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2007年12月

2007-12-30

「フェリーニのアマルコルド」 DVD クライテリオン・コレクション Amarcord

香港では、2007年12月29日まで約1ヶ月に渡りフェデリコ・フェリーニ映画祭をやっていた。主催は香港政府の文化部門。ほぼ全作品を上映したので、行きたかったのだが、師走の忙しさもあり時間が合わなくて残念乍ら行けなかった。

http://www.lcsd.gov.hk/CE/CulturalService/filmprog/english/2007fellini/2007fl_film.html

ま、仕方ないと思っていたら、HMVのフェリーニの棚がそれに連動してかこのところ充実しており、ぼくは一番観たかった「フェリーニのアマルコルド」を買って来て鑑賞したのであった。

「フェリーニのローマ」という先進的な映画を撮った後、フェリーニが選んだ題材はとても私的なものだった。まだ54歳。過去を振り返るという年齢でもないのだろうが、彼は自身の少年時代を回想する。

原題の"AMARCORD"とはイタリアのフェリーニの故郷リミニの方言で、「私は思い出す(I remember)」という意味。この映画は、少年期を過ごした故郷でのフェリーニの個人的な思い出を、美しい映像と甘美なニーノ・ロータの素晴らしい音楽にあわせてスケッチ風に描いたもの。1974年アカデミー外国語映画賞受賞の傑作である。

ムッソリーニが台頭していた暗い時代でも人々は大らかに生きていた。少年チッタは女性の大きな胸やお尻を見ては興奮し、その父は反ファシズムで拷問にあうが気にとめない。叔父さんは、精神病院から出たばかりなのに大木に登って「オンナがほしいーっ!」と大声で叫んでまた病院へ逆戻り。チョット年増のグラディスカにはいつも子供扱いされ、タバコ屋の巨乳おばさんには適当に遊ばれる。巨大船が航行したときは村人みんなで小舟に乗り沖で眺めた。憧れのグラディスカも遂に結婚すると聞き港にたたずむチッタ。春が来て、また春が来る。そしてチッタは少し大人になった…

この映画は公開時、その年の「キネマ旬報」ベスト1に選出された。だからぼくは劇場へ足を運んだ。初めて映画館で観たリアル・タイムのフェリーニは高一のぼくにはあまり面白いものには感じられなかった。「そらそーだよ、この映画は少年から大人へ変わって行く時を甘酸っぱく描いているのに、まさにその年代だった少年が見ても面白いわけねえじゃん!」と、今回32年振りに観ておじさんになった自分はそう思った。

若い頃観た映画をもう一度観ると、自分がどんなに成長したか、どんな人生を過ごしてきたかがわかる。今回この「フェリーニのアマルコルド」を観てこんなに心がキュンとするとは思わなかった。本当に良い映画である。ニーノ・ロータの甘く哀しい音楽がしばらく耳から離れなかった。年を重ねてまだ振り返る年齢でもないが、若き日への郷愁を描いたフェリーニの気持ちが少しわかる気がした。
「子供は親から見たら宝だが、他人が見たらただのガキだ」という名セリフも、親になった今、実感としてわかる。
映画を観続けてるとこういう楽しみもあるのである。

香港では、この映画はカテゴリー3、つまり18歳未満入場不可であった。それをぼくは15歳の時に観たわけで…ま、それはそれでええんちゃう?(笑)

このクライテリオン版DVDは今年発売の2枚組で、ハイ・ディフェンション・デジタル・トランスファーによるリマスターでいつもながらの素晴らしい映像と音。特典映像は、フェリーニの同級生たちが思い出を語るドキュメンタリーや、マガリ・ノエルのインタビュウ、カットされたシーン等。カバー・アートも素敵だ。
日本では残念乍らこのDVDは発売されていない。名作なのでいつかディスク化されることを望んでいる。

AMARCORD (1974) (I remember)

123mins
Monaural
1.85: 1 Aspect Ratio
Region 1

2007-12-28

「AVP2 エイリアンズVS.プレデター」 Aliens VS. Predator: Requiem

Odorualiensvspredator 今香港でもヒット中の「AVP2 エイリアンズVS.プレデター」へ行く。ぼくは前作Part1を観てないのだが、息子が行きたいというので付き合った。映画の前、息子からPart1の説明を受けていたのですんなり楽しめた。

物語は、前作のラスト、宇宙船の中でプレデターのおなかからエイリアンの子供が飛び出すところから始まる。コントロール出来なくなった宇宙船は地球のコロラドの森へ墜落する。人口5000人しかいないこの村を突如襲ったのはエイリアンの進化系"プレデリアン"。次々と教われる村人たち。そこへ舞い降りたのはニュー・プレデター"ザ・クリーナー"。エイリアン、プレデター、そして人間の三つ巴の闘いが始まるのであった。

いやぁ、何か久しぶりにB級プログラム・ピクチャーを楽しんだ感じ。出演者はまだあんまり有名じゃない面々だし、芝居もそんなに上手くないし(笑)。お金かかってるはずなのにそれを感じさせないんだな(それじゃダメじゃん)。今回は題名を見ればわかる通りエイリアンズと複数形になっている。それに対してニュー・プレデターはたった一人なんである。そのため次々に新しい武器を繰り出す最強のプレデターと化している。人間はエイリアンもプレデターも宇宙からの侵略者なので、どちらにも攻撃をしかけるしかない。次々とエイリアンに襲われる人間たち。子供も女性も、妊婦までも容赦ない。かつてこんなに弱者が餌食になった映画はなかったのではないか?

