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2011年10月

2011-10-29

ジョニー・トー監督 「ライフ・ウイズアウト・プリンシプル」(原題) 奪命金 "Life Without Principle" Directed by Johnnie To

Odoru2810115

2011年10月20日から香港公開になった杜琪峰/ジョニー・トー監督・製作の新作映画「ライフ・ウイズアウト・プリンシプル(原題)」奪命金 "Life Without Principle"へ行く。

日曜日の夕方の回へ行ったのだが、トー監督のファンは年齢層が高めなのか、中高年の観客が多い。満員の劇場で楽しんで来た。

サスペンス映画なので、あまりストーリーは書かないほうがいいだろう。香港の銀行に勤める個人投資担当のOLは、業務成績が低迷していた。ちんぴらヤクザは自分の兄貴分の保釈金を捻出するため簡単に金が入らないものかと思っていた。真面目な警官は、妻が高級マンションを買うと言い出し、早急な決断を迫られていた。そんな人々が、とある高利貸しの殺人事件にからみ「お金」でつながって行く。

Odoru2810112

ここで描かれるのは、香港という拝金主義の象徴のような都会に住む人々。銀行に投資相談に来る老婆は、金利が安すぎるとぼやいたところ、ハイリスクの商品をつかまされる(この銀行のシーンはやたらリアルで、投資に関するアンケートに答え、契約する前に「全て理解しました」と云わされ録音される。ぼくも経験があるのだが、アンケートの質問も全く一緒で笑ってしまった)。上環にある高級マンションを若い妻がどうしても早く買いたいというシーンもリアルで、不動産屋は他にも欲しがっている人がいると云って手付金を入れさせようとする(今は中国人がキャッシュで買ってしまうご時世なので)。ヤクザでさえ株に興味があるが、現在現実に進行中のギリシャ・クライシスで痛い目にあってしまう。

ぼくは今年香港在住7年となり、永久居民(Permanent ID)をもらったのだが、香港の人たちの「お金」に対する執着は長く住んでいるとよくわかる。象徴的なのは、旧正月にもらう赤い袋の利是(れいし = Lucky Money)をもらったら、お礼に「もっとお金持ちになりますように」という意味の「恭喜發財!(Kung Hei Fat Choi)」と云うのが礼儀なのである。

よくいえば上昇志向の強い人たちの集まりと思うが、悪くいえば強欲な人間が多いともいえる。そんな土地柄だからこんな映画が生まれたのかと考えたりする。香港人をそういうモラルなきグリーディな人間として描いたためなのか、当地香港でのこの映画の評価はあまり高いとはいえない。だがぼくは、三者三様のドラマが繋がって行くストーリーテリングが面白く最後まで飽きなくて、さすがジョニー・トーと思ったのだが。

目をぱちぱちさせチック症のようにして、三流チンピラを演じる 劉青雲/ラウ・チンワン(「MAD探偵 七人の容疑者」)、真面目な刑事 任賢齊/リッチー・レン(「アクシデント」)共に相変わらず演技がうまいが、ぼくは成績の上がらないOLを演じた 何韻詩/デニス・ホーがすごくイイと思った。えらくリアルなんである。ホントに香港の銀行行ったらいそうな感じなのだ(笑)

お金にまつわる話として、香港へ来てよいことがなかったと云う老人や、刑事の父が死ぬ前に残した腹違いの幼い妹(妻は中国へ逃げ帰った)というエピソードが影を落とす。

これはシニカルなサスペンス・ブラック・コメディ。 金とマネーゲームに奔走している現代社会。額に汗せず、誰が一体得をしているのか?ジョニー・トーの問いかけは香港はじめ世界の人々にどう届くのだろう。デニス・ホーがアイスクリームを舐めながら、尖沙咀のK11前を横切るラスト・シーンを観ながらそんなことを考えたのでありました。

奪命金 Life Without Principle (2011)

Produced and Directed by Johnnie To
Cast : Sean Lau Ching-Wan, Richie Jen, Denise Ho
Duration : 107 minutes

28-Oct-11-Fri by nobu

2011-10-27

由紀さおり&ピンク・マルティー二「1969」[CD] PINK MARTINI & SAORI YUKI / 1969

1969 1969
由紀さおり&ピンク・マルティーニ

曲名リスト
1. ブルー・ライト・ヨコハマ
2. 真夜中のボサ・ノバ
3. さらば夏の日
4. パフ
5. いいじゃないの幸せならば
6. 夕月
7. 夜明けのスキャット
8. マシュ・ケ・ナダ
9. イズ・ザット・オール・ゼア・イズ?
10. 私もあなたと泣いていい?
11. わすれたいのに
12. 季節の足音 (ボーナス・トラック)

