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2010-06-18

『スージー・ウォンの世界』 再び The World of Suzie Wong

George Duning & Muir Matheson

今回東京への出張の際、キャセイの機内誌"DISCOVERY"を眺めていたら、ナンシー・クワンのインタビューが載っていた。ナンシー・クワンとは、映画『スージー・ウォンの世界』"The World of Suzie Wong"(1960)で主役のスージー・ウォンを演じた女優である。今年(2010年)はその映画『スージー・ウォンの世界』製作50周年。それを記念して、キャセイ航空では機内でこの映画を上映しているのである。

インタビューでもクワン女史が答えているが、”いまだにこの映画を見て香港へ行こうと思った”という便りが届くというほど、この映画には昔の香港が冷凍パックのように保存されている。そのエキゾチックなオールド香港のムウドは、何度見ても味わい深いものがある。

以前ぼくがココで紹介したように、この『スージー・ウォンの世界』のDVDは日本では発売されていない。今後も発売予定はないだろうから(?)、今回はストーリーを中心にこの映画を紹介してみようと思う。時代は今から50年前、1960年である。

画家志望だったアメリカ人の建築家ロバート・ロマックス(ウィリアム・ホールデン)は、画家として自分が生きていけるかどうか試そうと香港へやってきた。
九龍から香港島へのフェリーに乗ったロバートは、そこでミー・リン(ナンシー・クワン)と名乗る高飛車な若い香港女性に出会う。彼女はピークやレパルスベイといった高級地に家を持つ大金持ちの娘だと云う。だが、船を降りた彼女をロバートは見失ってしまう。

経済的な理由から、香港でも西洋人向けの高級ホテルが立ち並ぶセントラル地区ではなく、ワンチャイ地区の安ホテルに住むことにしたロバート。その晩、階下に降りてみると、ロビーと隣接したところにバーがあり、そこにはアメリカの兵士や水兵たちに身体を売る、通称「ワンチャイ・ガール」があふれていた。そう、このホテルはその女性たちが商売に使う場所だったのだ。

そのバーでロバートは、シルクのチャイナドレスで水兵と踊るミー・リンを発見する。彼女に話しかけるが「人違いです。私の名前はスージー・ウォンよ」と相手にされない。

(バーで水兵とチャチャを踊るスージー・ウォン。それを見つめるロバートとベン)

ロバートはスージーを部屋に呼び、彼女を抱くかわりにモデルになってくれるように頼む。ロバートは何枚も彼女の絵を描き続けるが、モデルと画家の関係以上にはならない。10才の頃から生活のために働かざるを得なかったスージー。読み書きの出来ない彼女をロバートは決してバカにしたりしない。スージーはロバートに恋心をいだく。

ある日ロバートは、紹介された銀行へ出向き、その銀行の頭取オニール(ローレン・ネイスミス)と秘書である娘ケイ(シルビア・シムズ)に出会う。ケイはロバートに一目惚れし、父親に彼を支援してあげるよう嘆願し、自らも絵の売り出しに奔走する。

ケイの住む豪邸に招待されたロバートは、そのディナーの席で、先日スージーにバーでちょっかいを出していた男ベン(マイケル・ワイルディング)に出会う。
彼はその後スージーに愛人になってほしいと云い出し、スージーは(ロバートが煮え切らないため)その申し出を受ける。
やがてスージーのことが妻にバレたベンは、ロバートに「別れたいと告げてくれ」と頼む。その役割を果たし、スージーの傷心の姿を見たときロバートは彼女を愛していることを知る。

二人は幸せな日々を過ごすが、ある日、スージーが一人で外出したところをロバートが追いかけてみると、山の上の貧しい家で赤ちゃんを抱くスージーを見つける。彼女は子供がいることを隠していたのだ。ロバートはその事実もやさしく受け入れる。

絵が売れないロバートは、ケイから前払いで絵を買うと云われるが断る。その日、スージーも自分のお金を使ってと子供のための貯金を差し出す。ロバートは自分のプライドから、怒りにまかせ、娼婦で稼いだ金はいらないと云う。ショックを受けたスージーは部屋を出て、その後行方知らずになってしまう。

スージーが自ら進んで娼婦に身を落としたわけではないのに、なじってしまったことを後悔するロバート。香港中をあてどなく捜しまわるが、彼女は見つからない。
だが、ある大雨の日、憔悴しきったロバートの前に、スージーが現れる。そして、避難勧告の出た家にまだ子供がいることを告げる。必死の思いで家にかけつける二人、だが子供は不幸にも亡くなってしまう。葬式の後、傷心のスージーにロバートはプロポーズするのだった。

ナンシー・クワン演じるスージー・ウォンは、プライドの高いオンナだ。自分をより高く見せるために嘘をつき、気性も荒く、他のオンナと取っ組み合いの喧嘩もする。ブロークン・イングリッシュを喋り、アメリカの水兵に声をかける。それもこれも、当時まだ貧しかった香港の下層階級の逞しさであろう。

香港の女性が総じて気位が高いのは、もともと中国から命からがら逃げてきた人々の中で、女性の割合が少なかったから(男性が甘やかしたから)だと聞いた事がある。
身長が総じて低いのは南方系だから。中国本土では北に行く方が背が高いのだ。

そんな(当時の)国民性の中でのスージー・ウォンのキャラクターはとても合点がいく設定に思える。そんな生意気な女性を包容力を持って受け入れる西洋のやさしい白人男ロバート。

ウィリアム・ホールデンのこれはベストではないが、『慕情』や『トコリの橋』のようにアジアを舞台にした映画に出演していたホールデンだから、なんとなく説得力があるようにも思えるキャスティングである。

ロバートの描く絵も味わい深く、部屋のセットデザインもいい。画家とパトロンの関係は『巴里のアメリカ人』に似てる。娼婦との恋話は『プリティ・ウーマン』に影響を与えたかも(?)

この映画の中に映し出された香港は、今の超高層ビルの立ち並ぶ香港とは比べ物にならないほど、質素で貧しく田舎である。だが、それだからいい雰囲気を醸し出してると思うんだなぁ。

ナンシー・クワンも、上述のインタビューで、”香港は当時とは比べ物にならないくらい変わった”と話しているが、”一つだけ変わらないものがあるわ。それは「臭い」よ”と答えてるので笑った。たしかにワンチャイ(湾仔)は歩いてて臭いからねぇ(笑)

香港在住の方はぜひ一度、この『スージー・ウォンの世界』をご覧になるといいと思います。西洋人が持つ香港イメージのルーツであり、昔の香港と今の香港の比較も楽しめます。それに、ウィリアム・ホールデンのヒドい広東語も聞けるしね(←人のコトは絶対言えまへんが・爆)

The World of Suzie Wong (1960)

17-Jun-10-Thu by nobu

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コメント

ユーミンの歌からこのブログに吸い
寄せられて来ました(笑)
いろいろ謎が解けました。
ユーミンの「ホンコン・ナイト・サイト」
という歌なんです。
ありがとうございました。

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