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2007年11月

2007-11-28

「用心棒/椿三十郎」 DVD クライテリオン・コレクション

黒澤明監督の名作「椿三十郎」が、小田裕二主演、森田芳光監督でリメイクされ、12月1日に公開されると聞いた。オリジナルは1962年の白黒映画である。45年も前の映画なので、今回カラーになり、たぶん面白い映画に仕上がってるだろうと想像してる。なぜかって?そりゃぁ、脚本がいいもの!このリメイク版の脚本は、オリジナル(by 菊島隆三/小国英雄/黒澤明)を使ってるとのことなので。

かの名作「駅馬車」('39)も、その後リメイクされカラー版('65)ができ、それをぼくは子供の頃テレビで見てすごく面白かった印象がある。ジョン・フォード監督の「駅馬車」オリジナルを見てなかったからね。だから、若い人で黒澤版「椿三十郎」を観ていない人もそのままリメイクを観ることをお勧めする。そして、もしリメイク版が面白いと思ったら、黒澤明監督のオリジナルを観てごらん。もっと面白いし、三十郎役の三船敏郎が本当に素晴らしいから!

今回紹介するクライテリオン版「用心棒/椿三十郎」のダブルパックは、今年買ったDVDの中でも買ってよかったと思うものの一つである。

まず両作品とも、レストアが素晴らしく、画像がめちゃくちゃキレイなのである。東宝版とは違ったハイディフェンション・トランスファーで、白と黒のコントラストがはっきりしていて美しく、また音も見事に修復されているのだ。映像は奥行きを感じるし、公開当時よりキレイかも知れないと思わされるほどだ。

どちらの作品も何度観ても楽しめる、完成度の高い時代劇だが、「用心棒」は三船敏郎がなんと魅力的なことか!役に見事にハマってるし、表情が凄く良いのだ。

「用心棒」のヒットを受けて続編として製作された「椿三十郎」だが、ずいぶんユーモラスになっており、続編というより、姉妹編(いや男の映画だから"兄弟編"というべきか?)という感じである。
「椿三十郎」に出てくる若侍たちは、"若大将"や"ゴジラ"シリーズなどに出て<活躍していた>面々である。東宝の事情かどうか知らないが楽しめるキャスティングだ。
若侍たちがあたふたと座敷を出入りして、寝てる三十郎が何度も起こされるシーンは本当に面白い。名演出だと思う。

それにしても、リメイク版「椿三十郎」のラストの対決はどうなってるんだろうね?あの血しぶきをカラーで見せたら、スプラッター映画じゃん。「キル・ビル」みたいに、日本以外は白黒になったりして(笑)

今回の小田裕二版「椿三十郎」がヒットしたら、来年は「用心棒」かね。東宝はいつまで「黒澤明」ブランドで食おうとしているのか?
調子に乗って、角川春樹氏が「七人の侍」もリメイクする!なんてことを言い出さないことを切に祈ってる。

Yojimbo (1961) / Sanjuro (1962)  - Two Samurai Films by Akira Kurosawa

2007-11-26

「スター・ウォーズ・ヴォールト」 The Star Wars Vault

週末からシンガポールへ行って来た。HMVへ立ち寄り、物色したが、香港とあまり売ってるものが変わらず、帰ろうとしたら、棚の上にこの「The STAR WARS Vault」が飾ってあった。何々?過去30年のルーカス・フィルム貯蔵の貴重なお宝満載!だって?
うーむ、どうしよう…大いに悩んだが(2分ほど)、結局買って来た。お陰で帰りのトランクがパンパンになり、重くなったと、息子に嫌みを言われたが(笑)

この重たい箱に詰め込まれたのは、公開前から現在までの膨大な量の「スター・ウォーズ・サガ」の資料である。恥ずかしい話だが、買うときに "Vault" の意味がわからず、辞書で調べたら、(貴重品の)貯蔵庫という意味なんですな。なるほどね。今までルーカス・フィルムで眠っていた「紙もの」を中心に、そのレプリカを作って貼っつけているのは、そーゆー意味なんだな。

一言でいうと、大人のスター・ウォーズおもちゃ箱とでも言おうか。ぼくは、スター・ウォーズは大好きだけど、マニアまではいかない。だからこの本の存在自体も知らなかった。そういうファンにはとっては面白くて興味深い本です。テアトル新宿の割引券なんか見て、「あ、俺持ってる」と嬉しくなったりしてね。

日本語版も出てるようだが、どこまで訳しているのかわからないが、この中に出ている、新聞の切り抜き、英語の手書きのものや、タイプで打ったものなんかは、読んでて本当に面白い。「スター・ウォーズ展」など日本にいた時には必ず足を運んだものだが、これは小型版博物館といった様相である。スター・ウォーズ製作前から現在にいたるまで、過去30年の間、いかにこの映画が成功し、また社会に影響をもたらしたかが一望できる。そういった意味では、Episode 3 でシリーズが完結した後の「卒業文集」とでも言おうか。

S$99.95(約7,496円)もしたが、買ってよかったと思っている。2枚のCDには、ルーカスはじめ出演者のインタビュー、ラジオCM、ディズニーランドの「スター・ツアーズ」で使ってた音源もそのまま入っている。ジョン・ウィリアムスの手書きの楽譜なんて、本物は50年後、博物館で見れるだろうという代物だと思う。マニアの方は、皆さんもうお持ちだろうが、ファンの方も本屋で立ち読みでもしてみたらいいかもね。

May the Force be with you!

