映画 2010年

2011-08-15

「チコ&リタ」(原題) Chico & Rita [DVD]

スペインのアニメ映画「チコ&リタ」"Chico & Rita"である。

今年(2011年)の香港国際映画祭で上映され、すぐにソールドアウトとなったため、観れなかったぼくはこの映画のDVDをAmazon.co.ukに発注した。
年をとってから、こんなに来るのを待ちわびた映画はなかった。そして、ぼくのカンは当たった。

これは紛れもなく、近年にない傑作ジャズ映画だったのだ!

小粋なジャズにノって始まるこの物語は、一人の靴磨きの老人が家に帰るところから始まる。彼の名前はチコ。アパートに戻り、酒を注ぎ葉巻に火をつけラジオをつける。そこへ流れるのはチコ&リタの唄う60年前の懐かしのメロディ…。

そして男は思い出す。かつて愛した女、美貌のシンガー・リタのことを…。

二人の出会いは、1948年。キューバ革命前、ハバナのバーであった。客として来ていた若き才能あるピアニスト・チコと、舞台で「ベサメ・ムーチョ」をセクシーな声で唄うリタ。二人はやがて愛し合うが、ささいな行き違いで仲違いをしてしまう。リタはやがてニューヨークで歌手として成功し、ラスベガス、ついにはハリウッド進出も果たす。チコもニューヨークへ渡り、ディジー・ガレスピー・バンドの一員としてパリへ行くのだが…。

流れるのは、キューバン・サウンドを始めとするジャズ。時代設定が、ちょうどビバップが流行り出した頃というとジャズ・ファンにはその「粋さ」がわかってもらえるかと思う。
映画ファンには、この主役二人の設定が「ニューヨーク・ニューヨーク」を連想させるだろう。

アニメであるが、これは決して子供用ではない。ヌードも出て来る大人用のものなのだ(英国では15歳未満は観れない)。
登場するミュージシャンは、ガレスピーはじめ、チャーリー・パーカー、セロニアス・モンク、チャノ・ポソ、ウディ・ハーマン楽団、ナット・キング・コール等々なのだが、アニメなので逆に違和感がない。
嬉しかったのは、演奏旅行の最中に各国のジャズ雑誌が映る中、昨年休刊になった日本の「スイング・ジャーナル」もあったこと。

監督は、「ベルエポック」('92)でアカデミー外国語映画賞受賞のフェルナンド・トルエバと、著名なデザイナーであるハヴィエル・マリスカル。音楽はベボ・バルデス(Bebo Valdes)。
メイキングを見ると、ハバナの役者に実際に演じさせてそれをアニメにしていた。だから、動きがスムースなのだ。
今年のゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)でも最優秀アニメ映画賞を受賞している。

この線の太い絵もぼくは気に入った。素晴らしいアートだと思う。ストーリーテリングも巧みで、ラストは泣ける。ぼくのようにジャズが好きで、映画が好きな人は、この映画に「恋」をするだろう。

日本でもぜひ公開してもらいたい、見事な逸品!である。

"Love is a song you never forget"

【追記】 24-Aug-11

日本でもラテンビート映画祭(東京、横浜、京都)で上映決定!(2011年9月15日〜)ココ 

Chico y Rita (Chico & Rita) (2010)

Directed by Fernando Trueba and Javier Mariscal
Duration 90 mins

Aspect Ratio 1.85: 1
Dolby Digital 5.1 / 2.0 PCM
Language Spanishi / English

15-Aug-11-Mon by nobu

B004MEZOKG Chico and Rita [DVD]
Icon Home Entertainment  2011-05-09


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サントラ盤もすごくイイ!

B004SRLGSQ Chico & Rita Original Soundtrack
Bebo Valdéz
Sony Music  2011-05-02


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2011-07-20

「ゲット・ヒム・トゥ・ザ・グリーク(原題)」 Get Him To The Greek ラッセル・ブランド / ジョナ・ヒル

Odoru2007116

棚の肥やしになりかけていたコメディ映画「ゲット・ヒム・トゥ・ザ・グリーク(原題)」"Get Him To The Greek" のDVDを引っ張りだして鑑賞。

冒頭から、MTVで流れるMusic Videoが本物らしくって笑える。歌ってるのはイギリスのロック・スター、アルダス・スノー(ラッセル・ブランド)。彼が歌う新曲”アフリカン・チャイルド”というけったいな歌は、批評家にボロクソに叩かれ、売上もさっぱり。酒とドラッグ漬けになり、カノジョでポップ・スターでもあるジャッキーQ(ローズ・バーン)ともカップルを解消され、あげく一人息子もとられてしまい散々な状況。

そんな折、経営難にあえぐパイナップル・レコードでは、一発大きなイベントをやろうと、10年前にロスのグリーク・シアターで行われた〈伝説の〉アルダス・スノーのコンサートを再度やろうということになる。社員のアーロン(ジョナ・ヒル)は、ボスのセルジオ(ショーン・コームズ)の命を受けロンドンへ飛ぶが、そこからアルダスのチョー無茶ブリに振り回され続けるアーロン。果たして彼は無事にコンサート会場にこのロック・スターを連れてくることができるのか?

