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2008-06-07

「サムライ」 DVD クライテリオン・コレクション LE SAMOURAÏ

アラン・ドロン映画の中で、傑作と名高い「サムライ」。「さらば友よ」を観てからまた観たくなり、棚から出して鑑賞した。このクライテリオン版は、毎度ながらレストアも素晴らしく、買ってよかったと思ったDVDの一本なのである(このかっこいいカバーアートを見よ!)。

若い人には、もうアラン・ドロンも知らない人が多いだろうし、ましてジャン=ピエール・メルビル監督なぞ「誰それ?」なのだろう。だが、彼こそフランスが生んだ素晴らしい映像作家の一人であり、この「サムライ」は彼のベストといっても過言ではない傑作なのである。
このDVDのブックレットに転載されているジョン・ウー監督の文章には、「メルビルは私にとって神だ」とまで書いてあるのだ。

物語はとてもシンプルだ。一人の孤独な殺し屋ジェフ・コステロ(アラン・ドロン)が、殺しをやり遂げ、警察に追われ、そして死んで行く。
タイトルバック。シンプルな部屋のベッドに横たわるドロン。真ん中に鳥かごが置いてあり、小鳥が「ピー…ピー…」と鳴いている。トレンチコートを着て、帽子をかぶりつばに手をかけ、表に出て行くドロン。車を盗み、それを闇ガレージに持って行きナンバープレートを変えて、拳銃を受け取る。それから彼女(ナタリー・ドロン)のアパートへ行って会話を交わす。それまでの10分間、なんのセリフもない。

つまりメルビルは、<映像という言語> "Visual Language of Cinema"で語ろうとする作家なのだ。この「サムライ」は、日本の侍のようにストイックな生き方をしている孤独な殺し屋の物語なので、ドロンは寡黙である。無表情で、冷たいブルーの目で相手を見つめ、白い手袋をして拳銃を撃つ。トレンチコートの襟を立て、ポケットに手を入れ街を歩く。フィルム・ノワールの一本である本作は、ドロンの主演、メルビルの演出で、前述のジョン・ウーの文章にあった表現を借りると、品のある「紳士が作ったギャング映画」の傑作となった。

細部にこだわった演出、その世界観はかつての日本映画の影響を受けていると評論家ルイ・ノグエイラも語る。セットの一つ一つの色調、アンリ・ドカエのカメラワーク、全てがシンプルかつスタイリッシュだ。

この映画の撮影中、メルビルの所有するパリのスタジオが火事で焼失するという悲劇が起きる。メルビルは保険をかけていなかった。幸い死傷者は出さなかったが、ドロンの部屋のセットにいた小鳥は犠牲となった。大きな精神的な苦痛の中、メルビルは本作を完成させる。全編をつらぬく、冷たいが哀しいムウドは、ひょっとしたらこの惨事も影響しているかも知れない。

ジョン・ウー監督の映画で、必ず出てくる「鳥」のシーンは、メルビルの影響なのだろう。ひょっとしたら、「サムライ」の小鳥への弔いなのかな?と思った。
それ以外にも、ウー監督の「サムライ」の影響は大きいと思う。トレンチ・コートしかり、ジャズしかり…。

このDVDは2005年に発売されたもの。ハイ・デェフィニション・デジタル・トランスファーによるレストア。メルビルの本を執筆した、ルイ・ノグエイラ(Melville on Melville) ギネット・ヴィンセンデュー (Melville: An American in Paris) のインタビュウ。メルビル、ドロン、フランソア・ペリエ、ナタリー・ドロン、カティ・ロジェの公開当時のテレビ出演時のインタビュウ集、予告編付き。

ぼくが初めてこの映画を観たのは、中学生の頃、TBS系「月曜ロードショー」だった。中学生に、こんな静かな映像美の映画が面白いはずがなく、退屈だったのを覚えてる(解説の荻昌弘さんはメチャ褒めてたけど)。今は、こんな素晴らしい芸術作品 (Work of Art) はないと思う。年をとるとはこういうことだろう。DVDの時代になり、本のように、若い頃観た作品を再度味わえるのは本当にありがたい。自分でこの名作が所有できるというのも嬉しい時代だとしみじみ思う。

面白いエピソードを一つ。1963年にメルビル監督からオファーがあったドロンだが、アメリカでの仕事を理由に断った。帰国後、メルビルを自宅に招いたドロンは、脚本を読み上げるメルビルに尋ねた「10分ほど立つが、セリフがないのか?」「気に入った。で、題名は?」メルビルが「サムライ(Le Samouraï)」と答えると、ドロンは、黙ってメルビルに自分のベッド・ルームを見せた。そこは、日本の刀が飾ってあり、全体が侍の家のような荘厳な日本式の部屋だったのだ。こうして、ドロンの主演が決まったのである。

LE SAMOURAÏ (1967)

Monaural
1.85: 1 Aspect Ratio
105mins
Region 1

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