映画 2009年

2011-03-28

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序/破」 [Blu-ray] EVANGELION: 1.11 YOU ARE (NOT) ALONE / 2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE

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今回の東北大震災が起きた後すぐ、ツイッターなどネットで節電を呼びかける動きがあった。彼らはそれを「ヤシマ作戦」と呼んだ。ぼくはそれが何か知らなかったのだが、18歳の息子が「『エヴァンゲリオン』だよ」と教えてくれた。

「ヤシマ作戦」とは、簡単にいうと、地球外からの異星体を一撃で倒すため、全国の電気を一カ所に集める必要があり、日本中を停電にして行った作戦のこと。

そのことを聞いて興味をもった親父は、息子にDVDないの?と聞いたら「ない」という。なので、HMVへ行って「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序/破」Blu-rayを買って来たのだった。

香港では色んな国で発売されたソフトを売っており、ぼくはよく確かめずに買ったのだが、1枚組の「序」"EVANGELION: 1.11 YOU ARE (NOT) ALONE"はアメリカ盤(HK$170・約1778円)、2枚組の「破」"EVANGELION: 2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE"は香港盤(HK$350・約3662円/広東語名「福音戦士新劇場版:破」)であった(もちろん両方とも我が家の日本製プレステ3で観れる)。

オタクが大好物のアニメである。50歳を超えたおっさんが楽しめるかいな、と思ったが、「意外にイケル」というのが正直なところ。土曜日の午後、息子と一緒に「序」「破」と続けて観た。TVアニメ時代から見ている息子は劇場も含め、今回が6回目の鑑賞だと。

14歳の少年 碇シンジ(声:緒方恵美)がこの物語の主人公。彼はNERV総司令官 碇ゲンドウ(声:立木文彦)の息子。世界を救うための巨大兵器 人造人間ヱヴァンゲリヲンのパイロットになるべく呼び寄せられた。なぜ自分が選ばれたのか?父親との確執に苦しみ、自問自答しながらも、使徒と呼ばれる地球外からの脅威と戦って行く。

地球はセカンド・インパクトと呼ばれる大災害で、人口の半数近くを失っており、残った人間たちが必至に使徒と戦っている。ヱヴァンゲリヲンの他のパイロット 綾波レイ(声:林原めぐみ)、 式波・アスカ・ラングレー(声:宮村優子)、真希波・マリ・イラストリアス(声:坂本真綾)もシンジと同じ中学二年生だ。

国連直属のNERV(ネルフ)という特務機関の戦闘指揮官 葛城ミサト(声:三石琴乃)や、ヱヴァンゲリヲン開発責任者 赤木リツコ(声:山口由里子)の指示を受け、少年・少女は命をかけて使徒と戦うという物語。

もともとTVアニメだったものを、この「新劇場版」では新たに作り直している(Rebuild)。なのでアニメを観てなくても大丈夫な作りになっているのだ。

上述の「ヤシマ作戦」は「序」の後半に出て来る。名前の由来は古事記にでてくる日本の古い名称「大八洲国」から。第5使徒のA.T.フィールド(つまりバリアですな)が強すぎるため、射程外からヱヴァが陽電子砲により狙撃を行う。全国の電力を一カ所に集め(巨大な変圧器を使う)そのパワーで敵を倒すのだ。

まぁ、ともかくオタクが騒ぐのはよくわかる。これはとてもよくできたアニメ。ともかく絵が素晴らしく、細部にまでこだわった映像はほれぼれする。特に第三新東京市の日常を描いたなんてことのない場面など、これが本当にアニメか?と驚かされる。Blu-rayで買ってよかったと思ったほど。

これといったとりえもない中二の男子が世界を救うべくヱヴァンゲリヲンに乗り込む。彼は父親に棄てられた過去を持つ。暗い雰囲気の綾波レイもわけありの感じだ(「破」までしか見てないので、彼女が誰かまだわからない)。

ストーリーの中に巧みに新約聖書のプロットを差し挟み、深みを持たせる。悲惨な場面であえて「今日の日はさようなら」や「翼をください」の歌を入れ、感情に訴える。ヱヴァという巨大メカが人間の感情によって動くというのも男の子好きの設定。

女の子キャラも、暗くおとなしい感じのレイと、活発で気の強いアスカ、新たなメガネキャラ マリ。それにNERVのミサト、リツコというミニスカートのおねえさんたちも「萌え系」キャラである。ちょっとエッチなシーンもあり、オタクにはご馳走であろう(笑)。

息子に聞いたら、総監督の庵野秀明は大の円谷プロ・ファンとのこと。だから、ミサトの着信音が科学特捜隊のそれ(キングギドラの声)だったり、氏のスタジオ(カラー)の名前にウルトラマンが現れる時の音がかぶさるのか。
なるほど、それでヱヴァもプラグが外れると、ウルトラマンのように「あと何分」しか動けないのか。

沖縄料理の居酒屋で流れるのもピンキーとキラーズの「恋の季節」だし、シンジが聞いているラジオから流れるのもザ・ピーナッツの「ふりむかないで」だし、昭和歌謡が流れるところもおっさんには好感が持てる。それと、蝉の声や、空の青さ、山の美しさはなぜか懐かしい日本を思い出させる。