The Star Wars Vault: Thirty Years of Treasures from the Lucasfilm Archives, With Removable Memorabilia and Two Audio CDs (Hardcover)
by Stephen J, Sansweet and Peter Vilmur

2007-11-23

「ジャズ・シンガー」DVD 3枚組スペシャル・エディション

アル・ジョルスン主演の「ジャズ・シンガー」という映画をご存知か?

ミュージカル映画の金字塔「雨に唄えば」の中で、モニュメンタル映画会社のシンプソン社長が、撮影途中のサイレント映画「決闘する騎士」を突然トーキーにすると言い出すのは、このワーナー・ブラザーズの「ジャズ・シンガー」が大ヒットしたため、と言えばちょっとわかってくれるかな?
そうこれは史上初めての「トーキー映画」として、歴史に残る映画なのだ。

とにかく、今度アメリカで発売になった「ジャズ・シンガー」3枚組スペシャル・エディションは、もう≪博物館級≫のDVDである。

CDやBlu-rayの時代に、LPではなく、その前のSPや蓄音機の<化石のような>話をするので、わかる人の方が少ないと思うが、ちょいと書いてみよう。なんせ、このDVDは「80周年記念盤!!」だかんね。

映画「ジャズ・シンガー」は、アル・ジョルスン扮するユダヤ教会の牧師の息子が、ブロードウェイで成功するまでのサクセス・ストーリー。ジョルスン自身の生い立ちを基に、父と子の仲違いと和解、そして永遠の別れを描く。
今観ても鑑賞に耐えうる映画(今回のレストアは本当にキレイ!)であるが、大ヒットしたのはジョルスンの歌もあるが、物語が「お涙頂戴もの」だったからだろう。

この映画はオール・トーキーではなく、ジョルスンの歌の部分だけがトーキーで、あとはサイレント映画と同じく字幕が出るパート・トーキーである。(ちなみに最初のオール・トーキーはMGMの「ブロードウェイ・メロディ」(1929)です)
ヴァイタフォン方式での公開で、それは、映写機の下でレコードをかけるようなもので、お陰で絵と音がずれることもしばしばだった。この辺も「雨に唄えば」に出て来たよね。

このDVDには、本編の他に、約1時間半の新たなドキュメンタリー「音声の夜明け:映画はいかにして音を得たか」(←面白い!)や、ヴァイタフォンの短編映画等、本当に山のような量の映像が詰め込まれている。トーキー初期の資料としても貴重だ。他に、セットで撮影された写真、復刻版のパンフレットも封入されている。

ぼくは、この映画のアル・ジョルスンによる超有名な台詞「お楽しみはこれからだ!」の英語は、You ain't heard nothin' yet. だとばかり思っていた(実際ぼくの映画バイブル、和田誠さんの名著「お楽しみはこれからだ」でもそうなっている)のだが、今回これが、You ain't heard nuthin' yet. だというのがわかった。nothin' ではなくnuthin' だったのだ。

これまた古い話だが、80年代、アメリカのレーガン元大統領が中間選挙で勝利し、支援者に「あと4年!あと4年!」と歓喜の声を上げられている時に言ったのが、"You ain't heard nuthin' yet!" だった。アメリカ人にとっては、あたかも歌舞伎の決め台詞のように、このセリフが世の中に浸透してるんだな、とニュースを見ながら思った。

ともあれ、公開当時、大方の予想では大失敗すると言われたトーキー映画「ジャズ・シンガー」が大ヒットし、映画興行の形態は大転換する。無声映画のスターにとっては迷惑な話だったろう(被害を受けなかったのは名犬リンチンチンだけだった)。しかし映画が音を得る事によりどれだけ表現方法が広がったことか、と考えると、やっぱり録音技術を発明した「エジソンはエラい人」(byちびまる子)と改めて思うのでありました。

Jazz Singer (1927)

2007-11-21

映画「キャッシュバック」DVD Cashback

英国映画「キャッシュバック」(Cashback) をDVDで観た。香港では5月頃公開され、DVDはHMVで、結構目立つところにいつもあり気になってたもので。

アート・カレッジへ通うベン(ショーン・ビガースタッフ)は、彼女に振られた後、不眠症になり夜まったく寝れなくなってしまう。ある日大型スーパーマーケット、セインズベリーへ立ち寄った際、ナイトシフト(夜間勤務)のバイト募集の広告を見て応募する。彼は、夜の8時間をスーバーへ与え、その時間分のお金(キャッシュバック)をもらうことにしたのだ。働いてみると、ユニークな店長はじめ、いつもふざけてるバカな二人組や、やる気のないレジの娘やら、クンフー好きの男やら、面白い面々と出会う。彼らがナイトシフトでどうやって時間を過ごしているかを横目で見ながら、彼は自分自身の能力=時間をフローズン(冷凍)すること=で楽しむのだった…

