映画 1970年代

2014-04-04

ブルーノ・マーズ香港公演 Bruno Mars Live in Hong Kong 2014 と 「アメリカン・グラフィティ」 American Graffiti

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高一の娘が春休みで香港へ戻って来た。今回一番の目的はブルーノ・マーズの香港公演を見るため(Bruno Mars "The Moonshine Jungle Tour" Live in Hong Kong 2014)。

3月29日(土)の香港はラグビー・セブンスで街中が沸いていたが、ブルーノのコンサート会場Asiaworld Expoも大盛り上がり。お父さんのぼくも久しぶりにええもん見せてもろたよ。ブルーノの曲は、ロックンロール、ドゥアップ、ゴスペル、ソウル、ディスコなどが融合したフュージョンで、だからぼくのようなおっさんでも聞き心地が良いのだろう。それにトランペットなどホーンセクションの奴らと踊るのがカッコいいったらない。声も良いし歌もうまい。ギターもドラムも上手。それに踊りもつくのだから、若い女子がキャーキャーいうのもわかる。

"Do you love me?"と観客に歌わせといて、"I love you"とブルーノが応えると、会場は黄色い声援で大変なことになった。そして、"I love you so"といきなり歌い踊る"Runnaway baby"のカッコよさ。ラストの"Just the way you are"もイイ。アンコール入れても2時間ほどのコンサートだが(だってまだアルバム2枚しかないんだもん)、娘は充分満足して家路についた。

家に帰ってから、ブルーノが山下達郎が好きだと聞き「はぁ?」と思ったが、父親に「On the Street Corner」という達郎のアカペラ・アルバムを聴かされて好きになったのだと。さっそくCDを引っぱりだして聴かせたら気に入ったようで、「もっとこの手の音楽を聴きたい」という。ならば、オールディーズがいっぱい聴ける映画があるから見ようとなって「アメリカン・グラフィティ」"American Graffiti"を観ることになったのだ。

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1973年に製作されたこの(通称)「アメ・グラ」は、当時の日本でもヒットして、今でも人気のある青春映画だ。大学へ行くことに決めた高校生の、故郷から旅立つ前日のたった一晩の話。全編カーラジオから聞こえてくるのは、DJウルフマン・ジャックが紹介するフィフティーズの名曲の数々。4人の男子と3人の女子のそれぞれの一夜をスケッチ風に描いた若きジョージ・ルーカス監督の傑作。

ぼくがこの映画を初めて観たのは、確か高一か高二の時。地元の名画座(たぶん福山グリーン劇場)で観たと思う。その映画をBlu-rayで、高一の娘と観ることになるとは思ってもみなかったよ(笑)。香港で売ってる本作のBlu-rayは日本語字幕がついていたのでありがたかった。

ビル・ヘイリーの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」に始まり、「シクスティーン・キャンドル」「悲しき街角」「シーズ・ソー・ファイン」「シー・ユー・イン・セプテンバー」「サーフィン・サファリ」「煙が目にしみる」「グレート・プリテンダー」「ジョニー・ビー・グッド」……キラ星の如くオールディーズ・バット・グッディーズの曲が入ったサントラ盤も何度聴いたことか。ウルフマン・ジャックの声も入ってて、当時画期的なサントラだった。LPを広げたら一枚の絵になってたのも洒落てたね。

映画音楽として全編既製の曲を使うということ。特にストーリーはなくて、いろんなエピソードをつなげていって一本の映画にする。エンディングで出演者のその後を知らせる。こういった手法は「アメ・グラ」以前にはなく、全てここから始まった。「グローイング・アップ」も「グリース」も、はたまた北野武の「キッズ・リターン」も「アメ・グラ」がなければ産まれてなかったかもしれない。

低予算の作品なのでキャストの面々は殆どみんなこれが映画デビュー。だーれも知らないから、余計にリアルで、映画を観終わった後「あいつらとダチになりてぇな」と思ったものだ(笑)
だが、ほぼ40年を経て、リチャード・ドレイファスは「グッバイ・ガール」でアカデミー主演男優賞に輝きスターに。チャールズ・マーティン・スミスは「アンタッチャブル」など味のある脇役となった。ロン・ハワードは「ビューティフル・マインド」でアカデミー監督賞に輝き(頭もすっかり禿げてカガヤキを増しているが・笑)、2013年には「ラッシュ/プライドと友情」という佳作を送り出す名監督となっている。
撮影当時大工をしていたハリソン・フォードはこの映画で俳優復帰、そしてハン・ソロとなり、ついにはインディ・ジョーンズになっていく。
監督のジョージ・ルーカスは、前作「THX-1138」の興行的な大失敗から、この青春映画に賭け、そして成功を納め、「スター・ウォーズ」に取りかかることが出来た。この映画の卒業生はその後大成功した人が多い。
ただ、一番目立ってたジョン・ミルナー役のポール・ル・マットは、その後もうひとつなのが残念。覚えてるのはあの〈脱力した〉「アメリカン・グラフィティ2」くらいか…。ぼくは昔、映画の彼をまねてタバコをTシャツの肩のところへひっかけてたのにな(←それがどうした・笑)

娘がローリー(シンディ・ウィリアムス)が着てるアイビー・ファッションは「今流行ってる」と騒いでた。男子もコッパンやギンガムチェックのボタンダウンなど、アメカジもこの映画から学んだ。そういう人も多いと思う。フォード・T-Birdや、シボレー・インパラなど当時の車が出て来るのも車好きにはたまらんだろう(ちなみにジョンの乗ったフォード・デュース・クーペのナンバープレートは"THX-138")。どれもこれも、ベトナム戦争直前で、ビートルズ(英国のロック)が全米を席巻する前の、アメリカが輝いていた1962年の夏のこと。アメリカの観客がノスタルジックな気分になるのもうなずけるし、だからこそ戦争の悲惨さがラスト・クレジットで際立つのだ。

自分の青春時代に観て夢中になった映画のことを書くと、思い出話ばっかりになってしまうな(苦笑)。今回久しぶりに観ても、やっぱりイイ映画だった。娘も面白かったと喜んでくれた。人間はとどまらず旅立つことで大人になり成功出来ることを教えてくれる名作。そーいえばあの当時、日本でもFENでウルフマン・ジャックが聴けたなぁ…。あー、やっぱり止まりそうもないから今日はこの辺で!