一つの村が壊滅的な打撃を受け、それに対抗する人間たちはなす術もない。守ってくれるはずの国家があてにならず、非情に切り捨てられるというラストを見て、国家とは国民の命の犠牲など何も感じていないのだという無常感が漂う…なんて難しいことは考えず、この新生エイリアン+プレデターの闘いを楽しもうじゃないか。ぼくも中学生くらいなら結構夢中になったかもしれない映画だった。若者向きだが、親父も楽しめたよ。ただ、あのプールで下着で泳ごうとするキレイな若いおねえちゃんがプレデターの流れ弾に殺られるのだけは大大不満!なのだが。

Aliens Vs. Predator: Requiem (2007)

94mins

2007-12-27

「ライラの冒険 黄金の羅針盤」The Golden Compass

Odorugoldencompass 香港でクリスマス・シーズンに公開中の「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(The Golden Compass)へ行く。
当地では、12月25、26日と連休で、子供たちをどこへも連れていかなかったので奮発して太古城UA Cinema内にあるDirector's Clubへ行った。ここは、値段は1席HK$175 (約2,625円)と高いが、椅子はゆったりしていて場内に16名しか入場できない豪華な作りになっているのだ。映画の前にオーダーをとりに来て、ホットドッグ、ポップコーンや飲み物などを持って来てくれる。テーブルもあり、映画の途中でも椅子の下のスイッチを押すとオーダー取りに来てくれる。何度でも注文出来るのである(料金は払わなくていい)。
だからいつも昼頃の回に行って、朝昼兼用で食べたりするのである(笑)

さて映画である。殆ど何の予備知識もないまま観たが、はっきり言って難しかったよ(汗)
映画が終わって、子供に「わけがわかんなかった。説明して」とせがまれたが、じつは途中で少しウトウトしちゃったところもあり(足がのばせるので気持ちがいいのだよ)よくわかんなかったのだ…

元気いっぱいのライラ(ダコダ・ブルー・リチャーズ)は12才の少女。オックスフォードの寄宿舎で勉強しながら生活している。この世界は現実の世界とは違い、人はそれぞれその人の分身でもあるデイモンという動物や虫と一緒に暮らしている。その頃彼女の近辺では、子供が次々にいなくなるという事件が起っていた。そしてついに親友であるロジャーもいなくなり、ライラは彼らを捜すために北の大地への旅に出るのだ。黄金のコンパス(羅針盤)を手に…
冒険の途中で、出会う様々な人々。ジプシャン、鎧シロクマ、魔法使いなどがライラの手助けをしてくれながら、やがていなくなった子供たちのいる場所にたどり着くが…

だいたいのストーリーはこういうものなのだが、如何せんセリフが多い。もうセリフセリフで聞いてて疲れた。熊も喋るし(だから眠くなる)。物語の性質上セリフで語るしかないのだろうが、子供も観に行く映画にしては見せ場も少なく(見せ場は中盤のシロクマの格闘とラストの戦闘場面くらい)、物語に必要な様々な説明も少し難解であったのだ。これは日本で観るときはぜひ吹替え版でご覧になることをお勧めします。

ライラの叔父さんをダニエル・クレイグ、魔女をエヴァ・グリーンが演ずる。「カジノ・ロワイヤル」の共演者が再び、である。ミステリアスな夫人のニコール・キッドマンは貫禄の演技。

原作は賞もとった名作らしいので、アメリカ配給のニュー・ライン・シネマは「ロード・オブ・ザ・リング」の夢よもう一度!とこの作品(3部作)に期待しているようだが、ストーリー・テリングの面白さ、スケール感、完成度の高さ等全てにおいて遠く及ばない。(監督:クリス・ワイツ)

同じような冒険ファンタジーでは「ナルニア国物語」の方が面白かった。
そういえば、ハリー・ポッター・シリーズも新作が出来るたびにつまらなく感じてしまうのは、ひょっとしたら、原作を映画化するのに2時間強では無理になってきてるからではないかと思う。

同じ事務所内の仲の良いスタッフ(日本人)も観てて、「わけがわかんなかったよ」と話してて「ああ、自分だけじゃなかったんだ」とチョット安心したおとーさんであった(笑)映画なんだから、映像で語って欲しいよね、特に子供向きのものは。

The Golden Compass (2007)

114mins

2007-12-25

「ブレード・ランナー」Blu-ray (5-Disc Ultimate Collector's Edition)

出たーっ!「ブレード・ランナー」のBlu-ray Set。日本では「製作25周年記念 アルティメット・コレクターズ・エディション・プレミアム(5枚組)」としてDVDが発売になっているのと同じもののアメリカ盤である。

銅鑼湾のHMVで見つけたので買った。限定版ということだが、ぼくのは097710/103000番。1万かと思ったら10万!だった。10万3000セットも作って何が限定版なんやっ!?(笑)

このゼロ・ハリバートンのアタッシュケースを気取ったプラスチックの箱を開けると、中にはディスク5枚が入ったBlu-rayケース(下の写真)。「スピナー」のミニカー、「ユニコーン」のフィギア、チェンジング・レンティキュラー(透明の板の間に写真が入ってて角度を変えると動くもの)、ファイルに入ったシド・ミードの絵コンテ、リドリー・スコットからの手紙(薄いプラスティックの透明板に印刷されている)が入っている。

11月16日付「未知との遭遇」30周年記念盤DVDのこのブログで「ぼくは買わないと思う」と書いてて買っちまったので、両方読んでくれてる人には「なんでやねん!」とツッコまれてていると思うが、言い訳すると、Blu-rayだし、英国の雑誌の大特集を読んで買う気になっちまったのだ。「ブレード・ランナー・ファイナル・カット」は"21世紀の最も先取りしたDVDリリースである"とか、リドリー・スコット監督の言葉で "I KNEW I'D MADE A MOVIE THAT WAS SPECIAL ..."なんて記事を読み、「ファイナル・カット」は、監督自身がオリジナル・ネガから見直し、Hi-Def用に監修し、監督自身最も納得した出来だと聞くと、とても見たくなったのであった。