主人公は絵を勉強しているので、スーパー内で時間を止めて、キレイな女性の服を脱がし、デッサンする。こうやって書くとポルノまがいに聞こえるだろうが、実際はそんないやらしいものではない。女性の美しい身体に対する男の持つ憧れを映像表現しているのである。

冒頭、振られた彼女に主人公が悪態をつかれてる場面は、オペラが流れ、スローモーションの映像がいいし、時間をフリーズし、マネキンのようにみえる美しい女性たちの場面も面白い「絵」だ。コメディとして笑えるところも多く、ラスト・シーンも素敵な演出がなされ、インディペンデント・カルト・ムービーとしての出来はいいと思う。

元々20分ほどの短編映画として2004年に製作された本作だが、アカデミー賞の短編映画部門でノミネートされるなど高評価を得、ロング・ヴァージョンの製作となった。特典映像でその短編ヴァージョンも見れるのだが、本編の予告編といった感じになってしまっていた。知らなかったとはいえ、先に短編版を見とけばよかったと思ったよ。

監督・脚本はショーン・エリス。メイキングを見ると、スーツにネクタイで演出している。変わった奴だね。映像のセンスもいいし(写真家でもある)、出てくる女性の趣味もいいし(笑)、今後注目してみよう。

ネットで検索してみたら、この映画、大阪ヨーロッパ映画祭で11月25日に上映されるんですな。リサイタルホールの大きな画面で観るといいかもね。それに監督のショーン・エリスも来るみたいだし(たぶんスーツにネクタイで来ると思うよ(笑))。

http://www.oeff.jp/1043-Cashback.html

この映画祭面白そうやな。「和田誠ヨーロッパ映画の世界」と題した和田誠さんの絵の展示もあったんやね。どっちかというと、こっちに行きたかったわ!(ファンなんで)

Cashback (2006)

Aspect Ratio 2.35:1, Dolby Digital, Region 1

2007-11-19

「イースタン・プロミセズ」 Eastern Promises

Odorueastrenpromises デヴィッド・クローネンバーグ監督の新作「イースタン・プロミセズ」へ行く。今回も「ヒストリー・オブ・バイオレンス」に続き、主演が”アルゴラン”(←ロード・オブ・ザ・リング)ことヴィゴ・モーテンセン。共演が、(ぼく好みの)ナオミ・ワッツと聞けば行かねばなるまい。止めてくれるな、おっかさん、と走って行ってきた。

ロンドン、ある夜、まだ14歳の妊婦が急患で運ばれる。帝王切開で子供は助かったが母親は亡くなる。看護婦アンナ(ナオミ・ワッツ)は残された赤ちゃんの身元を探ろうと母親のバッグに手を入れると、そこにはロシア語で書かれた一冊の日記が入っていた。その中に小さな手がかりとなる、ロシアン・レストランの名刺を見つけ、バイクで訪ねてみることにするアンナ。玄関先に、オーナーの黒塗りのベンツの運転手ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)や、出来の悪い息子(ヴァンサン・カッセル)がいたりするが、店内に入るとやさしそうなオーナー(アーミン・ミューラー・スタール)が事情を聞き「自分がその日記を訳してあげるから、明日持ってきなさい」と言ってくれる。だが、その温和なオーナーの裏の顔は、じつはロシアン・マフィアのボスだったのだ…

クローネンバーグにしては、ストレートでわかり易く、ある意味「良い」映画である。らしくないといえばらしくないが、この映画に関しては「これでいい」って感じ。全編ロシア訛りの英語とロシア語が飛び交い、ロンドンのダークな部分の雰囲気もとてもよく、上質な(ちょい)ハードボイルドっぽいマフィア映画である。

だが、暴力の描写は相変わらず見てて「痛い」。モーテンセンが、サウナ風呂で襲われるシーンは、素っ裸のモーテンセンがナイフを持った男二人に突然切りつけられ、イタタタ。それで格闘してタイルの床に投げられたりしてこれも痛い痛い。モーテンセン、全裸「まる見せ」で戦うが、だから余計に痛みが伝わってくるのだ。

前半、殺した男の死体を海に投げ入れる前にモーテンセンがその男の指をペンチで切るシーンがあるのだが、その時、劇場でぼくの前に座ってた白人の若い女性が席を立って、二度と帰ってこなかったよ。イタタ。

Odorueasternpromises2 ナオミ・ワッツは30代のワケあり未婚の女を演じて、あまりキレイっぽく撮られてないが、文句を言わないのが偉いと思う。(ま、それでもキレイなんだけどね、ハハハ)
ダメな息子のヴァンサン・カッセルは思った通り上手いし、父親でボスのアーミン・ミュータン・スティールの醸しだす雰囲気も味わい深い。
モーテンセンは今回は渋いというより、全身刺青を入れ、凄みがあるマフィアを演じる。独特なムゥドのあるいい役者になったよね。

そういえば、最近ロンドンでは、プーチンを批判し亡命したロシアの元幹部が毒殺されるという事件があった。この映画を観ると、こーゆーロシアン・マフィアが事件に関与してるんじゃなかろうか?と思ったりする。そういう意味でも「旬」な映画と言えようか。

Eastern Promises (2007)

