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2011-11-10

映画「猿の惑星」シリーズ [Blu-ray] Planet of the Apes - Movie Series


猿の惑星 コンプリート・ブルーレイBOX (初回生産限定) [Blu-ray]
猿の惑星 コンプリート・ブルーレイBOX (初回生産限定) [Blu-ray]


映画「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」"Rise of the Planet of the Apes" ('11) が公開になり、それに伴い旧シリーズがブルーレイになった。これを機会に全作を順番に観てみようと思い、日本版のボックスを買い求めた。


さすがにブルーレイだけに画像も音響もキレイだ。惜しむらくは吹替えが第一作のみのところ。音源がないので仕方ないのだろうが、もし吹替えが全てあれば究極のボックスとなったろうに(欲を云えば、ジーラはTBSでやった時の中村メイコでもう一回観てみたいね)。


猿の惑星 [Blu-ray]
猿の惑星 [Blu-ray]


「猿の惑星」"Planet of the Apes" ('68) 第1作は、1960年代のSF映画の大傑作として、今も人気があるのはうなずける。ラスト・シーンの衝撃は、知っていてもやはりショックなものだから。


宇宙船が不時着したのはどこの惑星なのか?その砂漠の不気味さ。やがて原住民に会い、猿による人間狩りに遭遇する。テイラー(チャールトン・ヘストン)は、そこで喉を撃たれ声が出ないという設定はうまい。やがて声が出た時に「この薄汚い猿どもめが!(Take your stinking paws off me, you damned dirty ape!)」と叫ぶところが効いてくる。


最後にテイラーは、ゼイウス博士(モーリス・エヴァンス)の忠告も聞かず、〈セクシー衣装の〉ノヴァ(リンダ・ハリソン)と馬に乗り、”危険地帯”へと行く。そこでテイラーが見た物とは…。


20世紀フォックス社は、60年代後半、巨額の製作費をかけた大作ミュージカル「スター」「ハロー・ドーリー」などの興業不振にあえいでいた。そこで浮上したのが「猿の惑星」の続編製作。当時、続編を作ることは当たり前ではなく、チャールトン・ヘストンも出演に難色を示したという。監督は1作目のフランクリン・J・シャフナーに代わり、後に「ダーティ・ハリー2」を撮るテッド・ポスト。


原作のピエール・ブールらが続編のアイデアを出したが採用されず、結局、プロデューサーのアーサー・P・ジェイコブスは、イギリス人の脚本家ポール・デーンを採用する。結果的に、この決定がシリーズの「味付け」に多いに影響するのである。当時のアメリカはベトナム戦争の最中で、人々は疲弊し、人種差別も根強く残っていた。英国人であるデーンは遠慮なくそれを「猿の世界」に置き換えて描こうとした。


続・猿の惑星 [Blu-ray]
続・猿の惑星 [Blu-ray]


「続・猿の惑星」"Beneath the Planet of the Apes" ('70) は、第1作のラストシーンから始まる。"危険地帯"に入って行ったテイラーとノヴァ。そしてテイラーを捜して、ブラント(ジェームズ・フランシスカス)の乗った宇宙船もまた不時着する。危険地帯では、地下で生き残った人類たちが、あろうことかコバルト爆弾を神とあがめ生きていたのだ。


製作費が前作の約半分(250万ドル)と減らされた関係で、そのしょぼさは明らかだ。クライマックスの教会のシーンでもスペクタクルになってない。唯一不気味なのは、マスクをとった地下人類のメイク。放射能にやられた人類の成れの果ては、だから気持ち悪く作る必要があったのである。


1作目と2作目は、時系列で「対」になっている。そして地球は滅亡した、というオチ。これで終わりかと思いきや、製作者のジェイコブスは「この続き」を脚本家デーンにまたまた依頼する。当たれば、ドジョウは2匹も3匹もいると考えるのが映画屋のサガなのだろう。


新・猿の惑星 [Blu-ray]
新・猿の惑星 [Blu-ray]