50歳を超えて、初めての「ヱヴァ」は、想像以上にすんなりと入っていけ、楽しめた。だって、これ庵野版「新・ウルトラマン」と思えばいいんだものね(笑)。日本のアニメのレベルの高さに改めて驚いたとさ。

まだ公開の発表がない、「序破急」の最終章「急」(「Q」となったようだが)の公開も楽しみになってきたゾ。劇場で観たいけど、50過ぎのおっさん一人では行きにくいな(照)。

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」
EVANGELION; 1.11 YOU ARE (NOT) ALONE (2007)
98 mins

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」
EVANGELION: 2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE (2009)
108 mins

総監督:庵野秀明

28-Mar-11-Mon by nobu

Evangelion: 1.11 You Are Not Alone [Blu-ray]
Evangelion: 1.11 You Are Not Alone [Blu-ray]

Evangelion: 2.22 You Can (Not) Advance. (Blu-ray) (2-Disc Edition) (English Subtitled) (Hong Kong Version)

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 (EVANGELION:1.11) [Blu-ray]
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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 EVANGELION:2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE.【通常版】 [Blu-ray]
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2010-11-12

『ビッチ・スラップ 危険な天使たち』 [DVD] BITCH SLAP (UNRATED)

Bitch Slap (Unrated)

日本では2010年10月23日から公開となっている映画『ビッチ・スラップ 危険な天使たち』"Bitch Slap"を北米盤DVDで観た。

この映画を「見てえな」と思った理由は、<信頼できる映画評論家>の一人 北川れい子さんが週刊新潮(10月29日号)に書いた評を読んだからである。それによれば、"タランティーノも嫉妬するB級映画"とある。72点という点数でもあり、銅鑼湾 (Causeway Bay)のHMVで、このDVDを見つけたのだ。北米盤なので、HKD168(約1,760円)と高かったが、日本で劇場へ行ったつもりで買ってみた。

ビッチ(Bitch)とは、ビッチのことだ(笑) 女を蔑み、普通悪い意味に使われるが、この映画のビッチたちはビッチなゆえイイ(笑)。スラップ(Slap)とは「ひっぱたく」という意味。なので、タイ トル・バックは(往年の映画の中の)女たちが男をビシビシひっぱたくシーンで始まる。

砂漠の中、黒塗りの車から降りて来る3人のオンナたち。足が映る。デカイ胸元が映る。そして顔が映る。同じカット割りで、スローモーションのオンナたちは、みんなエロい。セクシーというよりエロい。のっけからボンネットから引っ張りだしたオトコをボコボコにいたぶるオンナたち。

ストーリーは、闇のフィクサーが隠したという2億ドルのダイヤを横取りしようと砂漠にやってきた美女3人組が、悪漢たちから襲撃されながら大暴れするのだが、やがて意外な真相がわかる、というもの。

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ストリッパーのトリクシー(ジュリア・ヴォス)はボディコンねえちゃん。麻薬売人のカメロ(アメリカ・オリヴォ)はジーンズ履いた男勝り。高級娼婦のヘル(エリン・カミングス)はブラウスにタイトスカートで知的なトコもある(彼女は、刑務所内で「フェミニズム以降のビッチ」という分厚い本を読んでいるし)。

それぞれ個性は強いが、そんな「イイ女」3人がくんずほぐれず"キャット・ファイト"をし、銃をぶっ放し、キレイな顔に鼻血を出し、レズにも走っちゃう、という<見所いっぱい>の映画(笑)

思えば、尾崎魔弓の女子プロレスをテレビで見て、あの気の強そうな顔立ちの額から流れる血を見て(なぜか)「なんか好き!」と思ってしまった自分にはこれはドンピシャの映画であった(爆)

画面は、乾いた砂漠の場面から、時間軸を無視してあらゆるところを行き来する。ロケ撮影の砂漠の映像から、街中のホテルなどは、クロマキー合成(グリーンバック)なので『マックス・ペイン』や『ザ・スピリット』のテイストに近い(なので余計にB級っぽいのかも知れぬ)。

この映画が<信用できる>一つの理由は、アクション監督にゾーイ・ベルを起用しているところだ。そう『デス・プルーフ』に出てたあの「女マックイーン」である。

特典映像の「Building a Better B-Movie」(約90分)を見ると、ロジャー・コーマンの門下生である、監督・脚本のリック・ジェイコブソンと脚本・製作のエリック・グルエンデマンは、「タランティーノ/ロドリゲスの『グラインドハウス』は気に入ったが、あれは70年代のまんまの映画だった。その時代のエクスプロイテーション映画のスタイルで、現代劇を撮ったら面白い映画が出来るんじゃね?と思った」と語る。二人とも<真面目に>B級映画を作ろうとしている姿勢が好感が持てる。

ロリコンが多い日本人男子には「萌え」が少ないと思うが、肉食系男子にはご馳走と思う。
大声で、人にお勧めできる映画ではないかも知れないが、オレは「なんか好き」な映画の一本であった(笑)

BITCH SLAP (2009)

Directed by Rick Jacobson

5.1 Dolby Digital
2.35: 1 Aspect Ratio
Region 1
109 mins

12-Nov-10-Fri by nobu

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20th Century Fox  2010-03-02

by G-Tools

2010-08-19

『E.YAZAWA ROCK』 [Blu-ray] 矢沢永吉

E.YAZAWA ROCK [Blu-ray]