American Graffiti (1973)
Directed by George Lucas, Produced by Francis Ford Coppora
Cast: Richard Dreyfuss, Ron Howard, Paul Le Mat, Charles Martin Smith, Cindy Williams, Candy Clark, Mackenzie Phillips, Wolfman Jack, Harrison Ford
Duration: 110mins

04-Apr-14-Fri by nobu

2012-08-15

「トラ・トラ・トラ!」TORA! TORA! TORA! [Blu-ray] USA盤(ニュー・デジタル・リマスター)

Tora! Tora! Tora! [Blu-ray Book]
Tora! Tora! Tora! [Blu-ray Book]

昨日(2012年8月14日)、TV東京の午後のロードショーで映画「トラ・トラ・トラ!」"TORA! TORA! TORA!"が放送された。8月15日は同じ舛田利雄監督の「大日本帝国」が放送と終戦記念日特集である。ぼくがまだ若かりし頃はこのように終戦の日には戦争を扱った映画がよく放送されたものだが、あれから67年も経つと風化していくのが怖い。

今、東京の大学へ通ってる息子が香港へ帰って来てるので、そんな話をしていたら「トラ・トラ・トラ!」を観たことがないという。ならばと夕食後、USA版ブルーレイを出して鑑賞したのだった。

このUSAヴァージョンは、2011年12月6日に発売されたニュー・デジタル・リマスター版(アメリカでは初のBlu-ray化)。パッケージがBookになっており、製作過程の写真などが見れて面白い(日本艦隊のミニチュアは意外に大きなもので、製作費を豊富にかけた大作らしいと思った)。

ぼくは以前にも書いたが、「トラ!ファン」の一人で、DVDは3セット(日本版、USA版)、ブルーレイも既に40周年記念日本版を持ってるのだが、今回のニュー・デジタル・リマスターは「ちょーきれい」と聞いたので、またまた購入したのだった(苦笑)

で、結論から言うと、キレイはキレイなのだが、コントラストが強すぎるのか、あの夜明け前の零戦が離陸して行く名場面が真っ黒でなーんも見えないという事態になっちまってた。この辺りの調整は効かなかったものか?残念であった。

このUSA盤だが、日本のプレイヤーにかけると日本語吹替・字幕で見れる。日本・アメリカ公開版がそれぞれ入っており、特典映像は既発売と同じもの。

さて映画そのものだが、何度観てもその面白さは変わらない。1970年製作当時、まだCGがなかったので、ほぼ全ての映像は実物もしくはそれに近いもので撮影された。その迫力は今観ても力強いものを感じる。

興行的には(アメリカでは)「クレオパトラ」同様大コケして20世紀フォックスの屋台骨を揺るがせた。黒澤明の降板劇もあり、製作そのものも迷走したハリウッド大作。

クレジットを頑なに拒んだが、脚本は紛れもなく黒澤明のもの。日本軍部の心ある軍人と、心ない軍人の対比。戦争を望まない天皇陛下に拝謁する、日米戦争を回避したかった連合艦隊司令長官山本五十六。暗号解読により、日本大使館より早く宣戦布告をわかっていたにも関わらず、それをハワイに伝えられなかったアメリカ側の落ち度。レーダーに映った日本の零戦部隊をB29と間違えた通信部。奇襲前の潜水艦発見の知らせを「確認(Confirmation)が先」とのんきに構えていたパールハーバーの少佐。一番重要な日本からの電文解読に手間取った日本大使館の役人たち…。

あの無謀な戦争は回避出来たのか?それはわからない。ただ、日米開戦は〈ヒューマン・エラー〉の積み重ねが招いた悲劇だった。見終わった時、息子が「むなしい気持ちになる映画だね」と云った。その気持ちを覚えていて欲しいな、と願った父だった。

TORA! TORA! TORA! (1970)

15-Aug-12-Wed by nobu

B005OOSPZO Tora! Tora! Tora! [Blu-ray Book]
20th Century Fox 2011-12-06

by G-Tools
B0067XIJIO トラ・トラ・トラ!(ニュー・デジタル・リマスター版) [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2012-02-03

by G-Tools
B002PHBIKW トラ・トラ・トラ!(製作40周年記念完全版) [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2009-12-04

by G-Tools

2012-05-14

「フェリーニのアマルコルド」オリジナル・サウンドトラック [CD] & NYフィルの演奏 Federico Fellini AMARCORD

B0071VAZ1K フェリーニのアマルコルド (1974年作品) (Amarcord) (Huit et Demi) [日本語帯付輸入盤]
ニーノ・ロータ
CAM Original Soundtracks / King International 2012-02-20

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フェリーニのアマルコルドのCDが再発売された。Amazonで発見したのですぐに注文して取り寄せた。

映画のレビューは以前書いたが(→「フェリーニのアマルコルド」DVD)、この映画のキモは、ニーノ・ロータの甘美な音楽にある。このテーマ曲の旋律を聴くと心が少しキュンとする。たった30分ほどしかないが、これは原盤がLP時代の録音だから仕方がないのだろう。音は悪くない。1974年の作品だから、ノスタルジックな気分にもなりますな。

先日Hong Kong Recordのジャズ・クラシックのコーナーへ立ち寄った時、モニターに映ったオーケストラの演奏に足が止まり、目が釘付けになった。流れて来るのは「フェリーニのアマルコルド」その曲に合わせてフェリー二映画の名場面のスティルが映し出されていたのだ。

「なんじゃこれは!?」と、レジの横に飾ってあるDVDを見たら、"Andrea Boccelli - Concerto: One Night in Central Park"というものだった。日本でも「アンドレア・ボチェッリ- 奇蹟のコンサート~セントラルパークLIVE」として発売されている。

このニューヨーク・フィルの演奏はとろけるよ(指揮:アラン・ギルバート)。いっぺん聴いてみなはれ。

Federico Fellini AMARCORD (1974)