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由紀さおりとピンク・マルティーニのコラボレーション・アルバム CD「1969」が2011年10月、世界発売になった。これはスゴいことなんである。なぜスゴいかは後で書く。

ぼくも香港で買おうと思っていたのだが、調べたら来年(2012) 1月発売とかで、待ってらんないので、iTunesからダウンロードした。→ココ

iPhoneに入れて、その日の飲み会がある尖沙咀(チムサーチョイ)の"博多道場"まで、MTR(地下鉄)で「ブルー・ライト・ヨコハマ」を、繁華街で「いいじゃないの幸せならば」を聴きながら歩いた。いいねぇ、これ。歌が抜群にうまい由紀さおりが、1969年に流行った歌謡曲・ポップスを歌う。外国に住んでいると、この澄み切った由紀さおりの歌声が胸に響く。俺も思わず一緒に口ぐさんでしまった「いいじゃないの、今がよけりゃ」と。

1969年というと、ぼくは9歳だった。「ルールールルルー♫」と唄う由紀さおりの「夜明けのスキャット」が大ヒットした年。ここで歌われる全ての曲を知っていたわけではないが、今聴くとその歌詞の意味が深く、そしてよーくわかる。9歳のガキンチョにわかれというのが無理というもの。ルノー・ベルレー主演の映画「さらば夏の日」の主題歌はフランス語で、ピーター・ポール&マリーの「パフ」、セルジオ・メンデスの「マシュ・ケ・ナダ」、ペギー・リーのヒット曲「イズ・ザット・オール・ゼア・イズ?」は日本語の詩だ。特に「イズ・ザット〜」を「そんなもんよ」と歌う由紀さおりはアンニュイさも相まって絶妙のフレイバーを醸し出す。

ピンク・マルティーニは、日本ではあまりその名は知られていないが、欧米はじめ世界では260万枚の売上実績を持つアメリカのジャズ・オーケストラ・グループである。オレゴン州ポートランドに住む彼らのリーダー、トーマス・M・ローダーデールが中古レコードショップでたまたま手にとった由紀さおりのLPレコードを聴き、その歌声に魅せられ、アルバム「Hey Eugene!」に「タ・ヤ・タン」のカバーを収録。これが縁で、世界発売されたクリスマス・アルバム「Joy To The World」に由紀さおりが日本語で「ホワイトクリスマス」を歌い、今回のアルバムへと繋がって行ったのだ。

ぼくも昨年(2010年)、香港のhmvで由紀さおりの「ホワイトクリスマス」を試聴した時、日本人としてとても嬉しかったのを思い出す。

当初、由紀さおりのニュー・アルバムのアレンジ及びプロデュースをトーマス・M・ローダーデールに依頼したところ、レコーディングを進めるうちにピンク・マルティーニのニューアルバムにしようということになり、このアルバムのアメリカ、ヨーロッパ、アジアを始め全世界発売が決定したのだ。この辺りの経緯は、由紀さおりオフィシャル・HPに掲載されている〈オトナの歌謡曲/娯楽映画研究家〉佐藤利明氏のライナーノーツ「“Pink Martini & Saori Yuki 1969” 奇跡の軌跡」に詳しい。

日本語の”歌謡曲”を歌ったアルバムが世界発売になること自体スゴいことなのに、さらに2011年10月17日には、ロンドンの(あの!)ロイヤル・アルバート・ホールでのPink Martiniのコンサートに由紀さおりが参加。BBCオーケストラをバックに日本語の歌謡曲を歌い7000人の満員の観客から拍手喝采を浴びたのだ(その模様はBBCラジオで2時間に渡り放送された)。

コンサートで、Pink Martiniのリーダー、トーマスは由紀さおりを紹介する時「日本のバーブラ・ストライサンド」と云った。
かつて、映画監督クエンティン・タランティーノは梶芽衣子を「発見」し「キル・ビル」でオマージュを捧げた。トーマス・M・ローダーデールは由紀さおりを発見し、そして世界に紹介した。我々日本人が誇りを持てる現代の文化はアニメだけではないのである。若いネット世代の人たちにも、そのスゴさを少しでもわかってもらえればと思う。