2007-11-16

「未知との遭遇」DVD 製作30周年 アニバーサリー・アルティメット・エディション



スティーヴン・スピルバーグ監督の1977年の傑作「未知との遭遇」が製作30周年を記念して、3枚組のDVDで発売された。ぼくが買ったのはアメリカ盤だが、日本でも12月に同じものが発売される。クリスマス・ギフト向けにこーゆーのが出る季節になりましたな。

この「饅頭の箱」のようなパッケージの中身は、1977年のオリジナル版、1980年の特別編、そして2002年(だと思う)のファイナル・カット版(←スピルバーグがこの呼び名を指定したとのことだが、このアメリカ盤の英語表記は、"ディレクターズ・カット"なんだよね?)の3本の本編、それに「メイキング・オブ・未知との遭遇」(←既発売のメイキングと同じもの)、「30周年記念スピルバーグ・インタビュー」、「空を舞台に "Watch The Sky"」、「30周年記念版予告編」、封入特典として、写真がいっぱいのブックレット、複製オリジナル・ポスター(裏に3作品のどの箇所が違うのか時間軸で比較、解説している表がついている)、である。

物語はご存知の通り、人間と宇宙人が「第三種接近遭遇」(原題)するというもの。スピルバーグは「ジョーズ」('75)の興行的な大成功の後、オリジナルの脚本で、弱冠31歳の時にこのビッグ・プロジェクトを成し遂げた。やはり只者ではない。今観ても、充分面白いし、フランソワ・トリュフォーの起用など、今となっては最高のキャスティングとお礼をいいたいくらいだ。

監督も若くピュアな時だったし、出演者もリチャード・ドレイファス、トリュフォーも含め、皆子供のようにUFOを信じる感性を持ち合わせた人々だった。これはスピルバーグ版「大人は判ってくれない」だったのかもしれない。

マザーシップの製作にあたり、当初真っ黒なUFOを考えていたスピルバーグだったが、インドロケの後見た工場や、マルホランド・ドライブから見たロスの夜景があまりにきれいでそれをベースにネオンぎらぎらのUFOを作りあげたのだと。
70年代のアメリカはまだドラッグ文化全盛で、この映画のUFOの飛び交う場面は、劇場の大画面でマリファナやって観ると最高にトリップ出来ると昔聞いたことがある。そーゆー裏の楽しみ方もあったんやね、アメリカでは。

考えてみると、この「未知との遭遇」公開後3年を経て、「特別編」が製作された。スピルバーグは「金のためにやった」と言ってるが、これがその後の、やれディレクターズ・カットだの完全版だのの走りであった。そういう意味でも罪作りな映画なのである。(お陰で何枚同じ映画が我が家にあることやら…)

今年はやはり12月に、DVD「『ブレードランナー』25周年記念盤 」も出る。リドリー・スコットのファイナル・カットを含め5ヴァージョンが収録されているとのこと。おんなじ映画を5枚も持っておくというのは、いやはやなんとも、考えちゃうな… 去年発売されたデジタル・リマスターのディレクターズ・カット(香港版)持ってるから ももええか、と今は考えてる。やっとすこし大人になったかな(笑)

Close Encounters of the Third Kind  (1977) 135mins
Close Encounters of the Third Kind - Special Edition (1980) 132mins
Close Encounters of the Third Kind - Director's Cut (2002)(?) 137mins

Aspect Ratio: 2.35:1, Audio: Dolby, DTS Surround Sound, Region 1

2007-11-14

「大いなる陰謀」 Lions For Lambs

Odorulionsforlambs ロバート・レッドフォード監督の新作 "Lions For Lambs" 「大いなる陰謀」へ行く。香港では、11月8日から公開中である。日本公開を調べてみたら、あんと、2008年春!?って… あー、なるほどね。多分アカデミー賞待ちなんだな。うーむ… どうなんでしょう…

原題の"Lions For Lambs"(子羊のためのライオン)とは、第一次大戦中、ドイツの将校が、イギリスの兵士を評して、こんな愚鈍な軍上層部(子羊)につかえる勇気ある兵士たち(ライオン)をみたことがない、と語ったところからきている。現代のアメリカ軍のことを揶揄するためにレッドフォード扮する大学教授がこう話す場面が映画の中にはある。

対テロ戦争を利用し大統領選を戦おうと思っている上院議員(トム・クルーズ)、その報道を依頼される女性TV記者(メリル・ストリープ)、彼女は議員からアフガンでのある秘密作戦の情報をもらうが、プロパガンダに利用されると感じ苦悩する。カリフォルニアの大学教授(ロバート・レッドフォード)は自分の教え子が国のためを思い、志願してアフガン戦争へ行くがそのことを誇りに思うと同時に疑問に思ってる。ワシントン 午前10時、カリフォルニア 午前7時、アフガニスタン午後6時半。その時間から約90分、同時進行でストーリーは展開していく。

トム・クルーズが出資した新興ユナイテッド・アーティスト社の第一回作品。この豪華な出演者で、監督はレッドフォード。題材は対テロ戦争となると期待するのが当然。だが、正直ぼくには辛かった。何がって?上映時間は92分と短いが、ずーっと、喋ってるシーンが続くんだもの。クルーズとストリープは、議員の執務室で話す。レッドフォードと学生(アンドリュー・ガーフィールド)は大学の教授の部屋で話す。アフガニスタンで若い兵士たちが戦うシーンもあるのだが、ドンパチも戦闘シーンも派手ではない。
Native English Speakerではなく、かつアメリカにも住んでないぼくにはあまり切実な感じもせず、訴えるものも少なかったのだ。

