーストーン社の短編『ヴェニスの子供自動車競争』"Kid Auto Race at Venice"。この作品が映画史的に重要なのは、ちょび髭、山高帽、タキシード、ステッキという、いわゆる《チャップリン・スタイル》で初めて公開された映画だからである。時間は10分ほどだったと思う(というか、ネットでみても全部時間がまちまちなのでホントのところがわからず)。1914年製作だから、今年が放浪紳士"チャーリー"100周年というワケ。
映画は、カーレースを撮影しているニュース・カメラに、チャップリンがわざと映り込み、カメラマンに蹴られたり、殴られたりするが、すぐに戻って来てまた映っちゃうというもの(笑)。チャーリーは、映画デビュー時から、こういう権力や強いものに逆らっちゃう精神があったというのも〈歴史の必然〉だったのだろう。
プリントはレストアされ、新しく入れた音楽は、ティモシー・ブロック(Timothy Brock)によるもの(←チャップリン家から依頼を受け、サイレント時代の音楽を作り直している)。だからYouTube等で見れるこの作品の音楽は(現在では)まがい物ということになる。

そして『街の灯』"CITY LIGHTS"(1931)だ。舞台下手から再度指揮者のフランク・ストローベルが登場。舞台中央、右、左サイドのスクリーンに映像が映り、タクトが振られる。開巻、除幕式の彫刻の上で寝てるチャップリン。ここからもう会場は笑い声であふれ、有名なボクシングのシーンは大爆笑だった。今回何度目かの『街の灯』を観て、改めて思ったのは、映画としてなんてうまく繋がっているかということ。一つの笑いから一つの笑いへ繋いで行く術が本当に見事。そのリズムがまた笑いを誘う。これこそがコメディ映画のお手本というものだろう。80年以上前の作品で笑わせるチャップリンはやっぱりスゴい。

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1931年の映画産業は既にトーキーの時代だった。だが、1928年に製作を開始したこの映画はサイレントとして公開された。ただし、全編音楽をつけて。作曲はチャップリン自身が鼻歌で歌ったものを、アーサー・ジョンストンが楽譜にし、アルフレッド・ニューマンが編曲した(今回演奏されたバージョンは、上述のティモシー・ブロックが手を加えたもの)。

現在では到底考えられないが、この作品からチャップリンは、製作費・製作期間無制限という破格の扱いを受ける。だから、たったワンシーン撮るのに一年以上もかかり(盲目の花売り娘とチャーリーの出会いの場面。300テイク以上撮影した)、そんなかんだで、美容院の予約があるからと撮影を早く上がろうとしたヒロイン役ヴァージニア・チェリルに激怒し、一旦クビにしたというから恐れ入る。

それでもやはりこの映画のラストシーンの美しいこと。そのストリングスの見事な音色もあいまって、また泣いてしまった。
乞食同然のチャーリーは盲目で薄幸の花売り娘にホレてしまう。自分がお金持ちと勘違いされ、彼女の前でだけはそのように振る舞おうとする。酒が入った時だけ自分を友達と思ってる大金持ち(酒が抜けると「お前だれ?」と言われてしまう・笑)から手にした大金で、彼女の目を治してやるチャーリー。だが、彼は警察に捕まり、彼女の前から姿を消す。

今までぼくはこの映画のラストで、二人がまた会えてよかったよかったと単純に感動していたが、今回の上映後「考えてみたらこれは残酷な終わり方だったんだな」と思った。それは、目が見えた彼女からすれば、夢見て恋焦がれた紳士は実は乞食だったという事実。またそれがバレてしまった乞食姿のチャーリーのみじめさ。夢は夢のままで終わらせた方がいいこともある。突きつけられた真実。現実はキビしいのだ。"Yes, I can see now"というラストのセリフはそういう意味だったのかと思った次第。

てなことで。

Hong Kong Philharmonic Orchestra
"Charlie Chaplin - CITY LIGHTS"
Hong Kong Cultural Centre Concert Hall
Friday 02 May 2014 PM 09:00

Frank Strobel, conductor

"Kid Auto Races at Venice" (1914)
Director: Henry Lehrman
Cast: Charles Chaplin, Henry Lehrman
Music: Timothy Brock (2013)

"City Lights" (1931)
Director, Producer, Writer: Charles Chaplin
Cast: Charles Chaplin, Virginia Cherrill, Henry Myers, Florence Lee, Allan Garcia
Music: Timothy Brock arranged after the original score by Charles Chaplin (1931/2004)

Instrumentation
One flute (doubling piccolo), one oboe (doubling cor anglais),  three clarinets (one doubling bass clarinet), one bassoon, two horns, three trumpets, two trombone, one tuba, timpani, percussions, three saxophones, piano/celesta, banjo/guitar and strings.

