映画 1980年代

2009-07-13

マイケル・ジャクソン 「ムーンウォーカー」 Michael Jackson MOONWALKER

マイケル・ジャクソン追悼として、当初の予定を変更して、日曜日の夜香港の地上波Pearlでは1988年製作の映画「ムーンウォーカー」"Moonwalker"が放送された(2009年7月12日 20:30 - 22:30)。

劇場公開当時、ぼくは仕事が忙しく映画館へ足を運べなかった。映画自体の評価も決して芳しいものではなかったこともあり、その後DVDになったりしても中々食指が動かなかった。今回こんなカタチでこの<マイケルの主演映画>を観るとは思ってもみなかった。

で、初めてこの「ムーンウォーカー」を観て正直驚いた。これは映画というより、1本まるごとマイケル・ジャクソンのプロモーションではないか!追悼というカタチでこの映画が放送された意味はこういうことだったのか。

マイケルが亡くなっているという見地からこの作品を観ると、公開当時とは違った評価になるのではないかと思う。その理由は、この映画には彼の個人的な趣味や好みがいっぱい詰まっているからだ。アニメーション、遊園地、変身ロボ、MGMミュージカル、子供たち等々…。

映画の構成は、物語があってどうこうというものではなく、マイケルの歌と踊りを見せることを基本のコンセプトにしたショート・フィルムを繋いでいるというものだ。このことを理解してないとワケがわからない。

昔のMGMミュージカルでいうとジーン・ケリーの「舞踏への招待」('54)のようというとわかってもらえるだろうか?(よけいわからんか?・笑)。その「舞踏〜」もジーン・ケリーが自身の趣味・し好を出し過ぎて失敗してて、その辺も似ているのだが(笑)。もしくはビートルズ映画とも云えるかな。

(以下、ネタバレあり)

ライヴで「Man in the mirror」を歌っているシーンから始まるこの映画は、それから私物の手袋やピノキオの人形なんかを見せながらレーガン大統領のマイケルへの賛辞の声などを聴かせ、ジャクソン5時代からの数々のビデオを断片的に見せ、「BAD」のところで突然子供に変わる。この全員子供で踊る「BAD」が面白い。完璧にコピーしているのだが、あの股間を触って「HO-!」と云う時に、強く叩きすぎて痛そうな顔をしたりするのだ(笑)

その「BAD」の撮影が終わったマイケル(大人)は、撮影所見学ツアー客に追っかけられる。走って逃げるマイケル。ここからはクレイ・アニメとなり、マイケルも逃げながらアニメのラビットになる。この「Speed Demon」は、ピーウィ・ハーマンなど出てきて楽しいんだが、クレイ・アニメの完成度が高くないのが惜しい。次のセグメント「Leave Me Alone」は、パパラッチから追っかけられるマイケルが遊園地で、クルーズ形のアトラクションに乗り進んで行くというもの。切り絵のようなアニメ。途中に若かりし頃のエリザベス・テイラーがいる。

そして後半は、大作「Smooth Criminal」になるのだが、これは世界征服を狙い子供をいたぶるミスター・ビッグ(ジョー・ペシ)と子供たち(中にショーン・レノンもいる)を助けるためマイケルが闘うというもの。ウィーンのような夜の街並み。マシンガンとギャングの格好。30年代の酒場(Club 30's)での踊りは、「バンド・ワゴン」のフレッド・アステアを連想させる。女の子がミスター・ビッグに捕まり、殴られたりするところでマイケルは悲痛な叫びをあげる。ここなぞは、彼が実際に父から受けた虐待のことを知っていると辛いシーンだ。怒ったマイケルは、巨大な銀色のロボット→スペースロケットに変身し、ミスター・ビッグのレーザー砲と秘密基地を爆破する。

マイケルがスーパーカーに変身したり、ロケットからビームを出したりするのだが、一緒に観てた12歳の娘でさえ「やりすぎだよ、マイケル」と云っていた(笑)
だが、上にも書いたように、全編子供向きとも思えるおもちゃ箱のような演出に、プロデューサーでもある、マイケルの趣味が色濃く反映されているように思えてならない。

当日は、テレビ神奈川でも2時間に渡り追悼番組「Forever MJ Ever」(19:00 - 20:55)を放送していた。時差があるので、ロケフリでそれを眺めてから「ムーンウォーカー」を観た。

当地香港では、90年代に予定されていた公演が直前になってキャンセルされたという。例の裁判の心労が理由と香港人の知り合いから聞いた(本当のことはわからないが)。

映画の後半、ロケットに変身したマイケルは子供たちにさよならも云わず去って行く。だが、ラスト、マイケルは悲しんでいる子供たちの前に帰って来て「Come together」を歌う。本当にマイケル・ジャクソンが去っていった今観るとなんだかせつない。

この映画はアルバム「BAD」の時に作られた。30年代のギャング・スーツを着たマイケルはまるで”宝塚の男装の麗人”のように美しい。娘も「かっこいい」と言っていた。
全盛期のスーパースター、マイケル・ジャクソンの歌と踊りが見れる本作は彼の死を受けて、今後評価が高まっていくかも知れないなと思った。ファンの方はぜひ。

MOONWALKER (1988)

Directed by Jerry Kramer, Will Vinton (segment "Speed Demon)
Jim Blashfield (segment "Leave Me Alone"),
Colin Chilvers(segment "Smooth Criminal")

93 mins

13-Jul-09-Mon

ムーンウォーカー [DVD]ムーンウォーカー [DVD]

DANGEROUS~ザ・ショート・フィルム・コレクション [DVD] ザ・ワン [DVD] ヒストリー・オン・フィルム VOLUME II [DVD] ライヴ・イン・ブカレスト [DVD] who's BAD? マイケル・ジャクソン 1958-2009(シンコー・ミュージックMOOK)

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2009-04-21

「センチメンタル・アドベンチャー」と「グラン・トリノ」 Honkytonk Man & Gran Torino

クリント・イーストウッド監督・主演の傑作映画「グラン・トリノ」。日本での公開(2009年4月25日)が近づいているが、同じイーストウッドが、1982年に監督・主演した「センチメンタル・アドベンチャー」"Honkytonk Man"をご存知か?この映画は、ひょっとしたら今回の「グラン・トリノ」のルーツかも知れない、イーストウッドの「男修行」の物語なのだ。