「1969」は、だからスゴいアルバムなんである。

PINK MARTINI & SAORI YUKI / 1969

27-Oct-11-Thu by nobu

【追記】「1969」は今日現在(2011年11月3日)、アメリカ iTunes のジャズ・チャートで第1位を獲得!これは快挙である。

Odoru031111

【関連】
Asahi.com(朝日新聞)の記事→ ココ
佐藤利明のTICKLE ME 娯楽映画と音楽と

B005G66WIW 1969
由紀さおり&ピンク・マルティーニ
EMIミュージックジャパン  2011-10-12

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B005MJVMZQ Joy to the World
ピンク・マルティーニ
EMIミュージックジャパン  2011-11-16

by G-Tools

2011-10-24

「ブライドメイド(原題)」BRIDESMAIDS クリスティン・ウィグ / ローズ・バーン

東京行キャセイ機内で観たのがコメディ映画「ブライドメイド(原題)」"BRIDESMAIDS" である。R指定(18禁)の結婚式に伴う女子会を描いたもので、アメリカでの評判は知っていたが、たしかに面白い映画だった。

主役は声がオリビア・ニュートン・ジョンそっくりで、どっかで見たことあるよなぁと思ったのだが、「宇宙人ポール」に出てたクリステン・ウィグだった。SNL出身のコメディエンヌで、美人でキュートなのだが面白い。そして、本作では脚本まで担当しているという才女なのだ。

Odoru 2410112

30代半ばのアニー(クリステン・ウィグ)は、自分が町でやっていたケーキ・ショップを閉め、カレシとも別れ、今は宝石屋の売り子として働いている。ある日彼女の幼なじみのリリアン(マヤ・ルドルフ)から結婚するので、アニーにメイド・オブ・オナー(花嫁付き添い役)になって欲しいと云われ二つ返事で了解する。婚約記念パーティの席で、アニーはリリアンの結婚式のブライドメイドとなる面々を紹介される。そのうちの一人、リリアンのフィアンセの上司の妻ヘレン(ローズ・バーン)はリッチで完璧な女性。なんか馬が合わねえなと思いつつ、リリアンのためと思い結婚式の準備をすすめるが、ついにアニーはキレてしまうのだった…。

お下品なシーンも、セリフもいっぱいあるのだが、可笑しくてやがて切なく、そして見終わったらハッピーな気持ちになる。打ち合わせで行ったブラジル料理で全員お腹の具合が悪くなり、高級ブライダルショップで騒動を起こしたり、「ハングオーバー」みたいに女子たちで独身最後のパーティをしようとラスベガスへ行くが、機内で"ハングオーバー"になってしまったり(笑)

主人公のアニーは、「セックス・アンド・ザ・シティ」のような〈40歳も近いのに夢見る乙女〉ではない、等身大の女性なのがイイ。今はセックスだけが目当ての男と付き合ってはいるが、出会った心優しい警官(クリス・オダウド)とも一夜を共にし、やがて傷つけてしまう。人生うまくいかないときは全てがうまくいかなくなってしまうもの。

自分が一番仲良かったはずの親友が、他の女子ともっと親密だと知らされ、嫉妬心を抱いてしまうアニー。結婚式を彩る新婦の友人たち(ブライドメイド)は、変わった奴らで自分が考えてるような結婚式のパーティにはなりそうもない。主人公のイライラする気持ちが観客にも伝わって来る。だがキレてしまったからといって、それで物事がうまく収まるわけもない。自分で自分のケツは拭かなきゃなんない。結果、人生ってそんなこと。八つ当たりをしても何も始まらない。それがわかり行動した時、初めて人生は好転する。

アメリカン・コメディをぼくが好きな理由の一つは、こういった人生における教訓を笑いに包んで教えてくれるところ。失敗しても、精一杯やれば何とかなるし、みんな幸せそうに見えて辛いこともいっぱいあるんだよってこと。

香港では2011年9月15日に公開済だが、日本での公開はまだ知らない。デート・ムービーというより、女子会の前に観ると盛り上がるだろうと思う映画である。あんまりおっさんが一人で見る映画ではなかったな、コレは(苦笑)

あ、そうそう、往年の映画ファンのぼくには、アニーの母親役のジル・クレイバーグ(「結婚しない女」)の出演が嬉しかった。だが、残念なことに、これが最後の出演作となってしまったのだそうである。

原題は「ブライドメイド」より「ブライズメイズ」かな発音的には?(笑)

BRIDESMAIDS (2011)

Directed by Paul Feig
Cast: Kristen Wiig, Maya Rudolph, Rose Byrne, Wendi McLendon-Covey, Ellie Kemper, Chris O'Dwd, Jill Clayburgh
Duration: 125 minutes