11-May-12-Fri by nobu

B004CGUC06 Amarcord (The Criterion Collection) [Blu-ray]
Criterion Collection 2011-02-08

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B005S1Y494 奇蹟のコンサート~セントラルパークLIVE [DVD]
アンドレア・ボチェッリ セリーヌ・ディオン デイヴィッド・フォスター アナ・マリア・マルティネス
ユニバーサル ミュージック クラシック 2011-12-21

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奇蹟のコンサート~セントラルパークLIVE(初回限定盤)(DVD付) 奇蹟のコンサート~セントラルパークLIVE(初回限定盤)(DVD付)
クリス・ボッティ アンドレア・ボチェッリ セリーヌ・ディオン アナ・マリア・マルティネス ブリン・ターフェル プリティ・イェンデ トニー・ベネット

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2011-11-09

映画「猿の惑星」シリーズ [Blu-ray] Planet of the Apes - Movie Series

 

猿の惑星 コンプリート・ブルーレイBOX (初回生産限定) [Blu-ray]
猿の惑星 コンプリート・ブルーレイBOX (初回生産限定) [Blu-ray]

映画「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」"Rise of the Planet of the Apes" ('11) が公開になり、それに伴い旧シリーズがブルーレイになった。これを機会に全作を順番に観てみようと思い、日本版のボックスを買い求めた。

さすがにブルーレイだけに画像も音響もキレイだ。惜しむらくは吹替えが第一作のみのところ。音源がないので仕方ないのだろうが、もし吹替えが全てあれば究極のボックスとなったろうに(欲を云えば、ジーラはTBSでやった時の中村メイコでもう一回観てみたいね)。

猿の惑星 [Blu-ray]
猿の惑星 [Blu-ray]

「猿の惑星」"Planet of the Apes" ('68) 第1作は、1960年代のSF映画の大傑作として、今も人気があるのはうなずける。ラスト・シーンの衝撃は、知っていてもやはりショックなものだから。

宇宙船が不時着したのはどこの惑星なのか?その砂漠の不気味さ。やがて原住民に会い、猿による人間狩りに遭遇する。テイラー(チャールトン・ヘストン)は、そこで喉を撃たれ声が出ないという設定はうまい。やがて声が出た時に「この薄汚い猿どもめが!(Take your stinking paws off me, you damned dirty ape!)」と叫ぶところが効いてくる。

最後にテイラーは、ゼイウス博士(モーリス・エヴァンス)の忠告も聞かず、〈セクシー衣装の〉エヴァ(リンダ・ハリソン)と馬に乗り、”危険地帯”へと行く。そこでテイラーが見た物とは…。

20世紀フォックス社は、60年代後半、巨額の製作費をかけた大作ミュージカル「スター」「ハロー・ドーリー」などの興業不振にあえいでいた。そこで浮上したのが「猿の惑星」の続編製作。当時、続編を作ることは当たり前ではなく、チャールトン・ヘストンも出演に難色を示したという。監督は1作目のフランクリン・J・シャフナーに代わり、後に「ダーティ・ハリー2」を撮るテッド・ポスト。

原作のピエール・ブールらが続編のアイデアを出したが採用されず、結局、プロデューサーのアーサー・P・ジェイコブスは、イギリス人の脚本家ポール・デーンを採用する。結果的に、この決定がシリーズの「味付け」に多いに影響するのである。当時のアメリカはベトナム戦争の最中で、人々は疲弊し、人種差別も根強く残っていた。英国人であるデーンは遠慮なくそれを「猿の世界」に置き換えて描こうとした。

続・猿の惑星 [Blu-ray]
続・猿の惑星 [Blu-ray]

「続・猿の惑星」"Beneath the Planet of the Apes" ('70) は、第1作のラストシーンから始まる。"危険地帯"に入って行ったテイラーとノヴァ。そしてテイラーを捜して、ブラント(ジェームズ・フランシスカス)の乗った宇宙船もまた不時着する。危険地帯では、地下で生き残った人類たちが、あろうことかコバルト爆弾を神とあがめ生きていたのだ。

製作費が前作の約半分(250万ドル)と減らされた関係で、そのしょぼさは明らかだ。クライマックスの教会のシーンでもスペクタクルになってない。唯一不気味なのは、マスクをとった地下人類のメイク。放射能にやられた人類の成れの果ては、だから気持ち悪く作る必要があったのである。

1作目と2作目は、時系列で「対」になっている。そして地球は滅亡した、というオチ。これで終わりかと思いきや、製作者のジェイコブスは「この続き」を脚本家デーンにまたまた依頼する。当たれば、ドジョウは2匹も3匹もいると考えるのが映画屋のサガなのだろう。

新・猿の惑星 [Blu-ray]
新・猿の惑星 [Blu-ray]

「新・猿の惑星」"Escape from the Planet of the Apes" ('71) は、海上に不時着した宇宙船から3人の飛行士が降りてくるところから始まる。そしてマスクをとったら"猿"だったというサプライズな演出。そう、コーネリアス(ロディ・マクドゥール)とジーラ(キム・ハンター)たちは、タイムマシンで過去へさかのぼり、1973年の地球(LA)へやって来たのである。

猿が現代社会に来れば、メイクに時間がかかる猿は3体で済む(そのうちサル・ミネオは冒頭すぐ死ぬww)。製作費はかなり抑えられ、今までの「人間が猿の社会を見る目線」から「猿が人間社会を見る目線」へと変わる。ここで、言葉を話す猿はセレブたちにもてはやされるが、やがて査問され危険分子とされ、抹殺される。だが、彼らの子供・マイロは、密かにサーカスの団長(リカルド・モンタルバン)に育てられているという所で終わる。もはや、シリーズ化するのが当たり前の終わり方だ。

監督のドン・テイラーはこの作品をラブ・ストーリーと考えていた。ユーモラスな場面もあるのだが、後半は脚本家デーンの考えである差別と暴力批判の映画となる。映画自体は製作費の関係で、クライマックスは、廃船の上としょぼくなる。猿のメイクは進化しており、コーネリアスもジーラも猿の演技も完璧に近い。これはもっと評価されてもいいかもww