実際、この映画の評価をネットで拾って読んでみると、気に入った人は凄く気に入り「今年一番観るべき映画!」とか絶賛してるのだが、否定派は、「こんなぐだぐだ喋るだけの映画なら、ケーブルTVの討論番組見てるほうがまし!」とか「時間と金の無駄」とばっさりである。

アメリカのサイト、Rotten Tomatoes の評論家たちの評価もあまり芳しいものではない。

http://www.rottentomatoes.com/m/lions_for_lambs/

アカデミー賞待ち、と書いたが、果たしてどうであろうか?人気、実力を持ち合わせた3人の俳優を持ってしても秀作とは成り得なかった、というところか(演技はいいんだけどね)。

主演のレッドフォード(70歳)、ストリープ(58歳)、クルーズ(45歳)のインタビューがTIME誌11月12日号に載ってたので読んだが、トム・クルーズが「レッドフォードと、メリル・ストリープの間で演技をするなんて『愛と哀しみの果て』の中にいるようだ!」とミーハーのようなはしゃぎっぷりで、相変わらず「治って」ないのかな?と不安になったよ(笑)

Lions For Lambs (2007)

2007-11-12

「バットマン」 in 香港

当地香港のTV、今朝のトップ・ニュースは、「来年夏公開予定のバットマン 新作のロケが香港で行われた」というもの。昨夜、中環のエクスチェンジ・スクエア辺りでロケがあり、その様子を映していた。現場にはたくさんのギャラリーがいたが、バットマン・スーツ姿のバットマンはお目見えせず(ビルの上で撮影していた)。ギャラリーからは不満の声があった。

先週から、えらく低いところをヘリが飛んでるなと事務所の窓から見てたが、それも新作「バットマン: ザ・ダーク・ナイト」(Batman: The Dark Knight)の撮影だったのだった。
香港政府も、「香港の映像が世界で上映されれば、観光業を促し、香港経済の利益につながる」と、ロケ大歓迎で全面協力していたのだ。

http://www.news.gov.hk/en/category/businessandfinance/071109/html/071109en03001.htm#

今朝のニュースでは、監督のクリストファー・ノーランはちらっと写ってたが、主役のクリスチャン・ベールや、モーガン・フリーマンらの姿はなかった(来てるはずなんだけど)。

そういえば、先週の日曜夜に「バットマン リターンズ」、昨夜(日曜)は「バットマン フォーエバー」を地上波で放送していたのは、そーゆー意味だったんだな。(裏で「セブン」やってたのは、モーガン・フリーマン向けだったのか?(笑))

もう、街をあげて喜んでるみたい、香港は… という小ネタでした。

Odorubatmanthedarknight

2007-11-10

「シャイニング」DVD Special Edition (2-Disc)

スティーヴン・キング原作、モダン・ホラーの傑作「シャイニング」である。Box Set 「スタンリー・キューブリック・コレクション」を買ったのもこれが欲しかったから。当地香港では単品でも売っているのだが、コスト・パフォーマンスの面と、「フルメタル・ジャケット」だけは単品で発売されなかったのでBoxを買ったのだった。

前回、前々回のDVDはスタンダード画面だったが、今回は、ワイド・スクリーン版。リマスターされた画面は傷一つなくとってもキレイ。ホテル内のシーンなどは何か奥行きを感じる。
ただ、99年発売のスタンダード画面と比べて見たら、冒頭のヘリコプターからのショットで "A STANLEY KUBRICK FILM" とタイトルが出る直前、撮影のヘリの影が映ってたのだが、これが消えていた。あと、ホテルの全景のシーンも画面の上にプロペラ(だろう)が映っているのが目立たなくなってる。となると、スタンダードの画面に上下をマスキングしたものなのかな?と思ったりしているが、果たしてどうだろう。

99年発売のものは、スタンダード+モノラル。01年のはスタンダード+サラウンド。で、今回ワイド・スクリーン+サラウンドと進化を継げたわけだが、もっと早くここまで出来たであろうに…と思う。
特にスタンダードでの先述の「ヘリの影」など、こだわりの強いキューブリック監督がよく発売を許したと思うのだ。

コロラドの山中にあるホテル。冬の間クローズされるこのホテルの管理を請け負った小説家志望のジャックは、妻と息子のダニーを連れてこのホテルに移り住む。幼い息子ダニーは、時々心の中に住む小さな子供トニーと話をし「シャイニング」という見えないものが見える能力を持っている。このホテルでは、冬場の管理人が一家を惨殺したという暗い過去があった。ダニーには双子の女の子や、血が吹き出るエレベータなどが段々見えてくる。閉ざされた空間の中、次第に精神を病んで行くジャック。そして…