まぁ、このラッセル・ブランド扮するロック・スターのキャラが立ってること立ってること。もともと「寝取られ男のラブ♂バカンス(Forgetting Sarah Marshal)」に出てきたアルダス・スノーというキャラを主役で映画を作ろうということになったというこの企画。デブで真面目なアーロン君は、酒を飲まされ、ドラッグをやらされ、オンナに犯されたり散々な目に会うのだが、二人がロンドンからNY〜ラスベガス〜ロスアンゼルスへの旅を通して徐々に打ち解け、人間としてキチンと付き合って行くようになる。その過程は見ていて面白い。

NYではTVショーに生出演するが、アルダスは、歌うべき”アフリカン・チャイルド”の歌詞を忘れて違う歌を歌ったり、空港でアーロン君は、ヘロインをけつの穴に突っ込んで運べと強要されたり、ラスベガスのホテルのスィートをめちゃくちゃに壊したり…。

予定してなかったラスベガスへ行ったのは、アルダスの父親がいるから。父親は、ギター弾きで、今は「ラット・パック・ショー(Rat Pack is Back!)」のバックで弾いている。この場面では、フランク・シナトラ、サミー・デイビス・JR、ディーン・マーティン、シャーリー・マクレーンのそっくりさんが出て来て往年の映画ファン(つーかオレか)には楽しい場面である。

冒頭、別れたジャッキーQが、男をとっかえひっかえしている様を映す雑誌の表紙には、オーエン・ウィルソンやジョニー・デップとのツーショットが載ってる。そして現在のカレシは、「メタリカ」のドラマー、ラーズ・ウルリッヒが本人役で出演。こういうカメオも面白い。

”スター”という種類の人間は、その非凡な才能とは裏腹に非常識な人が多いと思うが、私生活はダメでもちゃんと舞台ではプロらしい仕事をする。それでいいのであろう。私生活がちゃんとしててもプロと呼べない仕事をしている奴よりよっぽどマシだ。けど、こんなスターと一緒に暮らすのは大変なことである。だがスターでいるのも辛いのだ。誰もが受け入れて欲しいのだ。孤独なのだ。このディフォルメされたスターを眺めててそう思った。

日本での公開は、イケメンも出てなくて、中年男二人の友情ものなのでビミョーであり、実際に公開日は聞こえてこない。コメディとしての出来はいいので残念だと思うけどな。

Get Him to The Greek (2010)

Director Nicholas Stoller
Cast: Jonah Hill, Russell Brand, Elisabeth Moss
Duration: 109 mins

20-Jul-11-Wed by nobu

B002ZG97PQ Get Him to the Greek (2-Disc Unrated Collector's Edition) [Blu-ray]
Universal  2011-03-13

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2011-05-26

「密告者」 綫人 The Stool Pigeon ニック・チョン / ニコラス・ツェー

Odoru2605118

ダンテ・ラム/林超賢監督の映画「密告者」 綫人 / The Stool Pigeon を Star Chinese Movies で観た。
香港映画が得意としている(?)警察が情報屋を使うクライムサスペンスだが、これは中々の出来だったのだ。

九龍サイドの刑事リー(ニック・チョン/張家輝)は、犯罪組織内部にもぐり込ませた密告者を使って捜査を続けていたが、ある事件で自分のミスからその密告者に重傷を負わせてしまう。それ以来、彼は密告者を使うことを躊躇し始めるが、警察上層部から大掛かりな宝石強盗グループに密告者を送り込むことを指示される。暴走族あがりのゴースト(ニコラス・ツェー/謝霆鋒)に話を持ちかけると、自分の父親の100万ドルの借金と、売春宿に売られた妹を助けたいために彼はその仕事を受ける。そしてゴーストは強盗団の中に潜伏し、リー刑事に情報を送るのだが…。

宝石強盗グループの中には、冷酷なボスのオンナ(グイ・ルンメイ/桂綸鎂)がいる。彼女もつらい過去を背負い、ゴーストといつしか気持ちが触れ合うようになる。そこから、ゴーストも彼女のために行動し始めるところが切ない。