で、「ファイナル・カット」である。オープニング・シーンを際立たせる為にあえてブラックボードにしたという地味なタイトル・バックが終わり、2019年のロスアンジェルスの夜景を見た時に、俺は唸った。まさにスペキュタキュラーな奥深い映像、色、そして音!監督自身が納得したという意味がよくわかる。その後も、タイレル社の光輝く社屋、猥雑な市街が強烈なインパクトで迫る。映画館とはまた違った意味での、おそらく初めて体験する、ディスクによる映像の現時点での最高の到達点ではなかろうか。これが25年前のものなのか?と首をかしげたくなるほどの”新しい”映像に感じられる。これぞ究極のファイナル・カットであろう。

ありがたいことに、「ファイナル・カット」(Disc 1)のみだが、日本語字幕がついている(音声解説も)。
他のディスクは、

Disc 2 ドキュメンタリー「デンジャラス・デイズ:メイキング・ブレード・ランナー」
Disc 3 1982年劇場公開版、1982年インターナショナル版、1992年ディレクターズカット版
Disc 4 Enhancement Archive(フィリップ・K・ディックのインタビュウやスクリーン・テストなど様々なアーカイヴ)
Disc 5 ワーク・プリント版

となっている。ファイナル・カットを観た後では、今までのヴァージョンは、Blu-rayでも映像が際立っているとは言えず、ディレクターズ・カットはぼくは昨年発売のリマスターDVD(香港版:これも日本語字幕付)を持っているが、あまり印象が変わらない。
今回初めて出たワーク・プリントだが、興味深かったのは、ラストがファイナル・カットなどと同じだったこと。ただ、レストアされてないのか画質がもう一つで、何か試合前のスパーリングを見せられてるみたい。一昔前のUWFじゃないんだから…という感じかな(笑)

ぼくが買った「アタッシュケース」は、HK$760(11,400円)もした。香港では、ディスクのみ Blu-ray 5枚組も売っており、こちらはHK$350(5,250円)。はっきし言って、ディスクのみ版でもよかったかも…おまけがついて値段が倍もするほどこのおまけに魅力は感じなかったよ。

大学生の時、学食で後輩がくれた一枚の試写会状、それが「ブレード・ランナー」だった。会場の渋谷パンテオンでもらったプレス・シートには、スピナーの写真が大きくフィーチャーされ、観る前は”メカがかっこいいSFもの”かな?と想像した。が、観終わって思った。リドリー・スコットは「エイリアン」で、SF の名を借りたサスペンス・ホラーを作り、今度はSFの名を借りた凄いハード・ボイルドを作ったな、と。そして、かつてないダークな世界を創造して見せてくれたのに、ラストの緑の自然のハッピー・エンディングで台無しやな、とも…
果たして、映画はコケてしまったが、この作品はビデオ化されて蘇る。「劇場公開は失敗したが、ディスクで大成功した」最初の作品として歴史に名を残すことになる。世界中のこの映画に魅せられたコアなファンの後押しで、その後の様々なヴァージョン誕生と相成ったわけである。
映画興行の形態が、劇場公開だけではなくなった草創期に、この映画が製作されたのは、ある意味歴史の必然だったのか、と25年の時を経て思う。

このディスクはぼくには<映像の>クリスマス・プレゼントとなった。お薦めの一品である。

Blade Runner (1982)

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2007-12-22

「スター・ウォーズ: フィール・ザ・フォース」 STAR WARS: Feel The Force

[ SkyTV Feels the Force ]

http://www.starwars.com/episode-iii/release/publicity/news20050513b.html 

イギリスのSkyTV制作の約1時間のドキュメンタリー「スター・ウォーズ:フィール・ザ・フォース (Star Wars: Feel The Force)」が当地香港の地上波 TVB Pearl で12月21日夜に放送された。
なぜこれが放送されたかというと、12月22日から毎週土曜日21:30から「スター・ウォーズ」シリーズが、エピソード1〜6まで放送される予定だからである。ま、予告というわけだが、見れてありがたかった。

この「Star Wars: Feel The Force」は、2005年に「エピソード3」公開にあわせて制作されたもののようだ。
C-3POとR2-D2を案内役に、スター・ウォーズ・サガの魅力を様々な人々のインタビュウと映像で紹介していく。
インタビュウに出演しているのは、ジョージ・ルーカス、マーク・ハミル、ヘイデン・クリステンセン、リーアム・ニーソン、アンソニー・ダニエルズ(C-3PO)、ケニー・ベイカー(R2-D2)、フランク・オズ(ヨーダの声)、ピーター・セラフィノウィッツ(ダース・モールの声)等々。総じて英国人が多いのは、イギリスのTVだからか。

ラスト「フォースとは何か?」という真面目なインタビュウの最後にアニメ「シンプソンズ」の一場面が出て来て、お父さんのホーマーがレストランで悪い奴に首を絞められてるのを見ていたルーク・スカイウォーカーが、「ホーマー!フォークを使え!」と言うと、ホーマーはフォークで相手を突き刺すのだった。あはは、笑った。フォースじゃなくて、フォーク!ブッチャーかい(笑)

ということで香港の年末年始のTVは「スター・ウォーズ」ってわけです。

あ、そうそう、プレステ3買ったので、「LEGO STAR WARS The Complete Saga」のソフトを買ったのだが、これがレゴのだと馬鹿に出来ないクオリティの高さで結構楽しめます。WiiやDS、XBOX 360もあるみたい。

B000R39GGE

STAR WARS: Feel The Force (2005) TV

2007-12-20

「2001年宇宙の旅」 Blu-ray

我が家にもプレイステーション3がやって来た。それを記念して、Blu-rayを買うことにした。どのソフトにしようかと迷ったが、やっぱこれでしょう、最初は!てなわけで「2001年宇宙の旅」(2001 a space odyssey)である。

既に「スタンリー・キューブリック・コレクション」のDVD BOXで同じものを観ていたが、このBlu-rayは、息をのむ美しさだ。きっれーい!と声が1オクターブ上がっちゃったほど。DVDの6倍凄いね。