矢沢永吉の1979年から2009年までの軌跡を追ったドキュメンタリー映画『E.YAZAWA ROCK』である。
2010年7月21日発売だったので、夏休みの一時帰国の際買って来た。永ちゃんのファンであるぼくは、DVDではなく値段の高い初回限定プレミアム・エディション・ブルーレイ(¥7,140)を買ったのだ。

Blu-rayのカバーアート(上の写真)を見た時に、ちょっと不安を覚えたが、予想は的中していた…。はっきり云おう、これ、映画としてぜんぜん「イケてない」のだ(はぁ)

見終わって、欲求不満だけが残るフィルムだった。ぼくは、棚から永ちゃんのライヴDVD「ROCK’N’ROLL IN TOKYO DOME」を出してまた見て、機嫌を直したのだった(苦笑)

ROCK'N'ROLL IN TOKYO DOME [DVD]
ROCK'N'ROLL IN TOKYO DOME [DVD]

映画冒頭、ベッドから起きて、朝のトレーニングへ出かける永ちゃん。サイパンの砂浜を全力疾走し、カメラの前で倒れる永ちゃん。その顔のアップが映った時は、「スター千一夜」(古いか・笑)もとい、アイドルのDVDか?と思ったよ(笑)

それから、リハーサル風景。(サイパンやDIAMOND MOONなどでの)インタビュー。コンサート風景などが続く。1979年当時の映像や、80年、90年代の永ちゃんの映像もインサートされる。

トレーニング・ジムで身体を鍛える永ちゃんの顔は、(なぜか)長州力に見えた。ハーレーにまたがって走るドーム・コンサート用のメイキングは、「東映マーク」がぴったりの映像!

製作・監督の増田久雄は、1980年の映画『矢沢永吉 RUN & RUN』のプロデューサーである。その当時は、永ちゃんのメディアへの露出が少なかったので、これはファンには嬉しい映像だった。(矢沢永吉は70年代後半、アーティストとして初めてTV歌番組への出演を拒否していた)

矢沢永吉 RUN&RUN [DVD]
矢沢永吉 RUN&RUN [DVD]

だが、あれから30年。その間に、ぼくたちは矢沢永吉の映像を、ビデオ、LD、DVDなどで気軽に所有できるようになり、BS放送などでは、コンサートのメイキングやインタビューも見れるようになった。

そういう永ちゃんの映像を何十年も見続け、コンサートにも通い続けた者から云わせてもらうと、この映画は、正直、映像センスが古すぎるのである。撮りかたも、編集の仕方も「昭和」のままなのだ。

同じようなコンセプトのライヴ&ドキュメントでは、2005年のDVD「FIFTY FIVE WAY」の方が、カメラ・ワーク(ロスの自宅の映像)も、インタビューの内容も数段ぼくは面白いと思う。

FIFTY FIVE WAY (初回限定版) [DVD]
FIFTY FIVE WAY (初回限定版) [DVD]

この映画のコンサート映像もいただけない。せっかく、武道館100回記念、60歳の東京ドーム公演を撮影しているのだが、色々オトナの事情があるにせよ、それも活かしきれていない。

「トラベリン・バス」のシーンでは、演奏途中でカットして繋いでいることがわかる編集になってるなんてライヴ・フィルムとしてもがっかりである。(編集:熱海鋼一)
曲の途中で、リハーサル風景をはさむのも興醒めだ。カッコよく歌ってる永ちゃんが、突然ジャージの上にバスローブをはおった姿になるんである(あぁ)

海外では、マイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』など、音楽家としてのマイケルの才能も垣間みれるような映像(あのテンポを合わせて行く場面など)も、この映画では見当たらない。

同じ60歳代のローリング・ストーンズは、(大ファンを自認する)名匠マーティン・スコセッシ監督と『シャイン・ア・ライト』(‘08)という名作ライヴ・フィルムを世に送り出した。
永ちゃんの今回の不幸は、矢沢永吉に惚れ、矢沢永吉の音楽を理解した、映像世界の才人にこのライヴ&ドキュメント・フィルムを託さなかったことにある。

特典映像の東京国際映画祭での挨拶で、監督の増田久雄は、「かっこいい永ちゃんを見せた」と胸を張っていたが、ぼくにはこれはぶつ切りのスクラップに過ぎず、しかもワンカットも心を打たれる瞬間がない映像集だったのだ。上映時間90分、ファンのぼくでも我慢を強いられたのである。

永ちゃんは、かつて東京でのストーンズのライヴを見た感想を「俺の方が勝ってる」と言った。この映画『E.YAZAWA ROCK』は『シャイン・ア・ライト』の足下にも及ばない。いつか、矢沢永吉版「シャイン〜」が見れる日を一ファンとして心から待ち望んでいる。矢沢永吉の魅力は、こんなもんじゃないからね。

E.YAZAWA ROCK (2009)

Directed by Hisao Masuda
90 minutes

19-Aug-10-Wed by nobu

E.YAZAWA ROCK プレミアムエディション (初回生産限定) [Blu-ray]
E.YAZAWA ROCK プレミアムエディション (初回生産限定) [Blu-ray]

TWIST(初回限定盤)(DVD付)
TWIST(初回限定盤)(DVD付)

