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先週末、スティーヴン・スピルバーグ監督の新作映画『レディ・プレイヤー・ワン』”Ready Player One” を楽しんできた。 何の予備知識もナシで観に行ったので、ものすごく面白く観れた。予備知識を持たないで映画を観るのは、現代においては困難かもしれないが、たまにはこういう見方をしてみるといいと思う。 だけど、ここではちとネタバレもあります(意地悪だな、オレ・笑)
2045年、オハイオ州コロンバス、人々は環境汚染や気候変動、及び政府の機能不全によりすさんだ生活を余儀なくされていた。彼らが日常の憂さを晴らすべく、逃げ込んでいたのは、VRの世界〈オアシス〉だった。オアシスの世界では、創始者であるジェームズ・ハリデー(マーク・ライランス)が、死後遺言により、オアシス内にある3個の鍵を見つけ、イースターエッグを手に入れたものに、オアシスの所有権と5000億ドルの賞金を与えるというゲームが繰り広げられていた。だが、ハリデーの死後5年経っても、未だに鍵は見つかっていなかった。 スラムに住む若者ウェイド(タイ・シェリダン)も、日々鍵を探しているが、この鍵を探しに世界的な大企業IOI社もやっきになっていた。やがてウェイドは世界で初めて第一関門を突破するが、ウェイドもアバター仲間たちにも、IOI社からの危険がせまってくるのだった。
まあともかく〈オアシス〉のVRの世界が凄いこと。ぼくは中環のIFC Cinemaの2D版を観たのだが、ここはVibration Seatsといって、音響に応じて椅子が振動する。それだけで、冒頭のレースシーンも大迫力だった。ここでは、主人公のアバター、パーシバルは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンに乗ってるし、ヒロインのアルテミス(オリヴィア・クック)は、『アキラ』の金田のバイクに乗って疾走する。バットマン・カーは、往年のモデルなのも嬉しい。
劇中ぼくが一番笑ったのは、『シャイニング』のくだり。この映画を観てないエイチ(リナ・ウェイス)は、開けてはいけないドアを開けたりして酷い目にあう。もうオアシス内の映画館へ入って行くと、あのホテルになってるとこなんてぞくぞくしたし、鍵の絵になってるタイプライターの言葉は、”All Work and No Play Makes Jack a Dull Boy”だし、双子の女の子、エレベータからの大量の血、斧でドアをぶち破られたり、と大笑いだった。それにあのホテルのボール・ルームでの昔の白黒写真が、鍵探しのヒントになってるのも面白いね。
『シャイニング』DVD レビュー:踊る大香港音楽も70年代後半から80年代のもので、これもおっさん世代にはたまらない。途中『サタデー・ナイト・フィーヴァー』の”ステイン・アライヴ”がかかる。この映画も主人公がしがないペンキ屋の店員で、土曜の夜だけディスコでヒーローになるという話だった。なんか繋がりを感じるね。
まぁ日本人なら、後半「メカ・ゴジラ」の戦いのシーンは、大興奮だろう。アバターのダイトウ(森崎ウィン)が、三船敏郎にそっくりだな、と思っていたら、本名がトシローというのだから笑わせる。彼が日本語で叫ぶ「おれはガンダムで行く!」のセリフは、思わず拍手をしてしまったよ(笑)
土曜日の夕方、満員の劇場で、いたるところで笑い声が起こる。それも、ゲームおたくは、昔のゲームの「ああ、あそこ!」って感じで、映画おたく、アニメおたく、ヒーローおたく、怪獣おたくもそれぞれのツボで笑い声が出る。 昔、息子が大学行ってる時、生意気にも「お父さん、おたくおたくって言うけど、おたくがマジョリティを持てば、それがメジャーになるんだよ」と言った。この映画を観て、もうそんな時代になったんだな、と痛感した。もうおたくはメジャーで、おたくじゃない人間がマイナーの時代なのだ。スティーヴン・スピルバーグは、その時代の門を開けたのである。
Ready Player One (2017) Directed by Steven Spielberg