08-May-14 by nobuyasu

(今日現在最高の画質(4Kトランスファー)、最高の音質で楽しめるBlu-ray。クライテリオン盤『街の灯』)

B004OOL73W City Lights (Criterion Collection) (Blu-ray + DVD)
Criterion Collection  2013-11-12

by G-Tools

(日本ではまだDVDのみ発売)

B0046ECN3S 街の灯 (2枚組) [DVD]
チャールズ・チャップリン
紀伊國屋書店  2010-12-22

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2014-05-05

『リベンジ・マッチ』Grudge Match ロバート・デ・ニーロ VS シルベスター・スタローン

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東京出張時、キャセイ機内で『リベンジ・マッチ』"Grudge Match"を観る。今年(2014年)初め香港公開時に見逃してしまってたのでありがたかった。

うーん、これは見る人の年齢や好みによって大分感じ方が違う映画だろうな。ぼくのように『ロッキー』を高校生の時に、『レイジング・ブル』を大学生の時に観た格闘技好きの男には、あたかもモハメド・アリVSジョー・フレイジャーくらいのすごい一戦に思える。だって、〈イタリアの種馬〉ロッキー・バルボアVS〈レイジング・ブル〉ジェイク・ラモッタの対戦でっせ。
まず2人の共演でボクシング映画というだけで(ヘビー級とミドル級は違うにせよ・笑)興奮するかしないかで、この映画の評価はわかれると思う。
だが、この映画の監督はピーター・シーガルである。彼の映画でぼくが大好きなものは『ゲット・スマート』だ。つまり、この映画も路線としては"ライト・コメディ”と思っていい。つまり、ガチンコを期待せず、往年の名ボクサーのエキシビション・マッチを見る感覚が必要と思う。

ビリー・”ザ・キッド”・マクドネン(ロバート・デ・ニーロ)とヘンリー・”レーザー”・シャープ(シルベスター・スタローン)。2人は好敵手として歴史的な試合をしていたが、1勝1敗で3度目のリターン・マッチ直前、ヘンリーの突然の引退でその戦いに幕を閉じていた。造船所で働くヘンリーは、リストラされ金に困り、元プロモーターを父に持つダンテ・JR(ジョン・バーンサル)にそそのかされ、遂には、今はレストランをやっているビリーとの再戦をブッキングされる。この2人の間には、1人の女サリー(キム・ベイシンガー)をめぐる〈秘め事〉もあったのだ。30年の怨讐を超えて、今戦いのゴングが鳴る。

デ・ニーロもスタローンも、老いさらばえた身体を鍛え、歴史的な一戦に備える。『ロッキー』のミッキーを思わせるアラン・アーキンのトレーナーは、夜明け前のランニング前にコップに入れた生卵4個をスタローンに飲ませる(ちなみに『ロッキー』では6個)。冷凍庫で肉を叩かせるのかと思いきや「衛生上良くない」と叩かせない(笑)。〈役者馬鹿〉のデ・ニーロも、さすがに年で『レイジング・ブル』の肉体には戻せない(苦笑)。最後の最後に、ホンモノのタイソンとホリフィールドが出て来て、再戦するかどうかのシーンがある。こーゆーネタ元を知ってると、笑える場面が随所にある。

キャセイ機内では吹替え版があったので、それで楽しんだのだが、多分スタローンはささきいさお、キム・ベイシンガーは杉本彩じゃなかろうか?デ・ニーロは、…知らん。
アラン・アーキンが、プロモーター(ドン・キングをモデルにしてる)の息子に、「エマニエル坊やか!」と言うシーンがあったが、これは原音では何だったんだろうね?そういう意味でも、これはおっさんが喜ぶ映画だろう。
(機内では、プログラムに『レイジング・ブル』と『ロッキー』もラインナップされていた。相変わらず粋なチョイスだ)

この映画の評価が世界的に低いのは、映画評論家と呼ばれる人々も若いネット世代になり、この映画史的に偉大な共演に興奮しないからだと思う。上述のセルフ・パロディにしても、どれだけの価値かわかっちゃいない。それもこれもリスペクトが足らないからじゃないか。もちろん、30年前にこの共演が実現したら、大評判になっただろうけど、そんなことできるわけねーじゃん。今だから面白いんだよ。そういった意味で、この映画は、映画史には決して残らないけど、ぼくらのようなスタローン、デ・ニーロをありがたがって見ていた世代は楽しめると思う。そーゆー奴らだけでいいじゃん。褒めてやろうよ。良かったじゃん。ちょっと涙出たじゃん!そんな映画デス。

