『ポリス・ストーリー/レジェンド』警察故事2013 "Police Story 2013" ジャッキー・チェンの中国戦略?
東京からの帰路キャセイ機内で、ジャッキー・チェンの映画「ポリス・ストーリー」を何本か上映していた。その中に最新作『ポリス・ストーリー/レジェンド』(警察故事2013)もあったので観てみた。
この作品は、香港では2014年1月16日から公開された。とても中途半端な時期である。成龍(ジャッキー・チェン)の主演作で「警察故事」とくればヒット狙いで、旧正月直前の公開もアリなのにな?と不思議だった(今年は1月31日から)。それに題名が「警察故事2013」というのもけったいやな?と思っていた。2014年に公開なのに?
映画を観たら、その謎が解けた。なんじゃい、コレ中国映画やん!こっちが勝手に想像していた「ポリス・ストーリー」シリーズは、「香港警察故事」で、ぼくはてっきり香港警察の話だと思っていたが、この作品はまるっきり関係がない。ジャッキー扮する中華人民共和国の公安当局刑事の話だった(中国での公開は2013年12月)。
仕事に没頭するあまり家庭を顧みなかった刑事ウェン(ジャッキー・チェン)は、妻の最後も看取ることが出来なかった。それ以来一人娘ミャオ(ジン・ティエン)の恨みを買い、親子の仲は良くない。そんなある日、グレた娘に呼び出され、ナイトクラブ「ウー・バー」を訪れたウェンは、そのオーナー・ウー(リウ・イエ)と娘がつき合っていると聞かされる。交際に反対する父だが、店内で襲われ気を失ってしまう。やがて気がつくと、彼は他の客と娘と共に店内に人質として取られていることを知る。
さすがに60歳のジャッキーにド派手なアクションを期待しろという方が無理。この映画では誘拐された人質がいる店内と、外部の警察の駆け引きで話を引っ張って行く。やがて人質に取られた面々が、5年前のとある事件と関わりがあることがわかる仕組みになっているが、昔の「ポリス・ストーリー」を観ていた世代の客からすると、とても物足りなさが残る。
なるほどだから当地香港ではあまり宣伝もせず、印象として「あっという間に終わってた」という感じの興行だったのか、と思っていた。興行成績を調べてみても、US$194,777止まり(Box Office Mojoより)。シンガポールの興行成績US$1,941,030にも遠く及ばない。なんでこんなに力が入ってないんだ?と思ったが、中国での興行成績を見てびっくり。なんとUS$86,340,000もあるではないか!日本円で換算すると、約88億3千万円である。桁が一つどころか二つ違うわな。こらぁー香港なんか眼中にないのも当たり前である。
中国では年々スクリーン数が増えている。実際にぼくも、昨年揚州で見たショッピングモール内のシネコンの大きさに驚いた覚えがある。今では買い物に行って映画を観るという文化的な生活を中国の人民は楽しめるようになっているのだ。中国国内では、外国映画の上映は自国の映画産業を守るため年間34本と決められている。だが、ジャッキーのように、中国映画として製作すれば無問題。人口の少ない香港でどんなに製作費をかけ、ヒットしたってせいぜい10億円ほどだが、中国なら100億円も夢ではない。(失礼ながら)たかだかこんな「ポリス・ストーリー/レジェンド」でも88億円行くんだから。やっぱり13億人という人口の持つパワーはスゴい。香港も、ハリウッドも、世界中の映画人は今中国を目指している。ある意味ゴールドラッシュであろう。そこに早くから入り込んでいったジャッキー・チェンはやはり抜け目がない。やっぱ”成龍"は中国でもビッグ・ネームだからね。
警察故事2013
導演 :丁晟
演員 :成龍, 劉燁, 景甜, 殷桃, 那威, 劉儀偉
片長 :110分
15-Aug-14-Fri by nobuyasu