刑事のリーも、妻との間に消えない傷をかかえる。これは男たちのそんなセンチな部分も見せるクライム映画。

ゴーストを演じたニコラス・ツェーがイイ。寡黙で、心に秘めた感情をグッとこらえて行動する男。主人公は刑事役のニック・チェンなのだが、密告者役の彼の方が光っていた。今年(2011年)香港電影金像獎(Hong Kong Film Awards)の最優秀主演男優賞を受賞したのもうなずける。

中国から来たハスっぱなオンナ役のグイ・ルンメイもナイスなキャスティングだ。

ダンテ・ラム監督は、ラストの廃墟となった学校でのアクション・シーンまで、ワンカット、ワンカット丁寧に繋いで行き、この映画をレベルの高い作品に仕上げている。

ニコラス・ツェーは、香港電影金像獎の主演男優賞を受賞した時のスピーチで、妻への感謝の言葉と共に「今日はいつもよりキレイだよ」と舞台から声をかけた。妻のセシリア・チャンは会場で号泣していた。彼女は、2008年に起きたエディソン・チャンのわいせつ画像流出事件で被害を受け、その後あまり見かけなくなっていた。その間も、夫のニコラスは深い愛を注いでいたのだろう。そのことがセシリアの涙でよくわかった。えらいぞ、ニコラス!お前は男だ!とTV画面に声をかけたオレであったとさ。

日本では昨年(2010年)11月の東京フィルメックスで上映されたという。公開はないのかな?

【追記】
3月にはあんなに仲睦まじかったニコラス・ツェーとセシリア・チャンだが、5月末には離婚の危機が報じられた。なんでも、セシリアが台湾からの機内で偶然エディソン・チャンと会った時に、仲良く話していたことをニコラスが報道で知り激怒したのだと → ココ

【追記2】
2011年10月29日から新宿武蔵野館で公開予定。

綫人 The Stool Pigeon (2010)

Directed by Dante Lam
Starring  Nick Cheung, Nicholas Tse, Lummei Kwai
Duration 112 mins

26-May-11-Thu by nobu

密告者 (綫人)[Blu-ray](香港版)

P0013931350

2011-05-05

「メガマインド」 MEGAMIND ウィル・フェレル/ブラッド・ピット

Odoru0505115

ドリームワークス・アニメーションの映画「メガマインド」"MEGAMIND" をネットTVで鑑賞した。

我が家は香港のブロードバンド・ネットワークNow TVと契約しているのだが、その中にVIDEO EXPRESSというのがある。要はインタラクティヴで、好きな時に映画を見れるシステムだ。値段は、SDがHK$25(約261円)、HDが$30(約313円)で、2日間レンタルできる。

今まであることは知っていたが、使ったことなかったので、先日のイースターホリディで時間があった時にやってみた。映画は最新のものから古いもの(「カサブランカ」など)まであるが、量的にはまだまだ少ない。ホテルのペイテレビみたいな感じである。使い方は簡単。自分が見たい映画を選んで、暗唱番号を入れるだけだ。

これからはこの手の映画配信が多くなるだろうから、映画好きには部屋がディスクで占領されなくて済むかなと期待はしている。だが、要はコンテンツの問題だろう。

この「メガマインド」は3D作品で、香港でも昨年(2010年)のクリスマスだったかに公開されていた。この手の映画はキライではないお父さんのぼくだが、子供らはもう大きくなったので一緒に行ってくれない。なので飛行機に乗った時に見ようかなと思ったりしてたのだが、今回自宅でゆっくり見れてよかった。

地球から遥か離れた惑星から、宇宙船のカプセルが飛び立とうとしていた。両親が乗せたのは、産まれて8日目の青い顔をした男の子だ。カプセルは地球を目指して飛んで行く。途中で、他のカプセルとぶつかり、そのカプセルは裕福な家庭に。そして彼の乗ったカプセルはメトロ・シティの刑務所に行き着く。

裕福な家庭に育った男の子は立派は教育も受け、やがてメトロマン(声:ブラッド・ピット)となりヒーローとなる。学校でいじめにもあった青い顔の男の子はやがてワルとなり、メトロマンの好敵手メガマインド(ウィル・フェレル)になる。

メトロマンとの死闘に命を燃やしていたある日、メガマインドはついに勝利をつかむ。メトロマンは死に、街はメガマインドのものに。だが、彼の心にはぽっかり穴が空いてしまう。