猿の惑星・征服 [Blu-ray]
猿の惑星・征服 [Blu-ray]

「猿の惑星・征服」"Conquest of the Planet of the Apes" ('72) は、1990年のアメリカが舞台。人間たちが猿を奴隷のように扱い、成人し改名したシーザー(ロディ・マクドゥールがまた演じた)が反乱を起こすというもの。1965年に実際に起きた黒人暴動を、猿に置き換えて描く。

70年代初頭の公民権運動の高まりの中、黒人の差別問題を映画にすることはタブーだった。だが、SFである「猿の惑星」なら黒人を猿に置き換えて見せることが出来る。人間の奴隷にされたシーザーが怒りを爆発させて革命を起こすこの映画は、アメリカの黒人の観客のカタルシスを得た。監督の(あの「ナバロンの要塞」を撮った)J・リー・トンプソンはリアリティにこだわり、後半は暴力と血にまみれた映像となる。なのでシリーズ中一番ダークな作品となった。このブルーレイでは公開時、過激なためカットされたシーンも入れた完全版も観れる。

脚本家、監督の意気込みとは裏腹に製作費がますます無いようで、ほとんどのシーンを20世紀フォックスの近所に出来たビル群の中でロケしている。製作費があればもっと面白い映画になったかも知れないと思える映画だ。脚本家デーンの、暴力が世の中を変えることは出来ない。権力がシフトしても、復讐の連鎖で暴力は終わりがないのだという主張が一番反映された作品でもあるだろう。

新シリーズの「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」の主人公もシーザーだった。この「征服」が元ネタになっているのだが、膨大な製作費をかけて面白いアクション映画になっている(製作費約1,000万ドル)。J・リー・トンプソンが生きていたら嫉妬したかも知れないね(笑)

最後の猿の惑星 [Blu-ray]
最後の猿の惑星 [Blu-ray]

「最後の猿の惑星」"Battle for the Planet of the Apes" ('73) で、プロデューサーのジェイコブズは、前作で暗くなってしまった「さるわく」を明るいものにしようとした。デーンの書いた脚本(シーザーが暴君になる、ローマ王朝の退廃のような話)を採用せず、新たにウィリアム&ジョイス・コリントン夫婦を招き、”エデンの園”のような作品にした。

猿と人間の共存をテーマにするが、戦闘場面もあり、親子で楽しめる作品に戻そうとしているのだが、いかんせん製作費がない(笑)前作から引き継いだJ・リー・トンプソン監督も「あれしか出来なかった」と嘆いた。ズームアップと短いショットで戦闘シーンを繋ぐ。ぼくも公開時劇場で観たのだが、内容はほとんど忘れていたほど。それほどチープな映画なのである。

調べたところ、製作費は、1作目500万ドル、2作目以降250万ドル、200万ドル、180万ドル、170万ドルと下がっていった。インフレ率を考えても、これでは1作目を超える作品など作れるわけもなく、「さるわく」は1作目だけだ、と云われるのも仕方がないところ。2作目以降は毎年アメリカの夏休みに公開されていたのも雑になってしまった理由だろう。続けて観ると映画の質が落ちて行くのがまざまざとわかってしまう。

「最後の猿の惑星」では、ジョン・ヒューストン監督が猿メイクをしていた。1作目は当初エドワード・G・ロビンソンがゼイウス博士役でスクリーンテストを受けていた。2作目はオーソン・ウェルズに猿メイクさせようとしたが断られた。ギャラが安いが”大物”を使おうとしてたんだろうな(笑)

1作目、2作目に出演したセクシーなエヴァ役のリンダ・ハリソンは、フォックス社の重役だったリチャード・ザナックのオンナだった。2作目で地下人間、3作目では猿に理解を示す学者、4、5作目ではメス猿の役をやったナタリー・トランディは、プロデューサーのアーサー・P・ジェイコブスの奥さんである。なんか、家内工業的なニオイのする製作現場だったのではあるまいか(笑)

1作目で脚本を完成させたマイケル・ウィルソンは、赤狩りにあい自身の才能を封印された過去があった。2作目以降のポール・デーンは、広島・長崎に落とされた原爆投下を憂いていたという。一環しているのは、人類を破滅させたのは、原子力爆弾だったということ。それは60〜70年代の米ソの冷戦構造の中では現実味をおびた恐怖であった。

2011年の今、我々唯一の被爆国の国民である日本人は、原子力発電所の事故で恐怖に怯えている。これは脚本家のデーンも、そして未来の猿たちも予想もしなかったことだろう。これは破滅ではなく、自滅ではないのか…。そうなってはいけないのである。そんなことを「猿たち」に教えられた気がした。

"APE SHALL NEVER KILL APE" (猿は猿を殺してはならない)

Planet of the Apes: 5-Film Collection [Blu-ray]
Planet of the Apes, Beneath the Planet of the Apes, Escape from the Planet of the Apes, Conquest of the Planet of the Apes, Battle for the Planet of the Apes (Blu-ray - 2011/ Japanese Version)

どのブルーレイにも特典映像があり、それぞれメイキング、予告編、スティル・ギャラリーなど収録され、ディスクを入れると立法者による解説がある。ロディ・マクドゥールが解説した126分のドキュメンタリー「猿の惑星のすべて」"Behind the Planet of the Apes"は収録されていない。これを見たければ、35周年記念DVDのアルティメット・エディションを買うしかない。

09-Nov-11-Wed by nobu

B005CUG0D4 猿の惑星 コンプリート・ブルーレイBOX (初回生産限定) [Blu-ray]
ピエール・ブール
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン  2011-09-21

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猿の惑星 DVDマルチBOX (初回生産限定) 猿の惑星 DVDマルチBOX (初回生産限定)
ピエール・ブール

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猿の惑星 35周年記念 アルティメット・エディション [DVD] 猿の惑星 35周年記念 アルティメット・エディション [DVD]

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2011-07-06

「刑事コロンボ〜構想の死角」 COLUMBO "Murder by the Book"

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先ごろビーター・フォークが亡くなり、追悼番組としてNHKで「刑事コロンボ」が放送された。
2011年7月3日(日)に地上波で放送したのは「構想の死角」。若き日のスティーブン・スピルバーグが監督したものである。