「新・猿の惑星」"Escape from the Planet of the Apes" ('71) は、海上に不時着した宇宙船から3人の飛行士が降りてくるところから始まる。そしてマスクをとったら"猿"だったというサプライズな演出。そう、コーネリアス(ロディ・マクドゥール)とジーラ(キム・ハンター)たちは、タイムマシンで過去へさかのぼり、1973年の地球(LA)へやって来たのである。


猿が現代社会に来れば、メイクに時間がかかる猿は3体で済む(そのうちサル・ミネオは冒頭すぐ死ぬww)。製作費はかなり抑えられ、今までの「人間が猿の社会を見る目線」から「猿が人間社会を見る目線」へと変わる。ここで、言葉を話す猿はセレブたちにもてはやされるが、やがて査問され危険分子とされ、抹殺される。だが、彼らの子供・マイロは、密かにサーカスの団長(リカルド・モンタルバン)に育てられているという所で終わる。もはや、シリーズ化するのが当たり前の終わり方だ。


監督のドン・テイラーはこの作品をラブ・ストーリーと考えていた。ユーモラスな場面もあるのだが、後半は脚本家デーンの考えである差別と暴力批判の映画となる。映画自体は製作費の関係で、クライマックスは、廃船の上としょぼくなる。猿のメイクは進化しており、コーネリアスもジーラも猿の演技も完璧に近い。これはもっと評価されてもいいかもww


猿の惑星・征服 [Blu-ray]
猿の惑星・征服 [Blu-ray]


「猿の惑星・征服」"Conquest of the Planet of the Apes" ('72) は、1990年のアメリカが舞台。人間たちが猿を奴隷のように扱い、成人し改名したシーザー(ロディ・マクドゥールがまた演じた)が反乱を起こすというもの。1965年に実際に起きた黒人暴動を、猿に置き換えて描く。


70年代初頭の公民権運動の高まりの中、黒人の差別問題を映画にすることはタブーだった。だが、SFである「猿の惑星」なら黒人を猿に置き換えて見せることが出来る。人間の奴隷にされたシーザーが怒りを爆発させて革命を起こすこの映画は、アメリカの黒人の観客のカタルシスを得た。監督の(あの「ナバロンの要塞」を撮った)J・リー・トンプソンはリアリティにこだわり、後半は暴力と血にまみれた映像となる。なのでシリーズ中一番ダークな作品となった。このブルーレイでは公開時、過激なためカットされたシーンも入れた完全版も観れる。


脚本家、監督の意気込みとは裏腹に製作費がますます無いようで、ほとんどのシーンを20世紀フォックスの近所に出来たビル群の中でロケしている。製作費があればもっと面白い映画になったかも知れないと思える映画だ。脚本家デーンの、暴力が世の中を変えることは出来ない。権力がシフトしても、復讐の連鎖で暴力は終わりがないのだという主張が一番反映された作品でもあるだろう。


新シリーズの「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」の主人公もシーザーだった。この「征服」が元ネタになっているのだが、膨大な製作費をかけて面白いアクション映画になっている(製作費約1,000万ドル)。J・リー・トンプソンが生きていたら嫉妬したかも知れないね(笑)


最後の猿の惑星 [Blu-ray]
最後の猿の惑星 [Blu-ray]


「最後の猿の惑星」"Battle for the Planet of the Apes" ('73) で、プロデューサーのジェイコブズは、前作で暗くなってしまった「さるわく」を明るいものにしようとした。デーンの書いた脚本(シーザーが暴君になる、ローマ王朝の退廃のような話)を採用せず、新たにウィリアム&ジョイス・コリントン夫婦を招き、”エデンの園”のような作品にした。


猿と人間の共存をテーマにするが、戦闘場面もあり、親子で楽しめる作品に戻そうとしているのだが、いかんせん製作費がない(笑)前作から引き継いだJ・リー・トンプソン監督も「あれしか出来なかった」と嘆いた。ズームアップと短いショットで戦闘シーンを繋ぐ。ぼくも公開時劇場で観たのだが、内容はほとんど忘れていたほど。それほどチープな映画なのである。