主人公を演じるジャック・ニコルソンは、そうでなくとも狂気の演技をする役者なのに、この映画では正にモンスターと化す。
この映画の怖さが他のホラー映画と違うところは、生身の人間が精神を病み、凶暴になったあげく家族にその牙を向けるところである。それは、ゾンビでもジェイソンでもブギーマンでもチャッキーでもない、それまでは普通のお父さんだった人間が豹変するところなのだ。
ぼくは80年の公開時映画館でこれを観た(確か丸の内ピカデリーだった)が、当時大学生で、ちっとも怖くなかったのだが、その後社会人になり、結婚して子供が出来、見直したらもう本当に怖かった。
これは、現代において、どこの家庭でもありうることなのだ。父親が選んだ仕事、その責任感と重圧、そして自分のプライドとは裏腹に女房子供を食わすために納得できない仕事をこなさなければならないという無力感、さらに社会に認められていないと感じる疎外感、そんな様々な男の持つぐちゃぐちゃとした思いが爆発するところに恐怖を感じるのである。
もちろん現実にはぼく自身はそんな「破裂」はなかったが、現代の先進国ではよく耳にするDV(ドメスティック・バイオレンス)。この映画はそんな時代を予見したものだったような気がするのだ。

今回新録されたメイキングで、スピルバーグはニコルソンの演技を「歌舞伎のようだ」と表現した。これは、確かに西洋人から見たらそうかも知れんなぁ、と妙に納得した。

ステディカム撮影の、三輪車で、ダニーがホテル内をぐるぐる廻るシーン。板の間のうるさい音と、絨毯を踏んだ時の無音が、それだけでこんなに効果を上げるものかと思った。
マーティン・スコセッシが言うように「キューブリックの映画は1本で他の映画10本分の価値がある」と思う。何度観ても新たな発見がある。
だから、映画業界の人々に尊敬され、ファンが多いのだろう。まさに"Artist's Artist"だね。

All Work And No Play Makes Jack A Dull Boy.

Shining (1980)

追記: 書き忘れたが、この盤は143分ヴァージョンなり。

2007-11-08

スタンリー・キューブリック・コレクション DVD

ワーナー・ホーム・ビデオからまたスタンリー・キューブリックのBOXが発売された(アメリカ盤)。

過去何度新調されたかわからないキューブリックの映画だが、今回もリマスター&スクイーズ化され、新たな特典映像がついている。

収録作品は以下の5本

2001年宇宙の旅: Special Edition (2-disc)
時計じかけのオレンジ: Special Edition (2-disc)
アイズ ワイド シャット: Special Edition (2-disc)
フルメタル・ジャケット: Deluxe Edition
シャイニング: Special Edition (2-disc)

特典ディスク: 「STANLEY KUBRICK: A LIFE IN PICTURES」

この特典ディスクのドキュメンタリーは、2004年にNHK BSでも放送されたので見た方も多いと思う。トム・クルーズのナレーションでキューブリックの足跡をたどる。インタビューに答えるのは、マーティン・スコセッシ、ウディ・アレン、ジャック・ニコルソン、スティーヴン・スピルバーグ、マルコム・マクドウェル、アーサー・C・クラーク等 そうそうたるメンバーの豪華なもの。

我が家に昔からあるキューブリックのBOX(「時計じかけのオレンジ」「シャイニング」(143分版)「フルメタル・ジャケット」「バリー・リンドン」)は、 1999年に発売されたものだが、音声が全てモノラルなのだ。当時日本のワーナー・ホーム・ビデオの説明では、音声をレストアしたいのだが、スタンリー・キューブリック監督が断固として許さないとのことだった。彼の死後、ワーナーは監督の意向を無視して、何度リニューアルしているのだろうか?と思ったりする。

しかし、これだけのクオリティでHK$639(約9,585円)なのだから、ありがたいというか、価値が下がったというか、多分、昔の価格が高すぎたんだね。あ、今、何度も買わされてる自分に気づいてしまった… またカモねぎだぁ(爆)

Stanley Kubrick - Warner Home Video Directors Series

2007-11-06

「シュート・エム・アップ!」 Shoot'Em Up!

Odorushootemup クライヴ・ウォーエン主演の「シュート・エム・アップ!Shoot'Em Up! 」へ行く。
カナダへ9月に出張した際、モントリオールの映画館でこの映画のポスターを見て、「シン・シティ」みたいやな、と思ってたので香港で公開になりすぐ劇場へ足を運んだ。

ある夜、薄汚れた街のベンチに座って、生のにんじんをかじってる男(クライブ・オーエン)の目の前をお腹の大きい女が走って行く。その女は銃を持った男から逃げていたのだ。仕方ねえな、といった面持ちで立ち上がった彼は、二人が逃げ込んだ工場の中で、彼女を助けるべく銃をぶっ放す。工場内にはどこからともなく十数人の男が入ってきて彼に向けて発砲する。女が産気づいたので、それを助けながら彼は銃を撃つ、撃つ、撃つ!やがて赤ちゃんが生まれるが、彼女は逃げる途中で弾に当たり絶命してしまう。彼は赤ちゃんをかかえ、銃を撃ちながら走り逃げる… この女は誰だったんだ?なぜ追われていたんだ?どうして赤ちゃんを皆が殺そうとするのか?様々な疑問を持ちながらも、男は赤ちゃんを救うべく戦い続けるのだった…