吹替えはもちろん小池朝雄。「うちのカミさんがねぇ」を久しぶりに聞いた。懐かしい。昔は〈お茶の間〉という言葉があり(今でもあるのか?)、そこでは家族みんなが揃ってテレビを見ていた。ビデオなんてなかったからね。このコロンボは大人から子供まで楽しめる推理モノ。ピーター・フォーク扮するロス警察の刑事が、よれよれのコートを着て、安い葉巻を持って犯人を探り当てて行く。殺しの場面を最初に見せて、コロンボ刑事が犯人にしつこく質問して行き、追いつめるというのは当時革新的な手法だった。

この「構想の死角」、ぼくは何十年振りに見たが、トリックから何からキレイに忘れていた(笑)ので楽しんで見れた。

コンビで人気推理小説家となった二人が仲違いし、相方を殺してしまう。推理小説家らしくトリックは凝ったもの。田舎の自分の別荘へ言葉巧みに連れて行き、奥さんに事務所から電話をしているとウソを言わせている時にピストルでズドン。奥さんはロス警察に電話し、事件は発覚。あらかじめ、荒らしておいた事務所に警察が来るが被害者はいない。後日、相方の家の前で死体が見つかり、彼が取材していたというギャングのリストが見つかるが…。

ちょっと書いてみたがわかりにくかったかな。ま、このシリーズはコロンボが犯人を徐々に追いつめて行くところが面白くて、それが「味」だったからね。世界中で人気がでたのもうなずける。
コロンボを見てから、「グレート・レース」「ポケット一杯の幸福」「七人の愚連隊」などのピーター・フォークを見たが、別人のように見えた。それほど、コロンボ役がぴったり決まっていたのである。

今回NHKはBSでも傑作選をやっている。「二枚のドガの絵」「別れのワイン」「パイルD−3の壁」と続く。
懐かしいだけじゃなくて、今見てもホントに面白い「刑事コロンボ」。
アナログ放送が終わる前に放送されたのは何か因縁を感じたのでした。

Columbo "Murder by the Book" (1974)

Directed by Steven Spielburg
Starring Peter Falk

06-Jul-11-Wed by nobu

2011-06-30

「カサンドラ・クロス」 午後のロードショー The Cassandra Crossing

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2011年6月9日のTV東京・午後のロードショーは、「カサンドラ・クロス」"The Cassandra Crossing" ('76)であった。
ぼくはロケフリから録画しておいたものを後日楽しんだ。

この作品は、1976年12月に日本で封切られたお正月映画の一本。その年高校生だったぼくの、最大の関心事はジョン・ギラーミン監督の「キングコング」の公開。日米同時公開が話題となり、ぼくも期待にあそこをふくらませ、もとい、胸をふくらませて初日の一回目の上映(確か12月18日?)に行った。で、結果はがっくしの出来… ジェシカ・ラングのおっぱいが見れただけが救いだったと自分に言い聞かせたほど(笑)。
その月は「がんばれベアーズ」を観てて、自分の記憶では「ダーティハリー3」も観たと思う。
なので、小遣いが足らなくなったぼくは「カサンドラ・クロス」と「ラスト・コンサート」の2本立を観に行かなかったのだ。

そんなことで、和製「カサンドラ・クロス」と云われた「皇帝のいない八月」も観てない。「シベリア超特急」は観たけど(←関係ない!?)。

当時はまだビデオなどない時代。もう二度とこの作品を観れることはないだろうと思っていた。
時は流れ、何度かTVでこの映画が放送されたり、ビデオ・レンタルでも借りられるようになったが、なぜか自分には「縁遠く」て、観るタイミングを逸していた。

そして、公開からほぼ35年を経て、やっとこの「カサンドラ・クロス」を観ることが出来たのだ。なーんか昔の文通相手に初めて会ったような懐かしいような嬉しいような感じ、で観た(笑)。

スイスの国際保健機構に過激派ゲリラが侵入、細菌を浴びた身体のままヨーロッパ大陸横断列車に逃げ込む。細菌兵器研究という国際的スキャンダルを恐れたアメリカ陸軍のマッケンジー大佐(バート・ランカスター)は、乗客リストにある医師チェンバレン(リチャード・ハリス)と連絡を取り合い、犯人の死後、列車を止め密閉。そのままユダヤ人収容所のあったヤノフへ向かわせる。だがそこへ行くまでには老朽化し現在使われていない鉄橋、カサンドラ・クロスがあった。事態を理解したチェンバレンは元妻ジェニファー(ソフィア・ローレン)と共に乗客たちの協力を得て列車の切り離しを計る...。

観てない方にはネタバレになるが、助かるものと思っていた多数の乗客がついぞ止まらない列車と共に老朽化した橋から落ちてしまう。これはビックリ。スーパースターが現れないというリアルな設定が良い。

製作国がイタリア・イギリス・西ドイツとヨーロッパ勢なので、アメリカが悪者になるというのが面白い。悪いからねぇ、アメリカは(笑)

プロデューサーはカルロ・ポンティ。なので、妻のソフィア・ローレンはイイ役だし、ソフトフォーカスもかかってウツクシく画面に登場する。
考えたら上に書いた「キングコング」はディノ・デ・ラウレンティスが製作したもの。この年の正月は大物イタリア人プロデューサーの戦いだったわけですな。

エヴァ・ガードナーにくっついてる若いつばめが、ベトナム(「地獄の黙示録」)へ行く前のマーティン・シーン。アクターズ・スタジオの大先生リー・ストラスバーグが、カサンドラ・クロス(英語ではCassandra Crossing)へ行くのをいやがるユダヤの老人役で出演。

懐かしかったのは、新婚旅行で乗り合わせた若者をレイモンド・ラブロックが演じてるとこ。この人、甘いマスクで当時女子校生なんかに人気があったのだよ。オレは似てるとよく云われたもんだ(←うそ!)