調べたところ、製作費は、1作目500万ドル、2作目以降250万ドル、200万ドル、180万ドル、170万ドルと下がっていった。インフレ率を考えても、これでは1作目を超える作品など作れるわけもなく、「さるわく」は1作目だけだ、と云われるのも仕方がないところ。2作目以降は毎年アメリカの夏休みに公開されていたのも雑になってしまった理由だろう。続けて観ると映画の質が落ちて行くのがまざまざとわかってしまう。


「最後の猿の惑星」では、ジョン・ヒューストン監督が猿メイクをしていた。1作目は当初エドワード・G・ロビンソンがゼイウス博士役でスクリーンテストを受けていた。2作目はオーソン・ウェルズに猿メイクさせようとしたが断られた。ギャラが安いが”大物”を使おうとしてたんだろうな(笑)


1作目、2作目に出演したセクシーなノヴァ役のリンダ・ハリソンは、フォックス社の重役だったリチャード・ザナックのオンナだった。2作目で地下人間、3作目では猿に理解を示す学者、4、5作目ではメス猿の役をやったナタリー・トランディは、プロデューサーのアーサー・P・ジェイコブスの奥さんである。なんか、家内工業的なニオイのする製作現場だったのではあるまいか(笑)


1作目で脚本を完成させたマイケル・ウィルソンは、赤狩りにあい自身の才能を封印された過去があった。2作目以降のポール・デーンは、広島・長崎に落とされた原爆投下を憂いていたという。一環しているのは、人類を破滅させたのは、原子力爆弾だったということ。それは60〜70年代の米ソの冷戦構造の中では現実味をおびた恐怖であった。


2011年の今、我々唯一の被爆国の国民である日本人は、原子力発電所の事故で恐怖に怯えている。これは脚本家のデーンも、そして未来の猿たちも予想もしなかったことだろう。これは破滅ではなく、自滅ではないのか…。そうなってはいけないのである。そんなことを「猿たち」に教えられた気がした。


"APE SHALL NEVER KILL APE" (猿は猿を殺してはならない)


Planet of the Apes: 5-Film Collection [Blu-ray]
Planet of the Apes, Beneath the Planet of the Apes, Escape from the Planet of the Apes, Conquest of the Planet of the Apes, Battle for the Planet of the Apes (Blu-ray - 2011/ Japanese Version)


どのブルーレイにも特典映像があり、それぞれメイキング、予告編、スティル・ギャラリーなど収録され、ディスクを入れると立法者による解説がある。ロディ・マクドゥールが解説した126分のドキュメンタリー「猿の惑星のすべて」"Behind the Planet of the Apes"は収録されていない。これを見たければ、35周年記念DVDのアルティメット・エディションを買うしかない。


09-Nov-11-Wed by nobu









B005CUG0D4猿の惑星 コンプリート・ブルーレイBOX (初回生産限定) [Blu-ray]
ピエール・ブール
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2011-09-21

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猿の惑星 DVDマルチBOX (初回生産限定)猿の惑星 DVDマルチBOX (初回生産限定)
ピエール・ブール

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猿の惑星 35周年記念 アルティメット・エディション [DVD]猿の惑星 35周年記念 アルティメット・エディション [DVD]

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猿の惑星Planet of the Apes/監督:フランクリン・J・シャフナー/1968年/アメリカ 「猿の惑星」は、人間が猿のかっこうをしていることが重要だと思うのです。 「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」予習のためにですね、シリーズを全部見ると、全部見ようと、思いましたがちょっとズルをして1作目だけ飛ばしました。15年くらい前にですがいちおう見ていますので、それよりは、見たことのない2作目以降をね。「続・猿の惑星」「新・猿の惑星」「猿の惑星・征服」「最後の猿の惑星」と、ティム・バートン... [続きを読む]

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