「ウィズ」 DVD THE WIZ マイケル・ジャクソン
香港・中環(Central)のHMVでマイケル・ジャクソン追悼の棚に映画「ウィズ」"THE WIZ" のDVDがあったので買って来た。マイケルが亡くなってから、この映画をもう一度観たいなと思っていたのだが、中々売ってなかったので今回買えてよかった。このDVDは2009年2月発売の北米版。本編はリマスターされ、サウンドはDTS, 5.1サラウンドにブローアップされている。
1978年、モータウン・プロダクションにより製作された「ウィズ」は、ブロードウェイでトニー賞を受賞した同名作品の映画化である。オール黒人キャストによる「オズの魔法使い」。舞台版は原作に忠実にカンサス生まれの少女ドロシーがオズの国へ行くという物語なのだが、映画版は、舞台をニューヨークに変え、主役のドロシーにダイアナ・ロスを据えた。ドロシーは24歳の先生という設定で、感謝祭の夜、愛犬トトが雪の中飛び出して行き、それを追っかけて竜巻にあいオズの国へ迷い込んでしまう。家に帰るため、知り合った かかし(マイケル・ジャクソン)、ブリキ男(ニプシー・ラッセル)、ライオン(テッド・ロス)と共にエメラルド・シティのウィズ(リチャード・プライヤー)に会うため、イエロー・ブリックロードを歩き冒険の旅に出る。
公開当時は、批評家に酷評を受け、興行的にも惨敗した(製作費2400万ドルで、興収1360万ドル)。批評の中で一番批判が多かったのは、ドロシーを当時33歳のダイアナ・ロスが演じたことだった。このDVDの特典映像「Wiz on Down the Road」(約12分)によれば、モータウン社長(で、ダイアナ・ロスの元愛人の)べリー・ゴーディが朝5時にプロデューサーのロブ・コーエンに電話をかけ、「ドロシーをダイアナでどうだ」ともちかけ主役が決まったという。脚本のジョエル・シューマッハー(後に「セント・エルモス・ファイアー」「オペラ座の怪人」を監督)は、舞台版の脚本を一切参考にしなかった。監督のシドニー・ルメット(「12人の怒れる男」「セルピコ」)は、(ジョン・バダムが降板して)ニューヨークを舞台にしたので彼を起用したとプロデューサーは語っている。
土曜日のお昼、娘と一緒に観たのだが、盛り上がりに欠けるミュージカルであることは否めない。上映時間2時間15分も長すぎる。ドロシーをオトナの女にしたお陰で、子供用のミュージカルではなくなり、かといって大人の鑑賞に耐えるものにもなっていない。
エメラルド・シティは、今は無くなったワールド・トレード・センター前に巨大なセットを組み撮影された。画面を眺めていると70年代当時のすさんだニューヨークが垣間見える。オズの国に行った最初のマンチキンのシーンは画面が暗すぎ見にくい。集団群舞のダンス・シーンが多いのだが、高揚感があまりない。社会派の名匠シドニー・ルメットはなぜこの監督を引き受けたのか?とても疑問に思う。ひょっとして、義理の母レナ・ホーンを、良い魔女グリンダ役にキャスティングしたかったからか?(笑)
しかし、アメリカではカルト・クラシックとしての評価もあり、昨年(2008年)30周年記念DVDも発売となった(中身は、このDVDと同じもの。サントラCD付)。
この映画の歴史的な価値は、何と言ってもマイケル・ジャクソンが映画初出演したことだろう。映画としては失敗作といえるかも知れないが、マイケルの出演シーンはキラキラ輝いているように見える。ジャクソン5の一員だったマイケルは、デビュー以来世話になったモータウンを出てエピックへ移籍していた。だが、この映画のオーディションへ参加、かかし役を得た。当時20歳だったマイケルは、この映画で、音楽アレンジをしたクインシー・ジョーンズと知り合い、その後二人は「オフ・ザ・ウォール」「スリラー」「BAD」という大ヒット・アルバムを世に送り出すことになる。マイケルは、ダイアナ・ロスとの共演を本当に喜び楽しんだようだ。ダイアナに当時プロポーズしたとも聞くが本当のところはどうなんだろう。マイケルは遺言に子供たちをダイアナに託すと書いていたという。
かかしの最後のセリフ「ドロシー、君のことをいつも想っているよ」(Oh, Dorothy. I'll think of you all the time.)はマイケルのダイアナに対する気持ちが重なる。マイケルにとってダイアナ・ロスは「生涯の憧れ」だったのかも知れない。
Scarecrow: ”Success...fame and fortune...they're all illusions. All there is that is real... is the friendship... that two can share.”
THE WIZ (1978)
Directed by Sidney Lumet
Dolby Digital 5.1 Surround, DTS
Aspect Ratio: 1.86: 1
135 mins
Region 1
25-Jul-09-Sat
(予告編 ↓)
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