好敵手なき今、メガマインドは考える。「そうだ自分で好敵手を作ればいいんだ!」と。へたれなTVカメラマンを改造したメガマインドだが、今度はその男が暴走しはじめるのだった…。

読んでわかるとおり、下敷きになっているのはスーパーマンだ。他の惑星からカプセルに乗り、地球に来るところから同じで、好きになる女性も新聞記者ならぬTVレポーターだ。メガマインドが人間を改造するために変装した姿は、クリストファー・リーヴ版「スーパーマン」の父親・マーロン・ブランドそのもの。

3D作品なので、その立体感を出す工夫も随所にみられる。2Dで観ると迫力はないが、男の子向きの映画としてはまあまあ楽しめる作品といえよう。上に書いたようにスーパーマンもので、マイケル・ジャクソンの「BAD」で踊ったりと、中高年のお父さん世代にも気を使った映画(というより作り手の年代だろうが)。

ぼくは、なーんか最後まで、青い顔のメガマインドのキャラクターがかわいいと思えなくて、ノレなかった(ウィル・フェレルがキライというか、面白いと思わないんだなぁ、というのもある・笑)。それに、相手役の女性TVレポーター(ティナ・フェイ)も、もうちっと美人に描けなかったのかと悔やまれる。ドリームワークス・アニメーションは、メイン・キャラクターのデザインがいつも もう一つやね(笑)

日本での公開は…?まだはっきり決まってない模様(今年中には公開になればいいですな)。

MEGAMIND (2010)

Directed by Tom McGrath
Cast: Will Ferrell, Brad Pitt, Tina Fey
Duration: 95mins

05-May-11-Wed by nobu

【追記】 この記事を書いたあとに、「スーパーマン」でデイリープラネット社の編集長を演じたジャッキー・クーパーが亡くなった(2011年5月5日)という報道があった。子役時代からいうと長いキャリアのアクターであった。合掌。

B003UESJFG Megamind (Two-Disc Blu-ray/DVD Combo)
Paramount Pictures  2011-02-25

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2011-04-27

「ザ・カンパニー・メン(原題)」 The Company Men ベン・アフレック/トミー・リー・ジョーンズ/クリス・クーパー

Odoru2704115

今回東京へ出張した際、羽田行きのキャセイ機内で見たのが、映画「ザ・カンパニー・メン(原題)」"The Company Men"。

主演はベン・アフレック、トミー・リー・ジョーンズ、クリス・クーパー。題名(「会社人間」)を見てわかる通り、サラリーマンの物語である。彼らがリストラにあっちまう。とてもシビアな話だが、考えさせられる映画だったのだ。

エリート社員ボビー(アフレック)は、今朝も高級な背広にネクタイ、腕時計をして、さっそうと白いポルシェに乗り込み、家族と暮らす庭付きの家をあとにする。会社は、物流(Logistics)のコングロマリット。ボビーの職場はその造船部門だ。秘書に「昨日は46、42で廻ったんだぜ」とゴルフ自慢をしたのだが、人事がすぐ来いと云っている。会議室へ行ってみると、造船部門の縮小に伴い、あなたはクビだ、といきなり云われる。

彼らに悪態をついたものの、逆らってもどうにもならない。段ボールに私物を入れて会社をあとにするボビー。
残った上司のフィル(クリス・クーパー)も、造船部門トップのジーン(トミー・リー・ジョーンズ)もいたたまれない気持ちでいる。特にジーンは、自分が講演で会社を留守にしている時に縮小案を実行され怒り心頭でいた。

だが、30年間一緒に会社を大きくしたCEOのジェームズ(クレイグ・T・ネルソン)は、「会社の存続のため」と意に返さない。
人事部のリストラ担当サリー(マリア・ベーロ)と不倫関係にあるジーンは、奥さんがガン治療を行っているフィルは切らないでくれと頼むが、それも実行されず、あげく自分までもリストラにあってしまう。

自分はエリートで有能、利益もあげていると信じて疑わなかったホワイトカラーの男たちが、会社から突然切られ路頭に迷う。年齢も上がり、それに伴いプライドも上がった男たちは、その悲惨すぎる現実と向き合わなければならなくなる。

ボビーは、(自己啓発付きの)職業安定所に行くがろくな職は見つからない。失業保険も打ち切られ、ポルシェも売り、家も売った。唯一の楽しみのゴルフ会員権までも売られてしまう。

「オレは37歳の負け犬だ」("I am 37 years loser.")と妻の前で涙を流すボビー。

「いいえ、あなたには私がいるわ」("No…You have me.")と答える妻(←良い嫁じゃ!・涙)

