「君も出世ができる」 DVD
東宝映画「君も出世ができる」が遂にDVD化された。今年の夏休み、日本に帰ったときにぼくの「買うものリスト」の一番上にあったのがこれ。10年以上前に<東宝ゴクラク座>と銘打ったシリーズのLDを買って大事に香港まで持って来てたが、今回<帰ってきた東宝ゴクラク座>となりDVDで甦ったのだ。
映画通の間では「君出世(きみしゅっせ)」と略して呼ばれるこの映画は、数少ない和製ミュージカル映画の成功例の一つである。東京オリンピックが開催された1964年に公開されたこの映画は、高度成長時代の日本のエネルギーを感じさせる元気いっぱいの映画なのだ。
出演はフランキー堺、高島忠夫、雪村いづみ、中尾ミエ、浜美枝、益田喜頓、有島一郎、藤村有弘、ジェリー伊藤。製作:藤本真澄、監督:須川栄三、音楽:黛敏郎、作詞:谷川俊太郎、振付:関矢幸雄。
1961年暮れに公開された、映画「ウエスト・サイド物語」は空前のヒットとなり、「マイ・フェア・レディ」の翻訳舞台公演もヒットと日本でもミュージカル・ブームが起きた。「社長シリーズ」などで知られる東宝の大プロデューサー藤本真澄は「日本独自のミュージカルを作るぞ!」と鶴の一声で、当時日本の若き才能が集められ製作に着手する。サラリーマンを主人公に日本人の民族性をベースに作られたこのミュージカルは、製作費をかけたにも関わらず全く当たらず、その後和製ミュージカルが作られることはなかった。
倉庫の中でそっと眠っていたこの映画は、90年代に入り若い映画ファンの間で”幻のカルト・ムービー”として脚光を浴び始める。製作後30年を経て「こんな日本製ミュージカルがあったのか!」と若き映画ライターやコラムニストたちが騒ぎ始めたからである。そして94年にLDが発売され、そのイベントとして今はなき大井武蔵野館でニュープリント版が上映されるまでに至る。これを機にこの映画は再発見・再評価されたのであった。
MGMミュージカル映画によくあるパターンにこういうのがある。舞台で全く当たらなかったシリアスなものを、ミュージカルにして再演したら大当たりした(→例えば「バンドワゴン」)。こけたサイレント映画をミュージカルにしたら大ヒットした(→「雨に唄えば」)。つまり、最初散々な目にあうが、皆の力で最後には成功するという話だ。この「君も出世ができる」も公開当時悲惨な結果になったが(製作費の20%しか回収できなかったという)、30年を経てLDで見事に蘇り40年後にはDVDになった。これは、90年代当時30歳代の若き映画ライターたちが奔走し、それに応えた東宝の若き社員たちの努力のお陰である。この映画が持っているその「熱気」が彼らを熱くさせたのか?いずれにせよ、この映画は最後に「(君も)出世が出来た♪」のであった。
ストーリーは、東京オリンピック時に外国人観光客を呼び寄せたい旅行代理店で、出世がしたいフランキー堺と、出世なんて考えてない高島忠夫が他社と争奪戦を繰り広げている。そこに高島と恋に落ちるアメリカ帰りの社長令嬢雪村いづみがからむというもの。
東宝お得意のサラリーマン喜劇をミュージカルにした本作は、現代においては無くなりつつある<出世志向>を臆面もなく出すフランキー堺のモーレツ社員ぶりが軽快で面白い。趣味人の高島とアメリカ帰りのキャリア・ウーマン雪村の方が、現代においてはリアリティがあるなと思わせる。それだけ時代が変わったということだろう。そんな日本の変わりようも見てとれるのだ。
楽曲やセットに「ウエスト・サイド物語」や「フラワー・ドラム・ソング」などの影響も見られる本作は、「アメリカでは♪」など、本格的なプロダクション・ナンバーもありニッポン・ミュージカルとして本当に「頑張っている」と思える。(カメオでC調植木等も出演している)
ハリウッド製ミュージカルを「高級スイーツ」だとしたら、これは「あんパン」かも知れない。けど、甘さとうまさは負けないぞという意気込みとパワーが感じられる一編である。
オーディオ・コメンタリーは、①高島忠夫、②フランキー堺、須川栄三監督のインタビュー(1994年)の二本立。
…で、次は「嵐を呼ぶ楽団」DVD化を切に望んでおります。ハイ。
君も出世ができる (1964) You Can Succeed, Too
モノラル
16: 9 東宝スコープ
総天然色
100mins
Region 2
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コメント
こんにちは。
東宝ゴクラク座!