ぼくが、映画「グラン・トリノ」('08)"Gran Torino"について、稚拙な感想文をこのブログでアップしたところ、月刊誌「映画秘宝」などでも活躍されている 娯楽映画研究家 佐藤利明さんからコメントを頂き、この”「センチメンタル・アドベンチャー」みるべし”とのことだったので、日本に一時帰国した時に、1500円のDVDを買い求めたのだった。

「センチメンタル・アドベンチャー」('82)は小品ゆえ、日本ではロードショー公開もされず、二本立ての添え物的扱いを受けた映画なのだが、その評価は映画ファンの間では有名で、ぼくも(正直)名のみ知っている映画の一本だったのだ。

大恐慌時代。売れないカントリー・シンガー レッド・ストーバル(クリント・イーストウッド)は、カントリー&ウエスタンの祭典”オープリー”のオーデションへ出るため、ナッシュビルを目指していた。16歳の甥っ子ホイット(クリントの実の息子カイル)は叔父さんのことを尊敬し、運転手となり一緒にナッシュビルを目指す…。

歌と酒に生きてきた男レッド。農家で生まれた甥っ子ホイットにとって、そんな風来坊の叔父さんはかっこよく映る。これはそんな少年が、おじさんと旅を続けることで「男」になっていくロード・ムービー。

今から27年も前の映画である。古臭さは仕方がないところだが、味のある一品であった。

今でいうヒュー・ジャックマンのような、(まだ)二枚目のクリント・イーストウッド(当時52歳)が、売れないカントリー・シンガーを演じる。ギターを片手に歌うところは、決して美声とは言えないのだが、味わい深い声で渋くてイイのだ。

結核におかされ、時間がないことがわかってるレッドが、男として、そしてミュージシャンとしての最後の「生きザマ」を甥っ子に見せてやる。その姿にグッとくる。

旅の途中で、叔父さんがホイットに商売女を抱かせてやるところなんざ、実の親子が演じているというのをわかって観てるとホント可笑しい。(クリントならやりそうだし・笑)

そのホイットを演じた、カイル・イーストウッド君は、その後ジャズ・ミュージシャンとなり、四半世紀後「グラン・トリノ」では音楽を担当する。名曲「グラン・トリノ」のひとくさりを、父のクリント・イーストウッドが渋く歌うところも泣かせるんだよなぁ。

この「センチメンタル・アドベンチャー」では、旅の途中まで、おじいちゃんも一緒に旅をする。夢を求めてやっては来たが、死ぬのなら故郷で死にたいと思う旅。孫との別れのシーンも切ない。

クリント・イーストウッド監督作に流れる”死生観”というものが、初めて出たのがこの映画かも知れない。そういう意味で貴重な作品と云えまいか。

そして、「グラン・トリノ」では、78歳のクリントが、人生の終焉を迎えるにあたって、隣に住む、最初は差別し、毛嫌いしていたアジアの青年に男の「生きザマ」を見せてやる。

かつて、西部劇などではよく見られた、大人が若者を「男」にしてやる話。男修行を現代劇で、こんな形で見せられると、もう若くはなくなった男はたまらないわけだ。

日本でも、「七人の侍」での勘兵衛や勝四郎の関係。「男はつらいよ」の寅さんと甥っ子の満男の関係など、男修行の話は多い。

かつては若者の立場で観ていたそういった映画を、年を重ね、いつしか大人の立場で観た時、男は知るのだ。年をとって、若者に教えているようで、じつは教えられているんだということを…。

トシをとっても成長することは出来る。変わることは出来るんだ、ということ。人は死んでも、その人の”影響”は永遠に残るのである。

「グラン・トリノ」は、旬の映画である。アメリカ始め、世界的な不況の時代の今こそ観るべきもの。この映画は名作として、後世残る映画だろうが、この現代の「空気」の中で味わうべき名品である。映画館でぜひ。

【関連】 「グラン・トリノ」 Gran Torino
http://nobuyasu.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-8ad8.html

HONKYTONK MAN (1982) DVD

Director Clint Eastwood
123 mins
Dolby Digital
Region 2

21-Apr-09-Tue

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2009-02-05

「天空の城ラピュタ」 (天空之城) 香港ATV放送

宮崎駿監督の傑作アニメ映画「天空の城ラピュタ」(広東語名:天空之城)が香港の地上波ATV World で放送(2009年2月3日)されたので、久しぶりに観た。

柄にもなく風邪をひいてしまい、その日の午後、中環(Central)にある医者に行き、美人のドクターに「今日は会社を休んで、帰って寝なさい」と云われたので素直に聞いて家に帰ったのだった。

Odoru0502092 ぼくのベッドルームにあるTVは、香港の放送しか入らない。夕方寝ていたのでちょっと元気になったぼくは、夜9時頃TVをつけザッピングをしているときに、この「ラピュタ」の放送を見つけたのだ。

こういうときに日本語での放送(広東語+英語字幕)はありがたい。本編前に予告をやり、来週は「風の谷のナウシカ」('84)(風之谷)を、再来週は「魔女の宅急便」('89)(魔女宅急便)を放送するという。宮崎駿特集のようだ。

今、香港では「崖の上のポニョ」('08)(崖上的波兒)を公開中である。香港では旧正月に公開される映画はどの映画会社も自信作を持って来る。その中に「ポニョ」も入ってるというのは、やっぱスゴいなと思う。

宮崎駿監督の香港での人気は絶大である。TVでも、氏の作品は繰り返し放映されている(そういえば、今年の元旦も「ハウルの動く城」('04)を放送していた)。

日本の映画監督でこんなに世界的にメジャーになったのは宮崎監督が初めてではないかと思う。
なるほど、黒澤明監督も偉大な名監督である。だが、彼は映画好きにはよく知られているが、一般の人にはあまり知られていない。

そういった意味で、宮崎アニメは香港でも誰でも知っている。お年寄りから子供まで幅広く受け入れられているのだ。これはかのスティーヴン・スピルバーグ監督にも匹敵するほど凄いことではないかと思っている。

今回何度目かの「天空の城ラピュタ」を(ボーっとしながら)観たのだが、その時に気づいた事がある。それは、最近観た「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」('08)に似てるということだ。