いやぁ、なんと言っていいのか… 面白いのは面白いのだが、この監督は、ただ銃を撃ってるシーンを撮りたい一心でこの映画を撮ったんじゃないか?と思うほど、撃って撃って撃ちまくるのだ。

監督・脚本はマイケル・デイビス(←知らん)。前作は「モンスター・マン Monster Man」(←知らん)その前は「ガール・フィーヴァー Girl Fever」(←知らん)を撮った監督である。
こいつ、これから出てくるかもな、と思い調べてみたら1961年生まれのおっさんなんですな(←人のことはいえない同世代の俺)。

久々にB級トンでも映画に出くわした感じ。主人公は赤ちゃんをかかえ、教会へ行くのだが、入るとそこは娼婦の館。その中にいる馴染みの女 (「マレーナ」のモニカ・ベルッチ!)は、おっぱいを吸わせる専門。その女とベッドを共にしている最中も悪玉は襲って来る。彼女と駅弁スタイルのまま銃を撃つ男。公衆トイレに銃をちゃぽんと落としてしまった男は、手を乾燥させるドライヤーで銃を乾かしてから撃つ。敵の専用ジェット機に入った男は、逃げる為スカイダイビングで落下しながらも敵を撃つ…

両手の二挺拳銃の横っ飛びは当たり前。ありとあらゆる手で銃を撃つ事に命をかける主人公(いや、監督か?)。ひとつこの映画のいいところを言えば、あんまり残酷ではないところである。銃をぶっ放しても、痛みを感じさせないのだ。だから、子供がおもちゃの銃で遊んでるような感覚で見ていられる(監督の拳銃ごっこやな、これは)。

それにしても、よくクライヴ・ウォーエンが出たものだ。にんじんばっかり食べさせられて。モニカ・ベルッチにしてもしかり(劇場から帰りがけ、クリスチャン・ディオールのポスターの彼女を見た。イメージ大丈夫か?(笑))。相手役の悪役に「サイドウェイ」で、ワインのうんちくを語っていたポール・ジアマッティが扮するという<意外な>キャスティングもある。

くさい脚本だが、最後まで結構楽しく見れたぜ。気に入った。なんせ、上映時間86分だかんね!バンッ!(銃声)

Shoot' Em Up! (2007)

【関連】 「シューテム・アップ」DVD ↓

http://nobuyasu.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/dvd_shootem_up_1771.html

2007-11-04

「市民ケーン」 DVD イギリス盤とアメリカ盤

先ごろ「市民ケーン」でオーソン・ウェルズが脚本賞を受賞した際のオスカーが競売にかけられるという記事を読んだ。映画が映画だけに、相当な高値で落札されるのだろうが、一体誰が手に入れるのかも興味がある。またスピルバーグだったりしてね(笑)

映画史上最高傑作と言われる本作だが、商売として成り立っているのかはよくわからない。公開時は、モデルのハースト系の新聞に叩かれ大コケしたが、その後作品の評価のみがぐんぐん高まり現在まで続いている感じである。(今年のAFIのベスト100でもまた1位だったしね)

日本では、この映画のDVDはメジャー・スタジオから発売されていない。500円位のパブリックドメインか何かのひどい画質のものしか手に入らない。だが、欧米ではそれこそ宝物のように扱われ、ここで紹介する二本のDVDも「力」の入った作りようである。

Citizen Kane : Special Edition [1942]

まず、2003年発売の英国盤。ユニバーサル映画から発売されたもの。ぼくが10月7日に書いた「過去10年のベストDVD」2003年のベスト・レトロ・ディスクである。

マスターネガが消失してしまっている以上、ポジから修復せざるを得ない。その修復前後を数カット特典映像で見せてくれるが、はっきり言って、修復前の映像がひどすぎる!まるでTVのチャンネルの設定を間違えて砂嵐のような画面と音を見てるような感じ。だからそれに比べれば格段によくなってるのがわかる。(実際ぼくが初めてこの映画をNHK教育の「世界名画劇場」で観たときもひどいものだった)

この2枚組のスペシャル・エディションには、あの有名なCBSラジオで放送され、オーソン・ウェルズが全米をパニックに陥れた「宇宙戦争」が収録されているのだ。これは確かに聞いてみると緊迫した内容である。アナウンサーが電話で各地の被害状況を聞くという構成になっているので、1938年当時、途中から聞いた人は宇宙人襲来を信じてしまうかも知れない。
もう一つのラジオ録音は「幸福の王子」。ご存知の方もいるかもしれないが、昔、新聞で「聞くだけで英語が出来る!」みたいな商品の広告でオーソン・ウェルズがにっこり微笑んでいたのがあったが、あれだと思う。少し聞いてみたが、これで英語が出来るようになるんかーッ!!??とツッコミを入れたくなった。子供向けのラジオドラマじゃん(笑)

「Anatomy Of A Classic」は英国の評論家バリー・ノーマンが本作について詳細な解説をするドキュメンタリー。なぜ製作後60年を経てもいまだにベスト1の映画なのかを解析していく。 

Citizen Kane (Two-Disc Special Edition)

続いて、2006年ワーナー・ホームビデオ発売のアメリカ盤。
製作60周年記念にデジタル・トランスファーされた特別版の本編と、1995年度アカデミー賞ドキュメンタリー部門ノミネートの「バトル・オーバー・市民ケーン」の2枚組のスペシャル・エディション。

