映画「WALL・E/ウォーリー」における「ハロー・ドーリー!」の考察
日本では12月公開のピクサーの新作映画「WALL・E/ウォーリー」は、とても感動的な一編である。その感動のモチーフになるのが、昔のミュージカル映画だというのが古くからのファンにとっては嬉しい。その映画は「ハロー・ドーリー!」。1969年ブロードウェイの大ヒットミュージカルを映画化した、バーブラ・ストライサンド主演、ジーン・ケリー監督の20世紀フォックス作品である。
映画「WALL・E/ウォーリー」は、700年間一人で(一台で)黙々と地球を掃除し続けている旧来型ロボット・ウォーリーと未来型ロボット・イヴの恋物語が話の中心になっている。地球上にたった一台しかいないウォーリーがゴミ箱から拾って来たビデオテープを繰り返し観て夢焦がれ、心に刷り込まれる映像が、「ハロー・ドーリー!」の二つのシーン(「日曜は晴着で」 "Put On Your Sunday Clothes"と「ほんの一瞬のこと」 "It Only Takes a Moment")なのだ。
「ハロー・ドーリー!」の物語は、ニューヨークに暮らす世話好きの未亡人ドーリーが、ちょい田舎のプチ金持ちホレスさんをモノにしようとするのが骨子だが、脇役のホレスさんの店で働く若者のコーネリアスたちが都会へ出て恋をするという話も同時に進行していくのである。
飼料店の社長ホレスさん(ウォルター・マッソー)に毎日うるさく言われ、しかも1日も休日をもらえない若者コーネリアス(マイケル・クロフォード)とバーナビー(ダニー・ロッキン)は、ホレスさんが休暇で留守の間にニューヨークへ行って、女の子とキスをして帰ってくるぞと誓いを立てる。だが、彼らは女の子と付き合った事もない。その時ドーリー(バーブラ・ストライサンド)にニューヨークにある帽子店へ行ってアイリーン(マリアンヌ・ロックアンドリュー)とミニー(E・J・ピーカー)という女性に会いなさいとアドバイスされる。そして二人は一張羅のスーツを着て「日曜は晴着で」を歌い踊りながら汽車に乗り込むのだ。
ウォーリーが憧れのまなざしで画面を見つめるのが、もう一曲の「ほんの一瞬のこと」。恋は一瞬で訪れる、という内容のこの歌は、最後に恋に落ちた
コーネリアスとアイリーンの二人が公園で手をつなぐ場面で終わる。
「WALL・E/ウォーリー」の監督アンドリュー・スタントンと共同脚本のジム・リアードンは「この『日曜は晴着で』を使ったのは、生まれてから出たこともない田舎町から都会へ行って女の子と知り合いになりたいと行動することがウォーリーの心情を表現するのにぴったりだった」そして「『ほんの一瞬のこと』は、ウォーリーが "I Love You" と言わなくても観客にそうわからせることが出来る完璧なシーンだった」とインタビュウで語っている。
ウォーリーはロボットなので単語でしか話すことが出来ない。イヴもそうだ。彼らの心情を表現するのに、昔のミュージカル映画の場面を使うというアイデアは素晴らしいと思う。往年のミュージカルのナンバーは、気持ちをストレートに伝える歌と踊りで表現するものが多く、ロボットの心情を観客に<見せる>ということでは最適であろう。
観客側も「WALL・E/ウォーリー」を観る際に、この場面が「ハロー・ドーリー!」のどこで使われたものかを知っていると余計にウォーリーに感情移入が出来ると思う。知って観るとホントに切ないと思うよ。だから、「WALL・E/ウォーリー」を観る前にこの「ハロー・ドーリー!」を観てから行くことをおすすめします。はい。
ついでに(笑)、映画「ハロー・ドーリー!」"Hello Dolly!"についても少し書いておく。
バーブラ・ストライサンドとウォルター・マッソーのラブ・ロマンスと聞くと、中年の醜男とブスのおばはん(←失礼!)の話やないか、と思われるだろう。だが既に書いた通り飼料店の若者や、ホレスさんの姪っ子の恋物語もあり、若い人も楽しめる作品になっている。