吹替えも、ローレン(此島愛子)、リチャード・ハリス(日下武史)、イングリッド・チューリン(奈良岡朋子)、ランカスター(青木義朗)、ストラスバーグ(宮内幸平)、ガードナー(福田公子)、シーン(青野武)と嬉しい陣容。なので、初めて観たのになぜか懐かしい感じがした。

129分の映画なので、90分ほどにカットされたものだったが、充分楽しめた。やっぱ70年代アクションは面白いよな。CGなんかないから余計にハラハラしながら楽しめるのかもしんない。最近は「どーせCGなんだろ?」と思うことが多いかんね。

監督(原案・脚本)のジョルジュ・パン・コスマトスはこの後「ランボー/怒りの脱出」などを撮っているが、このオールスター・キャスト映画を面白く、手堅くまとめている。

あ、そうそうコレ音楽もまた良いんだ。ジェリー・ゴールドスミスのテーマ曲は、関光夫の映画音楽のラジオでよく流れていた。

いやぁ、それにしてもやっぱり高校生の時に観ておくべきやったな。ずーっと心のどこかで後悔してたから。貧乏だから仕方なかったのだが、映画も「旬」があるということを思い出した夜でした。
(ま、この記事も放送から20日以上経って書いてるから、これも旬を過ぎてるけどね・爆)

The Cassandra Crossing (1976)

Directed by George Pan Cosmatos
Cast: Richard Harris, Burt Lancaster, Sophia Loren, Ava Gardner, Martin Sheen, Lee Strasberg, O.J. Simpson

30-Jun-11-Thu by nobu

B000H9HQVK カサンドラ・クロス [DVD]
東北新社  2006-10-27

by G-Tools

2011-06-03

「Mr. Boo! インベーダー作戦」 (賣身契/The Contract) [DVD] マイケル・ホイ (許冠文)

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Mr.Booことマイケル・ホイの映画が急に観たくなった。理由はあるのだが、なぜ観たくなったかは書かないでおく。

会社の帰りがけ、”香港レコード”へ寄ってみたら、何本か彼の映画のDVDがあった。数年前にレストアされたものである。ただ広東語の題名ではどれがどれかわからんちんで、カバーアートだけで選んだのがこれであった。

Mr.Booは日本では有名だが、香港では誰も知らない。なぜなら、彼はマイケル・ホイ(許冠文)、もしくはホイ・ブラザーズとして知られているが、Mr.Booではないからだ。
Mr.Booとは1979年に彼らの映画が公開された時に配給会社・東宝東和の人がつけた名。つまり日本限定の名称なのである。

そのことを知らなかったぼくは、香港へ来てすぐの頃、Mr.Booのことを誰に聞いても知らないので、なんでだろう?と思ったもんである。
香港レコードでも、棚には「許冠文 HUI BROTHERS」でDVDが並んでいる。

そのホイ・ブラザーズの映画もシリーズとして製作されたものではないのだが、日本ではなんかシリーズもののように思われている。公開も製作順ではなく、バラバラに輸入され公開されていた。そんなことも当地へ来てからはじめて知った。

知り合いの香港人に教えてもらったが、マイケル・ホイは、香港の大学(嶺南大學と思われる)を出ているというのだからインテリである。学生時代から、(この映画のように)TV局に出入りし、そして劇場映画「Mr.Boo!ギャンブル大将」 (鬼馬雙星/Games Gamblers Play)を製作し、大ヒットを飛ばすのだ。

70年代から80年代にかけて映画を製作するが、やがてマンネリとなり(パターンが似ているため)、映画もヒットしなくなり、その後はスタンダップ・コミックのショーを舞台で行ったりしているようだ。最近では「カールじいさんの空飛ぶ家」の広東語の吹替えで登場したりもしていた。

だが先ごろ(2011年5月)、イタリアはウディネで行われた極東映画祭(Udine Far East Film Festival)にて、長年に渡るアジアン・コメディへの貢献を讃えられ、マイケル・ホイへ名誉賞(Lifetime Achievement)が贈られたのである。

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今回観たのは日本ではMr.Boo第二弾として公開された「Mr.Boo!インベーダー作戦」(賣身契/The Contract)。

マウスTVで働くマイケル・ホイは、エキストラのような役しか来ないしがないタレント。ある日ライバル局の番組でMCを務めたところこれが好評で、社長から好条件で契約しないかと持ちかけられる。だが、彼はマウスTVと8年もの長期契約を結んでおり、それを破棄することは不可能とわかった彼は、弟(リッキー・ホイ/許冠英)や追いつめられたマジシャン(サミュエル・ホイ/許冠傑)と共にその契約書を重役室の金庫から盗もうとするのだが‥‥。

久しぶりに観たが、やっぱり懐かしかったな。久しぶりに観てもおかしかったが、今の若い人が見たら面白いかどうかは疑問に思う。やはり古臭いといえば古クサイ(笑)
だが、この映画では、スラップスティックな笑いにこだわっており、ハロルド・ロイドやチャップリンの影響も垣間見れるシーン(太った大男に追っかけられたり、ビルから落っこちそうになったり)が結構あることに今回気づいた。これだから世界を笑わせることが出来たんであろう。

けどやっぱりぼくらの世代は、ゴールデン洋画劇場で観た「Mr. Boo!」だよな。あの広川太一郎の絶妙の吹替え。2005年にその吹替え付きのDVDが発売されているので、なんかまた欲しくなっちゃったよ(苦笑)。

何やらホイ先生の「天才與白癡/The Last Message(原題)」('75)という映画だけは、日本で公開はおろかDVDにもなってないようなので、当地・香港でもし見つけたら観てみようかなと思っている。

賣身契/The Contract (1978)

Written and Directed by Michael Hui
Starring Michael Hui, Samuel Hui, Ricky Hui
Duration 97 mins

02-Jun-11-Thu by nobu

B004EYSP5K Mr.BOO! インベーダー作戦 デジタル・リマスター版 [DVD]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン  2011-02-25

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B0009RQXLE Mr.BOO ! DVD-BOX (5,000セット限定生産)
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン  2005-08-26

by G-Tools

2011-05-12

「液体人間オイルマン」(油鬼子) The Oily Maniac ('76)

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前回書いた「北京原人の逆襲 」を観た日にたまたま見つけたのが、この「液体人間オイルマン」(油鬼子) The Oily Maniac ('76)。