プレステ3買った188商場横のエンペラービル地下のちっちゃな店で、特価品!HK$190(約2850円)で買ったのだが、これならこの価格でも納得である。

一言でいうと宇宙の場面は、こんなに星があったの!?という感じ。出来ることならこのHi-Defをキューブリック本人に見せたかったよ。何と言っただろうね。

映画そのものの話や評価は、これを読んでいる方たちの方が詳しいだろうから省くが、”人間の知的好奇心をかき立てられる映像体験”、というのは後にも先にもこの映画でしかできないと今でも思っている。何度観ても本当に凄い映画である。

このBlu-rayの特典映像は、「キューブリック・コレクション」のそれと同じで、イギリスCh4のドキュメンタリー「2001: The Making Of A Myth」(←これ面白いね)他、である。(詳細は後述)
本編は、序曲、インターミッション、EXITミュージックも入った完全版。

Odoru2012074 思えば… 70年代後半、イギリスの映画館で本作を観て以来、何度観ただろうか、この映画を。
20年ほど前、当時付き合っていた妻がクリスマスプレゼントで買ってくれたLD(15000円もした!)に始まり、DVDになりCD付きの限定版を苦労して買い、前述のBOXでまた買い、今回Blu-rayも買った。その都度、画質・音質の向上を実感してきたが、今度のBlu-rayはここまで来たか、という印象である。

2001年のリバイバルの時は、「2001年に『2001年宇宙の旅』を劇場で観たというのは一生の記念になるから」と当時9歳の息子を連れて銀座へ行った。映画が終わり、劇場が明るくなったとき、息子が「おとーさん、なにこれ?わけがわかんないっ!」と大声で言って、劇場内の笑いを誘った。けど、その場にいた何人の人が息子と同じことを本当は感じていただろう、と思うとこっちが可笑しくなったものだ。みんなわかったフリをしているだけさ、と帰りがけ息子に話したのだった。
その時売店で売っていた、本物の宇宙食のレトルトカレーを家でみんなで食べたのを思い出す。家族のいい思い出である。

何十年も同じ映画を観続けているとこんな思い出も出来るんだな、というお話でした。

"Open the pod bay doors, HAL."

2001 A Space Odyssey (1968)

2.20: 1 Aspect Ratio
PCM 5.1 Surround, Dolby Digital 5.1 Surround
149 mins

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2007-12-18

TIME誌のベスト10ムービー/DVD 2007

アメリカの雑誌TIME(12/24号)で、評論家のリチャード・コルリス氏が2007年の映画とDVDのベスト10を選んでいるので紹介しよう。

【Movie】

1.   No Country for Old Man (ノー・カントリー)
2.   The Lives of Others (善き人のためのソナタ)
3.   Killer of Sheep(キラー・オブ・シープ)
4.   Atonement (つぐない)
5.   Sweeney Todd (スィーニー・トッド)
6.   Persepolis (ペルセポリス)
7.   No End in Sight(ノー・エンド・イン・サイト)
8.   In the Valley of Elah(エラの谷)
9.   Waitress (ウエイトレス)
10. Beowulf (ベオウルフ/呪われた勇者)Odorunocountyforoldman2jpg_3

1位になったのは、ジョエル&イーサン・コーエンの新作。たぶんオスカー取るだろうと書いている。
3位は1977年製作のブラック・ムービーだが、今回始めてのフル・リリースとなった。畜殺場で働く黒人とその家族のドキュメント・ドラマ。
7位はイラク戦争のドキュメンタリー、8位はトミー・リー・ジョーンズ主演のイラク戦争がある家族にもたらしたものを描く。

【DVD】

1.   Ford At Fox
2.   Paul Robeson: Portraits of the Artist
3.   Stanley Kubrick: Warner Home Video Directors Series
4.   Looney Tunes, Volume 5
5.   Battleship Potemkin
6.   Treasures 3, Social Issues In American Film, 1900-1934
7.   Ingmar Bergman: Four Masterworks
8.   Hairspray
9.   Berlin Alexanderplatz
10. Live Free or Die Hard

1位は、ジョン・フォードの20世紀フォックス作品24本とドキュメンタリーが収められたBox Set.
2位は、黒人の俳優、歌手であるポール・ロブソンの映画を収めたクライテリオンのBox.
3位は、キューブリックのBox、4位は、ワーナーのアニメ集、5位はレストアされた「戦艦ポチョムキン」。
6位は、米国国立映画保存協会が出した1900〜34年の貴重な映像48本。
7位は、イングマール・ベルイマンのクライテリオン版Box。
8位の「ヘアスプレー」は2枚組の方。(こんなことならこっちを買えばよかったなぁ)9位は、「ベルリン・アレキサンダー広場」クライテリオン版。10位は「ダイ・ハード4」

総じて、ちょっとカタい感じのものが多いが、これがアメリカの知識層(?)の文化的側面の一端かも知れんと思った。
DVDはクライテリオンばっかりやね。売れそうもないのばっか(すまん)。

以上、ご参考まで。詳しくは以下へ。

http://www.time.com/time/specials/2007/top10/0,30576,1686204,00.html

2007-12-17

「ヘアスプレー」 DVD HAIRSPRAY (2007)

先日発表になったゴールデン・グローブ賞のミュージカル・コメディ部門でノミネートされた「ヘアスプレー」のDVDが香港で発売された。

劇場で観て感想は9月29日に書いてるので、今回は本DVDの特典映像について紹介しよう。これは楽しいよ。

まず"Sing Along With The Movie Using The Lyric Track" は、映画の中で歌ってるところだけを切って繋いでるもの。下にカラオケのように歌詞が出るので一緒に歌えるというわけ。もちろん歌詞をオフにすれば、BGVにもなるしサントラ気分で聴くことも出来る。