ボビーは決心する。自分とそりの合わない、妻の兄(ケビン・コスナー)の大工仕事を手伝うと。日給のなれない力仕事。へとへとになる毎日。それでも女房子供のために働かなゃならん。だが、その中で、今まで以上に息子・娘とふれあい、妻マギー(ローズマリー・デウィット)との絆も強くなる。家族みんなで頑張ることで、彼自身も父として、夫として、そして男として変わっていく。

映画は、ラスト少しばかりの希望を持った終わり方をするので救われるが、それまで再就職になかなかつけない描写は身につまされる。職業安定所で、今まで何十人もの部下を使い、大きい会社でそれなりの地位につき、デカいプロジェクトをやってきた、そのプライドをズタズタにされ「このオレ様がそんな仕事出来るか!」と怒る気持ちも男としてよくわかる。

この映画が描こうとしたのは、そんなリストラ後の男たちのつらい姿を見せることだけが目的ではない。アメリカという国が、モノ作りというものを放棄してきている現在、国自体がどうなるのか?という警鐘でもある。

誰もいないさびれた造船所でジーンはボビーにこう語る。

「30年前は、6,000人の仲間とこの造船所で働いた。そして30年後には誰もいなくなった…」

ぼくは海運関係の仕事に従事しているので、アメリカの造船所事情も理解している。この映画では、リーマンショック後云々と語られるが、もう随分前から造船所は閉鎖・縮小を繰り返している。日本、韓国、そして今は中国の台頭。労働集約的装置産業は、人件費の安いところ安いところへとシフトしていく。

実利主義の経営者から見ると、不採算なものはカットするに限るわけで、この映画のように金融・保険部門の充実を計ることが会社の収益を上げることに貢献するならばその部門に特化していくのは当然の成り行きである。

だが、アメリカをはじめ世界の企業が国外へ国外へとその生産拠点を移してしまった。モノは安くなり、消費者はハッピー、結果企業も儲かるという図式が出来上がっているが、そのために国内の多くの労働者は職を失い、培って来た「技能」は次の世代へとつないでいけない。重厚長大なものは不要で、軽薄短小なものだけでその国は果たして良いのか?収益、そしてマネー、マネーだけが目的の経営で果たして良いのか?

ケヴィン・コスナー演じる不器用で、人付き合いが決していいとは云えない初老の大工。彼に象徴されるモノ作りの重要さ。(汗を流す)労働の尊さ。それをなくした国は、国民は幸せなのか?

これは決して対岸の火事なんていうのんきな話ではない。日本でもとっくに起きている労働力のシフトがもたらす後遺症。そしてそれはホワイトカラーをも飲み込んでいるという現実。

資本主義のトップランナーとして走り続けるアメリカで、かような映画が製作されるというのは、大国としての社会の変化が(ゆっくりとだが)起きている兆候かもしれない。そんなことを思わせる映画だった。

サラリーマンはじめ社会人は、この映画と「インサイド・ジョブ」は、このところのビジネスマン向けの映画として面白いのでおすすめです。といっても日本でいつ公開になるのやら?なのだが(笑)

The Company Men (2010)

Written and Directed by John Wells
Cast: Ben Affleck, Chris Cooper and Tommy Lee Jones
Duration: 104 mins

27-Apr-11-Wed by nobu

B0068CCB2E カンパニー・メン [DVD]
Happinet(SB)(D)  2012-03-02

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B003UESJEW
B0065PCPB6インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実 [DVD]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント  2012-01-25

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The Company Men [Blu-ray]
The Weinstein Company/Anchor Bay Entertainment  2011-06-07

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B0041KKYBK Inside Job [Blu-ray] [Import]
Charles Ferguson
Sony Pictures  2011-03-08

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2011-04-21

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」 Space Battleship Yamato 地球を放射能汚染から救えるか?

Odoru2104115

東京・羽田から香港への帰路、機内で選んだ映画は「SPACE BATTLESHIP ヤマト」。
毎度のように二日酔いで疲れてて英語や字幕を読むのがしんどかったというのが理由だが、今回この映画をチョイスしてよかったと思ったのは、プロットが放射能汚染を描いたものだったから。つまり福島原発の事故以降の対応を知って見るととてもリアルに感じられる映画だったのである。

