「ジャズ・シンガー」DVD 3枚組スペシャル・エディション
アル・ジョルスン主演の「ジャズ・シンガー」という映画をご存知か?
ミュージカル映画の金字塔「雨に唄えば」の中で、モニュメンタル映画会社のシンプソン社長が、撮影途中のサイレント映画「決闘する騎士」を突然トーキーにすると言い出すのは、このワーナー・ブラザーズの「ジャズ・シンガー」が大ヒットしたため、と言えばちょっとわかってくれるかな?
そうこれは史上初めての「トーキー映画」として、歴史に残る映画なのだ。
とにかく、今度アメリカで発売になった「ジャズ・シンガー」3枚組スペシャル・エディションは、もう≪博物館級≫のDVDである。
CDやBlu-rayの時代に、LPではなく、その前のSPや蓄音機の<化石のような>話をするので、わかる人の方が少ないと思うが、ちょいと書いてみよう。なんせ、このDVDは「80周年記念盤!!」だかんね。
映画「ジャズ・シンガー」は、アル・ジョルスン扮するユダヤ教会の牧師の息子が、ブロードウェイで成功するまでのサクセス・ストーリー。ジョルスン自身の生い立ちを基に、父と子の仲違いと和解、そして永遠の別れを描く。
今観ても鑑賞に耐えうる映画(今回のレストアは本当にキレイ!)であるが、大ヒットしたのはジョルスンの歌もあるが、物語が「お涙頂戴もの」だったからだろう。
この映画はオール・トーキーではなく、ジョルスンの歌の部分だけがトーキーで、あとはサイレント映画と同じく字幕が出るパート・トーキーである。(ちなみに最初のオール・トーキーはMGMの「ブロードウェイ・メロディ」(1929)です)
ヴァイタフォン方式での公開で、それは、映写機の下でレコードをかけるようなもので、お陰で絵と音がずれることもしばしばだった。この辺も「雨に唄えば」に出て来たよね。
このDVDには、本編の他に、約1時間半の新たなドキュメンタリー「音声の夜明け:映画はいかにして音を得たか」(←面白い!)や、ヴァイタフォンの短編映画等、本当に山のような量の映像が詰め込まれている。トーキー初期の資料としても貴重だ。他に、セットで撮影された写真、復刻版のパンフレットも封入されている。
ぼくは、この映画のアル・ジョルスンによる超有名な台詞「お楽しみはこれからだ!」の英語は、You ain't heard nothin' yet. だとばかり思っていた(実際ぼくの映画バイブル、和田誠さんの名著「お楽しみはこれからだ」でもそうなっている)のだが、今回これが、You ain't heard nuthin' yet. だというのがわかった。nothin' ではなくnuthin' だったのだ。
これまた古い話だが、80年代、アメリカのレーガン元大統領が中間選挙で勝利し、支援者に「あと4年!あと4年!」と歓喜の声を上げられている時に言ったのが、"You ain't heard nuthin' yet!" だった。アメリカ人にとっては、あたかも歌舞伎の決め台詞のように、このセリフが世の中に浸透してるんだな、とニュースを見ながら思った。
ともあれ、公開当時、大方の予想では大失敗すると言われたトーキー映画「ジャズ・シンガー」が大ヒットし、映画興行の形態は大転換する。無声映画のスターにとっては迷惑な話だったろう(被害を受けなかったのは名犬リンチンチンだけだった)。しかし映画が音を得る事によりどれだけ表現方法が広がったことか、と考えると、やっぱり録音技術を発明した「エジソンはエラい人」(byちびまる子)と改めて思うのでありました。
Jazz Singer (1927)
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