続いて "HAIRSPRAY Extentions": Breakin' Down The Dance Scenes である。これはダンス・シーンだけを集めたものだが、映画のシーンを見る事も出来るし、同じシーンのリハーサル、本編、別アングル、メイキング画像が分割され同じ画面で見れるというもの。
この分割されたヴァージョンは編集も上手くてとってもいい出来だ。「ザッツ・エンタテインメント3」での、フレッド・アステアの<砂の踊り>の分割画面を思い出した。

最後は、"Step-By-Step Dance Instructions" である。これはこの映画の振付を監督のアダム・シャンクマンと共に行った、ザック・ウッドリー、ジャマル・シムスが実際の映画のシーンで使った振付を教えてくれるというもの。"Ladie's Choice" をウッドリーが、"Payton Place After Midnight"をシムスが指導する。
劇中でも出たきたが、マッシュポテト、ツイスト、チキン、チャールストン、スパンク、エルビス、ヒッチハイク、キャメルウォーク、ジェームス・ブラウン・ウォーク等々の踊り方と共に教えてくれる。これであなたもトレーシーだわさ!というワケ。

(ぼくが購入したのは1枚モノだが、アメリカでは、2枚組も発売されており、このほかにもメイキングや削除されたシーンなどが入っているのだと)

「ヘアスプレー」は楽曲も踊りもキャストも素晴らしいので、この特典映像も何度観ても釘付けになってしまう。久しぶりに楽しいミュージカルだ。今回のゴールデングローブのノミネートは当然だろう。
60年代の時代設定なのでテイストは「グリース」に近いが、"Without Love"のシーンなどは、MGM映画でのジュディ・ガーランドの"You Made Me Love You" を思い出させる。それに学生ものということでラスト・シーンなんかは「グッド・ニュース」じゃん、てなわけで、オールド・ミュージカル・ファン(←あ、俺だ)にも受けがいいと思うよ。

娘に買う約束してたので買って来たのだが、気に入ったみたいで毎日観てるのだ。メチャ!楽しいのだと。振り付けも覚えようと何回も見て、寝巻きのまま踊っている。よかったよかった。もう値段分(HK$99=約1485円)の元はとった感じ(笑)

Hairspray (2007)

117mins
2.35: 1 Aspect Ratio
DTS, Dolby Surround 5.1
Region 3

2007-12-15

「アイ・アム・レジェンド」 I Am Legend

Odoruiamlegend ウィル・スミス主演の「アイ・アム・レジェンド」 (I Am Legend)が香港でも12月13日から公開になったので行って来た。
ぼくは当初あんまり観る気がなかったのだが、予告編を観たときに「あっ、これは『地球最後の男』のリメイクじゃん!」と思い、俄然観る気になったのだ。

「地球最後の男」は、1964年のヴィンセント・プライス主演のSFで、日本では未公開の作品。ぼくは、中学生の頃、当時NET(現テレビ朝日)の土曜映画劇場で観た。
モノクロでチープな作りではあったが、だからこそ誰もいない街の怖さがありとても印象に残っていたのだ。ラストも、The End ではなくBegin とかなんとか字が出て、「終わりではなく始まり」といった終わり方だったと記憶している。
その後、この映画を元に「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」が作られたという隠れた名作なのである。

そーゆーことで、期待して観に行ったのだが、うーむ…なんと言うか、もうひとつだったですなぁ…

ストーリーは、近未来のニューヨーク、抗がん剤研究のウィルスの空気感染により人間はほぼ死滅し、代わりに凶暴な動物と化した元人間たちが支配する世界になっていた。太陽光線を浴びると死んでしまう彼らは夜になると獲物を求めて街中に出没する。そこでただ一人だけ生きているのはウィル・スミス扮する科学者と一匹の犬。彼は、ウィルスに感染してしまった人間を元にもどそうと日々ワクチンの研究を進めている。そして遂に彼と元人間たちの壮絶なバトルが始まるのだ…

冒頭から、廃墟となったニューヨークを鹿の群れが走り抜け、ウィル・スミスがそれを車で追っかける。セントラル・パークでとうもろこしを栽培し、メトロポリタン博物館の池で釣りをする。朝はテレビで録画してた過去の番組を見る。生存者がいないかとラジオで呼びかけ、午後は港で来るはずのない船の来航を待つ。DVDショップにマネキンを置いて、それに話しかける主人公。たった一人で生きてる孤独感を出そうとしているのだが、如何せんウィル・スミスの演技がねぇ…そういう切実な思いがあまり伝わってこないのだよ。
飼っている犬(役名:サム)の方が、「どうしたの?」とか「あれ?あれはなんだろう?」という表情をして名演技をするのと対照的である。サムには最優秀助演男優(犬)賞をあげたいほどであった。

当然のことながら、ニューヨークの市街も、元人間たちも全てCGなのだが、なんか印象として「ハムナプトラ2」みたいに、CG色が強過ぎてぼくにはノレなかったよ。
金鐘のAMC Theater で観たのだが、80ドル(約1200円)もして、その価値はあるかな?と正直思った。

それにしても、前述の土曜映画劇場の解説をしていた増田貴光はどうしてるのだろう?番組の終わりにいつも「それではまた来週。テレビの前のハイ、あなたと!お会いしましょう」と指差して言ってたのにその言った本人がいなくなっちゃった(笑)
ホモ疑惑とか色々言われたが、今だったらそんなことどうってことないのにね。あの時代(70年代)にはまだ早過ぎたんだね。彼もある意味レジェンドだな(笑)

I Am Legend (2007)

96mins

2007-12-13

「それぞれのシネマ」 Chacun Son Cinema, To Each His Own Cinema

Odorutoeachhisowncinema

カンヌ映画祭60周年記念で作られた「それぞれのシネマ」(Chacun Son Cinema, To Each His Own Cinema)が香港でも12月7日から公開された。