いやぁ、この本編の美しさは何?英国盤は、画面に傷があったりしたが、こちらは全くない。白黒のコントラストが眩しい位に美しい。
構成、アングル、ライティング、パン・フォーカス…既に語り尽くされたこの映画の凄さ、素晴らしさが更に際立つ高画質である。
この画質で見ないと「市民ケーン」を見た事にならへんで、旦那、へへ。って感じ。

「バトル・オーバー・市民ケーン」は約1時間50分の長編ドキュメンタリー。オーソン・ウェルズが24歳の時に撮った傑作映画「市民ケーン」とそのモデルとなった76歳のメディア王、ウィリアム・ランドルフ・ハーストとの闘いを主軸に、関係者や歴史家たちのインタビューを交え綴る。
ハーストはこの映画を買い取り、焼却処分にしようとしたが、叶わず。自身のメディアを使い、ネガティヴ・キャンペーンをする。その影響もあり、ウェルズは、この映画の後共産主義者の汚名も着せられ、事実上ホサれたも同然の身になる。晩年の彼は経済的にも困り、天才といわれながらその才能を発揮する事もなく生涯を終える。

晩年のオーソン・ウェルズは、(自分が太ってしまったため)デブをネタにしたジョークと、「市民ケーン」の後は何をしていたのか?という質問をされることをとても嫌ったという。

ウェルズ自身は、こう語る。「もし自分が映画をやらなければ、舞台でのキャリアを積み、今のように経済的に困窮することもなかったろう。けどそれは、あんな女となぜ結婚したのか?という問いにも似ていて、自分が彼女を<愛してしまった>から仕方のないことなのだよ」と。

一体勝ったのは、どちらだったのか?このドキュメンタリーでは、映画を公開しその評価を高めたウェルズに軍配を上げるが、ぼくには「そして映画だけが残った…」という思いしか残らなかった。

映画の中身、レストアされた究極の画像、どれをとっても素晴らしいDVDである。なのに、ぼくが買ったときはどちらもセールの安売り商品だった。これが映画史上最高傑作と呼ばれる「市民ケーン」の現実なのだ、と思うと、一人の映画ファンとしては忸怩(じくじ)たる思いである。いい映画と売れる映画は違うのだ。

今回は、長くなったね。最後まで読んでくれて、ありがとう。ローズ・バッド!

Citizen Kane (1941)

2007-11-02

映画「アメイジング・グレイス」 Amazing Grace

Odoruamazinggrace 現在香港で上映中の映画「アメイジング・グレイス」へ行く。
あまり予備知識もなく、観に行ったのだが、正直とても感動した。これは本当に"アメイジング"な映画であった。

「アメイジング・グレイス」という歌は、日本では本田美奈子さんが亡くなったときによく流れていたのでご存知の方も多いだろう。
この歌は、17世紀にイギリスで、奴隷貿易船の船長ジョン・ニュートンが、自分のやったことを悔いて作った詩に曲をつけた賛美歌なのである。

17世紀後半、英国では奴隷売買が当たり前のように行われ、アフリカから数万の黒人たちが拉致され、連れて来られていた。輸送中の船内は劣悪を極め、家畜以下の扱いであったため、赤痢などの病気が蔓延し、600名いた黒人が英国へ着いたら200名しか生存していなかったこともしばしばだった。
かような現実の中、若き政治家ウィリアム・ウィルバーフォースは立ち上がる。奴隷貿易禁止法案を議会に提出するが、最初は全く相手にされない。
だが、彼はくじけなかった。奴隷船の船長から悔い改め、後に神父となったジョン・ニュートンらと共にその後数十年をかけ粘り強く戦い、そして遂に勝利を勝ち取るのだ。

この映画の素晴らしいところは、劣悪な環境の船内や、黒人へのひどい仕打ちを全く見せないで、物語を進め、ラスト、ずしんと重い感動へいざなうところだ。
CGや特殊メイクを見慣れてしまった人間には、淡々と続くドラマに古臭さを感じるかも知れない。だが、それがゆえに、主人公及び、彼に協力した面々の気高さや、品格を感じることが出来るのだ。

監督は「歌え!ロレッタ愛のために」「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」のマイケル・アプテッド。主演はヨアン・グリフィズ。今回は身体がびよーんと伸びる「ファンタスティック・フォー」とは違い崇高な政治家を真面目に演じてる。神父のジョン・ニュートンに、名優アルバート・フィニィ。奥さん役をロモーラ・ガライ、重厚な政治家を、"ダンブルドア"ことマイケル・ガンボン他、英国のスタッフ・キャストが集結している。

奴隷貿易のなんたるかを知る歴史の勉強にもなるし、一過性ではない長く残る感動もあるお薦めの一本である。
あ、けど日本では公開されるのでしょうか?ぜひ公開して欲しいな。日本の政治家たちもウィリアム・ウィルバーフォースを見習って欲しいからね。

Amazing Grace (2007)

(追記)
今日(11/3)朝日新聞国際版の映画評を読んだら、この映画は奴隷貿易廃止200周年記念映画なんだと。なるほど。評価は★★★★でした。

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