Grudge Matche (2013)
Directed by Peter Seagul
Cast :  Robert De NIro, Sylveter Stallone, Alan Arkin, Kim Basinger

03-05-14 by nobuyasu

2014-05-02

『小さいおうち』 山田洋次 × 松たか子 黒木華

山田洋次監督の新作映画『小さいおうち』"The Little House"。東京から出張帰りのキャセイ機内で鑑賞。
ぼくの席のイヤホンが聞こえないというトラブルがあり、リセットしてもらうのに時間がかかった(なぜか時々こんなことがある)。上映時間が2時間16分という。ちょうど映画が終わった時点で、着陸準備となりギリギリで見れたのであった(ほっ)。

山田洋次監督作品は、『男はつらいよ』シリーズ以降ほぼ観ているが、近年の中では、『たそがれ清兵衛』以来、一番イイ作品ではないかな。

おばあちゃんの葬式のシーンから始まるこの映画。遺品整理をしている中、親類の青年(妻夫木聡)にあてたノートに書かれた布宮タキ(倍賞千恵子)の回想録が見つかる。そこには赤い屋根の家で、女中として働いたタキの小さな"秘密”が書かれていた。

14歳で山形から東京へ上京し、縁あって平井家で女中として働くことになったタキ(黒木華)。赤い屋根の洒落た家に住んでいるのは、おもちゃ会社の重役の旦那さん(片岡孝太郎)、美人の妻・時子(松たか子)と息子の恭一の三人だ。
タキは一生懸命この家族のために奉公する。幼い恭一が小児まひになった時、雨の日も風の日も、恭一をおんぶして遠い町の医者まで通った。そんなタキを時子は妹のように可愛がるのだった。

戦火が次第に忍び寄る年の正月。おもちゃ会社の社長以下、社員の面々が平井家に集まっていた。その中に、他の男どもとは違う雰囲気のインテリ青年がやってくる。それが板倉正治(吉岡秀隆)だった。それ以来時々平井家にやって来る板倉青年。やがて、時子は板倉に恋心を抱いていく。

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もうこの板倉に会いに行くと〈決心〉した時の、時子役の松たか子が鏡を見ながら帯を締めるシーンの表情のイイこと。世間的にはベルリン映画祭で女優賞(銀熊賞)をとった黒木華に注目が集まっているが、ぼくはこの映画の松たか子も今までにない色気のある女の演技で良いと思ったな。黒木華は確かに上手い。けどそれは献身的で忠誠心のある女中という役得もあったかも知れぬ。

この映画が主に描く時代は、第二次大戦前後の日本。ちょうど満州事変が起きる前年から、終戦までである。その時代に、当時としてはハイカラな赤い屋根の家に暮らす一家を通して、戦争へ突き進んでいく日本人の日常を描いていく。しかし、当時の庶民の意外なほどの〈のんびりさ〉はなんであろう。新聞報道がまやかしであったため、日本は勝ち続けていると錯覚させられ、景気がよくなると単純に考えていたおもちゃ会社の幹部たち。そのおもちゃもブリキ製が作れなくなり、木製のおもちゃに変わっていく描写は、有無を言わせない当時の軍国主義の「空気」を映像で見せつけてくる。

どんな時代であれ、人は恋をする。たとえそれが戦時下でも。タキも板倉に恋心を抱いていたが、人ならぬ逢瀬を重ねる板倉と時子を見て、タキは自分なりの決着をつける。そのことで、長く生き過ぎた自分の人生を悔いるのだ。なんとも切ないね。

板倉を演じる満男こと吉岡秀隆は、真ん中わけの髪型で丸メガネと、まるで宮崎アニメ『風立ちぬ』の堀越次郎である。音楽も久石譲だし、なんかジブリ映画の実写版を見てるみたい(笑)。劇中、爆笑したのが、山形のタキの縁談相手としてやってくる、中年オヤジの笹野高史と松金よね子のコンビ。この二人の山形弁の掛け合いは、そのスピーディさもあいまって見事に可笑しかった。この辺の山田演出はやっぱり凄いや。

香港でも山田作品の人気は高く、最近の作品は全て公開されている。この作品も2014年5月22日から公開となる(広東語題名:『東京小屋』)。ぜひ当地でも評判になってほしいと思っている。

『小さなおうち』 The Little House (2014)
監督:山田洋次
出演:松たか子、倍賞千恵子、黒木華、吉岡秀隆、片岡孝太郎、妻夫木聡
136mins

02-May-14 by nobuyasu

B00JUHGEPY 小さいおうち 特典ディスク付豪華版 ブルーレイ&DVDセット(3枚組)【初回限定生産】 [Blu-ray]
松竹  2014-08-08

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B00JUHVXO6 小さいおうち [DVD]
松竹  2014-08-08

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