カンヌにゆかりのある、現在活躍している著名な監督たちが「映画館」というテーマで、3分間のショートフィルムを作成し、それを繋いでいる作品。参加した監督は、ヴィム・ヴェンダース、デヴィッド・リンチ、ウォン・カー・ウァイ、北野武、チャン・イーモウ、ホウ・シャオシェン、ケン・ローチ、ロマン・ポランスキー、ジョエル&イーサン・コーエン、ガス・ヴァン・サント、アレッサンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、クロード・ルルーシュ、マイケル・チミノ、デヴィッド・クローネンバーグ、アキ・カウリスマキ…etc

作品はタイトルだけ表示され、最後に誰の作品かわかる仕組みになっているので、どれが誰の作品かな?と予想しながら観るのも面白かった。もしDVDで鑑賞したら、好きな監督のとこだけとばして観たろうな、と思うので、劇場で観れてよかったよ。
観終わって、本当に映画が好きでよかったと思った。現代の映画芸術のサンプラーのような映像の数々… たった3分でも、泣かせるものもあり、世の中に対する怒りのメッセージもあり、ユーモアにとんだものもあり、現在の世界中の素晴らしい<映画作家たち>の映像によるシャワーをあびた感じがした。

個人的に印象に残ったセグメントをちょっと書いてみる。我らが北野武は、2番目に登場。田舎の映画館で、フィルムが切れたり燃えたりして中々映画が観れないというユーモアのある一編。チャン・イーモウのは、片田舎へ来る移動映画館の話。村の広場で上映するのだが、楽しみにして昼間からはしゃいでる子供が、暗くなり映画が上映されると、疲れて寝てしまうという心温まるもの。クロード・ルルーシュのは、フレッド・アステアが映画の中で唄う「チーク・トゥ・チーク」の場面にのせて、自身のパパとママの恋愛時期から現在までを描くチャーミングな作品。地球最後の映画館のトイレで自殺を計るユダヤ人を自身が演じるのは、デヴィッド・クローネンバーグ。テオ・アンゲロプロスはジャンヌ・モローにマルチェロ・マストロヤンニを語らせる。ゼフェレッリの「ロミオとジュリエット」を観ている女性の表情だけを映すのはアッバス・キアロスタミ。ロマン・ポランスキーのは「エマニエル夫人」を観ている夫婦の後ろでうめき声をあげる男のブラック・ユーモア。戦争が終わりやっと訪れたアフリカの平和な村で「ブラックホーク・ダウン」を観る村人を描くヴィム・ヴェンダース作品。ラスト、ケン・ローチの「Happy Ending」は映画を観に来たお父さんと息子が券を買う列に並んで観る映画を決めようとするが、自分たちの番になっても決められず、後ろの客から文句を言われるが、結局映画よりサッカーの試合を見に行くことにするというもの。これが最後なのが粋である。エピローグでは、ルネ・クレール作品での、モーリス・シュヴァリエの「ハッピー・エンドは好きかい?」のセリフで締める。

Odorutoeachhisowncinema2 中環のIFC Cinema と油麻地のCinemathequeでしかやってなくて、ぼくはIFCで観たのだが、空席が目立って心配になった。まるで、「81/2」をたった一人で観てるコンチャロフスキーのセグメントみたいな感じである。残念だが、すぐ公開が終わるかもな。ぼくは楽しめたが、やっぱ、映画を観慣れた人じゃないとつらいかもね、これは。

Chacun Son Cinema, To Each His Own Cinema (2007)

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2007-12-10

「動く標的」 DVD ポール・ニューマン Harper

今年引退を発表したポール・ニューマンだが、彼の名作郡の中でもぼくのお気に入りの一本は、この「動く標的」である。
2006年11月にリマスターされてアメリカではDVDが出たが、日本では発売の話を聞かない。この映画もそうだが、アメリカでは発売されても、60年代の味のあるいい映画が結構発売されてないんだよね。「グラン・プリ」しかり、「スージー・ウォンの世界」しかり。

これはポール・ニューマンがとってもかっこいい、スマートで洒落たハードボイルド映画なのです。このDVDの解説で、TCMのロバート・オズボーンが話してたけど、アメリカではポール・ニューマン主演の3本の"H-Movies" は良いと言われているのだと。つまり、「Hustler(ハスラー)」「Hud(ハッド)」「Harper(動く標的)」である。

オープニングの寝起きでしがない下着姿のニューマンが最高である。ここだけ見ても価値があると言いたい。乗ってる車はスポーツカーだが、右側のドアの塗装がハゲている。奥さんには、離婚して、と言われ続けている…

こうやって書くと、どこがかっこいいの?と思われるだろうが、この映画のポール・ニューマンは「かっこ悪いことがかっこいいんだ」ということを教えてくれるのだ。男はそういうことも知っていた方がいい。

私立探偵ルー・ハーパーは、失踪した大富豪サンプソンの行方を捜索するよう夫人から依頼される。サンプソン氏の交友関係、失踪時の行動範囲など調べていくなかで、夫人の元へ脅迫状が届く。ハーパーは金の受け渡しを指定された場所で、犯人を追うが金を持って逃げた者の正体はわからない。やがて犯罪組織の身元が判明、サンプソン氏の居場所がわかるのだが…

前半のスマートさに比べ、後半はダレる感じは否めない。監督がジャック・スマイトなので大味なのは仕方ないが、豪華なキャストに救われているのも事実。ハーパーのニューマンを始め、ローレン・バコール、ロバート・ワグナー、パメラ・ティファン、ジャネット・リー、シェリー・ウィンタース、ジュリー・ハリス、ジャネット・リーなど魅力的な面々が登場する。

ルー・ハーパーのキャラが受けたので、9年後に「新・動く標的 」が作られた。同じニューマン主演だが、かっこよさは「動く標的」の方が上だった。(ちなみに「新・動く標的」も日本ではDVD出てないんだよね)