「ラピュタ」の物語は、かつて人類を牛耳っていた、空に浮かぶラピュタ帝国を蘇らせようとする話である。狂ってしまった兄が、不思議なパワーの「飛行石」を持つ妹の王女シータを追いかける。ラピュタの守護神はロボット。王女を助けようとするのが孤児のパズーである。

「ゴールデン・アーミー」も地下に潜むラルフ族の(狂った)王子が、再び人類を牛耳ろうと、強大な破壊力を持つロボットを蘇らせようと王冠を捜す。王女と水棲人エイブとの関係など、プロットが似ているのだ。ここに出て来るロボットのフォルムも「ラピュタ」のそれに似ている。(ま、「ラピュタ」もガリバー旅行記や神話の影響を受け、ロボットもアメリカのアニメの影響があるわけだが…)

「ヘルボーイ」の監督ギレルモ・デル・トロがモノにした傑作「パンズ・ラビリンス」にも宮崎映画の影響(「となりのトトロ」)がはっきり見て取れる。彼も宮崎監督の大ファンだと聞いたことがある。そういう意味では、この「ラピュタ」と「ゴールデンアーミー」が似てて当然なのである。つーか完璧にオマージュやね。

宮崎作品は、世界中の映画作家たちにも多大な影響を与えているのはよく知られている。ピクサーやディズニーのスタッフにもファンが多いと聞く。これからも世界のアニメ作家(映画作家も)に影響を与え続けていくのだろう。

久しぶりに劇場長編アニメ初期の宮崎作品を観たが、その素晴らしさは全く色あせていない。というか、やっぱり個人的には徳間書店が制作してた頃の宮崎作品の方が好きかな、と思った次第。

Laputa Castle In The Sky (1986)

124mins

ATV World Feburaury 03, 2009 (Tue) 21:00 - 23:30

05-Feb-09-Thu 

天空の城ラピュタ [DVD]天空の城ラピュタ [DVD]
宮崎駿

風の谷のナウシカ [DVD] 魔女の宅急便 [DVD] もののけ姫 [DVD] となりのトトロ [DVD] 紅の豚 [DVD]

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2008-11-28

「007/消されたライセンス」 Licence to Kill (&「慰めの報酬」)

映画「007/慰めの報酬」が香港で公開され(2008年11月6日)、それに合わせて香港の地上波では007の旧作がその週の土曜日午後9時に放送された。何が放送されたかというと、ティモシー・ダルトン主演の「消されたライセンス」"Licence to Kill"('89)なのである。

この本港台というTV局の担当者は「わかってるよなぁ」とにんまりしてしまった。
(11月は毎週土曜日に007が放送された。他のラインナップは「ゴールデンアイ」「黄金銃を持つ男」「ロシアより愛を込めて」「ユア・アイズ・オンリー」である)

放送で観たかったが、当日は所用があり観れず、久しぶりにアタッシュ・ケース入りの007(←マニアならみんな持ってる超重い奴)のふたを開け、十何年振りの「消されたライセンス」をDVDで楽しんだ。

シリーズ第22作「慰めの報酬」(又の名を「続・カジノ・ロワイヤル」又は「オイルフィンガー」・笑)は、ボンドが亡くしたばかりの最愛の人ヴェスパーの復讐劇。私情が入り、任務から逸脱した行動をとる。
第16作のこの「消されたライセンス」も、CIAの親友フェリックス・ライターが瀕死の重傷を負わされ、彼の新妻も殺されたことからボンドがMI-6を辞めて復讐に走る。プロットが ちと似ているのだ。

シリーズの中で評判も悪く(←コアなファンで好きな人も多いが一般的にはという意味)、興行収入もパッとしなかったこの「消されたライセンス」。
評判が悪かった理由は、ボンドが親友の復讐のため007を辞するので、任務ではなくなり必殺仕事人と化すため、ボンド本来のクールで洗練された味わいがなくなってしまったから。
興行収入が悪かったのは、当時007にライバル映画が多く出てきたためだったと思う。

Odoru2611083 1980年代後半に公開されていたアクション物といえば「インディ・ジョーンズ」「ダイ・ハード」「リーサル・ウェポン」シリーズなど、ボンド・ムービーの影響を受けているが、明らかに面白さやスケール感が上回っているアクション物が多く、007はちょっと古臭い印象を与えていたのだ。

前作「リビング・デイライツ」で颯爽と登場したニュー・ボンド ティモシー・ダルトン。それまでのユルく年寄り臭くなった感じのロジャー・ムーアから一転、クールでタフな感じで評判もよく、この「消されたライセンス」にも出演したが、たった2作で降ろされてしまった。

冷戦構造が終焉を迎え、それまでのスパイもののプロットが成り立ちにくくなり、苦慮しているときにボンドになってしまったのが、ダルトンの悲劇であろう。

この作品は、それまでのボンドシリーズではあまりなかった残酷な描写もある(←今観るとどうってことないんだけどね)。親友フェリックス・ライター(デヴィッド・ヘディソン)は鮫に足を食いちぎられる、減圧室でのクレスト(若き日のベ二チオ・デル・トロ)はむごたらしい最後をとげ、麻薬王サンチェス(ロバート・ダビィ)は炎につつまれて死ぬ。

そんなリアルでダークな描写もあったため、各国のレイティングでの年齢制限も上がってしまい、この「消されたライセンス」は、アメリカでは<007シリーズのワースト興行成績>を上げてしまう。

その後、ピアース・ブロスナンのボンドに変わり「ゴールデンアイ」まで6年間新作が公開されなかった(MGM/UAとの法的闘争もあったが)という事実が製作者側の苦悩を物語っているようにも思える。

アクション・ムービーとして「消されたライセンス」は、中の中といったところか。特典映像によると、プロットの骨子は黒澤明の「用心棒」から拝借したとのこと。ボンドが三十朗になるわけだ(笑)。ちょっとテイストの違う007として、これはこれで面白いんじゃないかと再見して思った。少し大人になったのでそう思えるのである。

ボンド・ガールのキャリー・ローウェルとタリサ・ソトはいいねぇ。二人共ボンドを好きになるのだが、特にソトはラテン系で、愛人サンチェスに性器を思わせるムチで打たれるシーンもあり、「そっち系」の人には受けたんだろうね(笑)

日本ではジャパン・プレミア(2008年11月25日)もあり、盛り上がりつつある「007/慰めの報酬」だが、観る前にこの「消されたライセンス」も観ておいてもいいかも、と思った次第。ワイルドなボンドの原点はここかもしんないからね。