24-Oct-11-Mon by nobu

B005CHTXY0 Bridesmaids (Two-Disc Blu-ray/DVD Combo + Digital Copy in Blu-ray Packaging)
Kristen Wiig
Universal Studios  2011-09-20

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2011-10-20

「ツリー・オブ・ライフ」The Tree of Life ブラッド・ピット × テレンス・マリック

Odoru 1910114

テレンス・マリック監督の新作映画「ツリー・オブ・ライフ」"The Tree of Life" である。

東京出張の帰路、キャセイ機内、アップグレードしてくれたビジネスクラスの大きい画面で鑑賞。見終わって、これは劇場のもっと大きな画面で見る映画だったなと感じた。そして、これは観客を選ぶ映画であるとも。

これは、映画を見慣れた人はまだ大丈夫だろうが、そうでない観客には難解で退屈な作品だと思う。ぼくも軽々に「理解出来た」とは云わないが、テレンス・マリック監督がこういうことを云いたかったんだろうな、というのはおぼろげにわかる(←おぼろげかい!)。

今年2011年のカンヌ映画祭ではパルムドール(最高賞)を受賞。だが評論家の評価は賛否あったと聞く。果たしてこの映画は「2001年宇宙の旅」のように語るに足りる映画なのであろうか?

(以下、ちとネタバレっぽいところもあり)

ストーリーと云えるかどうかわからないが、プロットはテキサスの田舎町で、信仰心の強い厳格な父(ブラッド・ピット)とやさしい母(ジェシカ・チャステイン)に育てられた長男(ショーン・ペン)が、大都会の真ん中で、亡くなった弟や両親と過ごした少年時代に思いをはせる… というもの

2時間20分の間、画面は薄ぼんやりした炎のような赤色の画面、流れて来るマグマ、宇宙から見た地球などが映し出され、その合間に少年時代の厳しかった父や兄弟との思い出、長男の現在の自分の葛藤などが描かれていく。だが、これがさっぱりわからんちんなのだ。それは、「時間」がむちゃくちゃに配列されているからだ。

普通の映画は、時間とともにドラマが展開していく。回想シーンはそれとわかるように作られているが、この映画はそれを完全に無視している。

もし、この映画をバラバラにして時系列に編集し直せば、おそらくこういう流れになる。

1)地球の創造。赤い炎はおそらく神。生命の誕生、隕石が地球にあたり恐竜が死に絶える。
2)父と母の出会い、結婚し田舎の一軒家で男の子3人が生まれ生活するが、やがて住み慣れた家を出て行く。
3)長男が大都会で昔を思い出す。

Odoru 1910112

時系列に映せば面白くもなーんもなくなるし、観客に考えさせることもない映画になってしまう。壮大な叙事詩なので、SFXなどを使い、紀元前の地球の映像も見せ、時間軸を崩し見せる。これにより、地球上の大きな自然の変化と、一つの家庭で起こる事象を同じような目線で捉えることになるのだ。

Tree of Life とは生命の起源であり、地球上の全ての生命はその一本の木でつながっているということ。生きること、死ぬこと、この繰り返しで地球の全ての生命は生かされて来た。そしてこれからもそうやって歴史は繰り返されていく。

映画の中でも数々の木が象徴的に現れる。大都会の長男の目に映る木、少年時代の庭にある木など。ラストでは長男が現在の自分と過去の自分と向き合う。そして少年当時の両親にも会う。これは自分で自分のインナーチャイルド(=過去の傷)を癒すことが出来たという意味なのだろうか。

テレンス・マリックの罪作りなところは、どの場面も絵がとても美しいところ。だから最後まで見入ってしまうのだ。「大きな画面で見る映画」と先に書いたのはそういう意味である。

だが、正直もう一回観ようとは思わないな。やっぱり辛抱して最後まで観たというのが本音である。結局ドラマの部分も含め、辛いのだ。つまり気持ちが上に行かず、下がってしまうから。人生を重く考えることは出来るが、楽しい気分にはなれない映画だ。

議論好きな人はこの映画を肴に酒を呑みながら語ることは楽しいだろう。だが、ぼくは遠慮しとく。それをやると底なし沼になってしまいそうだから、議論も酒も(笑)

Tree of Life (2011)

Written and Directed by Terrence Malick
Cast: Brad Pitt, Sean Penn, Jessica Chastain
Duration: 139 mins

20-Oct-11-Thu by nobu

 

 