本DVDの他の特典は、音声解説=脚本のウィリアム・ゴールドマン。予告編である。

Harper (1966) aka The Moving Target

121 mins
Monaural
1.66: 1 Aspect Ratio
Region 1

Harper
Harper
Warner Home Video  2006-11-14
Sales Rank : 28563

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by G-Tools

The Drowning Pool Hud The Verdict (Two-Disc Collector's Edition) The Long, Hot Summer Absence of Malice

2007-12-08

「トラ・トラ・トラ!」(Tora! Tora! Tora!) DVD 2-Disc Special Edition

12月8日は、真珠湾攻撃の日(アメリカ時間は12月7日)。で、「トラ・トラ・トラ!」である。
このアメリカ盤DVDは日本では発売されていないもの。本編Dicsと、特典映像Discの2枚組である。

本編は日本で発売されているのと同じアメリカ公開ヴァージョン。なので日本側のシーンは英語字幕が入り、渥美清と松山英太郎の船の厨房でのコミカルなシーンはない。

特典映像は、2つのドキュメンタリー、真珠湾攻撃当時のムービートーン・ニュース、製作時のスティル・ギャラリー、予告編等。

このうち、約1時間半のドキュメンタリー "History Through The Lens, Tora! Tora! Tora! : A Giant Awakes" は、「トラ・トラ・トラ!」の映画製作の過程を製作者、監督たちのインタビュウを通して見せると同時に、ハーバードやピッツバーグ大の教授、実際にこの作戦で零戦に乗っていた元日本兵、真珠湾で当日ネヴァダに乗船していた元兵士らの証言を通して、映画と事実の違いなどを検証していく。ナレーターは、あのバート・レイノルズである。面白い歴史ドキュメントで、NHK BSあたりで放送すればいいのにな、と思った。

映画のメイキングは、TV用に制作されたHollywood Backstoriesから「トラ・トラ・トラ!」の回が収録されている。

20世紀フォックスの社長で製作者の、ダリル・F・ザナックは「史上最大の作戦」の大ヒットを受けて、次も第二次大戦ものの製作を考えていた。そこで考えたのが、日米開戦のきっかけとなった真珠湾攻撃の映画化であった。フォックス社の若き製作部長、当時31歳のリチャード・ザナック(息子)は、「史上最大の作戦」の指揮もふるったエルモ・ウィリアムスとこの映画の製作に着手する。
彼らが考えたのは、「史上最大の作戦」と同じく、歴史的事実に即したものを作るというものであった。
「史上〜」が、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと別々に監督を立て製作したように、「トラ・トラ・トラ!」もアメリカ側と日本側と別々に監督を立てることにし、アメリカ側は、「ミクロの決死圏」などフォックス社に信頼の厚いリチャード・フライシャー、日本側は、「七人の侍」等の偉大な監督、黒澤明に決定した。
日本側の脚本は黒澤明、小国英雄、菊島隆三、アメリカ側はラリー・フォレスター。こうして出来上がった脚本は日米双方を合わすと657ページにも及び、フォックスは黒澤サイドに脚本のやり直しを命じた。だが、それに黒澤は激怒したという。
「ドリトル先生不思議な旅」、ジュリー・アンドリュース主演の「スター!」という大作が興行的に大失敗し、フォックスは「トラ・トラ・トラ!」にかけられる予算を削る必要にせまられた。アメリカ側キャストは、大スターの起用を諦め、実力派俳優を揃えリアリティをもたせることに主眼をおいた。日本側はというと、黒澤監督が選んできたのは、会社員や銀行マンなど、演技の経験のない素人ばかり。これもフォックスには不満だった。
九州に大掛かりな、長門、赤城のほぼ実寸のセットが作られ、アメリカサイドでも戦艦ネヴァダが作られ、一機も実物が残ってない零戦も出来る限り本物に近いものを作り、撮影は始まった。
アメリカの映画製作方法と日本の違いなど、黒澤監督は極度のストレスにさらされていた。撮影開始から3週間が過ぎたとき、黒澤監督はたった6分しか撮れてなく、しかもそれらは使えない代物だった。フォックス側は、この時点で(天皇)黒澤監督を解雇する。
ザナックは「自分のキャリアの中でもつらい決断だった」と語る。
後を受けたのは、桝田利雄、深作欣二、こうして映画製作は続行された。
監督リチャード・フライシャーは、真珠湾攻撃の後、ラストシーンをどうするか、を考えていた。攻撃されただけで終わったのでは、アメリカの観客が納得しない。そこで考えたのが「眠れる獅子を奮い立たせる事に成った」という台詞での終わらせ方だった。

こうして、「クレオパトラ」に次ぐ2番目の製作費230万ドルを注ぎ込んだ超大作「トラ・トラ・トラ!」は完成した。
本物の戦闘機と空母によるド迫力の戦闘シーンは映画史上に残る素晴らしいもの。劇場の大画面で見ると本当に圧倒される。
しかし、ドキュメンタリータッチで、アメリカが一方的に攻撃されるだけの内容に、アメリカでの評価は散々、興行的にも失敗した。だが、日本では大ヒットし(ちなみにアメリカ嫌いのヨーロッパでもヒット)、数年後に日本のフジTVで放送されたときも視聴率は30%を超えた。

黒澤明監督は、この心血を注いだ映画の脚本に自分の名前をクレジットさせることを拒んだ。タイトルバックにその名がないのが悲しい。
そして、数年後、黒澤監督は自宅の風呂で自殺を図る…
一命をとりとめた天才・黒澤明に救いの手を差し伸べたのは、日本でもアメリカでもなくソビエト(「デルス・ウザーラ」)だったというのは皮肉な話である。

CGがなかった時代、実物に近い軍艦や戦闘機を作って撮影したという、現在では作り得ない超大作。真珠湾は「奇襲」ではなかったという歴史的事実をアメリカン・メジャーが映画にしたというのはある意味画期的なことであった。映画の出来云々よりも、この映画は色々な意味で日本人には貴重な一編だと思う。
日本公開版の発売を切に願っている。