「007/慰めの報酬」
http://nobuyasu.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/007-quantum-of-.html

Licence to Kill (1989)

007 消されたライセンス アルティメット・エディション [DVD]007 消されたライセンス アルティメット・エディション [DVD]

007 リビング・デイライツ アルティメット・エディション [DVD] 007 ゴールデンアイ アルティメット・エディション [DVD] 007 ダイ・アナザー・デイ アルティメット・エディション [DVD] 007 ワールド・イズ・ノット・イナフ アルティメット・エディション [DVD] 007 トゥモロー・ネバー・ダイ アルティメット・エディション [DVD]

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133mins

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2008-10-10

「それ行けスマート/0086笑いの番号」 DVD The Nude Bomb

いよいよ日本でも映画「ゲット スマート」が公開となるが(2008年10月11日より)、アメリカ本国では公開に合わせてオリジナルTVシリーズの映画化「0086笑いの番号」 "The Nude Bomb" が"初"DVD化された(2008年6月17日)ので紹介しよう。

0086とは、言わずとしれたマックスウェル・スマート(ドン・アダムス)の暗号名。彼は米国秘密諜報機関「コントロール」で働くエージェントである。ある日、彼の前に悪の組織「カオス」が再び現れる。「カオス」の目的は、一瞬で着ている服を消滅させる”ヌード爆弾”を世界中で爆発させて世界を混乱に陥れようというもの。スマートは美人のエージェント22(アンドレア・ハワード)と共に「カオス」の本拠地へ向かう…

冒頭いきなりスカイ・ダイビングのシーンがあったり、捜査のためにオーストリアへ行きスキーを滑ったり(←セットだが・笑)、ラスト、ミサイル基地での格闘など、007などスパイ映画のパロディとしてプロットはちゃんとしており、ユニバーサル映画だけあって、実際のユニバーサル・スタジオでスマートがジョーズに襲われたりのドタバタもある。

だがまぁ、はっきり云って、しょーもない映画である(←ホメてるのだ・笑)。残念ながらオリジナルのTVシリーズの面白さには遠く及ばない。主役のスマートはオリジナルのドン・アダムスだが、それ以外は全然違ってて一番の問題は、キュートな相棒99も出てこないところだ。それに、コントロールの基地の入口である電話ボックスも出てこないし…。新型の電話はホッチキスだったり、書斎のデスクが乗用車に変わり街を走ったりとスパイグッズに面白いところもあるのだが、全体的にはちょっとね、というものであった。

Odoru1010083 オーストリアへ行き出会う美人エージェント34を、あの!シルビア・クリステルが演じている。原題は「ヌード爆弾」"The Nude Bomb"で、”エマニエル夫人”とくれば期待するなというほうが無理というものだが、じつはそーゆーエッチなシーンはちーーっともないのだ。
劇中、ヌード爆弾が爆発するシーンもあるのだが、ロンドンの守衛だったり、アメフトのフィールドだったりと男たちのいる所ばっかりなんである。ま、そういう意味での見所が少ないのが難なのであるよ(笑)

ぼくは最近60年代のTVシリーズを見たばかりだったので、本作の主役ドン・アダムスは老けたな、と思ったが、この映画が製作された1980年頃流行ってた(?)パンタロンで頑張ってる(音楽はラロ・シフリンで、テイストも80年代風) 。"Would you believe...?"とか"Sorry about that, Chief" などの決め台詞も出てきてオリジナルを知ってると笑えるところもある。

製作費はあんまかかってなくって、前述のオーストリアのシーンもセットで、そこで雪崩のシーンがあるのだが、この場面もどっかで見た事あるな?と思ったら「略奪された七人の花嫁」の雪崩のシーンを拝借していたのだ!

エージェント13(ジョーイ・フォーマン)は神出鬼没でどこにでも現れる。このことを知っていると今回のスティーヴ・カレル版「ゲット スマート」も楽しめる。

ホント、映画「ゲット スマート」は超面白い映画だ。ぼくは、本編を観てから過去のオリジナルを見直したが、それでギャグがわかったことも多く、予習の大切さを知ったのだ(大人になってもまだこんなこと言ってるよ・笑)

原題の"GET SMART"とは、主役の名前スマートにかけているのだが、「うまくやれ」とか「かしこくやれ」という意味である。過去アメリカのエリート金融マンたちは"スマート"にやってきたつもりが、今回サブプライム・ローン問題、リーマン・ブラザーズの破綻を機に、世界の経済にクラッシュを起こさせてしまった。"NOT SMART"やったね。
こういう”歴史的な”暴落で暗くなった今、映画「ゲット スマート」でも観て大笑いするしかないだろう、と思う今日この頃である。

【関連】
「ゲット スマート」
http://nobuyasu.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/get_smart_57db.html
「それ行けスマート」 Season 1
http://nobuyasu.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/dvd-get-smart--.html

The Nude Bomb (1980)

Dolby Digital
Aspect Ratio 1.85: 1
104mins
Region 1

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2008-06-02

「インディ・ジョーンズ・トリロジー」 DVD Indiana Jones The Trilogy

日曜日(6/1)の午後、初日(5/22)以来 2度目の「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」('08)を楽しんで来た。DVDになれば繰り返し観れるが、大画面、大音響での鑑賞は今しか出来ないのだ。それに香港では、設備の整ったシネコンで約1000円で観れるのだから、観なきゃソンでせう。

Odoru020608 評論家など玄人筋には、評価がイマイチの本作だが、ぼくにはたまらなく面白い映画である。こんなに何度も劇場へ足を運んだのは「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」(又の名を「まるこげアナキン」)以来である。

辛口の評価でよく書いてあるのが、前3作との比較、特にインディの老人化である。製作のジョージ・ルーカス(現在 64歳)、監督のスピルバーグ(61歳)、ハリソン・フォード(65歳)と、皆もう中年どころか、老年に差し掛かっている。ハリソン・フォードは日本人なら年金をもらえる年だ。なので、やめておけばよかったのに… という論調のものだ。(写真は「クリスタル・スカルの王国」のインディ)