2010-08-05

『ザ・ジョーンジズ』(原題) The Joneses デミ・ムーア

Odoru0508105

ぼくは今夏休みで一時帰国している。香港からの往路のキャセイ航空の機内で観たのが、この映画『ザ・ジョーンジズ(原題)』"The Joneses"である。

デミ・ムーアが出てるので、これをチョイスした。彼女ももう48歳らしいが、相変わらず「お美しい」。今回は母親役である。これはファミリー・ムービー(家族映画)であるが、一風変わった「ファミリー」を描いたドラマなんである。

映画は、アウディに乗って高速を走る一つの家族(ジョーンズ家)の場面から始まる。乗ってるのは、40代くらいの夫婦、ティーン・エイジャーの息子と娘。 引っ越し先へ移動中だが、ちょっとリッチな新しい家は、業者によって、家族写真の飾り付けに至るまで完璧に設えられている。

到着早々、隣の家族が挨拶にやってくる。ジョーンズ家のみんなで迎える様は、裕福で幸せな家族そのもの。これを機会に、彼らは近隣の人々に暖かく受け入れられていく。

だが、この幸せな家族には誰にも云えない秘密があったのだ…

彼らはじつは家族ではなく、赤の他人なのである。彼らの目的は、口こみでモノを売る事。彼らはビジネスのために結成された「偽家族」なのだ。

母親はホームパーティを開いて、褒められた食事を「冷凍食品なの」と見せる。父親はゴルフへ行き「このアイアンだと飛ぶんだ」と打ってみせる。息子は、新しいゲーム・ソフトを学校へ持って行き、娘は化粧品を友達に勧める。こうやって購買意欲を高めて、廻りの人々に商品を買わすのだ。

同じ屋根の下で暮らすが、夫婦ではないので、もちろん寝室は別。食事もバラバラにとる。この家そのものが営業の装置で、そこで皆セールスに精を出す。それもこれも、時々訪れる上司から、対先月比のセールス実績を発表されるからだ。

この”ユニット”のボスは母親。時に情緒的になり、迫って来る夫にもピシャリと門を閉ざす。だが、その偽家族の「生活」の中で、彼らの気持ちも徐々に変わって行くのだった…。

クレジット・カードのコマーシャルで、様々な商品の値段が出て、最後に(家族の思い出は)"Priceless" というのがあったが、この映画を観ていると、まさにビジネス(お金)では買えないものは何か?ということを考えさせられる。

お金のために集まったが、彼らとて感情のある人間である。様々な人との出会いや、それぞれが抱える個人的な問題、それらを「家族」というファクターを通して見つめ直して行く…。

映画としての出来であるが、アイデアはとっても面白いと思う。演技も皆良い。だが、惜しむらくは、映画として抑揚がないところ。ドラマチックなところがあまりなく、印象がフラットなのだ。だからちょっと長く感じたのかも知れないな(96分しかないのに)。

デミ・ムーアの他のキャストは、父親役にデヴィッド・ドゥカヴニー(『Xファイル』)、息子役はベン・ホリングスワース、娘役はアンバー・ハード。彼女は美形でヌードにもなり頑張っている。ので、応援してあげましょう(笑)

地味な映画なので、日本での公開はわからない。だが、家族というものを考えるという意味では面白い題材だと思った。それに我々も知らず知らずのうちに誰かに影響され、モノを買わされているのだという現実(英語でUndercover Marketingという)。そのことも改めて考えさせられたのであったとさ。

The Joneses (2009)

Directed by Derrick Borte

96 minutes05-Aug-10-Thu by nobu

2010-06-16

『エリックを探して』 Looking for Eric ケン・ローチ監督 × エリック・カントナ

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日本では南アのワールドカップ、初戦のカメルーン戦(2010年6月14日)で勝利を収め大騒ぎだが、ぼくはその時東京に出張中で、試合中お客さんと銀座で飲んでてこの「歴史的な」試合を見れなかった(爆)

その東京行きのキャセイ航空の機内上映で観た、この映画『エリックを探して』"Looking for Eric"もサッカーがらみでハートウォーミングな作品だったのである。

監督は、ぼくが好きな監督の一人であるケン・ローチ。英国の下層階級の人間をやさしく見つめるような映画を得意とする彼は、本作でもダメ男の再生と生きる喜びを描いてて後味の良い映画に仕上げている。

ランナバウト(英国の円形の交差点・信号がない)を逆走する中年男エリック(スティーヴ・エヴェッツ)は、そのまま事故にあい病院へ入る。彼は精神的に参っていたのだ。
エリックは郵便局で働く労働者階級の男だ。家には二人の養子の息子がおり、こいつらはのんべんだらりと生活している。
今も想うオンナがいる。それは、元妻のリリィ。若い時に愛し合ったが、子供ができてから、彼は彼女から逃げてしまった。そのことを後悔している。

彼が住んでいるのは、マンチェスター。好きなサッカーチームはマンチェスター・ユナイテッド。友人たちも皆サポーターだ。そして彼の人生のヒーローは、エリック・カントナである。フランス人であるカントナは、マンチェスター・ユナイテッドを強いチームに蘇らせた立役者。

ある日、エリックは自分の部屋でマリファナを吸い、まどろんでいた。そして部屋に貼ってあるカントナのポスターに話しかけると、答えてくれる男が現れる。なんと、エリック・カントナその人だ!
それ以来、エリックは、カントナのアドバイスを受け、自分で自分の人生を変えて行く。エリィとの関係はとても良くなるが、ある日、息子が部屋にギャングがらみのピストルを隠し持っていることを知る……。