その日は土曜日(2011年5月7日)で、前日、銅鑼灣(Causeway Bay)で同じ業界の若い奴らに捕まり、朝3時まで飲んでたもんだから二日酔いの頭で昼間ソファーに寝っころがり、NowTVをザッピングしてたらこの変な映画の予告があり、これから始まるというのでつい観てしまったのだった。

マレーシアのやし油工場の乗っ取りにからむ話の中で、無実の人間が死刑にされてしまう。その死刑囚は、娘チュンユエ(チェン・ピン)の幼なじみの弁護士事務所で働くシェン(ダニー・リー)に、自分の背中に入れ墨として描いた不思議な絵と呪文を書き記すように命ずる。
子供の頃のポリオが原因で今でも松葉杖なしでは歩けないシェンは、その絵をもとに自宅の地下を堀り湧いて来るオイルの中へ入るとオイルマンに変身してしまう。
その後、工場乗っ取りにからむ弁護士事務所の不正に怒りを覚えたシェンは、その時々にオイルマンに変身し、当事者たちを殺して行くのであった…。

いやはやなんと形容していいのか?けったいな映画やったよ(笑)。
オイルマンとは、その名の通りガソリンの原油の化け物(登場する時は「ジョーズ」のイントロだけかかる)。液体のまま移動するなど、東宝映画「美女と液体人間」が元ネタと思う。こいつがお姉ちゃんとベッドインしようとする場面に出て来ては男をやっつけて、その場を去るのだ(笑)。

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子供向けでは決してない変な怪獣映画。ともかくエロ満載で、そのお姉ちゃんたちも、監督の趣味なのかみんな同じような顔と体型(ちょっとぽっちゃり)なもんでわかりづらいったらない(笑)

一番笑ったのは、売春婦の処女膜再生手術の場にオイルマンが現れ、医者を圧死させる場面。おねえさんが手術台で足をおっぴろげてたら、上からオイルが落ちて来るのだ。そんな場所に来るなよって(笑)

この映画、ヒーローものというには、大義がなさ過ぎる。私怨なのだ。主人公は足が悪いが、オイルマンに変身するとそれは消えるという哀愁はわかるものの、あまり同情もできない。それから一番は、オイルマンの造形がかっこ悪すぎる(笑)

日本の「ヘドラ」を参考にしたらよかったのに、人間の格好をしたタダの黒い物体で、目と心臓部分だけむき出しで赤いのだ。それに技も少なく、持ち上げたり首をしめるだけ。火に弱いのはわかってるはずなのに…(笑)

CGがまだない時代なので、特撮は頑張ってはいるが、日本の当時の特撮ものに比べると(正直)かなり落ちる。
まぁ色んな意味でつっこみどころ満載で、B級カルト映画として楽しめます。

この映画があったから、監督のホウ・メンホアは翌年「北京原人の逆襲」という(ある意味)傑作をものにしたのかも知れぬ。そんなかんだで、この日はショウ・ブラザーズの香港B級カルト映画でお腹いっぱいになった日であったとさ。

油鬼子 The Oily Maniac (1976)

Directed by Meng Hua Ho
Cast: Danny Lee, Ping Chen
Duration:  83 mins

12-May-11-Thu by nobu

B001L0YDTW 液体人間オイルマン [DVD]
キングレコード  2009-03-11

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2011-05-11

「北京原人の逆襲」(猩猩王)The Mighty Peking Man (a.k.a Goliathon)

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ぼくが香港で入っているNowTVというブロードバンドTVの中に、Celestial Classic Movies(天映經典頻道)というチャンネルがある。ここは、おもにショウ・ブラザーズの過去の名作を放映してくれるありがたーいチャンネルである。値段も1ヶ月HK$21(約220円)と手頃だし、ほとんどの作品がリマスターされて画像がウツクしいのも嬉しい(それに年寄り向きなのか、字幕の字も大きいのがありがたい・笑)。

先日も、たまたま夜ザッピングしてたら、香港のバンドが日本(箱根)へ行くカラー映画をやっていた。しばらく観てたら、なんかテイストが日本映画に近い。調べてみたら、これ「青春萬歳」"The Singing Escort"('69)という井上梅次監督のミュージカル映画だったのだ。

そんなチャンネルの今月のピック・アップはコレ。「北京原人の逆襲」(猩猩王)"The Mighty Peking Man"('77)。名前のみ知っていたが、今まで観たことなかったので、当日(2011年5月7日・土)は久しぶりにテレビの前で心待ちにしていた自分がいた(笑)

ショウ・ブラザーズが作った香港初の本格的な怪獣映画!香港B級カルト・モンスター・ムービーの傑作!クェンティン・タランティーノが惚れ込み、アメリカで自身のレーベルでDVDを発売した!等、評判は聞いていたのだが、思っていた以上にコレはいけるクチだったのだ。

物語は、もーほとんど、というか、まるっきり「キングコング」のパクリ。香港のあくどい興行師たちが、ヒマラヤ奥地にいるという巨大な猿を捜しに行く。だが、捜索隊を阻む過酷な自然環境や、トラの襲撃等を受け挫折する。そんな中、一人山奥に残された冒険家シェン(ダニー・リー)は、美女アーウェイ(イヴリン・クラフト)と出会う。シェンは巨大な猿「北京原人」とアーウェイを連れて、香港へやってくる。

香港へ来るまでの間「原人」は貨物船のハッチカバーの上に鎖に繋がれてるのだが、暴れもせずおとなしい(台風が来てるのに・笑)。香港スタジアムでのショーでは、ブルドーザーと綱引きをし、ついには怒った「原人」は香港の街を破壊する。そしてクライマックスは、70年代、香港で一番高かった中環のJardine Houseの屋上で、英国軍のヘリコプター攻撃を受けるのだった…。

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演出はとーってもチープで、見ていて恥ずかしくなるようなシロモノなのだが、もう怪獣映画&冒険もののエッセンスがほとばしっていて本当に楽しかった。
編集がいいのかなぁ。どんなに失笑ものの場面が続いても、最後まで飽きさせないで見せてくれるのが不思議だ。