けどねぇ… ぼくも、「レイダース/失われたアーク(聖櫃)」(エピソード24)(公開当時は、まだ"インディ・ジョーンズ"とついてなかった)から付き合ってる身としては、やっぱり面白い!と思うんだよな。ハリウッドのB級冒険活劇のテイストを持ちながら、A級の映画に仕上げたスピルバーグ以下の手腕はサスガだし、それは、この「クリスタル・スカルの王国」でも変わらない。第1作から4半世紀以上過ぎても、これだけ面白いものを作ってくれるのだから、凄いと思うよ。

時代設定が、前作「最後の聖戦」(エピソード25)の1938年からきっちり19年後なのだから、インディが年をとっていても矛盾はないし、今回は50年代のB級映画のテイストも少し味わえ、しかも後半の舞台は南米、アマゾンだよ!もう、ディズニー・リゾートの「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー」や「ジャングル・クルーズ」さながら、ジェット・コースターに乗ってる気分で楽しめる2時間。

「昔の名前で出ています」と言われようが、ヤング・インディではなく、アドベンチャー・オブ・オールド・インディ・ジョーンズだ、と言われようが、若いマット役のシャイア・ラブーフが全く"華"がない、と言われようが(←誰が言ってんの?あ、俺だ!)、面白いものは面白いのである。

今回、満員の観客席で楽しんだが、隣に座った12、13歳の西洋人の女の子4人組が、もう完全にアメリカのノリで、笑うは、叫ぶわで騒いでくれたので、余計に楽しめた。こんな若い子たちもホント楽しそうに観ているのを見て、やっぱりインディ・シリーズは、世界中の老若男女が楽しめる「娯楽映画」だよなぁと思ったよ(ヘビのシーンでは、女の子同士で、「インディ、苦手なんだよねぇ、ヘビ」と教えあってたな)。もー難しいことは抜きにして、ポップコーン食べながら、楽しんで見るのが一番とおじさんは思ったのだ。

ということで、気分よく映画館を出て、まんまのノリで、この色鉛筆の缶みたいなのに入ってる「インディ・ジョーンズ・トリロジー」のDVDを衝動買いして家に帰った。

夜、プレーヤーにかけてみたら、あらら、これは新たな特典映像がついてないじゃないか!?香港盤なので安かったが、本編だけだった…。なら、持ってるのに…。
調べてみたら、特典がついてるのは、「インディ・ジョーンズ/アドベンチャー・コレクション」というBOXだったのですな。ま、日本では、このスリムなスティール製の白いケースがついてない(応募でもらえる)らしいから、ま、いいか。

そのまま「レイダース/失われたアーク(聖櫃)」('81)をまた楽しんだが、みんな若くて、やっぱり面白い映画だった。当時、ルーカス 37歳、スピルバーグ 34歳、ハリソン・フォード 38歳。ついでに、マリオン役のカレン・アレン 30歳。カレンは、ジョン・ランディスの傑作「アニマルハウス」に出たばかり。脚本のローレンス・カスダンも名作「白いドレスの女」を世に出す直前だった。そういった、若い才能が集結して作ったそれまでになかった、というより、長年ハリウッドで製作されなかった正統派娯楽映画の傑作、それが「レイダース」だった。

この映画を(確か)有楽座で観た帰り、「これで007は終わったな…」と思ったものだ。その後、007は確かに失速したが、「カジノ・ロワイヤル」('06) (別名「右の玉も打ってくれ!」・笑)は見事な傑作で、今後期待が高まっている。今年、復活した「インディ」は、大ヒットしているので、もう一本製作される可能性もある(パラマウントとの契約は5本だったという)。それを、観たいような、(ちょっと)観たくないような、こそばゆい感じの自分が、今、心の中に居るというのが正直なところなのである。

(「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」ぼくのレビュー↓)
http://nobuyasu.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/indiana_jones_a_b93d.html

「ロスト・ジャーナル・オブ・インディ・ジョーンズ」(インディの"失われた"日記)
http://nobuyasu.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/the_lost_journa_86c6.html

INDIANA JONES THE TRILOGY

(カバーアートは英国版。the Adventure Collection と書いてあるところに香港版は The Trilogy と書いてあるのだ)

Indiana Jones and the Raiders of the lost Ark (1981)  115mins
Indiana Jones and the Temple of Doom (1984)  119mins
Indiana Jones and the Last Crusade (1989)  126mins

Dolby Digital 5.1
2.35: 1 Aspect Ratio
Region 3

(日本発売版)

B0015U3N5Sインディ・ジョーンズ アドベンチャー・コレクション (期間限定生産) [DVD]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 2008-06-06

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2007-12-25

「ブレード・ランナー」Blu-ray (5-Disc Ultimate Collector's Edition)

出たーっ!「ブレード・ランナー」のBlu-ray Set。日本では「製作25周年記念 アルティメット・コレクターズ・エディション・プレミアム(5枚組)」としてDVDが発売になっているのと同じもののアメリカ盤である。

銅鑼湾のHMVで見つけたので買った。限定版ということだが、ぼくのは097710/103000番。1万かと思ったら10万!だった。10万3000セットも作って何が限定版なんやっ!?(笑)

このゼロ・ハリバートンのアタッシュケースを気取ったプラスチックの箱を開けると、中にはディスク5枚が入ったBlu-rayケース(下の写真)。「スピナー」のミニカー、「ユニコーン」のフィギア、チェンジング・レンティキュラー(透明の板の間に写真が入ってて角度を変えると動くもの)、ファイルに入ったシド・ミードの絵コンテ、リドリー・スコットからの手紙(薄いプラスティックの透明板に印刷されている)が入っている。

11月16日付「未知との遭遇」30周年記念盤DVDのこのブログで「ぼくは買わないと思う」と書いてて買っちまったので、両方読んでくれてる人には「なんでやねん!」とツッコまれてていると思うが、言い訳すると、Blu-rayだし、英国の雑誌の大特集を読んで買う気になっちまったのだ。「ブレード・ランナー・ファイナル・カット」は"21世紀の最も先取りしたDVDリリースである"とか、リドリー・スコット監督の言葉で "I KNEW I'D MADE A MOVIE THAT WAS SPECIAL ..."なんて記事を読み、「ファイナル・カット」は、監督自身がオリジナル・ネガから見直し、Hi-Def用に監修し、監督自身最も納得した出来だと聞くと、とても見たくなったのであった。