エリック・カントナは、(当然)他の人には見えない。エリックだけの心の中にいる「英雄」が彼に勇気を与えてくれるのだ。

これは人生のイエローカードをもらったオトコが、最後にシュートを一発かませるような映画。

エリックは、自分のヒーローであるカントナに、人生を教わり、恐れずに事を成し遂げるための勇気と励ましをもらう。本人として出演のカントナは、フランス語も交えて人生の講釈をするのが面白い。

エリックはファンとして、カントナに「あなたのサッカー人生の最高の瞬間はどの場面だったか?」を矢継ぎ早に質問する。あの試合のシュートだったか?この試合のシュートか?(その度に実際の試合場面がインサートされる)。そこでのカントナの答えは、ぼくには「意外」な答えだった(それが何かは書かないでおく)。あとパブで飲んでるサポーター仲間たちの会話も笑える。サッカー・ファンにはそんなところも楽しめるのではないか。

ケン・ローチ監督と云えば、『マイ・ネーム・イズ・ジョー』や『麦の穂をゆらす風』などが有名かも知れない。だが、ぼくが大好きなのは『ケス』(Kes/1969)である。いじめられっ子の少年が、ケスと名付けたハヤブサを飼うという、それだけの話なんだけど、いいんだなぁコレ。日本ではソフト化されてないが、これは名作である。

カンヌ映画祭60周年を記念して製作された映画『それぞれのシネマ』('07)の締めを飾った短編もケン・ローチだった。これは映画館の切符売り場でどの映画を観ようかと悩む父子が、結局映画を観ないで、サッカー観戦に行くという「オチ」で、洒落てたな(笑)

この『エリックを探して』は、昨年(2009年)の東京国際映画祭で上映されたと聞くが、日本での公開はないのかな?香港では2009年10月に公開済。ぼくは見逃してたので、今回観れてよかった。
小品だが、心暖まるケン・ローチらしい映画でした。キャセイの機内誌でもこの映画を大きく紹介していて、良い趣味だと思った次第。

Looking for Eric (2009)

116 minutes

15-Jun-10-Wed by nobu

Looking For Eric [Blu-ray] [2009]
Looking For Eric [Blu-ray] [2009]Eric Cantona

Icon Home Entertainment 2009-10-12
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starBrilliant
starDown on your luck, look for Eric
starQuality stuff

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by G-Tools

2010-05-24

『フィリップ、きみを愛してる』 I Love you Phillip Morris ジム・キャリー×ユアン・マクレガー

Odoru2305102

3連休だった香港の週末。中一の娘が来週から中間試験なので、勉強するという。なので、おとうさんは一人で映画に行こうと決めた。何を見ようかな?と思ったのだが、面白そうなコメディ『フィリップ、きみを愛してる』"I Love you Phillip Morris"がちょうど公開になった(2010年5月20日〜)ので行ってきた。

朝ご飯を娘と食べながら、「何見に行くの?」と聞かれたので、「ホモの映画」と冗談っぽく答えたら、けげんな顔されちまった(爆)

そう、この映画は実話を基にしたホモの映画なのだ(笑)

映画が始まる前に、ポップコーンかかえた男同士のカップルを何組か見た。香港はゲイが多いと聞いてるので、やっぱりそうかな?と場違いなトコロへ来たような気がして、肛門が引き締まるような気分になりながら、映画を楽しんだ。

スティーヴン(ジム・キャリー)は、一人娘もいる幸せな家庭の夫だった。だが、交通事故にあい人生観が変わり、「これからは自分に素直に生きる」と決める。じつは彼はホモだったのだ。離婚し、自分の人生を謳歌し始めた時、保険金詐欺で刑務所へ入れられてしまう。

そこで、知り合ったのが、金髪の美青年フィリップ・モーリス(ユアン・マクレガー)。二人は恋に落ち、出所してからも一緒に暮らし始める。だが、またフィリップを喜ばすため金を得ようと行った詐欺行為で、刑務所に逆戻り、かつフィリップをも傷つけてしまう。

スティーヴンは、フィリップに会い「愛してる」と伝えたい一心で、刑務所からの脱走を繰り返すのだが……。

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IQが169もあるという頭脳明晰なスティーヴンは、その頭の良さをフルに使って、何度も刑務所から抜け出そうとする、その手法(アイデア)が面白い。
出所して弁護士を偽り、あげくは、大会社のCFO(経理責任者)にまで登り詰めるのだが、そこでまた「悪い事をする頭脳(詐欺)」が頭をもたげる。

学校の成績が良くなかったぼくからすると、もったいない頭の使い方だと思うが、「詐欺師」って、ムショから出てもまた逆戻りというパターンが多いと聞く。やっぱり、詐欺をする奴って、基本的に「嘘つき」だから治らないのだろう。癖(へき)なんだから仕方がないのかな。

ま、それはともかく、映画としては、チャーミングな映画とは思うが、コメディとして笑える部分が少なくて、ちょっと期待外れだった。

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子供の頃、スティーヴンは、友達と空の雲を眺めながら、その雲が何に似てるかを言い合いっこする。スティーヴンには、雲のカタチがちん●に見えてしまうのだ。
もう、映画の中にはホモネタがいっぱい(笑)。刑務所に入っても、いきなり新人が、スティーヴンに”おねだり”してきたりとか、ジム・キャリーが飼う犬とか、ファッションとか細かいトコも笑えるのだ。