この作品は、上映時間が長いとか、つまらないとか言う評価もあるが、いやいやこれは見応えのするミュージカル映画の一本であるのだ。
MGMミュージカルで大スターとなったジーン・ケリーが監督、マイケル・キッドが振付を担当。キッドといえば大傑作「略奪された七人の花嫁」の振付で有名だが、ケリーとは「いつも上天気」で共演して一緒に踊っており、気心が知れていたと推察する。オープニングは「野郎どもと女たち」、ニューヨーク行きの汽車は「ハーベイ・ガールズ」、パレードは「ミュージック・マン」、ストリートでの踊りのドリー撮影は「踊る大紐育」を連想させ、公園やナイトクラブでの集団群舞は「略奪〜」を彷彿とさせる。つまりこれはかつての華やかし頃のスタジオ製ミュージカルをケリーとキッドの二人が再現しようとしたのだろうとぼくは思っている。
それにしても、ケリーもキッドも製作費を使い過ぎだわな(笑)CGのない時代に、パレードでの長い集団の行進や、ナイトクラブなどのセットや衣装の豪華さは凄い。1969年頃といえば、メジャー・スタジオが軒並み体力を消耗していた頃だから、製作者側にはひどい仕打ちだったろう(笑) 実際、本作と「ドリトル先生不思議な旅」('67)「スター!」('68)の興行的な失敗は20世紀フォックス社を窮地に落し入れてしまったわけだから…。
しかし、撮影に一ヶ月を費やしたというハーモニア・ガーデンというナイトクラブでの給仕たちの集団群舞は素晴らしい!し、バンド・リーダーとして出演し、バーブラとひとくさり唄うサッチモの場面は今観てもシビれるしね。手足の長い若き日のトミー・チューンの踊り(←これが映画デビュー)も観れるし、バーブラの歌ももちろんイイし。
先週香港は、シグナル8→9(台風警報・学校や会社は休みになる)が出たので、この映画をリビングで観てたら、曲を聴いて11歳の娘が「あ、ウォーリーの曲だ!」と興味を持ち、最後まで一緒に観て「楽しかった」と喜んでた。本当に楽しいミュージカルだ。台風も吹っ飛んだよ(笑) ご家族でどうぞ!
Hello Dolly! (1969)
2.35: 1 Aspect Ratio
4.0 Dolby Surround
146mins
Region 2
【関連】「WALL・E/ウォーリー」
http://nobuyasu.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/walle_e059.html
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ハロードーリとB.ストライザンドの問題に関して、調べていたら、「踊る大香港」ブログで本記事を見つけました。
私も”WALL・E”見た時に感動しました。
実は、ハロードーリの大ファンです。親が1960年代のブロードウエーのハロドーリーを見て、その時のレコードを幼い私は、毎日聞いていました。まるで、”WALL・E”そのものです。
記事「WALL・E/ウォーリー」における「ハロー・ドーリー!」の考察
読んでるうちに、映画好きが伝わりました。思わず、投稿させていただきました。今後もブログ楽しみにさせていただきます。
投稿: koji | 2010-10-31 21:32
>kojiさん
こんにちは。誤字脱字駄文満載の当ブログへようこそ。コメントありがとうございます。
いいですよね、「ハロー・ドーリー!」。ぼくら遅れて来た世代は映画でしか観てませんが、すんばらしいミュージカルの一本ですね。
「WALL・E/ウォーリー」は作り手の音楽に対するセンスが最高です。こちらにも、サッチモの唄う"La Vie en Rose"が使われており、なにか"繋がってる感じ"がしてます。
投稿: nobuyasu | 2010-11-01 15:12