2011-10-18

ありがとう ステーブ・ジョブズ氏 Thank you Mr. Steve Jobs

Odoru 1810115

2011年10月5日にスティーブ・ジョブズ氏が亡くなって、ぼくも寂しい思いをしている一人だ。

追悼というにはおこがましいが、つたない文をしたためてみよう。

彼が世界中の様々な人の人生と人生観を変えたのは周知の通りだ。ぼくもその一人である。

iPodを初めて使った時の感動。そのデザインのかっこよさもさることながら、人間工学的にこれほどシンプルに処理できるツールがあったのかという驚き。

iPhoneに至っては、香港へ来て以来、ノキア製のそのゴツゴツとした感じが当たり前の携帯電話の中、こんな使いやすくスマートな携帯電話が出現したという衝撃。

以来事務所も自宅でも全てmacに変えた。今はもうWindowsに戻れなくなっている。

映画ファンの自分としては、彼がPixerを買収してくれたから、数々の映画で楽しませてもらえたと感じる。ジョージ・ルーカスが離婚をしなかったら、Pixerを手放すこともなかったろうし、ジョン・ラセターという宮崎駿を崇拝するアニメおたくがいなかったら「トイ・ストーリー」も生まれなかった。世界中に健全なファミリーピクチャーを提供しつづけてこれたのもジョブズ氏という後ろ盾があったからだろう。

彼は経営者というより、職人かアーティストのようだった。だから世界中にファンが多かったのだと思う。
先日ニューヨークへ行った時、MoMA(NY近代美術館)に初代Macintoshが飾ってあった。Appleは初期の頃からそのデザインにこだわった。それもジョブズ氏の美学だったのだろう。

自分が気に入らない製品を持って来たら、激高して壁に叩きつけたとも聞く。それは自身が妥協した製品作りで手痛い失敗をし(Apple 3)、会社を追われた辛い思い出があったからかも知れない。

彼が残したものは、ツールだけでなく、スピリットもあった。有名なスタンフォード大学での講演で語った"Connecting the dots"ということ。点と点がつながる、つまり人生決して無駄なことはないんだという教え。「もし今日が人生最後の日ならば、今日するつもりでいたことをやるだろうか?」という死生観。締めくくりの「ハングリーであれ、利口者になるな」という若者への強いメッセージ。

iPad 2 でTIMEのステーブ・ジョブズ追悼号を読んだ。素敵な写真がならんでいた。アメリカの雑誌をこんなB5サイズに近いボードのようなもので読めるなど、数年前に誰が予想しただろう。世界はどんどん変わって行ってるのがこのツールを通してわかる。出たばかりの iPhone 4S は (For Steve)という意味もあると聞くと切なくなる。

上のへたな絵は、ぼくがiPad 2のSketchBookで自分の指で描いたもの。ぼくらの時代に、こんな素敵な時間をくれたスティーブ・ジョブズ氏に感謝を込めて。

by nobuyasu

18-Oct-11-Tue

ステーブ・ジョブズ氏 スタンフォード大学でのスピーチ

2011-10-17

「駅馬車」DVD クライテリオン・コレクション STAGECOACH by John Ford

 

Stagecoach (The Criterion Collection)
Stagecoach (The Criterion Collection)

このところ忙しくてさっぱりブログが書けなかったため、ネタがたまって困ってる。あれも書かなきゃ、これも書かなきゃ…と誰に頼まれたわけでもないのに勝手にあせってる自分がいる。そんな待ってるファンがいるわけでもなかろうに。あはは。

そんなこんなで、時系列に追っていくと大変なもんで、思いついたところから書いていこうと思ってる。ま、これは個人のブログなので自由にやらせてもらいま。

てなことで、今回書こうと思ったのがコレ、ジョン・フォード監督の映画「駅馬車」"STAGECOACH"である。若い人はあまり知らないだろうが、これこそ映画史に残る傑作中の傑作である。1939年の白黒映画なので、古臭いと思うかも知れないが、今観ても面白いったらない。実際ぼくもこのクライテリオン版で久しぶり(それこそ10〜20年振り)に観たが、何度も観た映画なんだけど、あっと言う間の96分間であったのだ。

それまでB級の評価でしかなかった西部劇で、こんなに面白いものが出来るのだ、と世界を驚かせ、娯楽映画でも一級品の映画が出来るのだということを証明した映画史上の金字塔。そのストーリーテリングの妙、個性豊かなキャスティング、息をもつかせぬアクション、芸術的なカメラワーク、そして見事なカッティング(編集)!これぞ「映画の教科書」と云っても過言ではない素晴らしさ。