それに、フィリップの名前が、Phillip Morris というアメリカのタバコと同じなのも笑えたな。

今回勉強になった(?)のは、スティーヴンがしぶしぶ会社の社長からゴルフの誘いを受ける。それで、ゴルフ・クラブをかかえて家から出ようとすると、フィリップが、

「ゴルフすんの?ホモなのに?」みたいなことを言うのだ(笑)

ホモはゴルフしないのか?ボールを穴に入れるのがお嫌いなのか?(すまん)

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それにしても、昔から演技が上手いとは思っていたが、フィリップ役のユアン・マクレガーのホモっぷりは凄かった。気弱で、なよっとして、それでいてブロンドの髪が美しい、男らしさが1ミリもなく、面倒見てやりたくなっちゃうようなオトコ(専門用語でウケっていうのか?)。しぐさから、話し方から、走り方までホモそのもの。

だからといって、ジム・キャリーとマクレガーのキス・シーンが美しいかというと、ストレートな俺にはそうは思えなかったのだが(笑)

(誤解されないように言っておくが、ぼくはゲイもホモも否定はしていないので、念のため)

途中までは、”ひょっとして、これは『ライアー ライアー』('97)を超える、ジム・キャリーの傑作コメディになるかな?”と思ったが、やっぱりそうはならなかった… というのがぼくの感想でありましたとさ。

日本では、2010年3月13日から公開済みとのこと。

I Love you Phillip Morris (2009)

Director : John Requa, Glenn Fiquarra
98 mins

23-May-10-Sun by nobu

ライアー ライアー:デラックス・エディション [DVD]
ライアー ライアー:デラックス・エディション [DVD]

2010-04-28

『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』 [Blu-ray] The Hangover

The Hangover (Unrated Edition) [Blu-ray]

2009年のアメリカン・コメディ映画の大傑作"The Hangover"。めでたく日本では『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』という題名で2010年7月3日に劇場公開になる。まずはよかった。コレが公開されないと日本のコメディ文化は、携帯電話のようにガラパゴス状態になると思うからね(大げさ・笑)

香港では、もう昨年(2009年)末にBlu-rayもDVDも発売になっている。ぼくはブルーレイをクリスマス・プレゼントとして彼女にもらった。こんな映画(笑)をプレゼントしてくれる彼女をぼくは「イイな」と思うのだ(のろけ)。

で、映画『ハングオーバー』であるが、コレは何度観ても面白い。ぼくは、"10年に一本のウェルメイドなコメディ映画!"と前にもココで書いたが、その印象は変わってない。

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このBlu-rayの特典映像も映画同様おもしろかった。
削除したシーンの中でも、特に、The Madness of Ken Jeong (ケン・ジョングの狂気)は大笑いだ。映画を観れば、一番印象に残るのが、謎の中国人、ミスター・チョウを演じるケン・ジョングだとわかってもらえると思うが、これは彼の出演したシーンの別テイク集。一つのシーンを何パターンものアドリブで演じる彼は抱腹絶倒なのだ。他の出演者が思わず吹き出してしまってるのもそのまま映ってる。

これを観ると、監督(トッド・フィリップス)は、出演者にどんどんアドリブで演じさせ、何テイクも撮影し、そのなかで一番おいしいトコロを本編で使ったのがわかる。

そういう目でもう一度本編を観ると、例えばラスベガスの警察署で、パトカーを盗んだ罪滅ぼしに、フィル(ブラッドリー・クーパー)たちが、子供たちの前で防犯グッズの実験台になるシーンでも、警察官たちが笑いをこらえている(実際笑ってる)のがわかる。

他にも、デジカメの中に残ってた映像(別の写真)など、「ハングオーバー・ファン」(←いるのか?・笑)には楽しめる内容のディスクになっている。

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本作は、全世界で大ヒットし、ゴールデングローブ賞作品賞(ミュージカル・コメディ部門)受賞という冠もできたので、もう既に続編が製作されることが決定したとのこと。その続編には、マイク・タイソンにつづき、(渦中の)タイガー・ウッズに出演交渉しているというから笑わせる。

とまれ、まずは本編を楽しんでから、このソフトを楽しまれんことを!劇場公開を見逃すべからず!

The Hangover (2009) Blu-ray

1080p High Definition 16x9  2 4 1
Dolby Digital TrueHD 5.1
2.40: 1 Aspect Ratio
100 mins

28-Apr-10-Wed by nobu

The Hangover (Unrated Edition) [Blu-ray]
The Hangover (Unrated Edition) [Blu-ray]

2010-04-09

『シャッターアイランド』 SHUTTER ISLAND スコセッシ × ディカプリオ

Odoru0904102

香港では2010年3月11日から公開されていたが、日本へ一時帰国してたので、帰港して観るのを楽しみにしていたマーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の新作映画『シャッターアイランド』"Shutter Island" へ(やっと)行って来た。イースター・ホリディに行ったのだが、満員の盛況だった。

日本でも4月10日(土)から公開となるため、週間文春などの批評を眺めてみたがあんまり高い評価じゃなかった。ので、あんま期待せずに行ったのだが、これがぼくには案外面白かったのであーる。