で、「ファイナル・カット」である。オープニング・シーンを際立たせる為にあえてブラックボードにしたという地味なタイトル・バックが終わり、2019年のロスアンジェルスの夜景を見た時に、俺は唸った。まさにスペキュタキュラーな奥深い映像、色、そして音!監督自身が納得したという意味がよくわかる。その後も、タイレル社の光輝く社屋、猥雑な市街が強烈なインパクトで迫る。映画館とはまた違った意味での、おそらく初めて体験する、ディスクによる映像の現時点での最高の到達点ではなかろうか。これが25年前のものなのか?と首をかしげたくなるほどの”新しい”映像に感じられる。これぞ究極のファイナル・カットであろう。

ありがたいことに、「ファイナル・カット」(Disc 1)のみだが、日本語字幕がついている(音声解説も)。
他のディスクは、

Disc 2 ドキュメンタリー「デンジャラス・デイズ:メイキング・ブレード・ランナー」
Disc 3 1982年劇場公開版、1982年インターナショナル版、1992年ディレクターズカット版
Disc 4 Enhancement Archive(フィリップ・K・ディックのインタビュウやスクリーン・テストなど様々なアーカイヴ)
Disc 5 ワーク・プリント版

となっている。ファイナル・カットを観た後では、今までのヴァージョンは、Blu-rayでも映像が際立っているとは言えず、ディレクターズ・カットはぼくは昨年発売のリマスターDVD(香港版:これも日本語字幕付)を持っているが、あまり印象が変わらない。
今回初めて出たワーク・プリントだが、興味深かったのは、ラストがファイナル・カットなどと同じだったこと。ただ、レストアされてないのか画質がもう一つで、何か試合前のスパーリングを見せられてるみたい。一昔前のUWFじゃないんだから…という感じかな(笑)

ぼくが買った「アタッシュケース」は、HK$760(11,400円)もした。香港では、ディスクのみ Blu-ray 5枚組も売っており、こちらはHK$350(5,250円)。はっきし言って、ディスクのみ版でもよかったかも…おまけがついて値段が倍もするほどこのおまけに魅力は感じなかったよ。

大学生の時、学食で後輩がくれた一枚の試写会状、それが「ブレード・ランナー」だった。会場の渋谷パンテオンでもらったプレス・シートには、スピナーの写真が大きくフィーチャーされ、観る前は”メカがかっこいいSFもの”かな?と想像した。が、観終わって思った。リドリー・スコットは「エイリアン」で、SF の名を借りたサスペンス・ホラーを作り、今度はSFの名を借りた凄いハード・ボイルドを作ったな、と。そして、かつてないダークな世界を創造して見せてくれたのに、ラストの緑の自然のハッピー・エンディングで台無しやな、とも…
果たして、映画はコケてしまったが、この作品はビデオ化されて蘇る。「劇場公開は失敗したが、ディスクで大成功した」最初の作品として歴史に名を残すことになる。世界中のこの映画に魅せられたコアなファンの後押しで、その後の様々なヴァージョン誕生と相成ったわけである。
映画興行の形態が、劇場公開だけではなくなった草創期に、この映画が製作されたのは、ある意味歴史の必然だったのか、と25年の時を経て思う。

このディスクはぼくには<映像の>クリスマス・プレゼントとなった。お薦めの一品である。

Blade Runner (1982)

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2007-11-10

「シャイニング」DVD Special Edition (2-Disc)

スティーヴン・キング原作、モダン・ホラーの傑作「シャイニング」である。Box Set 「スタンリー・キューブリック・コレクション」を買ったのもこれが欲しかったから。当地香港では単品でも売っているのだが、コスト・パフォーマンスの面と、「フルメタル・ジャケット」だけは単品で発売されなかったのでBoxを買ったのだった。

前回、前々回のDVDはスタンダード画面だったが、今回は、ワイド・スクリーン版。リマスターされた画面は傷一つなくとってもキレイ。ホテル内のシーンなどは何か奥行きを感じる。
ただ、99年発売のスタンダード画面と比べて見たら、冒頭のヘリコプターからのショットで "A STANLEY KUBRICK FILM" とタイトルが出る直前、撮影のヘリの影が映ってたのだが、これが消えていた。あと、ホテルの全景のシーンも画面の上にプロペラ(だろう)が映っているのが目立たなくなってる。となると、スタンダードの画面に上下をマスキングしたものなのかな?と思ったりしているが、果たしてどうだろう。

99年発売のものは、スタンダード+モノラル。01年のはスタンダード+サラウンド。で、今回ワイド・スクリーン+サラウンドと進化を継げたわけだが、もっと早くここまで出来たであろうに…と思う。
特にスタンダードでの先述の「ヘリの影」など、こだわりの強いキューブリック監督がよく発売を許したと思うのだ。

コロラドの山中にあるホテル。冬の間クローズされるこのホテルの管理を請け負った小説家志望のジャックは、妻と息子のダニーを連れてこのホテルに移り住む。幼い息子ダニーは、時々心の中に住む小さな子供トニーと話をし「シャイニング」という見えないものが見える能力を持っている。このホテルでは、冬場の管理人が一家を惨殺したという暗い過去があった。ダニーには双子の女の子や、血が吹き出るエレベータなどが段々見えてくる。閉ざされた空間の中、次第に精神を病んで行くジャック。そして…

主人公を演じるジャック・ニコルソンは、そうでなくとも狂気の演技をする役者なのに、この映画では正にモンスターと化す。
この映画の怖さが他のホラー映画と違うところは、生身の人間が精神を病み、凶暴になったあげく家族にその牙を向けるところである。それは、ゾンビでもジェイソンでもブギーマンでもチャッキーでもない、それまでは普通のお父さんだった人間が豹変するところなのだ。
ぼくは80年の公開時映画館でこれを観た(確か丸の内ピカデリーだった)が、当時大学生で、ちっとも怖くなかったのだが、その後社会人になり、結婚して子供が出来、見直したらもう本当に怖かった。
これは、現代において、どこの家庭でもありうることなのだ。父親が選んだ仕事、その責任感と重圧、そして自分のプライドとは裏腹に女房子供を食わすために納得できない仕事をこなさなければならないという無力感、さらに社会に認められていないと感じる疎外感、そんな様々な男の持つぐちゃぐちゃとした思いが爆発するところに恐怖を感じるのである。
もちろん現実にはぼく自身はそんな「破裂」はなかったが、現代の先進国ではよく耳にするDV(ドメスティック・バイオレンス)。この映画はそんな時代を予見したものだったような気がするのだ。

今回新録されたメイキングで、スピルバーグはニコルソンの演技を「歌舞伎のようだ」と表現した。これは、確かに西洋人から見たらそうかも知れんなぁ、と妙に納得した。

ステディカム撮影の、三輪車で、ダニーがホテル内をぐるぐる廻るシーン。板の間のうるさい音と、絨毯を踏んだ時の無音が、それだけでこんなに効果を上げるものかと思った。
マーティン・スコセッシが言うように「キューブリックの映画は1本で他の映画10本分の価値がある」と思う。何度観ても新たな発見がある。
だから、映画業界の人々に尊敬され、ファンが多いのだろう。まさに"Artist's Artist"だね。

All Work And No Play Makes Jack A Dull Boy.