懐かしいな。当時LDで全部揃えましたよ。
当時、小遣いはたいて、買いまくりました。
最初は「クレージー黄金作戦」だけのつもりが、
あれもこれもと欲を出すうちに、いつの間にかコンプリート。
ポイントカードが貯まりまくって、最後の一枚は無料ゲットしたくらいです。
中でも一番お気に入りだったのが、「クレージーだよ奇想天外」「若い季節」「100発100中」そして
この「君出世」。
一番好きな歌は、中尾ミエの「田舎で暮らそう」ですね。
それと、自暴自棄になったフランキーが歌う「~男一匹~!」って歌とかですね。
日本ではミュージカルが根付かないのか?
そんな事はないですよ。
「狸御殿」シリーズとか、何よりあの「鴛鴦歌合戦」という大傑作。
やる気の問題ですって。
そっか、DVD出たんですね。
ですが、東宝もこの秋から割と低価格でBDに参入しますんで、私はそっち、待とうかな。
投稿: Mol | 2008-08-28 19:33
Molさん こんばんは。
じつはぼくが買ったのはボックスセットで、中身は
「100発100中」
「100発100中 黄金の眼」
「夢で逢いましょ」
とこの「君出世」でした。
「黄金の眼」は初ソフト化とか。ホントに「帰ってきた」ゴクラク座です。
投稿: nobuyasu | 2008-08-29 00:28
ああ、「黄金の眼」!
手塚警部が有島さんじゃないんですよねぇ。
佐藤允さんも嫌いじゃないですけど。
「ぼん、おやじ~」がないと、締まらないというか、何というか。
「Godzilla Final Wars」という物議を醸したシリーズ最終作ですが、宝田明氏の台詞で「こう見えても、若い頃は"100発100中"と呼ばれた男だ!」
というのがありまして、ぶっ飛びましたね。
これで場内で思わず、手を叩いて笑ってしまったのですが、隣で一緒に観ていた弟も含め、周りの反応はポカーン・・・。
え、君らアンドリュー星野知らないの?ってちょっとガッカリしましたね。
実は、どういう縁か、ゴジラのプロデューサーで今、東宝の社長をされている富山省吾さんとは
面識がありまして、この事を伝えますと、
「年齢的に100発100中を知ってるあなたの方が・・・」と言われてしまいました。
「Godzilla Final Wars」は、何というかチャンピオンまつり世代にはたまらない映画です。
本多猪四郎、円谷英二、田中友幸に捧ぐといいつつ、その実100発100中やら、作中の選曲やら、
徹底した福田純へのオマージュ。
怪獣映画の本質を外れるとはいえ、怪優・北村一輝を見るだけで、入場料のモトが取れる凄さ。
周り、一万人が批判しようとも、私は断固支持してます。
布施明の主題歌、今でもソラで歌えます。
007に触発された、スパイ映画でも系統的には「電撃フリント」とか「リオの男」に近い系統なんですかね。
「ルパン三世」にも繋がるような感じです。
まだまだ、ソフト化されてない傑作は山と埋もれてますね。
CS放送では、日本映画専門チャンネルが、
ハイビジョン放送専門局になった事もあって、
古いソフトがことごとくハイビジョンマスター化されてます。
折角だから、どんどん出して欲しい所です。
DVDでも、BDでもいいから。
いや、その前にBDレコーダーを買って、エアチェックする方が早いのか。
先立つものがない・・・。
投稿: Mol | 2008-08-29 10:12
ご覧になられましたか! 先日、また高島忠夫さんにお目にかかったのですが、このDVD化をとても喜んでおられて、良かったなぁと思っています。94年版のコメンタリーは、取材テープなので、本来なら公開するものではないのですが、ご遺族の快諾を得て、収録することができました。取材テープを保存しておいて、それが完全なかたちだったので、良かったです。ただ、14年前の自分の声を聞くのは、お恥ずかしい限りですが・・・
投稿: 佐藤利明 | 2008-09-02 11:58
>Molさん
アンドリュー星野(宝田明さん)のインタビューが映画秘宝9月号に載ってました。面白かったですよ。
>佐藤利明さん
高島忠夫さんのコメンタリーとても面白かったです。お元気そうでよかったです!
フランキーさん、須川監督のお話も貴重なものでした。取材テープ残しててくれて感謝です。14年前か… お互い若かったですね!(笑)
投稿: nobuyasu | 2008-09-05 14:13