26-Apr-18 by nobu
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東京から香港へ戻るキャセイ機内で、『ファントム・スレッド』”Phantom Thread”を楽しんだ。
監督のポール・トーマス・アンダーソンと、主役のダニエル・デイ=ルイスが、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』以来のコンビを組み、しかもこれがデイ=ルイスの引退作というので、観る気マンマンだった。なので、機内で観れてありがたかった。
1950年代、ロンドン。ファッション・デザイナーとしての名声と、社交界から絶大な信頼を得ている天才仕立て屋レイノルズ・ウッドコック(ダニエル・デイ=ルイス)は、旅先のレストランで見かけたウェイトレス、アルマ(ヴィッキー・クリープス)に「食事に行かないか」と声をかける。彼女は応じ、デートをするが、その日の夜から彼は彼女の”完璧な身体”に着せるドレスを作り続ける。彼女は、そんな彼に不満を覚え、「これは何のゲームなの?」と問いただすのだが‥
ふつうの男なら、デートした彼女を「どうやって服を脱がそうか?」と考えるものだが、レイノルズは「どうやって服を着せようか?」と考える。そのへんが天才と凡才の違いかも知れないが(←ちゃうわー!)、ともかく彼は、四六時中ドレス作りの事で頭がいっぱい。だから、朝食の時に、トーストを切ったり、バターを塗ったり、ティーを入れる音が、創作の邪魔になると考えるのだ。
得てして独りよがりの男はこんな風に神経質なもの。気にくわないことがあると、その女は用済みとして、マネージャーも兼ねてる妹(レズリー・マンヴェル)に、家から追い出させる。今まではそれでよかった。だが、今回のオンナは違っていた。
独占欲の強い女は、その男を誰にも触らせたくない。話もさせたくない。いつも自分に頼ってもらい、いつも自分と一緒にいて欲しい。だから、どんな手段を使っても、その男を獲りに行く。
その男がどんな目にあおうが、他人がどんなに迷惑しようが、たとえ、その男が富も名声も失ったとしても、彼を自分のものにしたい。
そして彼女は思う。それが愛なのだ、と。
この映画の心理戦の面白さは、恋愛遍歴の多い人や、大変な結婚生活をしたことのある人にはわかると思う。
主人公の初老の男は、自分のものだと勘違いし、自分より下の立場にあると思ってる女に振り回される(←え?あっしの事でゴンザレスか?)。だからオンナをみくびってはいけない。母性で暖かく抱擁された後の男は弱い。ただの男の子になっちまうのだ(はぁ)。
まるで西洋の絵画のような映像(撮影もポール・トーマス・アンダーソン)。格調ある音楽(レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドが担当)。ファッション・デザイナーの話だけあって、その衣裳は一点一点素晴らしく美しい(アカデミー賞衣装デザイン賞受賞)。
アルマ役のヴィッキー・クリープスは、新人で、そんなに美人とは言わないが、まるで19世紀頃の西洋絵画のモデルになるような出で立ちである。
デイ=ルイスは、さすがの演技で初老の天才仕立屋になりきっている。この人、今回の映画のために高名な仕立屋に約1年修行に行き、実際に服を仕立てられるまでになったという。だから、引退しても食っていけるのか(笑)
その中で繰り広げられる、ある意味怖い物語。〈毒牙〉に引っかかる様は”身につまされる”映画だったとさ。
日本では、2018年5月26日公開。
Phantom Thread (2017)
Written, Directed and Produced by Paul Thomas Anderson
19-Apr-18 by nobu
追記:エンドクレジットで、先ごろ亡くなった『羊たちの沈黙』などの監督”ジョナサン・デミに捧げる“とあった。ポール・トーマス・アンダーソンとの友情からなのだろうか。
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