Tora! Tora! Tora! (1970)

144 mins
4.1 Dolby Surround
2.35: 1 Aspect Ratio
Region 1

2007-12-04

「しゃべれども しゃべれども」

Odorutalktalktalk

先週シンガポール航空の機内上映で国分太一主演の「しゃべれども しゃべれども」を見た。
海外へ住んでいると中々こういった「小品」の日本映画が見れないので、機内上映であるが、見れてありがたかった。
当然のことながら、英語字幕付。で、英語題名は ”Talk, Talk, Talk”。

舞台は東京。勝気で、古典にこだわる二つ目の落語家、今昔亭三つ葉(国分太一)は、ひょんなことから、話し方教室みたいなものを開くことになる。生徒は、美人なのに口下手なクリーニング屋の娘、五月(香里奈)、転校してきて関西弁を馬鹿にされてる小学生(森永悠希)、解説者なのにちっとも喋れない元プロ野球選手(松重豊)の三人。落語の古典「まんじゅうこわい」を教えながら、彼らとの人間的なふれあいを通して、主人公は落語家として、そして人間的にも成長していく…

映画の出来はというと、落語を題材にしているのに、コメディにも徹しきれず、ラブ・コメにもなりきれていない。江戸前の粋でいなせなところもない。中途半端な感じなんである。題材がいいだけに惜しい。
一番の問題は、演出した平山秀幸監督がそうなのかも知れないが、落語に対する「愛」があまり感じられないところだ。

ただ、国分太一は熱演している。一門会での「火焔太鼓」は本当によくなってきた感じが出てていい。暗い娘役の香里奈もいい。
関西弁を喋る小学生は、関東の人から見たら関西の子供はあんなイメージなのかもしれないが、あんまりあんな子はいないのではなかろうか?ぼくには終始白木みのるに見えて仕方なかった。
ラスト、船上での三つ葉と五月の会話がいただけない。最後の五月のセリフはひねりのある「落ち」にして欲しかったな。あれじゃ、普通の人の会話じゃん。

東京の風情を映像で見るのは心地よかった。ほうずき市。浴衣。おみくじ。踏み切りの前のクリーニング屋。寄席。玄関先をほうきで掃く着物姿の八千草薫…

そういえば、八千草薫さんの夫で映画監督の谷口千吉氏が先ごろ亡くなった。晩年は作品が少なかったが、いい監督で、黒澤明監督と親友だった人である。今頃天国で二人で一杯やってるかもしれない。ご冥福をお祈りします。

Talk, Talk, Talk (2007)

2007-12-01

「酔いどれ天使」DVD クライテリオン・コレクション

黒澤明監督「酔いどれ天使」(Drunken Angel)クライテリオン版が、当地香港でも11月27日に発売された。

今回もマスター・ポジからハイディフェンション・デジタル・トランスファーを行い、数千カ所のほこりや損傷箇所はMTIのデジタル・レストレーション・システムにより修復。音声も雑音、ひずみ、飛びが修復されている。いつもながらクライテリオンの品質は安心感がある。高いけど、仕方ないなと思わされる内容である。
残念ながら、画面右側にある縦に入った「線」のような傷は完全に修復出来ていないが、鑑賞に充分耐えうるレストアである。
比較しちゃいけないが、HK$25(約375円)で買った香港版「酔いどれ天使」(広東語題:酩酊天使)とは比べ物にならない。こっちは、音はシャーシャー言うし、画面は傷だらけの上に"青みがかって"るからね(笑)

特典映像は、31分のメイキング。これは、東宝版と同じもの。25分の"Kurosawa and the Censers"は、1945〜1952年の間、アメリカ占領下の日本で、黒澤がGHQの検閲といかに闘ったかの新録のビデオ・エッセイ。東宝争議など、当時の日本の映画状況も解説している。音声解説は、かのドナルド・リッチー先生によるもの。ブックレットには、黒澤本人の自伝から「酔いどれ天使」の箇所の英訳が載っている。

黒澤明監督7本目の映画だが、本人曰く「初めて自分の思ってるような映画を撮れた」というように、その後の映画作りに欠かせないスタッフとの出会い、そして三船敏郎との出会いがあった作品である。

戦後、焼け跡のドヤ街の町医者(志村喬)のところへ、一人のヤクザ(三船敏郎)が怪我をした手の治療にやってくる。結核を疑った医者はヤクザにレントゲンを撮ることを勧めるが、怒ったヤクザは医者を殴り帰ってしまう。その後も何度か喧嘩をしながらヤクザの面倒を見る医者だが、自暴自棄なヤクザは酒をあおり、吐血してしまうのだった…

酒好きで、自分もドロップアウトした医者には、グレてヤクザになった男の気持ちがよくわかる。「グレるのも理由がある」といって、なんとかしてやろうとする”酔いどれ天使”先生だが、ラスト、ヤクザは刑務所から出てきた男に自分のシマもオンナも横取りされ、あげく刺されて息絶えてしまう。

深夜街角で弾いているギター、笠置シヅ子の「ジャングル・ブギ」、意気消沈した三船演ずるヤクザが街を歩く時に流れる<陽気な>「カッコー・ワルツ」など音楽面でも強い印象を残す。ドヤ街の真ん中に汚い池を作ったオープン・セット。ラスト、アパートの廊下でのペンキまみれの決闘シーンの演出など、若い黒澤の実験とも思える方法が全て成功している。

ぼくは、黒澤明監督作品に一貫して流れているテーマは「ヒューマニズム」ではないか、と常々思っている。(興行的にも成功し自信がついたというのも あるだろうが)この作品こそ、彼のその後のテーマを決定づけたものではないかと考えているのだ。けっして大傑作ではないが、そういう意味でも貴重な作品だ と思う。

Drunken Angel (1948)

98 mins
Black & White
Monaural
1.33: 1 Aspect Ratio
Region 1

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