この映画に影響を受けたのは、日本の黒澤明を始め、世界中の映画監督(このクライテリオン版でも「ラスト・ショー」のピーター・ボクダノヴィッチが熱く語ってる)。未だに映画史上最高傑作と云われる「市民ケーン」を撮る前にオーソン・ウェルズもこの映画で編集を学んだ。

駅馬車に乗り合わせた乗客たちが、到着地へ着くまでに繰り広げるドラマ。乗客は、酔いどれ医師、酒の行商、賭博師、銀行家、妊婦、情婦、そして脱獄囚のならず者リンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)。途中、ジェロニモ・インディアン(←今はこう言ってはいけないのだが)に襲われながらも旅を続けるのである。

Odoru 1610115

若い頃は、ジョン・ウェインのかっこよさを中心に観ていたが、年を取ってから観てみると、これは酔いどれ医師のトーマス・ミッチェルのもんだったんだとわかる(これでアカデミー助演男優賞受賞)。急な妊婦の出産シーンではブラックコーヒーをがぶ飲みし、水を頭からかぶり事にあたる。人間やるときゃやるんだぜ、という心意気がいいのだ。

今回初めて英語で通して観たのだが、ジョン・ウェインの〈だいこん役者〉ぶりが可笑しかった。ホントにへたなんだな、これが(笑)。クレア・トレヴァーとの恋の場面などは、逆に微笑ましいほど。

このDVDは何が素晴らしいかというと、そのリストアである。毎回クライテリオン版のリストアは目を見張るものがあるが、今回も見事なコントラストの白黒画面を見せてくれる。ネガがないのでポジからのリストアなため、傷の修復など不可能な点はあるが、70年以上前の映画の比較的良質な現存するポジプリントからここまでのクオリティにした、その努力は見事といえる。

クライテリオンのHPからその一場面が見れる→ "Stagecoach" Criterion Collection

特典映像では、この映画のスタントマン、ヤキマ・カヌッツ(Yakima Canutt)を讃えるビデオが面白かった。あのリンゴが馬から馬へ飛び移る映画史上に残るシーンと、駅馬車の下をくぐるインディアンを演じたのは同じ人だったのだ。彼は現在でもスタントマンの中では伝説の人で、「レイダース 失われたアーク」に、軍用車の下をインディがくぐる同じシーンがあるが、あれはヤキマへのオマージュだったのだと。

ぼくはこのDVDを中環(Central)にあったHMVの閉店セールで買った。30%オフだったので買物である。日本では東北新社版か、激安版しかないのだろうが、出来ればこのクオリティで観て欲しいなと思う。アメリカ盤だけど、Blu-rayもあるので日本のプレーヤーでも見れるのだが…

夏休みに田舎に帰省した際、友人のYちゃんに「この『駅馬車』はすげぇど」と話したが、「字幕がねえとおえんわ」と一蹴された(笑)。このクオリティで、日曜洋画劇場でやった時の吹替(納屋悟朗、大平透、武藤礼子のやつ)で見れたら最高なんやけどな、とYちゃんと話したのだった。

STAGECOACH (1939) The Criterion Collection

Directed by John Ford
Cast: John Wayne, Claire Trevor, Thomas Mitchell, John Carradine
Duration: 96 minutes

Black & White
Monaural
1.37: 1 Aspect Ratio

17-Oct-11-Mon by nobu

Stagecoach (The Criterion Collection) [Blu-ray] Stagecoach (The Criterion Collection) [Blu-ray]
Bert Glennon

Criterion  2010-05-25
Sales Rank : 40491

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Stagecoach (The Criterion Collection)[DVD] Stagecoach (The Criterion Collection)
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ダドリー・ニコルズ

東北新社  2005-06-24
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2011-10-16

「ジョニー・イングリッシュ・リボーン(原題)」 Johnny English Reborn ローワン・アトキンソン

Odoru1610116

Mr. ビーンことローワン・アトキンソンが007ばりの英国の諜報部員となり活躍するコメディ映画「ジョニー・イングリッシュ・リボーン(原題)」"Johnny English Reborn"である。
香港でも国慶節にあわせて2011年9月29日公開となりヒット中である。ぼくら父娘も満員の劇場で大笑いして来た。

これは同じアトキンソンが主演した「ジョニー・イングリッシュ」('03)の続編である。だが、ぼくらのように前作を観てなくても何の問題もなく楽しめる作品であった。

Odoru1610113

5年前、英国の諜報機関MI7に所属する諜報員ジョニー・イングリッシュ(アトキンソン)が突然姿を消した。今までの失敗を恥じた彼は、チベットの山奥でクンフーの修行に精を出していたのである。

