『ゴジラ』 "Godzilla" ('54) Blu-ray クライテリオン・コレクション + "Godzilla, King of the Monsters!"('56)
ハリウッド版ゴジラが、当地香港では、いよいよ明日(15-May-14)から公開となる。なので今夜はクライテリオン盤『ゴジラ』"Godzilla"で予習(復習?)である。
オリジナル版『ゴジラ』('54)は語り尽くされているが、やはりこの作品は歴史的にも貴重なものだ。1954年ビキニ環礁での水爆実験で船員が被爆した第五福竜丸事件を基に、水爆実験により出現してしまった〈怪獣〉ゴジラ。この世界的に有名になったモンスターは、原水爆実験に対するアンチテーゼの象徴だった。広島・長崎の原爆を受けた日本人だからこそ、その〈恐怖〉を巨大な異形のクリエイチャーとして表現できたのだろう。
いつもクライテリオン盤のレストアは目を見張るものがあるが、この『ゴジラ』に関しては、現存するポジからの修復で、傷も多すぎるため、相当キレイにはなっているのだが、残念ながらそんなに驚くようなものにはなっていない。ぼくは東宝版を持っていないので、比較は出来ないが、白黒のコントラストのシャープさも、同じクライテリオンの『駅馬車 』などと比べるとたいしたことなく感じてしまう(←黒澤明の『用心棒 』のレベルが凄かったから、期待が高すぎたのかもね)。
このディスクには、特典映像として当時大ヒットしたアメリカ公開版ゴジラも収録されている。今回は、ちょっとこの話をしてみよう。
題名は"Godzilla, King of the Monsters!" ('56)。日本では『怪獣王ゴジラ』(海外版)として公開された。監督・編集は、テリー・モース(Terry Morse)。オリジナルの映像に、新撮りの場面を繋いで作った作品で、アメリカでは長らくこれしか公開されなかったため、これがゴジラだと思ってる人も多いらしい。(ぼくが知ってる限り、2005年に公開、2006年に"Gojira"と明記されたDVDが出たのがアメリカでは最初と思う)
Gojira / Godzilla, King of the Monsters Classic Media 2006-09-05 by G-Tools |
焼け野原の東京。ガレキの中、傷だらけで倒れているアメリカ人がいた。ユナイテッド・ワールド・ニュースの特派員スティーブ・マーティン(レイモンド・バー)だ。カイロへ行く途中、立ち寄った東京で地獄を体験してしまった。それはゴジラの出現である。かつぎこまれた病院で、数日前を回想するスティーブ。
東京で大学時代の友人、芹沢博士(平田昭彦)に会うことを楽しみにしていたが、空港で警備官(フランク岩永)から原因不明の船の失踪を知らされる。大戸島で山根教授(志村喬)や娘の町子(河内桃子)との取材途中、ゴジラの出現に立ち会ってしまったスティーブ。ゴジラが東京へ上陸して暴れるが、人間はゴジラをおさえる術をもっていない。唯一この国を救えるのは、芹沢の作った秘密兵器”オキシジョン・デストロイヤー”しかなかった。だが、芹沢はこの兵器を使うことはためらうのだった。
ゴジラの特撮シーンは全部残して、ドラマ部分を英語に吹替えるだけでなく、レイモンド・バーの取材を通して見せるという作り方は、字幕に頼らず映画を楽しませるということからもいいアイデアと思う。だが、それがためにオリジナルが持っている〈深み〉と反核思想などは置き去りにされている。(本田猪四郎監督のオリジナルがいかに良いかもよくわかる・笑)
素晴らしいゴジラの特撮は円谷英二の手によるもの。その技術は当時世界的に高い評価を得た。「『キング・コング』('33)みたいな映画を作る」という円谷の夢が、キング・コングの国の人間を驚愕させた瞬間である。
ぼくの世代からすると、レイモンド・バーは、TV「鬼警部アイアンサイド」だ。車椅子の名警部がスタスタ歩くと違和感を感じてしまうなぁ(笑)。役名のスティーブ・マーティンも今ならつけない名前だな。「サタデー・ナイト・ライヴ」になっちゃうし(笑)。なんで羽田空港の警備の人間が、アメリカ人通訳として一緒に取材に行くのか?とか、まぁ、ツッコミどころは多々あるが、これはこれで楽しめるものになっている。
特典映像は、他に(新撮りの)主役の宝田明、ゴジラの中にいた中島春雄、特撮スタッフの入江義夫、開米栄三、映画評論家・佐藤忠雄のインタビューもある。
これが映画初主演となった宝田明は「ゴジラはぼくのクラスメイトです」と語る。「ゴジラはその後世界的にビッグ・スターとなり、ぼくはスターダストですが」と洒落たことも話されていた。
佐藤忠雄は、原爆の恐怖は、原子爆弾だけでなく、原子力発電所の恐怖でもあった。それが想像以上に大きなものだったということを表現したこともゴジラの意味だった、みたいなことを話している。これが2011年の震災後に行われたインタビューだというのも〈意味がある〉のである。
さあ、明日が楽しみだ。てなことで。
GODZILLA (1954)
96 Minutes
Black & White
In Japanese with English Subtitles
Monaural
1.37: 1 Aspect Ratio
14-May-14 by nobuyasu
ゴジラ (1954年) ~GOZILLA~ (Blu-ray) (PS3再生・日本語音声可) (北米版) CRITERION COLLECTION 2012-01-24 by G-Tools |
ゴジラ(昭和29年度作品)【60周年記念版】 [Blu-ray] 東宝 2014-06-18 by G-Tools |