西暦2199年。地球は正体不明の敵・ガミラスからの攻撃をにより放射能被害を受け、わずかに生き残った人間たちは地下で生活していた。
古代進(木村拓哉)は、かつて優秀な戦士だったが5年前にリタイアし、荒廃した地球で鉄くずを拾っていた。そんなある日、古代の前に未確認飛行物体が落下してくる。
その中には通信カプセルがあり、イスカンダル星に放射能除去装置があるという情報があった。
古代は国が募集するボランティア戦士に手をあげ、沖田艦長(山崎努)率いるヤマトと共に、人類最後の希望を求めイスカンダルへ発進する。

この映画は、日本では昨年末(2010年12月1日)に公開されたから、製作したTBSは胸をなでおろしているだろう。もし今年(2011年)の春休み公開だったら、延期か打ち切りになっていたハズ。(今後TV放送のタイミングも微妙だなw)

映画の始めに、キムタクは赤茶けた大地を放射能防護服を着て歩く。アナライザーと呼ばれるガイガーカウンターが「14シーベルト、チシリョウ(致死量)デス」と声をだす。
このあたり、日本人は3.11以降の福島原発事故で、放射能に関する知識があるので余計に怖さを感じるのではないか。

今は地下にもぐって生活をしなければならなくなった人類。地球は、青くなく放射能の影響で赤い星になっている。SFは空想の世界であるが、警告も含まれているというのは〈常識〉だが、今回日本でおきた原子力発電所の事故は、その警告から目をそむけていた為に起きた。そして、事故処理のまずさから、日本は1ヶ月以上も(そしてこれからも)放射能汚染にさらされ続けていくという「怖い」現実。

時折、子供たちが自然の中を走り回るシーンがインサートされるが、そんな美しい緑の地球を放射能で汚したのは誰あろう人間であり、今回残念なのは、それが日本人だったという事実。日本はガミラスになってしまったのである。政府・東電・経済産業省の責任は重い。

映画自体は、製作費はかかっているのだろうが、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」をリアルタイムで見ていた世代からすると、はっきり云って目を覆うほどヒドイものだ。戦闘シーンのカタルシスも何もなく、感動もない。ドラマ部分が見てらんないほどセリフがくさい。せっかく山崎努はじめイイ役者を揃えているのに、どのシーンも昔の青春ドラマなのだ。やっぱり一番は、敵のガミラスの司令官を見えない敵にしてしまったのがいけなかったかな。対決軸がはっきりしないため、ただヤマトが攻撃されてアタフタするだけになり、スリルも何もないのである。戦闘シーンのプロットもVFXも、「スターウォーズ」をまねてはいるが、遠く及ばない。

キムタクは香港でも人気があるので、この映画も香港で公開された。だが、評判は芳しくなかった。アニメの実写リメイクは「サンダーバード」でもそうだが、作り手の作品への「愛」と「尊敬」がないとうまくいかない。今回の脚本のひどさを見ると監督・VFXの山崎貴は、ただ宇宙での戦闘シーンを自分なりに撮りたかっただけなんじゃね?と思ってしまうのだが、どうだろう。

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(2010)

122 mins

21-Apr-11-Thu by nobu

2011-04-05

「チコ&リタ」 予告編 "Chico & Rita" Trailer


あー観たかった…、映画「チコ&リタ」"Chico & Rita"。

現在開かれている香港国際映画祭(The 35th Hong Kong International Film Festival)で本日上映されるのだが、チケットが早くからソールドアウトで観れない。(詳細は→ココ

1948年のキューバ。ピアニストのチコと美貌のシンガー リタの、ハバナからニューヨーク、ハリウッド、そしてラスヴェガスへと続く、恋とジャズの物語。

この映画、香港で公開してくれないかな。絶対観に行くけどな。あー観たかった。

05-Apr-11-Tue by nobu

2011-03-31

「バーレスク」 BURLESQUE クリスティーナ・アギレラ

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クリスティーナ・アギレラ主演のミュージカル映画「バーレスク」"Burlesque"である。日本では2010年12月18日より公開されたが、香港では2011年2月17日より公開となっている。

その日は、ちょうど中一の娘が英検3級の2次試験を受けた日だった。試験が終わり家に帰って来て、出来が悪かったようで、機嫌が悪い。なので気分転換にこの映画へ連れて行ったのだった。
で、見終わったら、もうご機嫌(笑)。(ま、その後合格通知が来たのでよかったのであるが)

クリスティーナ・アギレラという歌手のことは、グラミー賞などで知ってはいたが、あまり関心がなかった。なので、ほとんど彼女の実力を知らずに観たのだが、この映画、彼女の〈頑張り〉で持っているようなものだった。歌が上手いのは一流の歌手だから当たり前だろうが、踊りも頑張っている。映画初主演の彼女が、ともかく力でぐいぐい観客を引っ張って行くぜ!って感じで好感が持てた。