タイトル・バックから何やら40年代風(古い感じのデザインの文字だけ)。音楽もおどろおどろしい。舞台は孤島の刑務所(だが精神病院)。ここで一人の女性患者が失踪した。その事件を捜査するために来たディカプリオ。台風が来て帰れなくなる捜査官。彼らが捜査を進めるのは大雨と風の中(不気味だ)。許可なく入ってはいけないと云われた重症(精神病患者)の棟へ入ると、薄暗く濡れた廊下から突然現れる狂気の男…。

時代設定は1954年。ディカプリオ扮する連邦保安官テディは、第二次大戦時のアウシュビッツの惨劇と、愛妻を火事で亡くしたことがトラウマとなっている。何度も何度も繰り返される(そのことを思い出す)悪夢の場面…。

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主人公の視点で、観客たちも捜査を進めて行くと、最後には「え?しょーゆぅこと!?」という展開となる。そこまでのストーリー・テリングは、さすがスコセッシだけに飽きさせない。こんな題材にこんなにお金かけていいの?と思うほどセットも豪華だし、荘厳な雰囲気だ。この作品の<大きさ>は、劇場じゃないと味わえないかも知れない。

とても緊張し、集中して観る映画なのに、ぼくの隣に座った初老の夫婦が映画の最中によく喋るのだ。白人なのだが、喋ってる言葉がよくわからない。ぼくは勝手に「フィンランド語」だと思い(笑)、聞かないように務めた。どうやら奥さんが英語がよくわからないらしく、入り組んだストーリーなので、旦那に聞いている様子なのだ。心の中では「家で、DVDで見ろよ!」「口にシャッターしろ!」と叫んでる俺(笑)

ぼくが観た劇場は、アメリカのAMCチェーンの映画館をそのまま香港でやってるトコロで、映画が始まる前も "Please Don't Spoil the Movie by adding your own Sound Truck"(貴方の"サウンド・トラック"で映画の邪魔をしないでください)と注意が出て、その後デカイ文字で "SILENCE IS GOLDEN" (沈黙は金)と出る。このおばはん、こんな英語も読めへんのか… と悲しくなったが、注意しない旦那も旦那。オトナなのに、映画館が「自宅のリビング」だと思ってる客が最近多いと思う。

サイコ・ミステリー・スリラーとして、怖さを楽しめる上出来な映画である。お子ちゃま顔のディカプリオの妙に老けた演技。マックス・フォン・シドー、ベン・キングスレーなど大物が演じる医者もいかにもイカガワしい(笑)。スコセッシのベスト・ワークとは言えないが、島の絶壁や古びた灯台など、ヒッチコックを(どうも)意識した実験的な演出もぼくには面白かった。

セリフの一つ一つも重要になるこの映画。ぜひ映画館の(暗がりの)大画面&音響で楽しんでくさい。「フィンランド人の奥さん」があなたの隣に来ないことを祈りつつ(笑)

SHUTTER ISLAND (2009)

Director : Martin Scorsese
Cast : Leonardo DiCaprio, Ben Kingsley, Michelle Williams
Duration : 138 mins
Language : English

09-Apr-10-Fri by nobu

2010-04-08

『エブリバディズ・ファイン(原題)』 Everybody's Fine ロバート・デ・ニーロ

今年(2010年)の春休みに一時帰国した際、キャセイの機内で見たのがコレ。ロバート・デ・ニーロ主演の新作映画『エブリバディズ・ファイン』"Everybody's Fine"である。

この映画、香港で公開になったとき予告編を見て、軽いコメディだと思っていたのだが、実際に見てみるとけっこうシリアスなドラマだったので驚いた。

それもそのはず、これイタリアのジュゼッペ・トルナトーレ監督の『みんな元気』('90)のリメイクなんですね。この原題(Everybody's fine)は、『みんな〜』のアメリカ公開時のタイトル。

イタリア版では名優マルチェロ・マストロヤンニが演じた役を、これまた名優ロバート・デ・ニーロが演じる。

妻を8ヶ月前に亡くした初老の男フランク(デ・ニーロ)は、巣立って行った子供たちが週末訪ねてくれることを楽しみにしていた。スーパーで肉を買い込み、上等なワインを買い、庭でのバーベキューの準備は万端。なのに、次々と子供たちから「ダディ、申し訳ないけど、今度の週末は帰れないの」と電話がかかってくる。

意を決したフランクは、古いバッグを取り出して、NY行きの列車へ飛び乗る。子供たちが来てくれないなら、自分が行って驚かせてやろうと…。

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これは、アメリカ版(元はイタリア版だが)『東京物語』。突然お父さんに来られた子供たちはそれぞれに困ってしまう。NYで芸術家を目指す長男。指揮者になると言った次男。広告業界で成功した長女、ラスベガスでショウに出てるという次女。皆、それぞれに自分の人生を送っているが、実は色々あるんである(笑)

お母さんには話せても、お父さんには話してくれないこと。お父さんにはそれが不満だった。だが、子供たちはお父さんに話せない<ある秘密>を共有していたのだった…。

工場で電話線のワイヤー作りをし、今はリタイアした父。映画は、お父さんの乗った列車が、電信柱に繋がれたワイヤーに導かれるように走りながら進む。

監督のカーク・ジョーンズは、ワンカット、ワンカットを丁寧に繋いでいく。デ・ニーロの初老の男の名演が(お父さんであるぼくには)身につまされる。コミカルな部分もあるのだが、これはシリアスでキビしいが良質のドラマであった、途中までは……。