Shining (1980)

追記: 書き忘れたが、この盤は143分ヴァージョンなり。

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2007-10-21

「トワイライト・ゾーン/超次元の体験」DVD

Twilight Zone - The Movie

映画「トワイライト・ゾーン」のDVDアメリカ盤が発売された。表紙に"First Time on DVD!"というシールが貼ってある。初めてというより、やっとDVD化されたのだ。コアなファンには待ち望んだ発売だろう。

なぜDVD化されなかったかは定かでない。1983年の作品で、レンタル・ビデオにはすぐになったが、なぜか今日までDVDにはならなかったのだ。「トワイライト・ゾーン」らしい謎?である。

今回は、新たにデジタル・トランスファー、5.1ch ドルビー・デジタルにリニューアルしての登場である。特典映像は、予告編のみ。
撮影中にビック・モローと二人の子供が亡くなった悲しい事故があった為、メイキング他の映像は遠慮したのだろうか。

公開当時夢中になった映画なので、冒頭の"ミッドナイト・スペシャル"を車中で唄うダン・アイクロイドとアルバート・ブルックスの場面から懐かしかった。そして、今見ても結構面白い。ジョン・ランディス、スティーブン・スピルバーグ、ジョー・ダンテ、ジョージ・ミラーと当時<人気>の監督たちのオムニバス。
ジョン・リスゴーが出る4番目のエピソードを観て、友人が「飛行機乗るのが怖くなった」と話してたっけ。

マンハッタン・トランスファーの初めての日本公演(83年 中野サンプラザ)に行ったら、オープニングで「トワイライト・ゾーン」のイントロが流れたのをなぜか思い出した。アルバムにも曲があったが、流行ったんだよな、確か。

ワーナーだから日本版もいつか発売されるだろう。出来たら、パッケージ変えた方が良いかもね。鬼太郎の目玉おやじが出てる映画かと思ったから(笑)

Twilight Zone The Movie (1983)

Widescreen, English Dolby Digital 5.1, 101mins

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2007-07-22

『ザッツ・ダンシング!』 DVD

(Approved by Amazon.com)

映画『ザッツ・ダンシング!』のDVD (Region 1) が今月(Jul/'07)発売された。あの『ザッツ・エンタテインメント』のジャック・ヘイリー・ジュニアが、ジーン・ケリーと再び作ったアンソロジーである。今回は、MGMのみならず、RKO、20世紀フォックスなどの映画会社のダンス・シーンも入れてダンスの歴史をひも解いていく。

ホスト解説は、ジーン・ケリー、サミー・ディビス・ジュニア、ライザ・ミネリ、ミハイル・バリシニコフ、レイ・ボルジャーの5人。
本DVDの特典映像のインタビュウでジーン・ケリーはこう語る。「この映画の意義は、子供たちにダンスのスタイルを見せてあげられることだ。映像で見れば一目瞭然だから。」そう、この映画はダンスを志す若い人にこそ観てほしい映画である。

ビル・ボージャングル・ロビンソン、フレッド・アステア、ジンジャー・ロジャース、ジーン・ケリー、ニコラス・ブラザーズ、エレノア・パウエル、シャーリー・マクレーン、ジョン・トラボルタからマイケル・ジャクソンまで、正にダンス・ダンス・ダンスである。

まぁ、そうはいっても、正直言って映画の出来は60点くらいなんだよなぁ…興行的にもパッとしなかったためか、日本では、LDにもDVDにもなっていない。僕は輸入版のLDを持っていたが、トリミングのダメダメ皿だった。今回のDVDは、嬉しいことにレストアされワイド・スクリーン(2.35:1)になり、音声も5.1chサラウンド!になっている。

この映画のハイライトは、ビル・ボージャングル・ロビンソンや、『オズの魔法使い』の案山子(レイ・ボルジャー)のカットされたシーンかも知れない。けど、僕にとってのハイライトは『遥かなるアルゼンチン』のニコラス・ブラザーズであった。これを上回るのは、(『ザッツ〜』シリーズで使ったものを除けば)パラマウント映画『ブルー・スカイ』('46)でのフレッド・アステアの(最高のタップ!)"プッティン・オン・ザ・リッツ"があるじゃないか、と思っているが、残念ながらここには入ってない。これが入っていればこの映画の評価もあと10点上がっただろうに、とマジで思う。これぞ、That's Dancing!! なのに。

この映画の功罪は、もしこの映画がなかったら、『ザッツ・エンタテインメントPART3』はもっと充実したものになったはずだ、と思わせるところだろう。
今回のDVDは日本でも発売してほしいなぁ。ワーナーだから、もし、980円になったらとってもお買い得感があると思うけどね。

That's Dancing! (1984)

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2007-07-19

『ザナドゥ』 DVD

(Approved by Amazon.co.uk)