この映画のもう一本の柱、シェールもますます〈人造人間〉に拍車がかかる(笑)。もう貫禄充分だ。というか ちと怖い(笑)。

物語は、歌好きの田舎のおねえちゃんが都会へ出て、バーレスクでウエイトレスの職をみつけ、ついには舞台に立ちスターになるというもの。サイドストーリーとしてシェールが経営するバーレスク自体の買収話もからめてある。陳腐でオールドファッションだが、ミュージカルはいつも書くように、「歌と踊りを見せる」のが一番大事なことなので、これでいいのである。で、この映画は楽曲もいいので気に入った。

「ウエスト・サイド物語」以降、ミュージカルにも社会問題などを盛り込もうとするミュージカル・ドラマが評価される傾向があるようにも思うが、このバーレスクってところが、そもそも猥雑で健全とはほど遠いところ。そこで繰り広げられるバック・ステージの人間模様は、ミュージカルとして見せるにはもってこいのものだ。

なので軽演劇、ヴォードビル・ショーを眺めているような感覚でこの映画は楽しむべきで、それでいいんじゃないかと思う。ミュージカル・シーンが多いのも好感が持てるしね。

中一の娘に見せるには、ちと早かったかなとも思ったが、本人は「『シカゴ』みたいね」とあっけらかんとしたものだ。その後シンガポールへ行った際も、行きも帰りも飛行機の中でこの映画を観ていた(もう3回観てるわけだ)。

アギレラちゃんにパワーをもらえる。ちょっと元気になれる映画かも知れない。DVD出たら娘に買わされそうである(サントラはもう買わされました。はぁ)。

てなことで。

BURLESQUE (2010)

Directed by Steve Antin
Cast: Christina Aquilera, Cher, Stanley Tucci, Cam Gigandet
Duration: 119 mins

31-Mar-11-Thu by nobu

B004NNUL86 バーレスク [Blu-ray]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント  2011-04-27

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B0047MZLT2 バーレスク [DVD]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント  2011-04-27

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Burlesque Burlesque サントラ
Various Artists

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2011-03-30

「狄仁傑之通天帝國/Detective Dee and the Mystery of the Phantom Flame(原題)」 ツイ・ハーク × アンディ・ラウ

Odoru290311detective_dee

アンディ・ラウが探偵となり、事件を解決していくという中国時代劇映画「狄仁傑之通天帝國/Detective Dee and the Mystery of the Phantom Flame(原題)」である。(前回日本へ一時帰国の際、キャセイ機内で観ていたのだが、ここへ書くのが遅くなった)

これを観ようと思ったのは、監督が徐克/ツイ・ハークだったし、香港でも大作として昨年公開(2010年9月29日)されていたから。それと、今年のHong Kong Film Awardsの作品賞にもノミネートされているからである。

中国は唐の時代、690年のお話。歴史上初めての女帝・武則天(劉嘉玲/カリーナ・ラウ)は即位を間近に控えていたが、側近たちが次々に謎の死を告げるという事件が頻発する。彼女は、8年前に罪人として追放していた狄仁傑(劉徳華/アンディ・ラウ)を呼び戻し事件の解決を当たらせることに。だが、捜査の中で彼は様々な危険に遭遇することになる…。

原題が「探偵ディと亡霊の炎の謎」というように、死をとげる面々が突然火を噴き燃えてしまう。この謎を解明するため、名探偵ディ・レンジエはシャーロック・ホームズよろしく、監視役として皇帝から派遣された静兒(李冰冰/リー・ビンビン)らと共に奇怪な殺人事件の謎にせまる。

ぼくは歴史にうといのだが、映画の中では武則天の就任式に間に合わせるため、彼女の超巨大な仏像が出て来る。こんなもの本当にあったんかいなと思うが、CGで作られたこの場面は劇場のスクリーンで見たらかなり迫力があったはず。最後は「サムソンとデリラ」のようになるのだが。

アクション監督は洪金寶/サモ・ハン・キンポーが担当。ラウもそうだが、美形のリー・ビンビンの格闘シーンもイイ。他の出演者は、名優 梁家輝/レオン・カーファイ、鄧超/タン・チャオなど。

アクション満載の中国製ホームズ。なかなか楽しめるエンタテインメント作品であった。

狄仁傑之通天帝國/Detective Dee and the Mystery of the Phantom Flame (2010)

Directed by Tsui Hark
Cast: Andy Lau, Carina Lau, Li Bingbing, Tony Leung Ka-fai
Duration: 122 mins