「バットマン・ビギンズ」のような始まり方だが、もうそっから大笑い。金●を鍛え抜き、クンフーがちっとも上手くないのに、けっこう相手をやっつけるもんだから師父にもほめられるイングリッシュ。修行を終え生まれ変わった彼は、英国へ戻ると、なんとMI7の玄関は日本企業・東芝になっていた(笑)

そこからイングリッシュは、核兵器にからむ中国の要人暗殺を阻止し世界を守るため、新たなミッションに命をかけるのであった…。

最初に飛んで来るのは、当地・香港!で、次のシーンは香港ではなく、マカオのカジノ。ここで、HK$1,000を得意気にチップに換えるのだが、これって日本円で1万円くらい。なのに、「領収書をくれ」なんて(笑)

カジノでのギャンブル、香港の海でのボート・チェイス、謎の東洋の老女、クンフー・アクション、改造したロールス・ロイスや秘密兵器、カーチェイス、イイ女…。そうここには007をはじめとしたスパイ・アクション映画のエッセンスがいっぱい詰まっている。極めつけは、クライマックスのスイスの雪山の要塞での格闘となれば、もうそれだけで往年のスパイ映画ファンは嬉しくなる。

日本ではMr.ビーンというともう時代遅れと思われるだろうが、ここでのアトキンソンはチョー面白い。バリっとしたスーツに身を包むが、もうやることなすことドジばかり。ベタなことはわかってるんだけど、腹を抱えて笑ってしまった。

イングリッシュは中国語が出来る設定で、通訳するんだけどこれも間違ってばかり。香港人半分、西洋人半分の観客は爆笑の連続だったよ。

しょーもない映画だけど、ぼくら父娘は大いに気に入った。まるでMr.ビーン版「女王陛下の007」だ。ラストのオチもいい。あえて〈ケッ作〉と云おう(笑)。面白かった。

日本でも公開予定らしいので楽しんでけれ。てなことで。

Johnny English Reborn (2011)

Directed by Oliver Parker
Cast: Rowan Atkinson, Rosamund Pike, Dominic West
Duration: 101 mins

16-Oct-11-Sun by nobu

B003VTG10K ジョニー・イングリッシュ 【ベスト・ライブラリー 1500円:コメディ映画特集】 [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル  2010-10-06

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2011-10-15

ウディ・アレンの音楽集「マンハッタン」から「ミッドナイト・イン・パリ」まで [CD] Woody Allen / La Musique from Manhattan to Midnight in Paris

La Musique De Manhattan À Midnight In Paris La Musique De Manhattan À Midnight In Paris
Woody Allen

Milan  2011-07-18
Sales Rank : 698

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香港は銅鑼湾(Causeway Bay)のhmvへ行ってジャズのコーナーを眺めていたら、視聴盤でこのCD "Woody Allen / La Musique from Manhattan to Midnight in Paris" が飾ってあった。

これは嬉しい。最近ウディ・アレンの新作映画「ミッドナイト・イン・パリ(原題)」を観たばかりだったので、映画と同じ音源を聴けて嬉しかったのだ。

考えてみると最近ウディ・アレンの映画のサントラ盤が出ないな?と感じていたので(じつは出てるがわしが知らんだけかも…)この2枚組に入ってるオールド・ジャズのサウンドがとても心地よい。ウディ・アレン映画ファンにはたまらないCDなんである。

ここに収録されている36曲は、最新作「ミッドナイト・イン・パリ」('11)に始まり、「ユー・ウィル・ミート・ア・トール・ダーク・ストレンジャー(原題)」('10)、「人生万歳!」('09)、「それでも恋するバルセロナ」('08)、「ウディ・アレンの夢と犯罪」('07)、「タロットカード殺人事件」('06)、「マッチポイント」('05)、「メリンダとメリンダ」('05)、「スコルピオンの恋まじない」('01)、「ギター弾きの恋」('99)、「セレブリティ」('98)、「地球は女で回っている」('97)、「誘惑のアフロディーテ」('95)、「ブロードウェイと銃弾」('94)、「マンハッタン殺人ミステリー」('93)、「アリス」('90)、「ラジオ・デイズ」(97)、「ハンナとその姉妹」('96)、「カイロの紫のバラ」('95)、「スターダスト・メモリー」('80)、「マンハッタン」('79)と続く。