この映画の惜しいのは、ラストである。それまでの真面目でシリアスな語り口が、とたんにB級コメディ映画のようにゆるゆるになっちまうのだ。アメリカでの評価がもう一つなのも、そのせいだろう。90%がよくても残りの10%が悪いと台無しになってしまうという典型。

ぼくはトルナトーレの『みんな元気』を見ていないので、比較が出来ないのが残念だが、あのトラヴィス(『タクシー・ドライバー』)に代表される若い頃はいつキレるかわからないアナーキーな役を演じていたデ・ニーロが、こんなしょぼくれて弱い面を見せる初老の男を演じるようになったのか、と感慨深いものがあった。マストロヤンニ版を見てないが、このデ・ニーロもとてもイイのだ。

他の出演は、ドリュー・バリモア、ケイト・ベッキンセイル、サム・ロックウェルなど。

日本での公開は「?」だが(理由はこの映画の配給会社が現在「身売り中」のMIRAMAXなので)、もし公開されたら、お父さん世代にこそ見てもらいたい映画である。

Everybody's Fine (2009)

(アメリカではDVDがもう出てる)

Everybody's Fine
Everybody's Fine
Miramax Films  2010-02-23
Sales Rank : 278

Average Review  star
starDe Niro does it again
starExcellent Family Disfunctionality
starSurprisingly Good!

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(日本でもDVD発売「みんな元気」)

B00472MEOCみんな元気 [DVD]
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 2011-01-19

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2010-04-07

『ハート・ロッカー』 The Hurt Locker

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遅ればせながら、映画『ハート・ロッカー』 "The Hurt Locker"である。香港では2010年3月11日より公開になり、観ていたのだが感想を書くのが遅くなった。

ご承知の通り、本年度アカデミー賞最優秀作品賞を含む6部門で受賞した作品である。こういった評価が既に定まっている映画の感想を書くのは、なぜかぼくはちょっと気後れがするのだ(笑)

この『ハート・ロッカー』は、オスカー受賞という冠がついてはいるが、それがあってもなくても「秀作」であった。

映画は時々「旬の野菜」と同じように、食べ時がある。これはそんな映画だ。今、現在を生きる人間として、「観ておかなきゃいけない一本」だと思う。

今なお続くイラク戦争。その現場である戦場において、兵士たちは一体どんな「戦い」を強いられているのか?そしてその戦いに何の意味があるのか?それがわかるのだ。

1960年代のベトナム戦争においては、ジャングルの中でベトコンたちと戦ったアメリカ兵たち。オリバー・ストーンが描いた『プラトーン』(小隊という意味)で、ジャングルでの戦争の恐怖を(劇場で)疑似体験させられた観客は、この『ハート・ロッカー』で、イラクでの戦争をまた疑似体験するのだ。

この映画の主人公である兵士たちは、爆発物処理のスペシャリストだ。市街地に埋め込まれた地雷、それを除去する過程で、一番戦わねばならないのは、敵の兵士ではなく「一般市民」なのだ。これは怖い。その辺で爆破処理作業を見ているアラブ人のおっさんが携帯電話のスイッチを押すと、地雷が爆破するかもしれないのだ。

相手は一般市民である。むやみに発砲出来ない。ヤジウマの中に、兵士たちを殺そうとするテロリストが混ざっていないと誰が云えよう。そんな状況の中、今日も淡々と爆破物を処理する男たち。

冒頭、詩の一節だったか、「WAR IS DRUG (戦争はヤクだ)」とテロップが出る。

来る日も来る日も、一体誰が敵かわからない一般市民注視の中、黙々と地雷処理をする。その張りつめた、(おそらく究極の)緊張感が、だんだん男たちの中でヤクのように快感へと変わっていく…。

「男の闘争本能が無くならない限り、戦争はなくならない」と云ったのは開高健だったと思うが、この男たちの根っこにある「敵を許せない」という正義感が、極限状態の中でいつしか正当化され、そして戦争を肯定していってしまう恐ろしさ。

今日現在も行われているイラク戦争の意義が問われるという意味で、この映画の問題定義がアメリカの批評家たちに絶賛をもって迎えられたというのはよくわかる。

映画としても、爆破処理を行う過程を丁寧に描写し、それがゆえにスリリングさを高めるという演出のアイデアがうまいと思う。ドキュメンタリー・タッチで、出演者も無名なので緊張感が持続できるのも良い。

今年のアカデミー賞授賞式で、プレゼンターのトム・ハンクスが、「候補作が10本というのは、1943年の『カサブランカ』以来。さて今回の受賞作も”クラシック”となりますか」と話し、『ハート・ロッカー』の名を告げた。

クラシックになるかどうかは、歴史が決めることだが、現代を生きる人間として、今観ておかねばならぬ一本と改めて思う。観ることに「意義がある」映画である。

Odoru0704102

The Hurt Locker (2008)

Director : Kathryn Bigelow
Cast : Jeremy Renner, Anthony Mackie, Brian Geraghty
Duration : 132 mins
Language : English

07-Apr-10-Wed by nobu

The Hurt Locker [Blu-ray]
The Hurt Locker [Blu-ray]
Average Review
starsWOW
starsvery absorbing wartime movie
starsShouldn't have won the Oscar and definietly shouldn't have won best screenplay!
starsRealistic
starsWhat is war?

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