30-Mar-11-Wed by nobu

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狄仁傑之通天帝國 (DVD) (香港版)(リージョン3)

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2011-03-26

「ザ・ファイター」 The Fighter マーク・ウォルバーグ/クリスチャン・ベイル/メリッサ・レオ

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香港でも2011年3月10日から公開になっていた映画「ザ・ファイター」"The Fighter"に行って来た。実在するボクサー ミッキー・ウォードの話である。

昔ぼくが電車に乗っていた時、向かい側に座った背広を着たサラリーマン風の人が「第○回全国高校野球選手権大会出場記念」という(甲子園でもらったであろう)鞄を大事そうにかかえていたのを見た。その時ぼくは「あぁ、この人は過去の栄光の中で生きてるのだろう」と思ったのだ。人は過去の栄光を捨て去って今を生きなければならない。そうじゃないと生きづらい、だがそれを出来ない人もいる。この映画に出て来る主人公の兄ディッキーもそんな男の一人だ。

クリスチャン・ベイルは、実在するディッキー・エクランドというミッキーの異兄弟を演じて本年度アカデミー賞で助演男優賞を得た。これは名演というより怪演といった方が似つかわしい。コカイン中毒のジャンキーで、たぶんボクシングをやりすぎてパンチ・ドランカーになったのか、ちょっとイっちゃってる人物になりきっているからだ。

ともかくこのお兄ちゃんの自慢は、20世紀の名ボクサー シュガー・レイ・レナードと戦い、一度ダウンをとったことがあるということだけ(レフリーはスリップと判断)。これが人生最高の〈瞬間〉で、彼はこのピークのまんま時間が止まっているかのようだ。HBOのドキュメンタリーの取材を受けるが、今は落ちぶれて、薬物中毒になったボクサーの転落を撮られているということを彼は知らない。

確かにシュガー・レイと戦ったというのはスゴいことだ。ぼくも80年代初頭だったか、トーマス・ハーンズとのウェルター級王座統一戦をTVで見たが、後にも先にもあんなスゴいボクシングは見たことがない。あれを超える試合は未だに見てないと思うくらいの名勝負だった。

そのシュガー・レイを「倒した」お兄ちゃんをマーク・ウォルバーグ扮するミッキーは尊敬している。だらしないお母ちゃん(メリッサ・レオ)はいろんな男と寝て、9人も子供を産んだ。家の中は"ニート"な姉たちが占領している。まるで"ミニ"「カッコーの巣の上で」のよう。そんな姉たちも自分のファイトマネーで養ってやらなきゃならないミッキー。

直前に変更された20ポンドも体重が違う相手と、金のために、戦わなきゃならなかったミッキーは、やがてバーで働くおねーちゃん(エイミー・アダムス)と知り合い、母、兄をさけて自分のために試合をするようにと考えるようになる。

警察による暴行で、大事な拳を痛めてしまうのも兄のせい。その兄も刑務所に入ってしまう。二人の仲は決定的に悪くなるが、この映画のキモは、その最悪の兄が「変わらなきゃ」と思うところ。
ヒーローと呼ばれた兄が、「I was, I was …」と過去形で答える後ろ姿は、過去の自分にさよならを告げる男のいい場面。

やがて、ボクシングだけは真面目だった兄も、弟のためにトレーナーとなる。そして"世界"に挑戦するんである。

マサチューセッツの田舎町で、最下層の生活をする人間たちの描写がリアルだ。最近こういうテイストの映画が多いなと思ったら、製作総指揮に、かのダーレン・アロノフスキーの名前がある。もともとこれは彼が監督する予定だったのだと(監督はデヴィッド・O・ラッセル)。だから限りなくアロノフスキーの映画に近いわけだ。

してすれば、アロノフスキーの関わった映画(「ザ・レスラー」も「ブラック・スワン」も)に出ればオスカーがもらえるってことか(笑)

映画そのものは出来はいいのであるが、平坦なドラマで感動も少ない。好き嫌いでいうと、ぼくは「好きじゃねえ」部類だ。これは、アカデミー賞で助演男優(ベール)、助演女優賞(レオ)をとった彼らの"演技を観に行く"映画。
辛辣なドラマだが、ダメなお兄ちゃんが、人生で一度だけ〈本気〉になる。それがあっただけこの映画は救いがあった。高い評価もその辺りに理由があるのかも知れぬ。

日本では2011年3月26日より公開。

The Fighter (2010)

Director : David O. Russell
Cast : Mark Wahlberg, Christian Bale, Amy Adams, Melissa leo
Duration : 114 mins

25-Mar-11-Fri by nobu

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