ウディ・アレンは自身がクラリネットを演奏して、ニューヨークのジャズバンドと一緒に今でも活動していると聞く。こうやって続けて彼の映画に使われた音楽を聴いていると、古い音楽に対するその造詣の深さがみてとれる。アレンは今76歳である。1935年生まれを考えるとこの音楽の趣味・し好もわかる。人間は誰しも自分が生まれ、青春時代までに聴いた音楽が好きなものだから。

このCDはフランスで製作されたもののようで、アメリカのAmazonにもなかった。英国のAmazonにはあったのだが、題名が"La Musique"(The Music)であるからして、ライナーノーツもフランス語。ぼくは、マドモアゼルをパーティから連れ出すくらいのフランス語しか出来ないので(←うそ!)、解説を読んでもわからんちんだが、映画と同じ音源か、それに近いものを持って来ているのだと思う。

日本からAmazon.UKでCD買うのが一番だが、日本でも手に入れる方法があるから大丈夫。それはiTunesからダウンロードするんである→ココ

日本で「ミッドナイト・イン・パリ」が公開される前に、素敵なオープニングで使われる2曲目の”Si tu vois ma mere"で予習しておくことをおすすめします(笑)

Woody Allen / La Musique De Manhattan A Midnight In Paris

15-Oct-11-Sat by nobu

La Musique De Manhattan À Midnight In Paris La Musique De Manhattan À Midnight In Paris
Woody Allen

by G-Tools

 

2011-10-10

「ソース・コード」(原題) Source Code ジェイク・ギレンホール × ダンカン・ジョーンズ

Odoru1010113

ちょっと古い話になってしまったが(忙しくってブログが書けねーよぉ)、今年(2011年)の夏休みは子供達とニューヨークへ行って来た。その際、キャセイ機内で観た数本の映画の中で一番面白かったのがコレ「ソースコード」"Source Code"である。

主演はジェイク・ギレンホール(「ブロークバック・マウンテン」)、監督はダンカン・ジョーンズ(かのデビッド・ボウイの息子さん!)。なぜコレがよかったかというと、SFスリラーなのだが、男にはたまらない切ない映画だったんである。

列車の中で目覚める男(ギレンホール)。目の前の彼女らしい女性(ミシェル・モナハン)が話すが自分ではよくわからない。そのうち乗っていた列車が大爆発を起こし全員が死亡する。次に目覚めると、彼は何やらヘリコプターの操縦室のような暗いカプセル内にいる。じつは彼はアフガニスタンで撃墜されたパイロットなのだ。モニターを通して話かけてくる軍服を着た女性(ヴェラ・ファーミガ)とその上司(ジェフリー・ライト)。彼らの説明によると、彼は死を迎える人間に8分間だけ成り代われるプログラム「ソースコード」を埋め込まれ、列車爆破テロ犯人を突き止めるというミッションを与えられているのだという。

何度も何度も爆破8分前の列車に連れ戻される男。果たして彼は犯人を突き止めることが出来るのか?

Odoru1010112

"映画"が持つ面白さの一つに、時空を飛ぶというのがある。それは現実には不可能だが、映画内では可能だ。この作品の面白いところは、その時空を飛んで行く場所がただ一カ所、列車内だけというところ。何度も同じ乗客のいる同じ列車に、同じ時間に乗り合わせる。そうすることで、観客も一緒に犯人探しをすることになる。

それに観客は、列車内にいる人々が、あと8分たったら死んでしまうという事実を知っている。何度もその列車内に入って行くことにより、なんとか彼らを助けてやりたいという主人公と同じような気持ちにもなるのだ。

このアイデアはとても面白いし、新しい試みと思う。このプロットを考えたベン・リプレーというまだ新人の脚本家の勝利だろう。
時間が戻るという設定は、最近では「バンテージ・ポイント」があったが、あっちはアクション中心で、こっちはドラマがあるのでちと重みがあるように感じてしまう。

上にも書いたように、この映画のキモは後半にある。スリラーなので多くは書けないが、男ならなんとも切ない気持ちになるのだよ。それがあるからこの映画は佳作となりえたと思う。

日本での公開はまだ聞いてないが、これが公開されれば映画ファンの間で話題になるだろう。そんな映画だ。(香港では2011年4月21日より公開済)
リミットレス」なんかよりこっちの方がずっといいぜ。早く公開しなはれ(笑)

【追記】 日本では「ミッション:8ミニッツ」として、2011年10月28日公開。

Source Code (2011)

Directed by Duncan Jones
Cast: Jake Gyllenhaal, Michelle Monaghan, Vera Farmiga, Jeffrey Wright
Duration 93 mins

10-Oct-11-Mon by nobu

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