特撮はそのほとんどが村瀬継蔵はじめ日本人スタッフだったという。だからだろう、香港のビル群を壊すシーンも、原人の造形もなんか馴染めるものだったのだ。

トラの襲撃やら、底なし沼やら、断崖絶壁など厳しい行程を進む捜索隊。巨大な猿人は、着ぐるみで、ミニチュアのビルを壊し車を踏みつぶす。そして、突然登場するブロンド美女!そう、ここには男子の好きなものがいっぱい詰まってるのだ。

特にブロンド美女は、ほとんど裸のような布切れをつけジャングルを走る走る。そして木に登るシーンでは、童貞君ならこれだけでイケルような登り方で(しかも下から撮ってる)、ここだけでも見る価値があるというもの(笑)

男女のカラミもあり、とても子供向きとはいえない怪獣映画。少年の心を持った大人の男(つまりオタク)にはかなり受け入れられるご馳走である。ご賞味あれ!珍味ですが(笑)

猩猩王 The Mighty Peking Man (1977)

Directed by Meng Hua Ho
Cast: Danny Lee, Evelyne Kraft
Duration: 87 mins

11-May-11-Wed by nobu

B0001FM142 北京原人の逆襲 [DVD]
ニィ・クアン
キングレコード  2004-09-01

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6305803811 Mighty Peking Man
Cho-Hua Wu
Miramax  2000-05-23

by G-Tools

2011-04-11

山田洋次監督50周年名作シネマ特別企画「男はつらいよ 純情篇」+文化放送「みんなの寅さん」

第6作 男はつらいよ 純情篇 HDリマスター版 [DVD]

TV東京で2011年4月10日(日)に放送された「男はつらいよ 純情篇」('71)を久しぶりに見た。これはシリーズ第6作。ヒロインは若尾文子である。

今回寅さん(渥美清)は、偶然大衆食堂のテレビで懐かしい御前様(笠智衆)、寅屋のおいちゃん(森川信)、おばちゃん(三崎千恵子)、さくら(倍賞千恵子)の顔を見て里心がつき10円玉の公衆電話から電話をかけるところから始まる。そして長崎県、五島列島へ行く道すがら、子連れの若い女・絹代(宮本信子)と知り合う。わけありの彼女を哀れんだ寅は実家まで送るが、そこで父親(森繁久彌)は絹代に「帰れるところがあるから逃げるんだ。すぐに夫のもとへ帰れ」と冷たく言い放つ。寅は「自分も柴又という帰れる場所があるから甘えて一人前にならないんだ。もう帰らない」とその場では決意するが、最終便の船の声を聞き、すぐに船に乗り込んでしまう。
その頃、寅屋ではおばちゃんの遠縁にあたる美しき人妻・夕子(若尾文子)が、夫と別居して二階に間借りすることになっていた。間の悪いことにそこに寅が帰って来て、自分の部屋を人に貸したことに腹を立て、家を出ようとするが、夕子を見て一目惚れ。旅に出ることをやめてしまうのだった…。

渥美清と森繁久彌の共演場面が見られるだけでも貴重な一編。かつて松林宗恵監督は「社長シリーズ」に渥美清起用を進言したが、プロデューサーの藤本真澄は却下したのだそうだ(←放送中に娯楽映画研究家・佐藤利明氏がツイッターでリアルタイム解説をしていたので知った)。

やっぱりおいちゃんの森川信はいいねぇ。若尾文子がお風呂に入る場面で、寅がそわそわしてお風呂の方に目をやって、「おいちゃん、何考えてんだ?」と云われ、「お前と同じことだよ」と答えて喧嘩になるところもホントに可笑しいし、例えば煙草をくわえた瞬間に驚くその絶妙の間が抜群なんだわ。山田洋次監督がかつてロング・インタビューで「森川信さんをもっと評価してほしい」と云っていた意味がよくわかる。

博(前田吟)が独立したいという気持ちを抑えて仕事をしていることを知り、タコ社長(太宰久雄)に「オレが話をつけてやる」と寅が飛び出して行き、今度はタコ社長に「寅さん頼むよ。博さんを思いとどまらせてくれよ」と頼まれ、「わかった。オレにまかしとけ」と言って騒動を起こす寅さん。

夕子さんに惚れてしまい、食欲も出なくて寅が床に伏すのも相変わらずで可笑しい。最後はいつも通り振られてしまうのだが、柴又駅でのさくらとの別れのシーンでの思い出話もせつない。

予定調和だが、予定調和ゆえに面白い。今日本が復興の時に見てホッとする映画だった。

この映画が放送されたのも、山田洋次監督50周年記念だからである。(4月14日には「幸福の黄色いハンカチ」がこれまたニューデジタルリマスターで放送とのこと)。ぼくはロケフリで見てるので違いがわからないが、デジタルリマスターはキレイなんだろうね。

4月3日から文化放送ラジオでも月〜金までの朝8:13〜8:20頃、吉田照美の番組内で「みんなの寅さん」をやっている。ぼくは香港へいて聴けないのだが、ぼくの映画の友人が録音して送ってくれたものを聴いたらとても面白かった。賠償千恵子さんのインタビューや、山田洋次監督が寅さんの幼少期のことを書いた小説「けっこう毛だらけ」の朗読などもありファン以外にも楽しめる内容になっている。朝聞ける人はぜひ!

山田洋次監督50周年名作シネマ特別企画
「男はつらいよ 純情篇」デジタルリマスター版
2011年4月10日(日) よる7時54分~よる9時48分 TV東京

11-Apr-11-Mon by nobu

B001ABQ54S 第6作 男はつらいよ 純情篇 HDリマスター版 [DVD]
松竹  2008-08-27

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B001ABQ56Q 「男はつらいよ HDリマスター版」プレミアム全巻ボックス コンパクト仕様<全53枚組> [DVD]
松竹  2008-10-29

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男はつらいよ 寅次郎音楽旅~寅さんの“夢”“旅”“恋”“粋”~ 男はつらいよ 寅次郎音楽旅~寅さんの“夢”“旅”“恋”“粋”~
ヘルベルト・フォン・カラヤン 映画主題歌 渥美清

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