最近、Softbankのキャメロン・ディアスのTVCMで、映画『ザナドゥ』の曲が流れている。40歳前後の世代がターゲットなのかな?この前は、ノーランズの "I 'm in the mood for dancing"が流れてたからな。
1981年当時、この映画"XANADU"が公開されるちょっと前まで、六本木に同じ名前のディスコがあった。僕らは「キサナドゥ」と呼んでいた。今考えると、経営者が読み方を間違えたのか(?)と思うが、当時は有名なディスコだったので、逆に『ザナドゥ』と読む方が違和感があったのだった。
本作は、『グリース』で大成功した後のオリビア・ニュートン・ジョン主演。脇をあのジーン・ケリーが埋めるというので、当時オリビアのファンだった僕としては、見ざるを得ない(そんな大儀な!)映画として勇んで行った。が、劇場はスカスカで、早々に終わったと記憶している。
映画としても面白いものではなく、唯一見れたのはジーン・ケリーの、『いつも上天気』で見せたような軽やかなローラースケートと、オリビアと踏むタップ・ダンス(オリビアの顔は引きつってたが)くらいであった。
1985年、American Film Institute がジーン・ケリーを表彰するパーティで、オリビアも挨拶して、「私もジーン・ケリーと踊ったのよ!」とはしゃいで話してたけど、「あんたは踊ったうちに入らん!」とTVにつっ込んだのを思い出す。
このDVDは、2004年発売の英国版。アスペクト比 1.85:1、サラウンド。特典は、予告編のみ。HMVのセールで買った。
ジーン・ケリー最後の"ひと踊り"なので、持っておく価値があるというものである。

Xanadu (1980)

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2007-06-24

『ボディ・ダブル』 DVD スペシャル・エディション

Bodydouble アメリカでは、カルト・スリラーとして人気(?)がある『ボディ・ダブル』がスペシャル・エディションとして昨年('06)発売された(Region 1)。

ブライアン・デ・パルマ監督が『スカーフェイス』の後に製作・監督(脚本も)したものだが、公開時、批評もぼろくそで、興行成績もパッとしなかったと記憶している。だが、僕は劇場で観たときからこの映画が(実は)好きで、今回のリマスター、5.1Dolby Digital版を見つけたとき嬉しくてすぐ買ったのであった。

「Body Double」とは、映画の用語で、吹替えとか、替玉のこと。主人公は、LAで、B級ホラーの吸血鬼を演じているが、閉所恐怖症のため、棺桶の中で演技が出来ないという冴えない男(クレイグ・ワッソン)。彼が演技学校で知り合った男(グレッグ・ヘンリー)から、要塞の様な家の留守番を頼まれ、そこの窓から覗き見した隣家の美しい人妻(デボラ・シェルトン)が恐ろしい事件に巻き込まれていくのを目撃する…というもの。

監督自身も認めているが、ヒッチコックの影響からポルノ映画まで、彼が好きな世界をぶち込んだ映画である。『裏窓』、『めまい』の引用から、B級映画、ポルノ映画の裏側、オーディションやら俳優学校の様子、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのミュージック・ビデオばりの"Relax”まで、ごった煮の様相。デ・パルマの個人的なおもちゃ箱(だからカルトになった)とでも呼ぼうか。

主人公を演じるクレイグ・ワッソンは、これほど<華のない>主役がいただろうか?というほど最後まで魅力を感じさせない(『コーラスライン』の主演女優と同じ位華がない)。それに、役柄もダメな奴で、突っ込みどころ満載である。それとは打って変わって、ポルノ女優を演じるメラニー・グリフィス、映画初出演の人妻役デボラ・シェルトンは大層魅力的であーる。

メラニーは、元夫スティーヴン・バウアーが『スカー・フェイス』に出演した関係で、ブライアン・デ・パルマと知り合いだった。ある日、この映画のポルノ女優ハリー役を捜している(当初、デ・パルマは本当のポルノ女優を採用しようとした)と聞き、「あたしはどう?」と売り込み、出演を決めた。
実の母親が『鳥』、『マーニー』のティッピー・ヘドレンである。ヒッチコック好きのデ・パルマにとっては、彼女をこの映画で使うのは運命だったのかも知れないね。

このDVDには、監督のデ・パルマはじめ、メラニー・グリフィス、グレッグ・ヘンリーなどがインタビュウに答えるメイキング(4つのパートに分かれている。合計約50分)がついている。だが、主役のクレイグ・ワッソンだけが出ていないのがとても不自然で不思議だ。彼にとっては、唯一のメジャー映画の主役だというのに。こっちの方が映画よりミステリーだわさ。

Body Double (1984)

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2007-06-23

『スカーフェイス』DVD プラチナ・エディション

AFI (American Film Institute) がアル・パチーノをライフタイム・アチーブメントに選び表彰したという報道を読んだ。彼の出演作は数々あれど、代表作と言っていい一本にブライアン・デ・パルマ監督の『スカーフェイス』がある。

キューバからアメリカに渡った青年、トニー・モンタナ(アル・パチーノ)が暗黒街でのし上がって行く姿を描く、2時間50分の大作。

いわずと知れた、ポール・ムニ主演、ハワード・ホークス監督『暗黒街の顔役』('32)のリメイク。設定を、キューバからの麻薬の密輸に変更し、マイアミを舞台にしたのは、シドニー・ルメットのアイデアだった。それを脚本にしたのは当時金に困っていたオリバー・ストーン。ルメットの降板から、お鉢が廻って来たのがデ・パルマなんだそうである。

20代の頃、会社帰りに日比谷の映画館で観て、"The World Is Yours" なんて言葉で自分の上昇志向を鼓舞したものだが、トシをとって改めて鑑賞したら、粗野な成り上がりで、大物になっても粗野なまんまの男の話だったのだな、と思った。パチーノは 品がなくて、小心者が故の凶暴性を持った男を上手く演じている。それも気に障るようなキューバン・アクセントで。

このDVD(Region 1)は、2枚組で、昨年('06)に発売されたもの。なぜ昨年これが登場したのかというと、同時期にゲーム版『スカーフェイス』(X Boxだと思う)が発売されていたのでその関係か、と推察する。

画像はデジタル・リマスター、音声はDTSになっている。
特典映像は、削除されたシーン(20分以上)、ゲーム版のメイキング。映画のメイキング(トニー・モンタナの世界、他。プロデューサー、監督、脚本、出演者のインタビュウ)

一番笑ったのは、アメリカのTVでこの映画の放送が決まったときに、残虐なシーンとセリフの手直しをした話。本編中"ファ●ク"という言葉が200回以上!も出てくるので、これをきれいな英語に直して、それをまたパチーノ他出演者に吹替えてもらったのだと。どうせなら、その本編を特典映像でいれてくれればと思った。"紳士"なトニー・モンタナも見てみたかったな。

このDVDは、ボーナスとして、画面の下に何回"ファ●ク"と言ったか、何発弾を撃ったか、のカウンターが出るのだ。で、何発だったかって?F---ckは223回。弾は2049発でした。ハワード・ホークスに捧げたのはこれだったのか…!?

Scarface (1983)

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